君ハ龍ノ運命のヒト～ミズチ編・ウカノ編～【完結】

君ハ龍ノ運命のヒト～ミズチ編～〖第１部・完〗

ミズチのギモン⑤

暫くしてミズチは不思議そうに言う。

『なんで、ニンゲンオレ敬う？でも意地悪する？』

『受け継がれた伝統と信仰だよ。子供は今のミズチの姿を、ただの珍しいヘビとしか思わないし、大友コロッケのおばさんは、白蛇はありがたいもの『福』の象徴だって思ってる。神様の化身だって。だから大事に扱うよ』



　
　私がそう言うと『そうなのか』とやっと腑に落ちた声をして、ミズチは上機嫌になって、
コロッケの衣がついた私の親指を催促するようにペロっと舐めた。くすぐったい。


私は近道で、人通りの少ないところを歩きながら、ミズチにコロッケをちぎって食べさせた。





『カリカリとして、しかもフワアツで、美味しい！美雨も作れるの？』

『私は料理は下手くそ。あ、でもグラタンとかは自慢かも。あと、和風パスタ、ラーメンも得意だよ』

私は続ける。


『一番はプリンかな。レンジで作るマグカッププリン。ラーメンも得意だけど。麺からうつわけじゃないからね』



『全部知らない。食べてみたい。あと美雨の家に着いたら身体を洗わせて。泥にまみれて、どろどろだ……ごめん。オレ汚い。美雨の綺麗なマフラー、汚れてしまった。美雨、このマフラー気に入ってたんだな。だから《気》がたまって暖かかったんだな。美雨のマフラー、汚してしまった。美雨は、何で怒らない？』


ミズチは身を縮めて、叱られる子供のようにしょんぼりとして、少しだけ上目遣いでちらっと私を見つめる。

神様なのに。かわいい。