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君ハ龍ノ運命のヒト~ミズチ編~〖第1部・完〗
ミズチとコウと美雨〖完結。しません!〗
しおりを挟む輝く虹色の雨が、晴れた空から降り注ぐ。まるで夢のような光景に息を飲む。私は幼くなってしまったように泣きじゃくるコウをやさしく抱きしめ、訊いた。
「コウは今どんな気持ちなの?お母さんに教えて」
「幸せなんだよぅ。格好いい、秘密だけど龍のお父さんがいて、僕にもお父さんがいる!って嬉しくて。それにお母さんもすごく嬉しそう。だから、幸せなんだよう」
小さいながら、この子も待ってた。ミズチの不在は、私が抱えきれないものではなかった。
「ごめんね、ごめんね、コウ」
コウを抱きしめると私まで泣けてきた。
***
雨は虹色のカーテンのように綺麗だが本降りだ。テレビをつけたら家の百メートル四方しか降っていない。ミズチをチラリと見ると、『違う』と言うように首を振る。私は泣き止まないコウに落ち着いて話しかける。
「コウ、ちゅるちゅるのあと、デザートのマグカッププリンを食べてもっと幸せになろう?手伝って。難しくないから、覚えて、誰か好きな人ができたらに作ってあげればいいと思うよ」
ふるふるとコウが泣きやむと、外も陽射しが差して部屋が明るくなった。ちゅるちゅるを手早く。いつもより気張って、ニラともやしと挽き肉あんかけ拉麺の豪華版。マグカッププリンは手早くいつも通りにミズチにはあのマグカップでつくる。
そして、猫舌のミズチのために少し冷ました。部屋でごろごろ初めてのこたつが余程気にいったのか、ミズチは白ヘビ姿に変化になって寝ていた。
「お母さん!白ヘビがいる。もしかしてお父さん白ヘビになっちゃったの?」
「そうなの。お父さんは疲れちゃうか、思いっきりリラックスすると白ヘビになっちゃうの。精神年齢も若くなるわね。ミズチ、プリン出きたよ。疲れちゃったの?」
私が穏やかな声で名前を呼ぶとミズチは、
「食べさせてくれる?美雨。オレ、ちょっと疲れたの。こたつ暖か~い。気持ちいいねぇ」
「甘えんぼは、十二年前から変わってないね」
するすると、白ヘビのミズチは私に口づけた。
「美雨、オレのことアイしてる?」
「愛してるよ。だからコウにも二人でたくさん愛をあげよう?やさしくて良い子。正義感が強いから、心配だったけど、色んな神さまがこの子に武勇や知恵を授けてくれる」
「コウに『龍』の力の使い方、明日から特訓。降りかかる火の粉は返り討ち」
コウは笑った。白い煙とともに現れたのは、美丈夫の威厳すら感じるミズチの姿。
「プリン食べごろだね。コウも猫舌だろう?コウのことは天からでき得る限りみていた。一緒にいれなくてごめんな、コウ」
三人で、食べようか。あ、美雨。コウ。お正月に誰かに何か言う、合言葉はなかった?コウは笑う。美雨も笑う。
『明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします』
三人で頭を下げての初プリン。幸せだった。
────────《続》
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