誕生日前日に恋人に浮気されて家なしになった俺を拾ったのは、ヒョロい細めのモブでした

緑虫

文字の大きさ
上 下
52 / 56

52 怖くない※R18回

しおりを挟む
 史也は、本気で俺を液体にするつもりらしい。

「んぁ……っ、はあ、あ……っ」

 俺の穴に最初の指が差し込まれてから、大分時間が経った。今、ようやく三本目が挿入されたところだ。途中でローションを足されて、とにかく俺が痛くならない様にと、前も触ればお尻も内腿も興奮気味に触ってきて、俺の感度は全身性感帯状態になっていた。

「も、もう……っ挿れてよ……っ」

 息も絶え絶えになっているのに、奥まで来てくれないもどかしさ。ゾクゾクしちゃって、もう史也の荒々しい雄を受け入れることしか考えられなかった。

 なのに、まだくれない。

「史也ぁ……っ! 辛いよ……っ」

 甘えた声が出たけど、もうこれが限界だった。

 なのに史也は、会陰に舌を這わせる。欲しいのに。欲しすぎて身体がおかしなことになってるのに。

「陸……中でイッたことある?」
「へ……?」
「ねえ、ある?」

 非常に答えにくい質問だけど、黙っていたって仕方ないのも確かだ。俺はボソボソと答えた。

「んー……それっぽいのは、何となくはあったような……」
「ないってことね」
「……ん」

 なんでそこでクスクス笑ってるの、史也。怖いんだけど。

「独りよがりなセックスだと、なかなかそこまで至らないらしいよ」
「へ、へえ……」

 俺のケツ穴をぐぽぐぽ言わせながら、何を語ってんのこの人。――あっいいところ当たったし。ビクンッと身体が反応すると、史也が俺の股の間で笑ったのが分かった。そこで笑わないで。

「前戯短いと駄目らしいし」
「へえ……」
「今日がもし駄目でも、俺がイカせてあげられるようにするからね」
「う、うん……?」

 もしかして、涼真と張り合ってるのかな。可愛い嫉妬だけど、そのせいでこの長い前戯があったと思うと、ちょこっと執念を感じなくもない。

「ふ……っ」
「陸、可愛い……っ」

 史也の舌と唇は、しつこいくらい俺の気持ちいいところを刺激していく。

 もう駄目。溶けちゃいそう。お尻だけ突き出した格好でくたりと脱力すると、史也が楽しそうに呟いた。

「……そろそろ液体になったかな」

 細目の奥の光が怖いよ。

 でも、確かに液体にはなったかもしれない。でろでろ。

「もう……溶けてる……」
「ふふ、じゃあ挿れようか」

 史也がようやく顔を離して、穴から指を抜いた。途端、感じる喪失感。

「……んっ」
「可愛い、息してるみたい、ふふ」

 史也の息が、俺のケツに掛かった。観察してるぞこの人。しかも人のケツの穴を見て可愛いと。

 物凄い愛だなあ、と半ばぽーっとしながら史也を振り返ると、汗でびっしょりの史也の姿がそこにあった。痛そうなくらいビキビキに勃ち上がった雄に、くるくるとコンドームを付け始めている。いよいよ、というか、ようやくだ、というのが俺の感想だった。もう早く欲しくて死んじゃいそう。

 でも、俺をほぐす為に、こんなに汗だくになるまで懸命に頑張ってくれたんだ。愛されてる感がえげつなくて、涙が滲む。挿れる前からもうすでに幸せなんだけど。

「陸……いい?」

 俺の腰に手を触れた史也が、やっぱり確認してきた。全くもう。

 史也を振り返る。俺を熱っぽい目で見つめ続けている、俺の可愛いヒョロい細目の恋人を。

「早くってずっと言ってただろ。もうきっついんだけど」
「だって、気持ちよく溶けてもらいたいもんね」
「全く……」

 クスクスと笑ったけど、ひとついいことを思いつく。さっきから史也に振り回されっ放しだから、ここは俺もひとつくらいやり返したいじゃないか。

「あ。なあ史也」
「ん?」
「挿れる前に、ちゃあんといただきますって言えよ」
「……ぐうっ」

 史也から変な声が聞こえてきたな、と思った直後。

「――いただきますっ!」
「えへ、召し上が……うひゃんっ!」

 穴の入り口に固いモノが当たったな、そう思ったのは本当に一瞬で、すぐに史也の固い雄が一気に俺の中に突き進んできた。

「か……っはあ……っ」

 目がチカチカして、暫く息も出来ずに身悶える。

「陸、そんな可愛いこと言っちゃ駄目だよ……」
「ふ、史也……?」

 ゆっくりと振り向いた。そこには、俺の腰をがっちりと掴んでふうー、ふうー、と荒々しい猛獣の様な息を繰り返す、恐ろしい雰囲気を纏う男がいた。

 ずず、とゆっくりと更に奥へと入ってくる。征服されてる感が堪らなかった。

「優しくできなくなっちゃうよ……!」
「ふぇっ」

 あまりの眼光の鋭さに、思わず俺は逃げ出そうとする。だけど勿論そんなのは無駄な努力で、史也は俺の両足を抱えると、ぐんっ! と奥まで入ってきた。

「――ああっ!」

 手押し車みたいな格好になった俺は、そのまま枕に顔を伏せる。

「……逃げないでよ」
「だ、だって……」
「まあ、もうでろでろで逃げられないだろうけど」
「ふ、史也怖いんだけどっ!」
「えへへ、いくよー」

 呑気な声が聞こえてきたので、あれ、ちょっと落ち着いたかなと思ったけど、全然違った。

 俺の足を抱えたまま、史也がパチュパチュと甘い水音を立て始める。初めは短めに、次第に長く早く。それと同時に、全身に快感の鳥肌が立って、もう俺は史也を感じること以外何もできなくなった。

「おっあっあっや、あ、……ああんっ」
「陸、可愛い……っ陸!」

 は、は、という史也の息だけですら、耳に入れただけで俺の感度をどんどん上げていく。なのに、触れる力強い手が、暖かい俺を貫く雄の象徴が、俺の頭を馬鹿にしていくんだ。

「あ……っ! ひゃ、ふうぅ……んっ!」
「陸、もっと声聞かせて……っ」
「んっ史也ぁ……っ!」

 不思議と、前までヤる度に感じていた「女みたいで気持ち悪い」っていう感情は起こらなかった。だって、史也はどんな俺だって受け入れてくれるから。

「あんっ! 史也っもっと、もっと……!」
「陸……っ可愛い……っ!」

 パンパンと史也の腰が俺のお尻に叩きつけられて、自分がどこにいるのか分からなくなってきた。

 俺のダメなところを嫌ってほど見せたのに、史也は俺を馬鹿にしなかった。可愛いって、好きだって大声で堂々と言ってくれた。

「史也……っ好き……っ!」
「……! 陸、陸、陸ー!」

 史也の動きが益々激しくなって、俺はもう顔を上げていることすらできなくなってくる。

「あっああ……っ! なんか、なんか来る……っ!」
「陸、力抜いて受け入れて……っ!」

 訳が分からないよ。なのに何か来るって分かるんだ。でも、怖い、怖い――!

 激しく揺さぶられていると、自分の親指が視界に入った。そうだ、これを噛めば怖くは――。

「陸……!」

 史也の手が、俺の左手を上から握り締めた。

 俺は半ばパニックになりながら、涙目で史也に訴える。だって、甘えていいんだから。史也は俺が甘えても笑わないんだから。

「こ、怖い……! 何か来るんだ……っ」

 史也が俺に覆い被さり、耳を食んだ。

「怖くないよ……俺が一緒にいるから」

 それを聞いた途端、俺の中の俺を縛り付けていた何かが、バチンッと弾ける音が聞こえた気がした。

 史也の熱い肌。優しい声。そうだ、史也は俺をずっと守ってくれていたじゃないか。なら、大丈夫に決まってる――!

「陸、好き、大好き……っ!」
「史也……っあ、あ、あ、ああ――……っ!!」

 史也に全てを預けた瞬間。

 俺の中に満ち溢れたのは、これまで感じたこともなかった快感の嵐と。

 ――深い安堵だった。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...