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君ハ巳ノ運命のヒト~ウカノ編~《第2部・完》
ウカノへの想い⑩
しおりを挟む待ちに待った18歳の誕生日・兼、結婚式だ。やっとウカノと夫婦になれる。
ドキドキしながら『和装じゃありきたり』と言う父の声に母も乗り、
僕はタキシード、
ウカノはウエディングドレスと決まった。
「白へびが真っ白なウエディングドレスっていうのも、ちょっと……」
そう言って拗ねるウカノが可愛くて、キスした後、初めて首筋に顔を埋め、初めてキスマークをつけた。
「赤いマークをつけた白へびさんなんていないよ」
それから、衣装合わせだというとき、
グラリと、眩暈がした。
光の中に溶けていく感じ。
衣装を合わせる姿見の大きな鏡を見ると、僕は白へびになっていた。お父さんとそっくり!
一生懸命鳴いた。
心の声で皆を呼んだ。
多分、力が弱い個体になってる。
僕は皆に見つけて欲しくて、
一生懸命部屋から離れ、母さんが良くいる縁側に来たら、
『何だよ!この烏!下ろせ!僕は簡単に食われたりしないぞ!』
僕がジタジタしていると、烏が僕を鷲掴みにして家から飛び去った。
『ウカノ!ウカノ!僕はまだ死ねない!』
─────────────
暫くして、下ろされたのはゴミ捨て場。
烏が啄もうとしたとき一生懸命、身体中の気を発した。光に弾かれて、それ以上、烏は啄ばなかった。
子供に捕まったら終わりだ。
父さんと母さんの出会いも、
ウカノと僕の出会いも、
白い、弱った状態のへびが悪ガキにいじめられていた。
死にたくない!死にたくない!
『大丈夫。怪我もすぐ治してあげる。あなたを助けなかったりでもしたら私のご飯は三度抜きよ?あなたでしょう?ウカノ様と黒へび退治をしたのは』
可愛らしいお姉さん。でも、今の僕と話せるってことは、母さんと同じ『見鬼』なのかな?
『退治じゃないよ。天に送ったんだ』
『やっぱりあなたね。小学校の兎小屋を治して結界を張ったでしょう。どうして?』
『嫌だったんだ。自分より弱いものをいじめるなんて最低だ。しかも、何も理由がないのに。狭い小屋で飼われて。人の都合だよ。食べるなら、礼を尽くすべきだよ。食べるときの《いただきます》は、《あなたの生命をいただきます》だよ。なのに、なんで兎が虐げられなければいけないのか?と僕は思ってしまうよ』
『あなたこそ、因幡家の婿にふさわしい』
『因幡、君はウサギなの?婿って、僕のことなの!?』
『心根の優しい方。私は因幡の姫、白さまの侍女です。あのウカノ様との一件を見て「あの殿方しか嫁がない」と。ほほほ。参りましょう』
コウの白い体が、色が透き通るほど白い可愛らしい女性の腕に抱かれ暗闇に吸い込まれていった。
『僕は、僕はっ!ウカノとしか結婚しない!!』
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