宝珠の神子は優しい狼とスローライフを送りたい

緑虫

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42 憧れのピロートーク

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 グイードが言った通り、グイードの亀頭球はぴったり嵌って微動だにせず、俺たちは重なり合ったまま「……さて?」という状態になった。

 要は、亀頭球の腫れが収まるまではどっちも動けないってことだ。となれば、ここで登場するのが憧れのピロートーク! 俺は甘ったるい会話をしようと思ってるんるんしてたんだけど、俺と違って単細胞じゃないグイードは、彼が抱えている不安を吐露しだした。

「ヨウタ。オレとヨウタはこうして結ばれたが、獣王と結婚すると言っていたのは大丈夫なのか?」
「え? 番うってこういうことを言うんじゃなかったの?」
「確かに番うとは交尾のことを指すが。だが結婚は必ずしも交尾と同義ではないだろう」

 俺にその発想はなかった。

「え、マジ?」

 グイードが、キリリとした顔で顎を引く。

「勿論、結婚させられるのならオレがヨウタを攫って逃げるが」

 グイード、言うことが格好いい! というか、てっきり俺の中ではエッチしたら番い確定、万事オッケー! かと思っていたけど、どうやら違ったらしい。んー、と考え込む。

「あー……でもそもそも、獣王と結婚するって話はそうじゃないとグイードを殺すって宰相が言ったからだろ? 要は脅した訳じゃん。だけどグイードはこうして俺が助けたし、それに宰相が嘘吐いてグイードを痛めつけてたのが判明した時点で、セドリックに『宰相を捕まえろ』って指示してるんだよね。だからもしかして今頃捕まってるかもしれないし、そもそも向こうから約束を破ったんだからこっちが結婚話はなかったことにって言っても筋は通ると思うよ」

 うん、今思いつきで答えたけど、これが一番スッキリする流れだよな! 俺って時折冴えてることあると思う! てこういうところも単細胞……深く考えるのはやめよう。

 だけど、何故かグイードがムッとした表情に変わってしまった。

「セドリックとは……やけに親しげにしていたあの白い猫族のことか?」

 あ、これってまさか嫉妬? ……うへへ、嬉しいんだけど。こころなしか唇が尖ってしまったグイードの唇にぶちゅっと唇を押し当てると、グイードの金色の目にあった険が少し和らぐ。くちゅ、と軽く食んでから唇を話すと、グイードの口許が優しく緩んだ。

「セドリックは騎士団長なんだ。俺の世話をしていた侍女のエリンのお兄さんだったから、たまたま親しくなっただけ」

 またたびの匂いを嗅いでしまった時に起きたことは、グイードには言わないでおこう。血を見る未来しか見えないし。

「今回、ここに案内してくれたのもセドリックなんだよ。だから俺たちの味方だよ、安心して」
「……オレの味方かどうかは不明だがな」

 目が怖いよグイード! 俺は慌てて話を先に進めることにした。

「ま、まあ、だから宰相に脅されて結婚って話になった訳だし、そもそももう俺の中にはグイードの子供が仕込まれてるかもしれない訳じゃん? だから俺は何が何でもグイードを選ぶし、それでも獣王と結婚しろって言われた瞬間、こんな城出ていってやるから安心しろよな!」

 グッと親指を突き出してみせると、ようやくグイードがホッとした雰囲気に変わった。これでグイードの懸念はひとつ減ったらしい。ということで、確認してみる。

「……そろそろ抜けそう?」
「まだだな」

 グイードが腰を少し動かしたら、俺も一緒に動いた。はうっ、ぎっちぎち。うん、まだだね!

 なら折角なので、この機会にグイードにずっと尋ねたかったことを聞いてみることにする。

「なあ……俺、グイードのことをちゃんと知りたい。俺に話してなかった狼族とグイードのこと、もっと詳しく教えてよ」

 裸で重なりあったまま、しかも挿入したまま話す内容かどうかは微妙だったけど、だって知りたかったんだよね。ずっと隠してたことだし言いにくいとは思うけど、俺はもうグイードの番いだし?

 それにさ。俺はこっちの世界で獣人同士が張り合って争う場面を、わずか数日の内に嫌っていうほど目にした。だから一番気に病んでるのは、グイードを追い出しておいていざ俺とグイードが番いになったと判明した途端、手のひらを返してすり寄ってくるんじゃないかってことなんだよな。

 俺はやっぱり単細胞だから、家族が再会するならいいかなって思っちゃうと思う。だけどグイードは、ずっと孤独を強いられてきた立場だ。深く考えない俺が何か魂胆があるかもしれない狼族をあっさり受け入れてしまったら、やっぱり俺が一番なグイードはきっと我慢してしまうだろう。

 だけど俺は、これ以上グイードに我慢しながら生きてほしくない。これから先は、憂いなく伸び伸びと、そして堂々と胸を張って俺と一緒に生きていってほしいと願ってる。だから今度こそ簡単に騙されないように、グイードの生い立ちや背景をきちんと知りたかったんだ。

 じっとグイードの目を見つめていると、グイードが観念したようにぽつりぽつりと話し始めた。
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