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〖第14話〗
しおりを挟む屋敷の幾つかの部屋を案内された。趣味が良い絨毯がダイニングにあった。覚さんの家は何処もお洒落だ。キッチンも広くて、食器も、調理器具も一級品だった。調味料も多い。
最後に一階の角部屋を開けるように言われ開けると、広い明るい部屋だった。
最新型のエアコンもある。レースのカーテンとミントグリーンの夏用のカーテンが夏風に膨らんで風の形を現していた。フローリングの床。木目が綺麗だ。
「君の部屋はここを用意した。気に入ってくれたら嬉しい。陽当たりが丁度良くて、風も通る。昼も風道だから涼しいよ。夜は寒いくらいだ。ベッドカバーも、枕カバーも、毛布もクリーニング済みだから綺麗だよ。どうかな?」
この部屋には爽やかな高原の風が吹いていた。そして清潔を絵で描いたような部屋。
「ありがとう、ございます」
あまり他人行儀にならなくて良い。そう言い覚さんは、
「気分が塞ぎがちなときは、美味しいものを飲んだり食べたりすると気分がよくなるから。私のおやつをあげよう」
何だろうと少し膨らんだポケットから出てきたのは思ったら、外国のクマの形をしたグミの小袋だった。
「子供だましみたいだが、中々美味しい。後で食べてみて」
ひとしきり笑った後、涙がこぼれた。止めようとしても溢れて、俺は覚さんにしがみついて泣いた。こんなに他人の前で泣いたのは初めてだった。
「……君には泣く場所すら、無かったんだね」
切なそうに、そう覚さんは呟くと、
「たくさん泣きなさい。泣ききるまで、気が済むまで泣いていい。苦しかったね。つらかったね」
そう言うと覚さんは俺の髪を撫でた。俺は覚さんの胸の中で泣き続けた。
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