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ルスランが、思い出したとばかりに顔を上げる。
「そうだ、キリル! お前、確か自動回復の刻印があったよな。あれがあれば逃げ延びられるんじゃ……!」
「もうないよ」
キリルは、自分の下腹部をまくってみせた。術者のエリザベータが死に、そこにあった刻印は綺麗に消えている。
あの時、死にかけのエリザベータに回復魔法をかけていれば、キリルたち三人の生き延びる確率は上がっていただろう。だけど、キリルはエリザベータを見殺しにすることを選んだ。その結果が全滅だけど――後悔はしていない。
最後の最後で、エリザベータの怨念のような執着から自由になれた。今ようやく、生きている実感があるんだ。ルスランには悪いけど、ルスランとこうして最期の時を穏やかに過ごすことができている。最高の終わり方じゃないか。
キリルの白い下腹部を暫く凝視していたルスランが、再びフイ、と目を逸らす。
「なんか明るい話しようか!」
わざとらしい笑顔だ。だけど、この絶望的な状況でもキリルを励ましてくれようとしてくれるルスランの優しさを感じ取ったキリルは、自分もルスランの為にも最期の瞬間まで笑っていようと決めた。
「うん、そうだね」
だったら、どうせなら聞きたかった話を聞こう。キリルは、思い切って尋ねてみることにした。
「あのさ、ずっと聞いてみたかったんだけど……ルスランって、こ、恋人とかは!?」
すると、ルスランの表情が一気に暗くなる。あれ……どうやら拙い話題だったらしい。
ボソリとルスランが答えた。
「俺、こんな感じだろ? 口下手だし周りとの衝突は多いし、基本脳筋だし」
「……ルスランは優しいよ?」
「はは……そんなことを言ってくれるのはキリルだけかもな。――だから、今まで恋人なんてできたことないし、しかも……」
「……しかも?」
なんだろう、とても気になる。キリルが身を乗り出すと、ルスランは居心地が悪そうにモゾモゾ動く。
「ルスラン?」
キリルが小首を傾げながらルスランの顔を覗き込むと、観念したのか、ルスランは口を開いた。
「ど……」
「ど?」
いつもはどんと構えているルスランの目が、珍しく泳いでいる。「ど」とはなんだろう。キリルは真摯にルスランの言葉の続きを待った。
ルスランは上を向いたり下を向いたりと忙しなかったけど、ようやく言う勇気が出たんだろう。緊張の面持ちで、キリルを正面から見据えた。
「ど、童貞なんだ!」
「……おお」
他に言いようもなくそれだけ言うと、また暫し沈黙が場を支配する。……空気が重い。
思わず横に目線を移動させると、結界陣の外では魔物たちの激しい戦いが繰り広げられていた。気が付けば、うじゃうじゃいるじゃないか。あの中で勝ち残った奴に食われるとなると、一瞬で終わるかもしれない。下手に弱い魔物と戦うより、ひと呑みにされる方がマシかもしれないな、とキリルは思った。
同じ光景を見たルスランが、キリルを元気付けようと思ったのか、「ええと、あの、そのっ」と必死で話題を探す様子がおかしい。
「お、お前は童貞じゃないもんな! わりい、ははっ!」
「無理矢理犯されただけだけどね」
「……」
ルスランが黙った。
どんどん集まってくる魔物。続かない会話。
結界陣の効果が切れる時間は、こうしている間にも刻一刻と近付いてくる。
ふと、キリルはとあることをひらめいた。
そうだ、機会は今を除いて他はない。結界陣の中に他の人間はもういないし、見られるにしたってどれだけ知能があるんだか分からない魔物にだけだ。
折角の最期の時を、ルスランと精一杯幸せに過ごしてみたい。
だからキリルは、思い切って提案してみることにした。
「ルスラン」
「ん?」
緊張で、胸が痛い。こんな提案、はたしてルスランは受けてくれるだろうか。でも、もうこれが最後の機会だってルスランだって分かってるだろうから、だから、だから。
「ど……童貞、捨ててみたい……?」
「――え?」
ルスランが、焦り顔でキリルを見つめる。
……やっぱり男じゃ駄目かな。でも、もう今しか時は残されていないじゃないか。その事実が、普段消極的すぎるほど消極的なキリルの背中を押した。
「ルスラン、俺、ルスランになら抱かれても――」
「是非お願いします!」
ルスランが食い気味に言った。キリルは一瞬キョトンとしてから、声を出して笑い始める。
「あは……ははははっ!」
「えっ、キ、キリル?」
「ごめん、ルスランを笑ったんじゃなくて、ホッとしたら笑えてきちゃって……!」
「へ……?」
ほっとした。嫌がられていない、馬鹿にしているのかと軽蔑されなかった。そのことが嬉しくて幸せで、笑いとなって出てきたのだ。
「――ルスラン。俺の方からも、お願いします。俺を抱いて」
「キ、キリルはいいのか?」
顔を真っ赤にしているルスランは、大分挙動不審気味だ。安心させる為にも、キリルは笑顔で大きく頷いてみせた。
「俺、ずっとルスランのことが好きだったみたいなんだ。だから、最期のその時まで、ずっとルスランと繋がっていたい」
「え……ほ、本当か……?」
「うん、本当だよ。嘘なんか言ってない」
「キリル……」
震えるルスランの手が、キリルの頬に伸びてくる。キリルはそれを捕まえると、ルスランの首にしがみつき、彼の薄い唇を奪った。
ルスランはまさかこれも初めてなのか、硬直している。口は開きっ放しで、どうしたらいいか分からないのか、微動だにしない。
……可愛いな。
キリルはルスランの口腔内にゆっくり舌を差し入れた。ルスランの歯茎を舌でなぞり、上顎を撫でて、所在なさげな舌に自分の舌を巻き付けてはルスランの口腔内に溜まった唾をごくんと呑んでいく。
ルスランの薄めの唇を啄んだかと思うと、息を吹きかけながら口腔内を犯し、と淫靡なキスを繰り返した。
「ルスラン、応えて……」
吐息とともにねだる。はじめはガチガチに力が入っていたルスランの身体の力が、ゆっくり抜けていく。やがてルスランはキリルを真似たように、キリルの舌を絡め取り始めた。
「ん……っ」
気持ちいい。キリルよりぶ厚めの熱い舌の動きに、ジン、と腹の奥が疼く。
好きな人とするキスがこんなにも愛おしいものだったなんて、これまで知らなかった。幸せ一杯で、これだけで涙が滲んでくる。
「こ、この後どうすればいい……?」
ルスランが、少し焦った様子で尋ねた。その理由は、すぐに分かった。
キリルが跨るルスランの下腹部には、ルスランの硬くなり始めたモノが当たっていたのだ。自分に興奮してくれたのが嬉しくて、手を伸ばして服の上からルスランの熱棒に触れる。
「ルスラン、硬くなってる」
キスを繰り返しながら、至近距離でルスランの瞳を見つめる。ルスランの青い瞳は、情欲の色に染まっているように見えた。
「だ、だって……っ」
「うん、嬉しいよ」
「……!」
エリザベータは、感じたくないキリルに声を出させる為、キリルの後孔も開発していた。エリザベータの指に幾度もそこを蹂躙された記憶が甦るけど、それもきっとルスランの熱いモノですぐに塗り替えられる筈。
「待ってね」
キリルは下履きを脱ぐと、ルスランの激る中心も服から取り出す。ルスランの雄の象徴は、キリルのものよりもひと回り、いやふた回りは立派なものだった。
「……大きいね。ちゃんと入るように解すから、待っていてくれる?」
「あ、ああ……」
自分から解したことなんて、これまで一度もない。ましてや好きな人の目の前で自ら解すなんて破廉恥なことをすることになるなんて、思ってもみなかった。
どうしても沸き起こる気恥ずかしさから、キリルの白い肌がピンク色に染まっていく。
「あ……っ」
それでもルスランから目を逸らさないまま、ルスランを跨いだ状態で自分の後孔に指を突っ込んだ。
ごくり、と唾を呑み込む音が、目の前の男から聞こえる。
ルスランは見惚れているように、自分で解すキリルをじっと見つめ続けていた。
「そうだ、キリル! お前、確か自動回復の刻印があったよな。あれがあれば逃げ延びられるんじゃ……!」
「もうないよ」
キリルは、自分の下腹部をまくってみせた。術者のエリザベータが死に、そこにあった刻印は綺麗に消えている。
あの時、死にかけのエリザベータに回復魔法をかけていれば、キリルたち三人の生き延びる確率は上がっていただろう。だけど、キリルはエリザベータを見殺しにすることを選んだ。その結果が全滅だけど――後悔はしていない。
最後の最後で、エリザベータの怨念のような執着から自由になれた。今ようやく、生きている実感があるんだ。ルスランには悪いけど、ルスランとこうして最期の時を穏やかに過ごすことができている。最高の終わり方じゃないか。
キリルの白い下腹部を暫く凝視していたルスランが、再びフイ、と目を逸らす。
「なんか明るい話しようか!」
わざとらしい笑顔だ。だけど、この絶望的な状況でもキリルを励ましてくれようとしてくれるルスランの優しさを感じ取ったキリルは、自分もルスランの為にも最期の瞬間まで笑っていようと決めた。
「うん、そうだね」
だったら、どうせなら聞きたかった話を聞こう。キリルは、思い切って尋ねてみることにした。
「あのさ、ずっと聞いてみたかったんだけど……ルスランって、こ、恋人とかは!?」
すると、ルスランの表情が一気に暗くなる。あれ……どうやら拙い話題だったらしい。
ボソリとルスランが答えた。
「俺、こんな感じだろ? 口下手だし周りとの衝突は多いし、基本脳筋だし」
「……ルスランは優しいよ?」
「はは……そんなことを言ってくれるのはキリルだけかもな。――だから、今まで恋人なんてできたことないし、しかも……」
「……しかも?」
なんだろう、とても気になる。キリルが身を乗り出すと、ルスランは居心地が悪そうにモゾモゾ動く。
「ルスラン?」
キリルが小首を傾げながらルスランの顔を覗き込むと、観念したのか、ルスランは口を開いた。
「ど……」
「ど?」
いつもはどんと構えているルスランの目が、珍しく泳いでいる。「ど」とはなんだろう。キリルは真摯にルスランの言葉の続きを待った。
ルスランは上を向いたり下を向いたりと忙しなかったけど、ようやく言う勇気が出たんだろう。緊張の面持ちで、キリルを正面から見据えた。
「ど、童貞なんだ!」
「……おお」
他に言いようもなくそれだけ言うと、また暫し沈黙が場を支配する。……空気が重い。
思わず横に目線を移動させると、結界陣の外では魔物たちの激しい戦いが繰り広げられていた。気が付けば、うじゃうじゃいるじゃないか。あの中で勝ち残った奴に食われるとなると、一瞬で終わるかもしれない。下手に弱い魔物と戦うより、ひと呑みにされる方がマシかもしれないな、とキリルは思った。
同じ光景を見たルスランが、キリルを元気付けようと思ったのか、「ええと、あの、そのっ」と必死で話題を探す様子がおかしい。
「お、お前は童貞じゃないもんな! わりい、ははっ!」
「無理矢理犯されただけだけどね」
「……」
ルスランが黙った。
どんどん集まってくる魔物。続かない会話。
結界陣の効果が切れる時間は、こうしている間にも刻一刻と近付いてくる。
ふと、キリルはとあることをひらめいた。
そうだ、機会は今を除いて他はない。結界陣の中に他の人間はもういないし、見られるにしたってどれだけ知能があるんだか分からない魔物にだけだ。
折角の最期の時を、ルスランと精一杯幸せに過ごしてみたい。
だからキリルは、思い切って提案してみることにした。
「ルスラン」
「ん?」
緊張で、胸が痛い。こんな提案、はたしてルスランは受けてくれるだろうか。でも、もうこれが最後の機会だってルスランだって分かってるだろうから、だから、だから。
「ど……童貞、捨ててみたい……?」
「――え?」
ルスランが、焦り顔でキリルを見つめる。
……やっぱり男じゃ駄目かな。でも、もう今しか時は残されていないじゃないか。その事実が、普段消極的すぎるほど消極的なキリルの背中を押した。
「ルスラン、俺、ルスランになら抱かれても――」
「是非お願いします!」
ルスランが食い気味に言った。キリルは一瞬キョトンとしてから、声を出して笑い始める。
「あは……ははははっ!」
「えっ、キ、キリル?」
「ごめん、ルスランを笑ったんじゃなくて、ホッとしたら笑えてきちゃって……!」
「へ……?」
ほっとした。嫌がられていない、馬鹿にしているのかと軽蔑されなかった。そのことが嬉しくて幸せで、笑いとなって出てきたのだ。
「――ルスラン。俺の方からも、お願いします。俺を抱いて」
「キ、キリルはいいのか?」
顔を真っ赤にしているルスランは、大分挙動不審気味だ。安心させる為にも、キリルは笑顔で大きく頷いてみせた。
「俺、ずっとルスランのことが好きだったみたいなんだ。だから、最期のその時まで、ずっとルスランと繋がっていたい」
「え……ほ、本当か……?」
「うん、本当だよ。嘘なんか言ってない」
「キリル……」
震えるルスランの手が、キリルの頬に伸びてくる。キリルはそれを捕まえると、ルスランの首にしがみつき、彼の薄い唇を奪った。
ルスランはまさかこれも初めてなのか、硬直している。口は開きっ放しで、どうしたらいいか分からないのか、微動だにしない。
……可愛いな。
キリルはルスランの口腔内にゆっくり舌を差し入れた。ルスランの歯茎を舌でなぞり、上顎を撫でて、所在なさげな舌に自分の舌を巻き付けてはルスランの口腔内に溜まった唾をごくんと呑んでいく。
ルスランの薄めの唇を啄んだかと思うと、息を吹きかけながら口腔内を犯し、と淫靡なキスを繰り返した。
「ルスラン、応えて……」
吐息とともにねだる。はじめはガチガチに力が入っていたルスランの身体の力が、ゆっくり抜けていく。やがてルスランはキリルを真似たように、キリルの舌を絡め取り始めた。
「ん……っ」
気持ちいい。キリルよりぶ厚めの熱い舌の動きに、ジン、と腹の奥が疼く。
好きな人とするキスがこんなにも愛おしいものだったなんて、これまで知らなかった。幸せ一杯で、これだけで涙が滲んでくる。
「こ、この後どうすればいい……?」
ルスランが、少し焦った様子で尋ねた。その理由は、すぐに分かった。
キリルが跨るルスランの下腹部には、ルスランの硬くなり始めたモノが当たっていたのだ。自分に興奮してくれたのが嬉しくて、手を伸ばして服の上からルスランの熱棒に触れる。
「ルスラン、硬くなってる」
キスを繰り返しながら、至近距離でルスランの瞳を見つめる。ルスランの青い瞳は、情欲の色に染まっているように見えた。
「だ、だって……っ」
「うん、嬉しいよ」
「……!」
エリザベータは、感じたくないキリルに声を出させる為、キリルの後孔も開発していた。エリザベータの指に幾度もそこを蹂躙された記憶が甦るけど、それもきっとルスランの熱いモノですぐに塗り替えられる筈。
「待ってね」
キリルは下履きを脱ぐと、ルスランの激る中心も服から取り出す。ルスランの雄の象徴は、キリルのものよりもひと回り、いやふた回りは立派なものだった。
「……大きいね。ちゃんと入るように解すから、待っていてくれる?」
「あ、ああ……」
自分から解したことなんて、これまで一度もない。ましてや好きな人の目の前で自ら解すなんて破廉恥なことをすることになるなんて、思ってもみなかった。
どうしても沸き起こる気恥ずかしさから、キリルの白い肌がピンク色に染まっていく。
「あ……っ」
それでもルスランから目を逸らさないまま、ルスランを跨いだ状態で自分の後孔に指を突っ込んだ。
ごくり、と唾を呑み込む音が、目の前の男から聞こえる。
ルスランは見惚れているように、自分で解すキリルをじっと見つめ続けていた。
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