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46 三学年前期開始
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三学年に進級して、僕たちの学校生活はガラリと変わった。
これまでの全体を初級、中級、上級に分けたクラスは二学年で終了して、各々専攻した専科に分かれていった。僕は今まで全部アリと一緒だったけど、違う専科を選んだ僕たちが授業で重なることはほぼなくなってしまった。合同授業で時折一緒になるくらいかな。むしろ同じ専科の先輩たちとの合同授業の割合の方が多い。
すると、どういうことが起きるかというと。
アリは予習復習を絶対に欠かさない人だ。だから、ちゃんと机に向き合って勉強をする。だけどこれまで日中ずっと一緒に過ごしていた僕が、突然隣からいなくなったんだ。何がきっかけになのかは不明だけど、時折アリは禁断症状を起こしたかのように突然落ち着きをなくすようになった。そして隣の机で勉強している僕の元に来ては床に膝を突き、縋るように抱きついてきては、思う存分僕を吸ったり味わっていく。
「まだだ、まだルカが足りない……っ!」
「よしよし、今日も頑張ったねアリ」
ものすごくアリに求められているのが分かるだけに、僕はキュンとしちゃってアリの頭を抱き締めて頭頂にキスを落とすのが、最近の日課になっていた。可愛いよね。
「騎士科を選んだのは自分とはいえ、毎日寂しくて死にそうで、時折後悔してしまう……っ」
「僕も寂しいよ。アリと同じ部屋じゃなかったらきっと耐えられなかったかも」
「ルカも!? 嬉しい……!」
潤んだ瞳のアリが、ねだるような上目遣いで僕を見上げてきた。物欲しげな表情にピンとくる。これは、キスをして欲しいっていう甘え顔に違いない。アリは基本真顔で表情の変化はかなり乏しいけど、僕は僅かな表情の変化も分かるようになってきたんだよね。毎日一緒に過ごしてもう三年目だしね。何となくでも判別できるのが、実はちょっと自慢だったりして。
瞼を閉じると、自分からアリの口にキスをする。するとすぐにアリの手がうなじに伸びてきて、舌がグッと僕の口腔内に差し込まれていった。僕の歯の隙間に舌を強引に突っ込むと、口を窄めて僕の舌を中から引っ張り出していく。
「ルカ、ルカ……っ」
「ん……っ」
舌が絡むキスをすると、アリは少しでは止まらない。貪るように執拗に念入りに口腔内を舐め尽くされて、僕が息も絶え絶えになって椅子の上で脱力する。そうしてようやくアリが満足するのが常だった。
「ルカ、ありがとう。寂しさが減った」
クマのない目の下をほんのり火照らせたアリが、ぐてっとなった僕の頬を大きな手でさらりと撫でていく。触れるだけのキスを最後に落としてから、機嫌よさそうに再び机に向き直るのが定番になりつつあった。
「う、うん……ぼ、僕も……っ」
「ルカも!? よかった……!」
安堵の表情に変わると一気に目の前の課題に集中していくアリを、まだ落ち着かない心臓の存在を感じながら、ぼんやり見つめる。
世の中の親友って、本当にみんなこんなことをしてるんだよね? それなのに涼しい顔をしてるなんて、信じられない。みんな大人だよね……。僕は何気ない時にアリの口が動くのを見たりアリの舌がちろりと見えるだけで、つい濃厚なキスのことを思い出しちゃって身体の中心あたりがモゾモゾしちゃうよ。涼しい顔なんて、絶対無理。
ここのところ、キスの度にお腹の辺りがムズムズするんだよね。これって何なんだろう。さすがにアリにも聞けなくて、ひとり悶々としている。手紙で兄様に聞いてみようかとも思ったけど、そうするとアリと親友のキスをしていることがバレて嫉妬されちゃうかもだし。うーん、悩ましい。
それでも、アリの持つペンがカリカリと小気味いい音を立てるのを聞いている内に、少しずつ身体の内側に溜まっていた熱が放出されていく。
――よし、僕も頭を切り替えないとだ!
アリに貰った万年筆を掴むと、アリに倣って机に向き直った。
これまでの全体を初級、中級、上級に分けたクラスは二学年で終了して、各々専攻した専科に分かれていった。僕は今まで全部アリと一緒だったけど、違う専科を選んだ僕たちが授業で重なることはほぼなくなってしまった。合同授業で時折一緒になるくらいかな。むしろ同じ専科の先輩たちとの合同授業の割合の方が多い。
すると、どういうことが起きるかというと。
アリは予習復習を絶対に欠かさない人だ。だから、ちゃんと机に向き合って勉強をする。だけどこれまで日中ずっと一緒に過ごしていた僕が、突然隣からいなくなったんだ。何がきっかけになのかは不明だけど、時折アリは禁断症状を起こしたかのように突然落ち着きをなくすようになった。そして隣の机で勉強している僕の元に来ては床に膝を突き、縋るように抱きついてきては、思う存分僕を吸ったり味わっていく。
「まだだ、まだルカが足りない……っ!」
「よしよし、今日も頑張ったねアリ」
ものすごくアリに求められているのが分かるだけに、僕はキュンとしちゃってアリの頭を抱き締めて頭頂にキスを落とすのが、最近の日課になっていた。可愛いよね。
「騎士科を選んだのは自分とはいえ、毎日寂しくて死にそうで、時折後悔してしまう……っ」
「僕も寂しいよ。アリと同じ部屋じゃなかったらきっと耐えられなかったかも」
「ルカも!? 嬉しい……!」
潤んだ瞳のアリが、ねだるような上目遣いで僕を見上げてきた。物欲しげな表情にピンとくる。これは、キスをして欲しいっていう甘え顔に違いない。アリは基本真顔で表情の変化はかなり乏しいけど、僕は僅かな表情の変化も分かるようになってきたんだよね。毎日一緒に過ごしてもう三年目だしね。何となくでも判別できるのが、実はちょっと自慢だったりして。
瞼を閉じると、自分からアリの口にキスをする。するとすぐにアリの手がうなじに伸びてきて、舌がグッと僕の口腔内に差し込まれていった。僕の歯の隙間に舌を強引に突っ込むと、口を窄めて僕の舌を中から引っ張り出していく。
「ルカ、ルカ……っ」
「ん……っ」
舌が絡むキスをすると、アリは少しでは止まらない。貪るように執拗に念入りに口腔内を舐め尽くされて、僕が息も絶え絶えになって椅子の上で脱力する。そうしてようやくアリが満足するのが常だった。
「ルカ、ありがとう。寂しさが減った」
クマのない目の下をほんのり火照らせたアリが、ぐてっとなった僕の頬を大きな手でさらりと撫でていく。触れるだけのキスを最後に落としてから、機嫌よさそうに再び机に向き直るのが定番になりつつあった。
「う、うん……ぼ、僕も……っ」
「ルカも!? よかった……!」
安堵の表情に変わると一気に目の前の課題に集中していくアリを、まだ落ち着かない心臓の存在を感じながら、ぼんやり見つめる。
世の中の親友って、本当にみんなこんなことをしてるんだよね? それなのに涼しい顔をしてるなんて、信じられない。みんな大人だよね……。僕は何気ない時にアリの口が動くのを見たりアリの舌がちろりと見えるだけで、つい濃厚なキスのことを思い出しちゃって身体の中心あたりがモゾモゾしちゃうよ。涼しい顔なんて、絶対無理。
ここのところ、キスの度にお腹の辺りがムズムズするんだよね。これって何なんだろう。さすがにアリにも聞けなくて、ひとり悶々としている。手紙で兄様に聞いてみようかとも思ったけど、そうするとアリと親友のキスをしていることがバレて嫉妬されちゃうかもだし。うーん、悩ましい。
それでも、アリの持つペンがカリカリと小気味いい音を立てるのを聞いている内に、少しずつ身体の内側に溜まっていた熱が放出されていく。
――よし、僕も頭を切り替えないとだ!
アリに貰った万年筆を掴むと、アリに倣って机に向き直った。
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