有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫

文字の大きさ
上 下
50 / 107

50 ルカの成長

しおりを挟む
 実は最近、自分のアソコがなんだかむず痒い感覚が度々あったんだ。

 こんなにしょっちゅうだなんて、明らかにおかしい。

 もしやこんな季節に虫刺され? それとも蕁麻疹とか……? それか、何かの病気だったらどうしよう……!

 不安でいっぱいになって、我慢できずに恐る恐る自室でそーっと確認することにしてみた。手に取って触れている内に、段々と硬さを帯びてくる手の中の慣れ親しんだモノ。

「わ、え、ど、どういう状況!?」

 なんとかむず痒さを取り除こうとしている内に、普段おしっこが出てくるところから半透明のドロッとした液体が出てきて――。

 僕は声にならない悲鳴を上げて、半泣き状態で兄様の部屋に駆け込んだ。

「兄様! 僕、病気かもしれないっ!」
「ええっ!? どういうことだルカ!」

 僕は嗚咽しながら、先ほど起こったことを兄様に事細かに説明していった。するとはじめは心配そうな表情で聞いていた兄様が、段々と顔を上に向けていく。部屋の中は明るくないのに眩しそうに瞼を手で覆うと、言ったんだ。

「く……っ! 純粋が致死量すぎる……眩しさで目が潰れそうだ……っ、ああ、この世に生まれてきてよかった……!」と。意味が分からない。

「兄様、真剣に聞いてる!?」
「――ハッ! 勿論聞いているさ!」

 兄様は何となく喜色を感じさせる顔を僕に向けると、安心させるように僕を抱き寄せた。不安でいっぱいの僕は、兄様に抱きついて縋る。

「僕おかしくなっちゃったのかな、怖いよ、どうしよう兄様……!」
「ルカ……大丈夫だよ。それはね、ルカの身体が大人になった証拠なんだ」
「え……? 大人……?」

 泣き顔で兄様を見上げると、兄様は何かを悟ったかのような穏やかな表情で僕を見下ろしていた。

「そう。学校で二次性徴については習っただろう?」

 そこから二次性徴の説明を聞かされて、ようやく腑に落ちていく。え、てことは、まさかこれが――精通?

「兄様、僕……病気じゃない?」

 兄様は尊いものを見るような眩しげな眼差しをしながら、深く頷いた。

「ああ、健康に育っている証拠だ。どこもおかしくなんてない」

 兄様の言葉を聞いて、強張っていた全身の力が抜けていった。

「よ、よかったあ……!」
「ルカはまだだったんだね……兄様はホッとしたよ。大切な瞬間を教えてくれて、本当にありがとう」

 兄様はそう言うと、今後どう付き合っていけばいいのかを丁寧に教えてくれた。自慰はどうやってするといいとかも、詳しく。さすが物知りな兄様だ。詳しくて頼りになるなあ……!

 その中でひとつ、兄様が特に「絶対守るように」と怖い顔をして注意してきたことがあったんだ。

「いいかい、ルカ。たとえ普段仲がよかろうと、抜き合いの誘いに乗ってはダメだ」
「ぬ、抜き合い……?」

 それってどんな行為なんだろう。

 兄様が重々しく頷く。

「ああ。この時期の男は、こういったことに好奇心が旺盛だ。一緒にしようと誘われて軽い気持ちで頷いたら、相手がどんどん調子に乗って最後まで――なんて危険性もある! 特にルカは可愛いから、そんなルカに色気が加わった日には……! ああ、兄様は心配で仕方ない!」

 可愛いのに色気? 調子に乗る? 話が全然見えない。

「兄様。何をどうすると最後になるの?」

 僕の問いかけに、兄様が目を泳がせた。

「グフッ! ……そ、それはまた別の機会に説明しようかな……? と、とりあえず! 自慰は基本ひとりでするもの! 他人に見られたり、ましてや一緒にするのは絶対絶対駄目だからね!」

 見られるのも駄目なんだ。でも、アリとは同室だしなあ。どうしよう。

「……親友でも駄目?」
「駄目」

 ものすごい速さで、兄様が即答した。

 ――なんてことがつい先日あったばかりだった。

 なので、休み明けにアリがいる場所でどうひとりで処理したらいいのかなあ、というのが僕の目下の悩みなんだよね。

 ひとり悶々と考えるのも疲れてきた。早くアリに会って聞いてスッキリしたい。

 早く冬季休暇が終わりますようにと、僕は心の中で祈った。
しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

モブ兄に転生した俺、弟の身代わりになって婚約破棄される予定です

深凪雪花
BL
テンプレBL小説のヒロイン♂の兄に異世界転生した主人公セラフィル。可愛い弟がバカ王太子タクトスに傷物にされる上、身に覚えのない罪で婚約破棄される未来が許せず、先にタクトスの婚約者になって代わりに婚約破棄される役どころを演じ、弟を守ることを決める。 どうにか婚約に持ち込み、あとは婚約破棄される時を待つだけ、だったはずなのだが……え、いつ婚約破棄してくれるんですか? ※★は性描写あり。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」 知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど? お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。 ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

処理中です...