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〖第6話〗オレの狐への思いの変化
しおりを挟む──カナエちゃんはこれ以上オレに踏み込んで欲しくないことはオレが一番解ってるよ。ぬるま湯みたいな付かず離れず、こんな風に『楽しく世間話が出きる』関係が丁度良いって──。
恋する相手を間違えた。そうは思いたくはなかったけれど、結局事実はそうだ。だから、あまりにもオレが憐れで、オレはこの神社には厄介者だけど、ここの神様は、
「恋には勝てんな」
そう笑って特別に神社に入ることを許してくれたんだと思う。
未だに稲荷の狐野郎は、ツンツンしている。「目障りだ」とか言って。カナエちゃんと仲良く出来なくて悔しいからだ。
そう思わなくちゃやってられない。
オレは何処にも必要とされてないんだって。恋することも、オレは値しない。
オレが生きていることで、何の意味もないのかな。そう思ってしまう。花屋の倫子ちゃんは、
「次の恋を見つけて」
またやさしく笑って、オレの背中を叩いて、花束を作ってくれるだろうけど。
いつも狐ばっかり敬われて、狸は間抜け扱い。一部の人間しか、タヌキは『た』抜きで『他』を抜く、一番になるという、言い伝えを知らない。まぁ、ちょっと前まで狸本人が知らずにいた。恥ずかしい限りだ。
毎日カナエちゃんに会いに行く。カナエちゃんが休みの日は狐野郎とお喋り。散々悪態はお互いにつくけれど、中々悪い奴ではないことが解ってきた。百聞は一見に如かずだな、と思えてきた。何故か狐野郎は思ったより話しやすくて、色々気を遣ってオレに接してくれる。
そんな狐に言いたくなる。オレはそんなに惨めか、狐。可哀相か、狐。
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