箱庭のマーガレット〖完結〗

カシューナッツ

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〖第6話〗

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 ねえ、シロウ。私が死んでも、良かったのね。私と貴方はその程度。友達でもなかった。それでも私は──貴方がどうしようもなく愛おしかった。恋をしていたの。敵うはずのない、虚しい想いを。

『シロウ、さよなら………』

 シロウならこの働き蜂の死を止められました。何回か引き合わせたことはありました。彼女達の針のことも知っていました。


『刺すのは一回、自らの生命と引き換えに』


 と言うことです。私たちの巣をみて驚くシロウに、怖くないと言いいました。働き蜂を紹介したとき、クリーム色のフレアのスカートが可愛いと笑っていましたね。

 今、この惨状を見ていますか?フレアのスカート姿の働き蜂の数多あまたの屍が転がる箱庭のマンションの森の居心地はどうですか?

 運良く生命を取り留めた働き蜂と、足早にこのマンションを去りました。女王蜂に姿を変え大きな羽根で新しい住みかに適した森を目指します。シロウを最後に見たのは『一度だけ』だと心に決めて振り向いたときでした。

 母親に羽交い締めにされ、マンションの手すりにしがみつき、シロウは泣いて私の名前を呼んでいました。もう私はその姿をしていないのに。今の姿は、ただの蜂です。

『マーガレット!行かないで。僕を独りにしないで!お願いだよ、戻ってきて。マーガレット、謝るから、君が許すまで謝るから。だから許して。僕を許して──!』

***

『女王さま、あの『箱庭ノ森』も穏やかになったようですし、戻りませんか?皆あの場所が気に入っております』

各々おのおのが死にかけた場所、仲間が死んだ場所でもいいなら戻るけれど』

 皆が一斉に口を噤みます。一匹の働き蜂が私に話しかけました。親衛隊長のローズです。

『不躾ながら失礼致します。陛下が一番こだわってしまわれています。シロウが何故庇ってくれなかったのか。シロウの言い分も訊かないと、片方の意見だけでは真実は見えません。大声で泣き叫ぶくらいなら、発作を起こすくらいの覚悟で助けて欲しかった。私も皆も死んでしまうところだった。陛下はそうお思いだと思います。陛下には……シロウに伝えたかった言葉も、訊きたかった言葉もあったのではないのですか?丁度今日は満月です。すべてを明らかにするのに適していると思われますが………』

『いいの、もういいの。──もう、ニンゲンの住みかには降りてこないわ。だって、私は──蜜蜂の女王だもの』
                
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