宝珠の神子は優しい狼とスローライフを送りたい

緑虫

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43 グイードの生い立ち

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「オレは……狼族の頭領の家系に生まれた。父親が、複数ある群れを統率する立場にあるんだ」

 グイードの話によると、狼族には年々人化できない者が増えていたそうだ。グイードのお父さんとお母さんは、人化できた。その為二人は狼族の中から選ばれて、番いになった。人化できる者同士からは、人化できる子供が生まれる可能性がそれ以外と比べて高いんだって。

 どの種族も生まれた時は獣の姿を取っていて、ある程度大きくなってくると人化できるようになってくる。狼族の人化が始まる時期は幼児から少年に成長する時期だそうで、生まれた時から他よりも身体が大きく、中には保有してない者も多い魔力も持って生まれたグイードは、幼い頃から両親の期待を背負って育った。

 最初に自己紹介をし合った時にグイードが教えてくれた、グイードの名前の意味。『導く者』というのは、いずれ狼族の頭領の座を受け継ぐ者、という願いが込められていたんだそうだ。神子降臨の年が近付いていたこともあり、これまでのどの跡継ぎ候補よりもプレッシャーは大きかったのかもしれない。

 実際、グイードは「狼族の繁栄の為」、人化したら帝都に行き、神子の番い候補として騎士団所属となる話も水面下で進んでいたらしい。

 だけどグイードは、一向に人化できなかった。後から生まれた弟たちが人化し始めて、グイードは焦った。だけど、どうやっても駄目で、段々と父親から向けられる目が期待から失望に変わっていくのを恐ろしく感じていた。

 そしてとうとう、年の離れた末っ子が人化した時――、グイードは群れから追い出されたんだ。「好きに生きろ」と言われて。帝都には、人化できる弟が代わりに行くことになった。

 グイードは絶望した。期待を一身に背負って生きてきたグイードにとって、群れから追い出されることは自分を支えていた全てを失ったのと同じ意味を持っていたんだ。

 そこからは、彼が俺に語った通り。グイードは、ただ時間を重ねていった。何も楽しくないし、未来への希望もない。死んではいない、ただそれだけの無為な日々。勝手に期待されて、グイードの努力ではどうしようもない理由で放り出されて。

 グイードは「一族の頭領としての立場があったのは頭では分かってる」って言ってたけど、感情では納得できてないってことだろ。

 これからは俺がずっと傍にいるから。そういうつもりで、グイードに巻き付けていた腕に力を込めた。

「そっか……そういうことだったんだね」
「ヨウタが神子だと気付いた時、オレは……ヨウタを愛しているとはっきり認識したと同時に、オレはヨウタの番いにはなれないのだと気付き絶望した」
「グイード……?」

 グイードが、寂しそうな笑顔になる。

「人化できないオレでは、神子の番いにはなれないだろう。ヨウタがただの変種の猿であればよかったのにと、あの時どれほど思ったことか」
「変種の猿って言葉、好きだよね」
「その頃のオレの願いが込められてるからな」

 うそぶくグイードが、愛おしい。でもそうか、だからグイードは鋼の精神で俺に手を出してこようとしなかったんだ。俺が毎日大好きだって身体中を触りまくっても、俺の為だからって歯を食いしばりながら耐えてくれていたんだ。

 どこまでも優しくて強いグイード。俺の番いは、世界一格好いい。でも我慢しすぎるところが玉に瑕だと思うけどな。

「……話してくれてありがとうな、グイード」

 グイードの顔を両手で挟んで伝えると、グイードが鼻先を俺の鼻に擦り付けてきた。グイードが俺に甘える時の仕草だ。言葉で「愛してる」と伝えられなかったグイードの、精一杯の愛情表現。

「――俺、グイードには心から笑っていてほしい」
「それはオレがヨウタに思っていることだぞ」

 どちらからともなく微笑み合うと、もう一度唇をそっと重ねた。ゆっくりと顔を離したグイードが、突然「あ」と言う。

「どうしたの?」
「抜けそうだ」

 グイードはそう言うと、突然俺の腰を掴んでズルズルと長物を抜き始めたじゃないか。通り過ぎる時にグイードが俺の腹の途中にあるいいところを擦っていくもんだから、思わず「アッ」なんて甘ったるい声が漏れてしまった。

 ずるりと抜け出たグイードの柔らかくなった陰茎が、てらてらと赤黒くてかっている。うん、抜けた後も大きい。俺の中にある時は、一体どれくらいの大きさだったんだろう。見たいような、見たくないような。

「出たな」
「う、うん……っ」

 感じてしまっていた俺の穴が、「ごぷっ」と音を立てて余ったグイードの愛液を吐き出した。ひえっ、恥ずかしい!

 たらりと垂れて下に伝い落ちていく様をじっと目で追っていたグイードが、舌舐めずりをする。

「孕むまで、これから毎日しないとだな」
「お、お手柔らかに……」

 グイードは思っていたよりも独占欲が強いのかもな、と思わずきゅんきゅん胸をときめかせてしまった俺だった。
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