上 下
30 / 30
君ハ龍ノ運命のヒト~ミズチ編~〖第1部・完〗

ミズチとコウと美雨〖完結。しません!〗

しおりを挟む

 輝く虹色の雨が、晴れた空から降り注ぐ。まるで夢のような光景に息を飲む。私は幼くなってしまったように泣きじゃくるコウをやさしく抱きしめ、訊いた。

「コウは今どんな気持ちなの?お母さんに教えて」

「幸せなんだよぅ。格好いい、秘密だけど龍のお父さんがいて、僕にもお父さんがいる!って嬉しくて。それにお母さんもすごく嬉しそう。だから、幸せなんだよう」

 小さいながら、この子も待ってた。ミズチの不在は、私が抱えきれないものではなかった。

「ごめんね、ごめんね、コウ」

 コウを抱きしめると私まで泣けてきた。

***
 
 雨は虹色のカーテンのように綺麗だが本降りだ。テレビをつけたら家の百メートル四方しか降っていない。ミズチをチラリと見ると、『違う』と言うように首を振る。私は泣き止まないコウに落ち着いて話しかける。


「コウ、ちゅるちゅるのあと、デザートのマグカッププリンを食べてもっと幸せになろう?手伝って。難しくないから、覚えて、誰か好きな人ができたらに作ってあげればいいと思うよ」


 ふるふるとコウが泣きやむと、外も陽射しが差して部屋が明るくなった。ちゅるちゅるを手早く。いつもより気張って、ニラともやしと挽き肉あんかけ拉麺の豪華版。マグカッププリンは手早くいつも通りにミズチにはあのマグカップでつくる。


そして、猫舌のミズチのために少し冷ました。部屋でごろごろ初めてのこたつが余程気にいったのか、ミズチは白ヘビ姿に変化になって寝ていた。



「お母さん!白ヘビがいる。もしかしてお父さん白ヘビになっちゃったの?」

「そうなの。お父さんは疲れちゃうか、思いっきりリラックスすると白ヘビになっちゃうの。精神年齢も若くなるわね。ミズチ、プリン出きたよ。疲れちゃったの?」


 私が穏やかな声で名前を呼ぶとミズチは、

「食べさせてくれる?美雨。オレ、ちょっと疲れたの。こたつ暖か~い。気持ちいいねぇ」


「甘えんぼは、十二年前から変わってないね」


 するすると、白ヘビのミズチは私に口づけた。


「美雨、オレのことアイしてる?」

「愛してるよ。だからコウにも二人でたくさん愛をあげよう?やさしくて良い子。正義感が強いから、心配だったけど、色んな神さまがこの子に武勇や知恵を授けてくれる」


「コウに『龍』の力の使い方、明日から特訓。降りかかる火の粉は返り討ち」


 コウは笑った。白い煙とともに現れたのは、美丈夫の威厳すら感じるミズチの姿。


「プリン食べごろだね。コウも猫舌だろう?コウのことは天からでき得る限りみていた。一緒にいれなくてごめんな、コウ」


 三人で、食べようか。あ、美雨。コウ。お正月に誰かに何か言う、合言葉はなかった?コウは笑う。美雨も笑う。



『明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします』


三人で頭を下げての初プリン。幸せだった。





────────《続》
     
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

黒龍の神嫁は溺愛から逃げられない

めがねあざらし
BL
「神嫁は……お前です」 村の神嫁選びで神託が告げたのは、美しい娘ではなく青年・長(なが)だった。 戸惑いながらも黒龍の神・橡(つるばみ)に嫁ぐことになった長は、神域で不思議な日々を過ごしていく。 穏やかな橡との生活に次第に心を許し始める長だったが、ある日を境に彼の姿が消えてしまう――。 夢の中で響く声と、失われた記憶が導く、神と人の恋の物語。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

氷の蝶は死神の花の夢をみる

河津田 眞紀
青春
刈磨汰一(かるまたいち)は、生まれながらの不運体質だ。 幼い頃から数々の不運に見舞われ、二週間前にも交通事故に遭ったばかり。 久しぶりに高校へ登校するも、野球ボールが顔面に直撃し昏倒。生死の境を彷徨う。 そんな彼の前に「神」を名乗る怪しいチャラ男が現れ、命を助ける条件としてこんな依頼を突きつけてきた。 「その"厄"を引き寄せる体質を使って、神さまのたまごである"彩岐蝶梨"を護ってくれないか?」 彩岐蝶梨(さいきちより)。 それは、汰一が密かに想いを寄せる少女の名だった。 不運で目立たない汰一と、クール美少女で人気者な蝶梨。 まるで接点のない二人だったが、保健室でのやり取りを機に関係を持ち始める。 一緒に花壇の手入れをしたり、漫画を読んだり、勉強をしたり…… 放課後の逢瀬を重ねる度に見えてくる、蝶梨の隙だらけな素顔。 その可愛さに悶えながら、汰一は想いをさらに強めるが……彼はまだ知らない。 完璧美少女な蝶梨に、本人も無自覚な"危険すぎる願望"があることを…… 蝶梨に迫る、この世ならざる敵との戦い。 そして、次第に暴走し始める彼女の変態性。 その可愛すぎる変態フェイスを独占するため、汰一は神の力を駆使し、今日も闇を狩る。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

あずさ弓

黒飛翼
青春
有名剣道家の息子として生まれる来人。当然のように剣道を始めさせられるも、才能がなく、親と比較され続けてきた。その辛さから非行を繰り返してきた彼は、いつしか更生したいと思うようになり、中学卒業を機に地元を出て叔母の経営する旅館に下宿することに決める。 下宿先では今までの行いを隠し、平凡な生活を送ろうと決意する来人。 しかし、そこで出会ったのは先天性白皮症(アルビノ)を患う梓だった。彼女もまた、かつての来人と同じように常人と比較されることに嫌気がさしているようで、周囲に棘を振りまくような態度をとっていた。来人はそんな彼女にシンパシーを感じて近づこうとするのだが、彼女はさらに重いものを抱えていたようで…… 来人の生き様と梓の秘密が絡み合ったとき。そこに生まれる奇跡の出来事は必見―。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...