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〖第4話〗
しおりを挟むシロウはよく同じ年代の子供より大人びていて、けれど寂しそうで、孤独でした。年を経ると共に彼は益々部屋に籠るようになりました。正確には、この部屋から出ることを倦んでいるようで、生きることに、希望を失っていくように見えました。
この部屋と、緑が増えていった屋上の庭が彼の世界のようでした。そして、整理整頓された夥しい本。彼はもう、十五歳です。ですが、まだ十五歳なのです。
本や音楽、学業、将棋、碁、チェス、絶対音感もあります。知識だけなら大人顔負けな膨大な知識を持っていました。そして、ひとを惹き付ける話術も。美しい容姿も。
***
私と彼の出会い?私は、幼い彼が彼があまりにも切なかった。ずっと、分蜂して居を構えたこの箱庭のような森にいましたから、嫌でも幼い彼が我儘も言わず、言うことも許されず、駄々を捏ねることもなく、しょんぼり寂しそうに、ベッドで本を読んでいる様子を見てきました。ずっと昔からそれは変わりません。だから私はうっかり幼い彼に見つかって「あげました」ニンゲンの友達がいなくても、私がいれば寂しくない。
『あなたはだあれ?妖精さん?蝶々のコビト?』
『私は蜜蜂の女王よ』
窓に映る私は、光輝く羽根があります。ブルネットの長い波打つ髪、碧い瞳、薔薇色の頬。身体は、ロングドレスを着た小さなニンゲンのカタチをしています。シロウは私を『妖精さん』と呼びますが、私はその度に『蜜蜂の女王よ』と言います。妖精なんかより私はずっと身分が高くて、ちゃんと蜂の針もあります。意味を持ちませんが。妖精は蜜と花粉を交換に来るお客さんです。
『蜜蜂の女王さまは、きれい』
『シロウには教えてあげる。私の本当の名前。大切なひとしか知らないの。蜜蜂の仲間とかよ──』
***
蜜蜂の女王だから出来ること。光輝く星の粉を振り撒く魔法の羽根で、夜空を彩り飛ぶことができます。シロウにその様子を見せると、とても喜んでくれました。
それと、これはシロウには秘密ですが、もしものときには蜂に姿を変え、皆より大きな羽根と身体で大空を、ものすごい速さで飛び回ることも出来ます。働き蜂達は口々に『女王さま』と私を呼び、慕ってくれます。
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