セイレーン─海を捨てるくらいの恋─(番外編追加しました)

カシューナッツ

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人魚との夜に《7》R-15?

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「子供って、アイラは女の子なのか?」

 そう俺が訊くとアイラはいつものあの哀しい笑いを浮かべ言った。

「ごめんね。男なんだ。人魚では男でも満月の夜だけ女性的な機能を持つものは、稀じゃないんだけれど。外見は変わらない」

 俺はアイラのことをギュッと抱きしめて、

「何で、謝るの?俺はアイラだから良い。俺の作るへたくそな梅干しおにぎり嬉しそうに食べてくれて、照れ屋で、涙もろいアイラが好きだよ。外見も、もちろんアイラは綺麗だけど、俺はさ、アイラがアイラだから好きだよ。いつか、俺、アイラとの子供、欲しい。高校出たら、『酔月』の名前継げるように、じいちゃんに頭下げて窯で陶芸のこと、本気で教わって、食ってく分に足りる野菜作って、蜜柑もつくって。自給自足出来る野菜は作って………」
 
 しなやかなアイラの黒髪を撫でるとアイラは本当につらそうな顔をした。

「それは夢だよ。だから幸せな気持ちになる。現実は痛い。僕と子供は……君のそばにはいられないよ。子供は人魚のカタチをしているだろうから。僕もこどもを生んで育てるために満月になったら海に帰らなければならない。三人で一緒にいられない」

「俺とアイラの子供に海を捨てさせるわけにはいかないのか?地上で、三人で。じいちゃんと四人で暮らさないか?きっと楽しいよ」
 
 アイラは泣きそうな顔をしながら首を振る。

「子供が可哀相だよ。棲みやすい世界に生まれた子供が親の都合で氷の世界にいくようなことを強いるようなことだよ。ごめんね。僕と君は結ばれない糸なんだ。今を僕は永遠とは言えない。君のこと、好きだよ。愛が何なのかはわからないけど、今僕が君を思う、君が幸せであるように願う気持ちが愛なら、僕は君を愛してる」

 アイラは続ける。

『一生懸命、ほどけないように結んだ愛しさの糸。けれど何かがそれを阻む。人はそれを『運命』って言ったりするのかもね』

 そう言い、アイラは泣いた。音もなく泣くアイラがつらかった。

「アイラ、こっち向いて」

「ん?」
 
 俺は優しく、深くアイラに口づけた。いつもより優しく長く口づけるとアイラは可愛らしい仔猫のような声をだした。

「アイラ、愛してる。ここに居て。それ以上は望まない。今以上はないから」

 アイラを抱きたい、そう思う気持ちはアイラの気持ちは同じだった。やさしく押し倒して下肢の中のアイラの身体を口で可愛がると、快感と、もどかしさの間で身をよじった。涙目になりながら、徐々にアイラは快楽に享受し、艶めいた。

 アイラへの愛撫の時間を増す毎に、アイラの吐く白は蜂蜜のように甘くなった。俺は、アイラに嫌われたくなくて、滅茶苦茶に抱きたい欲を理性で押さえた。
 
 アイラじゃなかったら無理矢理にでも欲望なまま犯してる。そして、思ったことがある。
 
 人魚は、魔性だ。美しすぎる。夜明けの白んだ空にアイラの裸体が照らされる。あまりに綺麗で見惚れた。
 
────────
 
 情事の後の乱れた布団の上で気怠く窓の外の海を何処か寂しげに見つめる姿でさえも。まるで西洋の彫刻だ。
 
 ただ、存在だけが美しい。『綺麗だ』そう呟いてしまうほど。

「アイラ」

「ん?何、ショウ」

 息は多少あがっているが、いつものアイラにホッとする。あの、なまめかしい瞳で見つめられたら『やはり人魚は魔性だ』とか、ポツリと言ってしまうかもしれない。

「一緒に、朝風呂でも入るか。お風呂から上がったら、梅干しおにぎり作るから」

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