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〖第33話〗
しおりを挟む笑いをこらえるタカラを見て、
「お前、人を色惚けジジイみたいに言いやがって」
「色恋は惚けてナンボじゃないですか。俺は『恋愛は何歳からでも』の精神なんで。少し前に亡くなったじいちゃんの遺品整理で出てきたカメラからは、ばあちゃんのセクシー写真しか出てきませんでしたよ?一族郎党大笑いでしたけど。まあ、先に亡くなったばあちゃんが『恥ずかし恥ずかし』って天国で言ってると思います。アキさん実際、今、頭ん中お花畑じゃないですか。でも、アキさん、今まで一緒にいた時の中で、一番幸せそうっすよ?」
確かに、彰は毎日残業のザの字もなしに定時で仕事を持ってでも帰る。ただちえ子に会いたくて帰る。理由は好きだからなのか。
『おかえりなさい』の声を思いだし、ひとまず落ちつこうと彰はピースの煙を吸い込む。タカラは、嬉しそうに思考をめぐらせる彰を見て、小さくなったメビウスを丁寧に頭の火を落とした。
「クールなアキさんがこんな骨抜きになるなんて思いませんでした。でも、幸せそうっていうか、人間らしくて今のアキさんの方が、俺、好きっす。ところで、アキさんの頭をお花畑にした人はどんな女性なんですか?」
彰は自分の彼女でもないのに、自信満々に二人で鍋を囲んだときに、スマートフォンで撮った写真を見せる。
「このひと」
キムチ風味鳥団子鍋を一緒に作った時の二人。マッコリを飲むのは人生で初めてと言うちえ子は、
『小さい頃飲んだ、お正月の甘酒みたい』
酔いで目をトロリとさせて言った。わざわざ作ってくれたキムチ鍋の〆の雑炊が美味しかった。
「あ、以外に若い。年上かと思ってました。かなり、いやガチで綺麗な人っすね。で、したんですか?」
「………しないよ。これからも。終わりがある関係は嫌なんだよ。まあ、俺はちえ子さんの休憩地点みたいなもんだからな。元気になって、何処かで、俺の知らない良い人とくっついて笑っていればそれでいい」
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