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後宮入りさせられました、この野郎!

生い立ちと成り行き(不幸? いやぜんぜん!)

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 私の名前はメイ コウシュン。
 半年前からそう名乗っている。
 以前の名前はレイランだったが、それも本当の名前ではない。
 それは花街に売られた時に貰った芸名で、親がつけてくれた名前はない。
 捨て子の私を育て、5歳で花街に売った里親からは、何にもないウーと呼ばれていた。
 そんな私の花街生活は少しばかり見目が良かった事で『最上級妓女』の傍仕えである『禿』から始まると言う、好待遇だった。
 私を仕込んでくれた姐さんは、満月の如き美しさと官吏試験を受ければ必ず受かると言われるほどの教養、さらに金糸雀のごとき美声をもった、花街でも一、二を争う人気の妓女だった。
 そんな彼女は非常に優れた人格者でもあり、妓女として人として、ありとあらゆる知識と教養を与えてくれた。
 おかげで客を取る前から私は『高嶺の花』と名を馳せることになり、本来であれば姐さんがお客を待たせている間の中継ぎである茶飲み相手なのに金が取引され、姐さん同様皆から(商品として)大切に扱われた。
 そして十四になった年、初めて客を取る『水揚げ』を申し出てくれた旦那様に、そのまま『身受け』されることになった。
 なんでも、他の男に指一本でも触れさせたくない、と、楼主様に何度も申し出たらしい。
 私で稼ぐつもりだった楼主様は最初は渋ったようだったけれど、相手の熱意に、私にかかった十年分の養育費と教育代、それからこれから稼ぐ分としてかなり吹っ掛けて諦めさせようとしたらしいが、旦那様はそれを飲んだ。
 そこまで私に惚れたのか。私には何の感情もないのに必死だな……と、その時は心底不思議で、しかし同じ分だけの好意を向けることが出来ず、本当に申し訳なく思ったものだ。
 だが、今考えればおかしなことがあった。
 毎夜床を共にしたお大尽様は、何故か共に床に入るだけで、私に指一本触れることもなかった。
 しかもそれが宴が開かれる三日三晩ずっと続き、最後の宴の後は慣例通り私は旦那様と共に、派手な花嫁行列を率いて花街を後にしたのだが、披露目の宴や花嫁行列の間も、私の顔は終始隠されたままだった。
 その後は、六日間かけてお大尽様の屋敷へと連れていかれたのだが、そこは大盤振る舞いで私を買ったお大尽のものとは思えぬ、小さな屋敷で、門をくぐった私は簡素だが綺麗な部屋に通された。
 そこには同じ年頃の身なりの粗末な六人の少女が額づいていて、それに驚きながらも椅子に座らされた私は、ずかずかと足音を立ててやってきた、私を買ったお大尽によく似た若い男に言われた。
「お前の名前は今日からメイ コウシュン、不本意だが俺の妹となった。お前には半年後、後宮に上がってもらう。お前の目の前にいる者達は、お前と共に後宮に行くお前専属の侍女だ。お前達には半年間ここでしっかりと後宮に上がるための教育を受けてもらう。」
 と。
 その日から、私は囚われえの身となったのだ。
 まぁ、売られた身なので何の文句もなかったのだけれど、なにかまずい状況になったのだけはわかったのだった。
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