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40 ルカの十四歳の誕生日プレゼント
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アリはというと、再びよく寝られるようになっていた。
寝入りまでの時間も、格段に早くなっている。
寝る子は育つって言うけど、あれって本当なんだね。気が付けばアリに包まれている範囲がどんどん増えていて、僕とアリの体格差は歴然になっていた。
「アリ、また大きくなったよね。ほら、僕なんかすっぽり収まっちゃってる」
僕としてはアリを包み込んであげる計画だったから、ちょっと残念だけどね。でもアリの健やかな成長が僕の望みだから、ここは悔しさを抑えるんだ、うん。
後ろから回された腕は僕をしっかり包んでいて、夏が近付いてきた今はちょっぴり暑い。だけどアリの体温が着実に上がってる証明だから、こうして実感できるのは純粋に嬉しかった。
「全部ルカのお陰だ。ルカは変わらず華奢だが、何よりも温かくて俺を芯から温めてくれる。ありがとう、ルカ」
「そんな、僕なんてそんな大したこと――んっ」
アリは僕の顎を掴んで振り向かせると、瞬時に僕の唇を奪った。下唇を軽く噛まれて上唇を舌でなぞられると、何故か最近背中がゾクゾクしてくるんだよね。嫌な感じじゃなくて、身体が熱くなってくる不思議な感じだ。これって何なのかな。
この間、アリにこれが何か分かるか聞いてみた。そうしたら「俺も一緒だから問題ない。気にしなくていい」って言われちゃったんだよね。でも、うーん。気になるなあ。
顎を掴んでいたアリの手が、僕の首元に移動していく。段々と男臭く骨ばってきた指が、僕の首からぶら下がるネックレスの鎖を愛おしそうに撫で始めた。
僕の唇に触れたまま、アリが小さく微笑む。
「……ちゃんと付けてくれているな」
「だ、だってずっと付けてるのが親友の証しなんでしょ……んっ」
喋ろうとして顔をずらすと、すぐにアリが追ってきて唇を塞ぐ。
「ああ……俺もちゃんと付けている」
「へへ、嬉しいな」
僕がにへらと笑うと、再び唇が押しつけられた。いつものように下唇を軽く噛まれたので、お返しにアリの上唇を吸ってあげる。するとアリは負けじと僕の唇を吸って――舌で僕の歯茎をなぞり始めた。
「ん、ふふ……っ、擽ったいよ」
このキスは、僕の十四歳の誕生日からアリがしてくるようになったキスだ。最初、舌が唇と歯茎の間に入ってきた時はびっくりしたなあ。
「俺の天使様の笑顔は本当に可愛いな……あ、太陽だった」
うん、言い直さなくていいよ。
先日迎えた僕の誕生日に、アリはお揃いのネックレスを贈ってくれた。キラキラした金色の鎖についているのは、お互いの瞳の色をした石だ。相手の瞳の色を模した物を身につけるのは、深い絆で結ばれた親友って意味があるんだって。アリって本当物知りだと思う。
ちなみにこれはユーネル侯爵から誕生日プレゼントに貰った現金を使って買った物だから、遠慮なく付けてほしいと言われていた。ものすごく高そうだからヒヤヒヤだけど、アリの気持ちが嬉しいからこうして肌見離さず身につけている。
「ルカ……ッ」
こんなに毎日くっつき合っていても、アリはまだ自分が僕の一番の親友かどうか不安らしい。親友の証のネックレスを贈ったのも、アリの不安の現れなんだと思う。
だからか、アリは寝る前に以前より大分長めのキスを繰り返すことで、友情を確かめてくるようになった。
僕は己の行動を顧みて、反省した。これまで僕には、どこか恥ずかしいっていう気持ちがあったんだと思う。積極的にアリにキスを返してあげてなかったことで、ちゃんと親友なのかとアリを不安にさせてしまったんだ。
アリは不安を覚えると、眠れなくなってくる。それじゃ、本末転倒だ。となれば、不安を拭い去れないアリに僕がしてあげられるのは、しっかりキスを返すことしかない!
恥ずかしさは、やっぱりある。だけどアリが喜ぶなら――。
アリを真似て舌を伸ばし、アリの歯茎をそろりとなぞってあげる。と、唇を重ねたまま、アリが目を驚きに見開いた。
「ルカ……!?」
「ん」
アリが実に幸せそうに微笑んだから、僕も幸せな気持ちになれた。
寝入りまでの時間も、格段に早くなっている。
寝る子は育つって言うけど、あれって本当なんだね。気が付けばアリに包まれている範囲がどんどん増えていて、僕とアリの体格差は歴然になっていた。
「アリ、また大きくなったよね。ほら、僕なんかすっぽり収まっちゃってる」
僕としてはアリを包み込んであげる計画だったから、ちょっと残念だけどね。でもアリの健やかな成長が僕の望みだから、ここは悔しさを抑えるんだ、うん。
後ろから回された腕は僕をしっかり包んでいて、夏が近付いてきた今はちょっぴり暑い。だけどアリの体温が着実に上がってる証明だから、こうして実感できるのは純粋に嬉しかった。
「全部ルカのお陰だ。ルカは変わらず華奢だが、何よりも温かくて俺を芯から温めてくれる。ありがとう、ルカ」
「そんな、僕なんてそんな大したこと――んっ」
アリは僕の顎を掴んで振り向かせると、瞬時に僕の唇を奪った。下唇を軽く噛まれて上唇を舌でなぞられると、何故か最近背中がゾクゾクしてくるんだよね。嫌な感じじゃなくて、身体が熱くなってくる不思議な感じだ。これって何なのかな。
この間、アリにこれが何か分かるか聞いてみた。そうしたら「俺も一緒だから問題ない。気にしなくていい」って言われちゃったんだよね。でも、うーん。気になるなあ。
顎を掴んでいたアリの手が、僕の首元に移動していく。段々と男臭く骨ばってきた指が、僕の首からぶら下がるネックレスの鎖を愛おしそうに撫で始めた。
僕の唇に触れたまま、アリが小さく微笑む。
「……ちゃんと付けてくれているな」
「だ、だってずっと付けてるのが親友の証しなんでしょ……んっ」
喋ろうとして顔をずらすと、すぐにアリが追ってきて唇を塞ぐ。
「ああ……俺もちゃんと付けている」
「へへ、嬉しいな」
僕がにへらと笑うと、再び唇が押しつけられた。いつものように下唇を軽く噛まれたので、お返しにアリの上唇を吸ってあげる。するとアリは負けじと僕の唇を吸って――舌で僕の歯茎をなぞり始めた。
「ん、ふふ……っ、擽ったいよ」
このキスは、僕の十四歳の誕生日からアリがしてくるようになったキスだ。最初、舌が唇と歯茎の間に入ってきた時はびっくりしたなあ。
「俺の天使様の笑顔は本当に可愛いな……あ、太陽だった」
うん、言い直さなくていいよ。
先日迎えた僕の誕生日に、アリはお揃いのネックレスを贈ってくれた。キラキラした金色の鎖についているのは、お互いの瞳の色をした石だ。相手の瞳の色を模した物を身につけるのは、深い絆で結ばれた親友って意味があるんだって。アリって本当物知りだと思う。
ちなみにこれはユーネル侯爵から誕生日プレゼントに貰った現金を使って買った物だから、遠慮なく付けてほしいと言われていた。ものすごく高そうだからヒヤヒヤだけど、アリの気持ちが嬉しいからこうして肌見離さず身につけている。
「ルカ……ッ」
こんなに毎日くっつき合っていても、アリはまだ自分が僕の一番の親友かどうか不安らしい。親友の証のネックレスを贈ったのも、アリの不安の現れなんだと思う。
だからか、アリは寝る前に以前より大分長めのキスを繰り返すことで、友情を確かめてくるようになった。
僕は己の行動を顧みて、反省した。これまで僕には、どこか恥ずかしいっていう気持ちがあったんだと思う。積極的にアリにキスを返してあげてなかったことで、ちゃんと親友なのかとアリを不安にさせてしまったんだ。
アリは不安を覚えると、眠れなくなってくる。それじゃ、本末転倒だ。となれば、不安を拭い去れないアリに僕がしてあげられるのは、しっかりキスを返すことしかない!
恥ずかしさは、やっぱりある。だけどアリが喜ぶなら――。
アリを真似て舌を伸ばし、アリの歯茎をそろりとなぞってあげる。と、唇を重ねたまま、アリが目を驚きに見開いた。
「ルカ……!?」
「ん」
アリが実に幸せそうに微笑んだから、僕も幸せな気持ちになれた。
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