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君ハ巳ノ運命のヒト~ウカノ編~《第2部・完》
ウカノの瞳⑤
しおりを挟む「コウ……?」
「ウカノ、君が好きだよ。いつも自信がなくて。哀しくて。でも、そんな君は、可愛い。君は誰よりも綺麗だよ。今の君を見たら誰も手を上げたりしない」
僕はウカノの瞳に吸い込まれるように見つめる。ウカノも恥じらいながら僕を見つめた。
見つめる
見つめる
見つめ合う。
僕はその場に倒れ込んだ。
一気に体力を失い、痩せて気力も減退している。僕の倒れる音に屋敷に仕える猫又の太郎が、飛んできた。
「コウぼっちゃま!お父様のところへ運びます。すぐ力を分けてもらいましょう」
意識が朦朧とした僕にウカノは泣きながら縋った。
「コウ!コウ!こんなことになるなんて……ごめんなさい。私のせいだわ。私は、私は……好きなヒトと見つめ合うことも、許されないの……うぅ…」
ずっとウカノは僕の傍を離れず、僕の胸に突っ伏して泣いていたわ──後から母さんから聞いた。
コウは父のミズチの力を分けてもらい、ようやく目を覚ました。
「母さんウカノは?」
「お父様のところへ」
───────────
「龍神ミズチ様。この度は私のせいで申し訳ございません」
「今回のことでウカノ殿は何か解ったことはあるかな?」
「私は蛇神として未熟で、コウさまを見つめ合うことも出来ない……。私はコウさまを……お慕いしておりますのに……」
父さんは笑った。はっはっはと言うように。
「ウカノ殿は、蛇神としての才能は開化している。何よりもコウが倒れたのがその証拠。異性を魅了する仙術『蠱惑術』が相手の視線を合わせただけで可能とは。蛇神として、最高の仙術です。コウは私の血が入っている。だから仙術──神の力は効かない。だからウカノ殿の蠱惑術と同等の力の負荷を負った。実はウカノ殿のその瞳が後継者として強すぎると、以前ウカノ殿の父君と話したことがあったのですよ。
『ウカノ殿の姉兄はその才能を愛さなかった。妬み、嫉み、一番幼いウカノを地上に落としたと聞いた。罰として、関わったもの全ての姉兄の神の称号と蛇神の力を剥奪し、そして実行に関わったものを含め下界に落とした。助けられなかった愚かな父を許して欲しい〖真の巳〗に、なるかならないかはあの子次第だ』
と言っていました。ちなみに真の巳は、自分の術を制御できる」
「コウをみつめる事が出来ますか………?」
「出来ます。何も起きませんよ。普通通り」
父さんは笑う。隣の部屋にいるからか会話は全部聞こえていた。
感覚が鋭敏になっている。
「どうすれば、真の巳になれますか?」
「訓練を」
父さんは言った。
「蛇瞳の押さえる訓練。相手への真のアイなら蛇瞳の『蠱惑術』は出てきません。だから、コウも傷つきません」
「何をすれば………?」
「我が家との共同生活です。窮屈ですが」
そう言い、父さんは微笑む。
「美雨さんは、ヒトならない能力をお持ちですがヒトです。でも、ヒトなら……未熟な私の被害に合われたら……」
父さんは照れ臭そうに、
「コウをもうける際に、私の一部も美雨の身体に残したゆえ。彼女は『天女』のようなものです」
隣の母が、顔を真っ赤にして、そして驚いていた。
「私、天女なの?ミズチ!?」
「ごめん、美雨。美雨は天女なんだ」
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