12 / 24
〖第12話〗遠くから君をみるだけで良かったのに
しおりを挟むオレの思いの丈の分だけ、カナエちゃんが幸せになりますように。つらいけど、オレの想いは、木常が現れる前から同じだった。オレはカナエちゃんの幸せを祈るだけしかできない。
この想いが叶わないのは、解っているんだよ。最初から、全部。そして、終わりがある恋だって、カナエちゃんが誰かを好きになって、巫女さんのアルバイトを辞めたら、オレもここを去ろうって。
最初は恩返しだった。いや、本心はもう一度遠まきに眺めるだけで良かった。なのに、欲が出た。『会いたい』『会って話をしたい』って。
懐かしいな。好きなお花も、好きなおにぎりの具も憶えてる。小春日和の秋のことだったね。桔梗が咲いてた。確か、好きな花は金木犀って言っていたね。厚手の本に小さな星形の橙色の花を挟んで、
『カナエちゃん、カナエちゃんの好きな花』
不思議そうにしながら花の匂いを嗅いだカナエちゃんは本当に嬉しそうにしてくれたね。
**********
出会いは、車にはねられて、傷は妖力で回復したけれど、力の使いすぎとひどい衰弱で、ヒトのカタチになれず、神社のベンチの下で丸まっていた所をカナエちゃんに助けて貰った。
誰も触れるのを躊躇うような汚いケモノ。今にも生命の灯火が消えそうな、ただの汚れた白い狸になってしまったときのこと。夜も更けていた。
「どうしたの?ああ……痩せてる。おいで。これ食べる?うん、いい子。いい子。ゆっくり食べて。ここの神主さん、鳥獣保護団体の人と仲良しなの。もう大丈夫だよ、連絡したから。私はまだ獣医の免許はあってもひよっ子だから………。明日見に来るからね。お腹空いてたのかな?おいしい?」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
金色の回向〖完結〗
華周夏
現代文学
横川領、十八歳。村に来た美女、中野虹子と出会い、逢瀬を重ねる。彼は彼女と出会い。男女の仲の是か非かを知っていく。
そんな彼女だが、秘密を抱えていた。懇意だった領の母と、虹子と随分前に亡くなった村長さんしか知らない秘密。虹子はニッコウキスゲが大嫌いだった。
回向とは─自分自身の積み重ねた善根・功徳を相手にふりむけて与えること。
氷雨と猫と君〖完結〗
華周夏
現代文学
彼とは長年付き合っていた。もうすぐ薬指に指輪をはめると思っていたけれど、久しぶりに呼び出された寒い日、思いもしないことを言われ、季節外れの寒波の中、帰途につく。
馬瓶(うまがめ)の嫁はんー徳島県立太刀野山農林高校野球部与太話
野栗
青春
株式会社ストンピィ様運営のオンラインゲーム「俺の甲子園」で徳島県立太刀野山農林高校(通称タチノー)野球部の狸球児と楽しく遊んどる中で、心に浮かんだよしなしごとをそこはかとなく書き連ねました。今回は狸どものしょうもないイタズラ話です。徳島のリアル地名など出てきますが、フィクションですのでその辺よろしくです。
それでは、眉に唾をタップリ塗ってご覧下さい。
【完結】元カノ〜俺と彼女の最後の三ヶ月〜
一茅苑呼
恋愛
女って、なんでこんなに面倒くさいんだ。
【身勝手なオトコ✕過去にすがりつくオンナ】
── あらすじ ──
クールでしっかり者の『彼女』と別れたのは三ヶ月前。
今カノの面倒くささに、つい、優しくて物分かりの良い『彼女』との関係をもってしまった俺。
「──バラしてやる、全部」
ゾッとするほど低い声で言ったのは、その、物分かりの良いはずの『彼女』だった……。
※表紙絵はAIイラストです。
※他サイトでも公開しています。
狸まつり騒動ー徳島県立太刀野山農林高校野球部与太話
野栗
青春
株式会社ストンピィ様運営のオンラインゲーム「俺の甲子園」で徳島県立太刀野山農林高校(通称タチノー)野球部の狸球児共々遊ばせてもろてます。例によって、徳島のリアル地名出ますが、フィクションですのでご理解お願いします。今回は徳島市と山城町の狸まつりの話です。実際の祭りと相当違う部分がありますが何卒ご容赦下さい。
ほな、狸に化かされんよう、眉に唾をタップリ塗ってご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる