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〖第12話〗
しおりを挟む「海。いつか私は最愛の君を置いていくだろう。しかも君を傷つけても、何も思わない様に装って。私は罰を受け、国連に連れていかれると思う。君に頼みたいことがある。この世界の幕引きだ。誰かがやらないといけない。醜い獣に堕ちてまで人類を生き長らえさせたくはないのだよ。君のおかげだ。君には人類の滅びゆく様を見届けて欲しい。君が人類を終わらせてくれ。すまない、海。酷いことを言っているのは解っているんだ」
だから今独り、あなたのデスクに座り、これを書いています。Drシグマ、志熊幸一。
「あなたがいたから生きてこれたんです」
私はホログラムに向かって語りかけた。ホログラムのあなたは不思議そうな顔をして、私を見つめた。触れられない存在だったあなたは、今も昔も一緒だ。
私はホログラムに「最期の音声を」とだけ言った。あなたは、悲しそうな顔をし、音声を再生する。
『──いつか身体がその機能を終えたらあの世で会おう。『あの世』があるならの話だ。まあ信じてみるのも一興だ。死ぬことが楽しみになる。海……君を愛していたよ。君は生きてくれ。生きて生きて、生き抜いて、人類を見届けて──』
そこで音声は途切れる。銃声と共に。私は毎朝この音声を聴く。骨董品のようなMP3プレイヤーの音声に、私はもう、涙は出ない。今は、あのひとが最期に私の名前を呼んで『愛している』という言葉を選んでくれたことに、悲しいけれど、感謝をしている。そして、
『─生き抜いて、人類を見届けて──』
あなたの叫ぶような意思のある声がなければ、此処まで、孤独に耐えながら生きられなかった。けれど、私からは伝えられなかった。残ったのは、未消化なあなたへ想いだった。
「あなたを愛していました……生き抜きました、私で最後の人類です。見届けました。幕は私が下ろしました。でも、私は死ねない。自死ではあなたに会えない。毎朝、目が覚める度に生きていることに絶望します。これは罰ですか?シグマ……」
私は朝、目を覚ます。あなたが好きだったピアノという楽器の音楽がプログラミングされ鳴り響く中、私が造ったAIロボットが食事を持ってくる。ゆっくり、まだ眠そうにする3Dホログラム画像のあなたを見ながら私は朝食を済ませる。
私はふと疑問に思った。私の身体は、塩基配列をかえてある。私はこの地球で生きていけるように特化した人間?だから死ねない?植物の毒耐性も、ウイルス耐性もある。涙が溢れた。
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