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人魚の口づけ《6─2》
しおりを挟む抱きしめて、触れて愛して囁いて、快楽に落として、喘がして、泣きながら『やめて』というまで攻め立てて、二人でぐちゃぐちゃになるまで溶け合うくらい欲の坩堝に熱されて、消えてしまいたいのに。
「アイラは、何でおこんねぇの?引き留めて欲しかったよ、俺は。じゃなきゃ………」
「その香水の人のところには行かなかった?本当はね、はしたないけど僕は君と口づけをしたかったよ。でも、君には好きな人がいたんじゃないか。僕はその人の練習台は嫌だ!」
アイラは潤んだ瞳で俺を睨む。アイラは俺のことを勘違いしている。アイラの辞書は関係を持ったらもう、それは恋人。
身体の関係や、もちろんキスをすることも絶対的な恋人条件だ。躊躇う理由もそこにあるのかもしれない。
「ショウの好きな人なんでしょ?香水の人。僕は口を挟めない………なんて、格好つけようと思っても無理。未練がましく徹夜して、泣いて。嫌いになっちゃったよね。キスもまともに出来なくて。僕、はじめてで、怖くて……。でも、君は嘘つきだね。本当に好きな人が、やっぱりいたんじゃないか。その好きな人のところへ行けば良い。だから今度こそ、手を離すよ。ごめんね……でも、君が好きだったよ。臆病でごめん。君を嫌いなわけじゃないんだ。許して。お願い。今日は満月だ。海に帰る。君も、もう僕を必要としなくなった。僕に地上にいる意味はない」
俺はアイラの腕を引き、そっと触れるだけの口づけをした。座り込み、驚いた顔が泣き顔に変わり、ひっくひっくと懐に収まったアイラの泣き声が部屋に響く。
「だって、だって、ショウは………」
「アイラを見てから、時間が流れた。でも、忘れたことはなかったよ。高校に入って、誘われて女の人を抱いた。軽い気持ちだった。アイラの考える『愛情を確かめあう行為』じゃなかった。俺にとって誰かを抱くことは『快楽を得るための運動』くらいしかなかった。でも、初めての経験から、全部アイラと重ねてしまうんだよ。相手の声も眼差しも、誰を抱いてもアイラなんだ。そして俺はそれを望んで誰かを抱く」
「そう………だったんだ」
「アイラ、目を瞑って。力を抜いて」
アイラは深く呼吸をした。そっとまた、触れるだけの口づけをした。
「まだ、怖い?」
アイラは首を振った。
「ショウ、好き………大好き、あいしてる」
甘い口づけを交わした。本当に甘い。涙の跡に口唇を寄せると、とても甘かった。
何度も何度も飽きることもなく口づける。
「抱きしめて、いい?」
「いいよ」
アイラは柑橘のような清々しい香りがした。
「抱いて、いい?」
「今日はダメ。君は女の子を抱いたから、僕らからペナルティー」
意地悪で、綺麗な笑みを浮かべるその口唇。甘く深い、吐息が喘ぎに変わりそうなキスをする。何度も何度も、好きだと言いながらシャツのボタンに手を掛ける。
「ダメだよ、今日はダメ。お願い。できちゃったら………大変だから。我慢して」
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