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〖第13話〗
しおりを挟む「少し落ち着こうか。後からお茶のおかわりを淹れよう。君と話すと愉しい。お湯はあるから。美味しい?」
俺は頷いた。二人で熱い紅茶を啜る。丁度いい空調、鼻に抜けるいい匂い。
「ゆっくりしていきなさい。君さえよければ」
覚さんは俺を見つめる。眼鏡が似合う、グレーの髪が眼鏡に少し落ちる、色男だ。
「俺、覚さんのこと何も知らないです。それと俺がいて仕事の邪魔になりませんか?」
覚さんは目の前で手をパタパタと振って笑う。
「ならないよ。安心していい。……私は、君のことを知っているよ。君が生まれた日、生まれたての赤ん坊の君も抱いた。もう少し飲もうか」
覚さんに勧められた、二杯目の紅茶を飲む。ホッと力が抜けた。温かな、さっきより濃く感じた紅茶をご馳走になり、ガラスの器に盛りつけられた、庭で取れたフランボワーズを冷凍させたものを二人で食べた。
「甘酸っぱいです。美味しい」
「甘酸っぱいか。初恋の味はどんな味だった?」
「初恋は………ぬるい麦茶の味でした」
そうか、と一言、あまり良い終わり方ではなかったと、覚さんは察したのか、初恋の話は切り上げられた。
それから覚さんは困ったように微笑むと、好きな食べ物の話や、音楽の話をした。流行もクラシカルなものも熟知している知識人だった。
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