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〖第8話〗
しおりを挟む私は涙が止まらなくなっていました。そっとシロウの部屋の窓から部屋に入り泣きながら謝りたかったですが、もう、時は経ちすぎました。私はシロウが会いたかった、あの輝きを持つ私ではない。
もう、こんなおばあさん。
きっと、シロウはがっかりします。私は箱庭のマーガレットの花を摘み、大事にしていたビーズで飾られたまち針のレイピアで刺し、
『私の気持ちです。さようなら。ずっとあなたを──。 マーガレット』
ずっとあなたを──愛してた。そう記し手紙を残すつもりだった。でも記せなかった。ペンを走らせる私は自分の皺々の手を見て自嘲します。こんな私をシロウはどう思う?
思い出は綺麗なままでいい。私はどうせ女王と言っても、所詮私は小さな蜜蜂です。シロウと身分も何もかも釣り合う相手ではなかったのです。
この世で、結ばれる運命ではなかった。
せめてもの願いの親友として共にいることも敵わなかった。レイピアとマーガレットの花を抱え、下を向いて自嘲しました。
暗闇の中なら、いくら泣いても解らない。自分自身のシロウの想いに気づいてから弱くなった私は泣いてばかり。誰にも気づかれなければいい。
私の思い込みのせいで、貴方を孤独にしました。『許して』と繰り返した貴方、『謝るから』と言った貴方の身体は、傷ついてボロボロだったのに。
『ごめ……ん………なさい………』
私は涙でみっともなく顔を濡らし、声を殺して、シロウの部屋を逃げるようにあとにしました。親衛隊長のローズは私に気づいたらしく、私を追いかけてきました。今日の一連のことを話すと、
『悋気ですか。女王陛下』
『り、悋気!?』
『陛下は仲良さげに話す私とシロウを見て焼きもちを焼いたのですよ《心の奥が引っ掛かれたように痛痒かった》のはそういうことです。良かった、まだ若い証拠ですわ。そして、シロウを深く、想っていらっしゃるのですね……。それと、お聞きしたいことが。陛下の名前の花言葉は何ですか?シロウには伝えたのですか?』
『いつか、いつか話すわ。ローズ、ありがとう』
ローズは、嬉しそうに笑い、羽根を羽ばたかせ、旋回しました。
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