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ショウとの出会い・セイラ目線〖番外編〗
しおりを挟む何で僕は満月じゃなくても陸に上がれるの?髪も、黒くて、瞳も黒いの?
そう幼い頃おかあさんに詰めよった。おかあさんは悲しそうな顔をしたので一回しか訊かなかった。
でも、しばらくしておかあさんが、語り始めた。
『セイラのおとうさんはニンゲンだったの。でも、そのひとがおかあさんの運命のヒトだったの。いつかセイラにも解る日が来るわ。』
『解らないよ。そんなの』
『そのひとが、恋しくてたまらなくなるの。おかあさんは一度海を捨てた。あなたを生むために。人魚とニンゲンの時間は違うから、あのひとが生きているうちにもう一度会いたい。セイラが良かったら、おとうさんに会って欲しいな。素敵なヒトよ』
ヒトか。
皆言う。人魚の敵だと。
人魚は美しい歌声で、ヒトを惑わし
船を沈め
ヒトを喰う
そんなことが信じられている。
恐ろしく野蛮な生き物。
『おとうさんは、違うわ。石を投げる子供からおかあさんを助けてくれて「ミカン」という果物を半分にしてくれて、むいて食べさせてくれた。地上は悪いことも……あったけど、あのひとと過ごした日々は全て……美しかった。幸せだった。長く親しんだ海にいるより、大地が呼ぶの。あのひとが悲しくて、寂しくて、おかあさんを呼んでるんじゃないかって。おかあさんも泣いてしまう。あのひとはやさしいヒト。いつか、セイラがいいって言う日、おとうさんに会いに行こう?』
おかあさんは続ける。
『人魚はね、愛するヒトを失って、それでも相手を乞うと真珠が零れるの。大きな悲しみと相まって、綺麗で悲しい色の真珠がね。一度だけ、ね』
僕はそっと陸に上がり、遠くからおとうさんを見た。畑の夏野菜に水をやっていた。
一瞬だけ目があった。
瞬間、おとうさんは泣いた。
『行かないでくれ、ここに居てくれ。いつまでも待ってる。待ってるから』
どうやらおかあさんと僕を間違っているみたいだ。
そして、おとうさんは畑の土を掴み号泣していた。
僕は軽い気持ちで、おとうさんの気持ちを抉った。
ごめんなさい。海に戻ると、陸の匂いがしたのか『ショウ、ショウ』と言い泣いていた。僕は決めた。陸に行く。
陸があわなかったら僕だけでも、帰ってくればいい。
『おかあさん、陸に行こう。おとうさんに、会ってこよう』
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