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君ハ龍ノ運命のヒト~ミズチ編~〖第1部・完〗

ミズチの『コドモ』⑮

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 私は婆様のツテで、私は同職のグループの財団の病院に入院した。

 私がミズチを思い出して泣くと、ミズチはどうにかして私を泣き止ませようとするように金色の雨を降らしたり、虹色のプリズムを雲に反射させたり、銀色の霧雨を降らせたりする。やさしい所は変わらない。

 予定日通り生まれたのは男の子。可愛い。目元がミズチに似ていた。似ていると思うのは、やはり寂しいからだろうか。

 今ミズチにいて欲しい。この子を抱いて欲しい。

 一緒に思い出を作っていきたいのに。半泣きになって、生まれたばかりのホヤホヤの赤ちゃんを抱きながら天を見上げてミズチに言う。

『ミズチって調べたら水神さまゆかりの名前だったのね。試練を経て天に帰って一人前の龍になったのね。この子はコウ。コウリュウ。龍の名前よ。ミズチの字があなたと一緒なの。やさしい純粋な、あなたみたいな子に育って欲しいな。私はこの子とあなたを待つわ。待っているから』


時は流れて
十二年後─明けの元旦辰の刻


「コウ、お父さんは来るよ。会えるよ。お母さんと約束したもの」

「うん……」

 私はコウを後ろから抱きしめ手を握る。コウは不安げで緊張しているのか、指先が冷たい。引っ込み思案な口下手な、臆病な子に見えるコウ。

 けれど、弱いものいじめには立ち向かう、正義感がある。だから生傷が耐えない。

 傷だらけになりながらも、初めての出会いの時、自分の身体も痛むはずなのに、私を気遣ったミズチを思い出してしまう。
  
***

 コウが本当に怒りの感情を露にすると雨が降る。コウは濡れない。対象の相手だけに肌を刺す針のような雨が叩きつけるように降る。

 相手は逃げてしまい、いつも生傷だらけのコウが、トボトボ帰ってくる。

「ウサギさんが飼育小屋でいじめられてたんだ。助けてって、泣いてた。僕、ボロボロだけど、喧嘩には負けたけど、恥ずかしいことしてない。お母さんに言えるよ」

 この子は私の見鬼の力と、ミズチの力を受け継いでいる。だから動物や、神様と話せたりする。この前、偶々いらしていた雷神様に、

『龍のミズチの坊やか。後から良いこと教えてやるぞ』

 そう、何故かコウは雷神様に気に入ってもらい、術を伝授された。それ以来、ウサギさんはというと、

『安心して過ごせてる。雷の結界を張ってもらったから安心してお家に居れる』

 コウは雷の結界を張った。悪意があるものだけ反応するように。

 コウは、あなたそっくりよ。優しくて、誠実なの。でもね、やっぱり私はあなたが恋しくなるときがあるの。お願い。帰ってきて。ミズチ。
    
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