指先だけでも触れたかった─タヌキの片恋─〖完結〗

カシューナッツ

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〖第20話〗絶世の美女の巫女さん

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「──これからどうしようか?あなたが誰かを好きになるまで傍にいていい?きっとどんどん欲張りになるんだろうね。前の恋なんて早く捨てて欲しいって思ってる。今だって、本当はあなたに少しでいいから、振り向いて欲しいと思ってる。私は欲ばりだね」

 木常の涙がオレのシワシワのシャツに染みていく。オレは黙って木常の長い黒髪を撫でた。

***一年後***

「こんにちは」

「縁結びのお守りを。このピンクの」

 カナエちゃんだった。あれから暫くして仕事の両立が体力的に厳しいと、カナエちゃんは巫女さんの仕事、アルバイトを辞めた。後任でオレと木常が社務所でお勤めしている。
 オレも袴をはいて、パッと見は神職に見える。因みに木常は烏帽子に直衣から、やはり朱い袴を穿いて巫女さんの格好をしている。

『絶世の美女の巫女さん』

 色んなメディアがこぞって木常を取りあげた。そんなとき、釣り合わないと、分相応だとどうしてもオレは思ってしまう。オレと木常は人間の世界の言い方で言うと、

『ツキアッテイル』っても『ソウイウカンケイ』もないわけではない。

 けれどオレには自信がない。染み付いた劣等感が、すべての邪魔をする。木常の綺麗な言葉も、やさしい眼差しも、正しく届かず歪んで響く。
 
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