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人魚に会いたくて《3─2》
しおりを挟むあの日から時間をとめたいのに、季節は流れ、時間は刻まれていく。気づけば高校生になっていた。変わったことといえば、君を思うと、邪な気持ちを抱くようになったことくらい。
簡単に言えば『性欲』が出るようになったこと。
君じゃない人を、君を想って抱く。簡単に言えば君の『代わり』虚しいけど、こんなやり方しか自分の心を満たせない。
誰でも良かった。君以外はどうでもいい。俺の中のカテゴライズは、俺にとって
『君』か
『君以外』か。
君は『ただ一人の好きな人』
その他の人は『君以外のただの人』
君の面影を、表情を思い出す。その度に泣きたくなる。どうしようもなくなる。君と過ごした日々は鮮やかすぎて、美しい童話のような世界だった。だから、君の面影を思い出して、悲しくて悲しくて、君ではない『誰か』を抱く。
どうでもいい女友達に君の金色の髪を見る。碧色の哀しい瞳を見る。切ない透明な声を聴く。
俺が跡をつけられるようなヘマをしたからアイラは酷く痛め付けられ、殺されそうになった。なのに、君は俺を恨まなかった。
なじったり、口汚く罵ったりしなかった。それが逆に俺の心を縛る。
『恨んで、憎んでいい。忘れないで。俺を忘れないで。だから姿を見せて。蜜柑も持ってきたんだ』
そう言いたいのに、あの洞窟の前にいくと届きそうな気がするのに、声がでなくなる。俺は泣きながら、ただ、君の名前を呼ぶ。
毎日が一週間に一度、
一週間に一度が満月の日になってしまった蜜柑の日課。
解ってる。諦めてる。君はもうここにいない。自己満足だ。それに君がここにいたら、今の俺をみたらきっとがっかりする。
昔の面影なんかない。君を俺の欲に満ちた願望で君を重ねて女の人を抱いて、汚して。君を想ってマスターベーションもする。
君には見られたくない。こんなうらぶれて、あの頃の純粋さを失った俺を。でも、会いたいんだよ。一目でも。七色に光る鱗のかけらでも。本当に好きだったよ。好きなんだよ。忘れるなんて無理だ。
「ショウ、帰り家寄ってかない?」
「もう、お前抱く気ない。飽きた」
サイテー、そう言い女子生徒は俺の机を蹴った。今日は何だかクラスが騒がしい。ホームルームで、知らない男子が壇上に居た。気づかなかった。担任がひとつ咳払いをした。
「今日は転校生を紹介する。海野、挨拶を」
黒髪で、黒い目だったが、紛れもなくこの声はアイラだった。黒板にアイラらしき男子学生はすらすらと自分の名前を書いていく。
『海野藍良です。宜しくお願いします』
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