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〖第4話〗
しおりを挟む大学も卒業し、あの家ともほとんど縁が切れた。悠々と大学時代と変わらず歓楽街の男にも女性にもモテるバーテンダーを演じてきた。
けれど今年、少し前に父から珍しく電話がかかってきた。内容は『見合いをして欲しい』とのことだった。『今年も盆になっても帰ってこないんだろう? 断って構わない。あくまで体面だ。頼む』と言われたので仕方なく折れた。臭いものには蓋をする。ゲイの俺はあの家では臭いもので、早瀬家の恥になる。けれど、端から見たら、俺はあの家の長男で結婚適齢期の男だ。
「お盆に、実家から縁談がきてさ。まあ、一緒に飯食ってくるだけでいいって言うし。勿論、断ってくるよ。だから、いつも一日休みのところ三日貰えないかな。店長、お願い」
このバーの店長、兼恋人の貴明に休みをもらいたいと、話をした。
「あー、あのさ、話しにくい話、なんだけどさ」
貴明は、女の子と俺に二股をかけていたことを後頭部を掻きながら笑って話し始めた。
「セックスはお前がいいけど、一緒にいて落ち着いて安らぐのは優香ちゃんなんだよな。それに優香ちゃんに、俺がバイで、しかも職場に浮気してるお前のことばれちゃってさあ」
貴明はこっちを見ながら、困ったようにヘラヘラして俺の言葉を待っている。俺が浮気相手って言うことは、俺はいらない。本当に好きな相手ではないということだ。
「それで? この店、辞めろって? 貴明と別れて、その女が此処で俺の仕事するのかよ。結局あんたも俺を必要としないんだな。結局、俺を選ばない。ずっと一緒に居ようなって約束したのに!」
もうあんな風に誰かを見送るのは嫌だ。ずっと、一緒に年を重ねて、あのひとと蝶々を追いかけていたかった。
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