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12 受けの元彼のイヤイヤ取り巻き攻めx元彼に裏切られた受け/アイスBL(2023.07.08)
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「あっちー!なにこの暑さ!」
大学生の受けがシャツを裾からバサバサしながら向かうのは、彼氏が一人暮らししているアパートだ。
前回泊まりにいった時、箱アイスを買って在庫にしておいた。
照れ屋で天邪鬼の受けは、大学に入って彼氏に告白されて「まあいいけど」なんて言って付き合ってやった感を出したけど、本当は友達になった時から彼氏のことが好きだった。
でも性格が災いして素直になれないから、「会いたい」も言えない。
だけどアイスを箱買いしておけば、「アイス食いに来ただけだし」って言える。
そう思ったから、だったのに。
彼氏の家の玄関のドアノブを静かに開ける。
いつも開けっぱなしのそれ。彼氏を驚かせてやろうと思ったのに。
中から聞こえてきたのは、知らない男の声だった。
「ねえー、このアイス食べていい?」
「あー? いいよ。俺んじゃないし。それよりさ、もう一回……」
その声に答える彼氏の声には熱が込められていて、受けは愕然とする。
ドアが少し開いちゃってる。どうしよう。こいつの彼氏は俺だって乗り込もうか、なんて考えた。
だけど聞こえてきた言葉は。
「誰のなんだよ」
「あー、あれ」
すると、相手の男がクスクス笑う。
「あー、アレね」
なんだよアレって。受けはカッとなる。乗り込んでやる! と思ってドアをもっと開く。
「あんな可愛くない奴、もういいよ」
「ひど。せめて振ってやりなよ」
「そんなことよりさ、もう一回……」
ガサゴソという衣擦れの音と、リップ音が聞こえる。
受けは叫びたくなって、でも涙で視界がぼやけて喉が痛くてできなくて、代わりに思い切りドアを閉めてやった。
怒りながら歩いて、でも原因は天邪鬼な自分にあることは分かってたから八つ当たりもできなくて。
すると涙で前をろくに見てなかったせいでドン! と人にぶつかって転んでしまう。
「だ、大丈夫!? あれ? 受けじゃん!」
という声が降ってきたけど、受けは感情ぐしゃぐしゃで座り込んだまま泣き続けた。
腕を引っ張られて立たされて、どこかのマンションのエントランスの植木のところに座らされる。
「ど、どうしたの? 話聞こうか?」
とアワアワしている男って誰だよと思って涙を拭って見てみると、いつも彼氏が中心になってるグループの後ろの方に薄っすらいる存在感の薄い攻めだった。
背は高いし顔も悪くないけど、猫背で痩せてるせいでなんかパッとしない奴だ。
受けは「こんな奴に言いたくねえ!」と思って、
「アイス食べ損ねた! アイス食いてえ!」
と泣き叫ぶ。
攻めは、
「アイス!? 何アイス!?」
「ソーダ味! 他は許さねえ!」
「ま、待ってて!」
と攻めは走り出す。
受けはボロボロ泣きながら、さっきの彼氏のことを思い返した。
もう一度ってことは、ヤッてたってことだ。
実は受けはまだ経験がなかった。泊まりにいっても、その手前までで「ま、待って!」て止めていた。
「結局そういうことかよ……!」
付き合って三ヶ月。そろそろ清水の舞台から飛び降りてみようかなんて思ってたのに、アイツにとってはもう遅かったらしい。
ボロボロ悔し泣きしている受けの元に、攻めがコンビニのビニール袋をガッサガッサ言わせて戻ってくる。
「ソーダ味、メロンソーダとコーラとソーダとみかんソーダがあって分かんなくて……!」
と大汗を掻いて言う攻めを見て、固まる受け。
「ふ……まさかお前、全部買ってきたのか?」
「だ、だって」
アイスが溶ける前に食え食えーっ! となって、二人でバクバクアイスを食べた。
食べている間に「何やってんだろこれ」とおかしくなってきて、笑顔が戻る受け。
攻めはホッとした顔をすると、
「ねえ、このあと遊ぼうよ」
と誘う。
なので二人でカラオケに行って牛丼食べて、苦しくなって近所の攻めの家に行ってトイレ借りて、二人ともやっぱりお腹冷えて何度もトイレに行く。
受けはゲラゲラ笑いながら、
「これ帰れねえ!」
と言うと、攻めは
「帰らなくていいよ!」
と大笑いした。
こいつこんな愉快な奴だったのかー、知らなかったなーなんて思う受け。
ようやくトイレラッシュが収まると、お笑い番組を見始めて気がつけば夜。
隣にピザ屋があって取りに行けば半額だからとお金を出し合って頼んで、食べてる時にフッと肩の力が抜けてまた泣き始めた受け。
「あ、あのさ。もしかして彼氏と何かあった? ほら、あいつしょっちゅう浮気しまくってるし、でも今回は三ヶ月も続いてると思ってたんだけど……」
「え? どういうこと?」
攻めの話を聞いてみると、攻めは大学の附属高校から一緒に持ち上がった関係。
攻めが真面目に講義のノートを取ったりするのをアテにされていて、離れようとしても絡まれる。
「高校の時に初めてできた彼女がいたんだけど、すぐにあいつが告白してきて俺は振られちゃって」
「え? なにそれ」
「ひどいよなー。彼女はしばらくあいつと付き合ってからあっさり捨てられてさ」
悲しそうに笑う攻め。
「散々やられてポイ、だってさ。その後、彼女からよりを戻したいって言われたけど、もうその時点で女なんてしんじらんねーってなっちゃって」
その彼女に、受けの元彼が、
「人のもんってほしくなるじゃん。手に入れたらもういらないけど」
と言われたと聞いたそうだ。
受けの前では優しくて明るいいい人にしか見えなかった元彼の過去の話に、ドン引きする受け。
「あ……俺、なかなかやらせなかったから、それで……?」
「ごめん、実際何があったの?」
これまでの経緯を話す受け。
一気に攻めに対する熱が引いていって、「あ、そういえばあの時おかしかったかも、あの時も」と積み重なったものが出てくる。
なんとなく簡単にあげちゃダメだと思っていたけど正解だったんだ、と思えた受け。
攻めの話によると、一度見限った相手は元彼は振り向かないらしい。
「あ、じゃあさ、こうしようよ」
と言って受けが提案したのは、搾取されてる攻めが実際振られた受けと一緒にいることで絡まれなくなる、という案だった。
「え、いいの?」
「いいよ。今日一日付き合ってくれたお礼」
ということで、翌日から一緒に過ごすことにした受けと攻め。
これが案外楽しくて、元彼といる時はあんなに意地を張って天邪鬼になっていたのに、攻めといる時はなんだかほっとして意地を張る気にもならない。
嫌なものは嫌、いいものはいいと言えるし、消極的な攻めを励ますのに忙しくて天邪鬼になる暇もない。
受けと一緒にいる攻めを見て、一度元彼からメッセージが届いた。
「最近どうしたの」
という探りメッセージだ。
受けはそれを普通に攻めに見せると、どうせならチビざまあしようぜってことになり、
「他に好きな人ができたから別れて。じゃあねバイバイ」
と送る。
その日は元彼が機嫌が悪かったと聞いて、攻めの家に行ってゲラゲラ笑いながら「ざまあ!」とハイタッチする二人。
「……ありがとな」
攻めの前だと素直になれる受けがお礼を言うと、攻めは
「なんだよそれ。ありがとうは俺の方だし」
と笑い合う。
ふと目が合い、気づくと唇が重なっていた。
そのまま、最後まではしないけどイチャイチャしまくった二人。
「……なあ、あいつに送った内容、本当のことにしたい」
「俺もそう言おうとしてたところだ」
てことで、付き合い始める二人。
元彼は二人があまりにも仲がよさげなので受けを欲しがって奪おうとしたりもしたけど、受けは
「今から攻めの家でアイス食べるからあっちいけよ」
と笑顔で言える様になる。
受けの照れ屋と天邪鬼は急展開についていけないのが理由だったので、ゆっくり受けの心の準備が整うのを待ってくれた攻めには天邪鬼にはならない。
半年後にようやく繋がれた二人は、二人のペースでゆったりと過ごしながら、今日もキッカケのアイスを食べるのだった。
大学生の受けがシャツを裾からバサバサしながら向かうのは、彼氏が一人暮らししているアパートだ。
前回泊まりにいった時、箱アイスを買って在庫にしておいた。
照れ屋で天邪鬼の受けは、大学に入って彼氏に告白されて「まあいいけど」なんて言って付き合ってやった感を出したけど、本当は友達になった時から彼氏のことが好きだった。
でも性格が災いして素直になれないから、「会いたい」も言えない。
だけどアイスを箱買いしておけば、「アイス食いに来ただけだし」って言える。
そう思ったから、だったのに。
彼氏の家の玄関のドアノブを静かに開ける。
いつも開けっぱなしのそれ。彼氏を驚かせてやろうと思ったのに。
中から聞こえてきたのは、知らない男の声だった。
「ねえー、このアイス食べていい?」
「あー? いいよ。俺んじゃないし。それよりさ、もう一回……」
その声に答える彼氏の声には熱が込められていて、受けは愕然とする。
ドアが少し開いちゃってる。どうしよう。こいつの彼氏は俺だって乗り込もうか、なんて考えた。
だけど聞こえてきた言葉は。
「誰のなんだよ」
「あー、あれ」
すると、相手の男がクスクス笑う。
「あー、アレね」
なんだよアレって。受けはカッとなる。乗り込んでやる! と思ってドアをもっと開く。
「あんな可愛くない奴、もういいよ」
「ひど。せめて振ってやりなよ」
「そんなことよりさ、もう一回……」
ガサゴソという衣擦れの音と、リップ音が聞こえる。
受けは叫びたくなって、でも涙で視界がぼやけて喉が痛くてできなくて、代わりに思い切りドアを閉めてやった。
怒りながら歩いて、でも原因は天邪鬼な自分にあることは分かってたから八つ当たりもできなくて。
すると涙で前をろくに見てなかったせいでドン! と人にぶつかって転んでしまう。
「だ、大丈夫!? あれ? 受けじゃん!」
という声が降ってきたけど、受けは感情ぐしゃぐしゃで座り込んだまま泣き続けた。
腕を引っ張られて立たされて、どこかのマンションのエントランスの植木のところに座らされる。
「ど、どうしたの? 話聞こうか?」
とアワアワしている男って誰だよと思って涙を拭って見てみると、いつも彼氏が中心になってるグループの後ろの方に薄っすらいる存在感の薄い攻めだった。
背は高いし顔も悪くないけど、猫背で痩せてるせいでなんかパッとしない奴だ。
受けは「こんな奴に言いたくねえ!」と思って、
「アイス食べ損ねた! アイス食いてえ!」
と泣き叫ぶ。
攻めは、
「アイス!? 何アイス!?」
「ソーダ味! 他は許さねえ!」
「ま、待ってて!」
と攻めは走り出す。
受けはボロボロ泣きながら、さっきの彼氏のことを思い返した。
もう一度ってことは、ヤッてたってことだ。
実は受けはまだ経験がなかった。泊まりにいっても、その手前までで「ま、待って!」て止めていた。
「結局そういうことかよ……!」
付き合って三ヶ月。そろそろ清水の舞台から飛び降りてみようかなんて思ってたのに、アイツにとってはもう遅かったらしい。
ボロボロ悔し泣きしている受けの元に、攻めがコンビニのビニール袋をガッサガッサ言わせて戻ってくる。
「ソーダ味、メロンソーダとコーラとソーダとみかんソーダがあって分かんなくて……!」
と大汗を掻いて言う攻めを見て、固まる受け。
「ふ……まさかお前、全部買ってきたのか?」
「だ、だって」
アイスが溶ける前に食え食えーっ! となって、二人でバクバクアイスを食べた。
食べている間に「何やってんだろこれ」とおかしくなってきて、笑顔が戻る受け。
攻めはホッとした顔をすると、
「ねえ、このあと遊ぼうよ」
と誘う。
なので二人でカラオケに行って牛丼食べて、苦しくなって近所の攻めの家に行ってトイレ借りて、二人ともやっぱりお腹冷えて何度もトイレに行く。
受けはゲラゲラ笑いながら、
「これ帰れねえ!」
と言うと、攻めは
「帰らなくていいよ!」
と大笑いした。
こいつこんな愉快な奴だったのかー、知らなかったなーなんて思う受け。
ようやくトイレラッシュが収まると、お笑い番組を見始めて気がつけば夜。
隣にピザ屋があって取りに行けば半額だからとお金を出し合って頼んで、食べてる時にフッと肩の力が抜けてまた泣き始めた受け。
「あ、あのさ。もしかして彼氏と何かあった? ほら、あいつしょっちゅう浮気しまくってるし、でも今回は三ヶ月も続いてると思ってたんだけど……」
「え? どういうこと?」
攻めの話を聞いてみると、攻めは大学の附属高校から一緒に持ち上がった関係。
攻めが真面目に講義のノートを取ったりするのをアテにされていて、離れようとしても絡まれる。
「高校の時に初めてできた彼女がいたんだけど、すぐにあいつが告白してきて俺は振られちゃって」
「え? なにそれ」
「ひどいよなー。彼女はしばらくあいつと付き合ってからあっさり捨てられてさ」
悲しそうに笑う攻め。
「散々やられてポイ、だってさ。その後、彼女からよりを戻したいって言われたけど、もうその時点で女なんてしんじらんねーってなっちゃって」
その彼女に、受けの元彼が、
「人のもんってほしくなるじゃん。手に入れたらもういらないけど」
と言われたと聞いたそうだ。
受けの前では優しくて明るいいい人にしか見えなかった元彼の過去の話に、ドン引きする受け。
「あ……俺、なかなかやらせなかったから、それで……?」
「ごめん、実際何があったの?」
これまでの経緯を話す受け。
一気に攻めに対する熱が引いていって、「あ、そういえばあの時おかしかったかも、あの時も」と積み重なったものが出てくる。
なんとなく簡単にあげちゃダメだと思っていたけど正解だったんだ、と思えた受け。
攻めの話によると、一度見限った相手は元彼は振り向かないらしい。
「あ、じゃあさ、こうしようよ」
と言って受けが提案したのは、搾取されてる攻めが実際振られた受けと一緒にいることで絡まれなくなる、という案だった。
「え、いいの?」
「いいよ。今日一日付き合ってくれたお礼」
ということで、翌日から一緒に過ごすことにした受けと攻め。
これが案外楽しくて、元彼といる時はあんなに意地を張って天邪鬼になっていたのに、攻めといる時はなんだかほっとして意地を張る気にもならない。
嫌なものは嫌、いいものはいいと言えるし、消極的な攻めを励ますのに忙しくて天邪鬼になる暇もない。
受けと一緒にいる攻めを見て、一度元彼からメッセージが届いた。
「最近どうしたの」
という探りメッセージだ。
受けはそれを普通に攻めに見せると、どうせならチビざまあしようぜってことになり、
「他に好きな人ができたから別れて。じゃあねバイバイ」
と送る。
その日は元彼が機嫌が悪かったと聞いて、攻めの家に行ってゲラゲラ笑いながら「ざまあ!」とハイタッチする二人。
「……ありがとな」
攻めの前だと素直になれる受けがお礼を言うと、攻めは
「なんだよそれ。ありがとうは俺の方だし」
と笑い合う。
ふと目が合い、気づくと唇が重なっていた。
そのまま、最後まではしないけどイチャイチャしまくった二人。
「……なあ、あいつに送った内容、本当のことにしたい」
「俺もそう言おうとしてたところだ」
てことで、付き合い始める二人。
元彼は二人があまりにも仲がよさげなので受けを欲しがって奪おうとしたりもしたけど、受けは
「今から攻めの家でアイス食べるからあっちいけよ」
と笑顔で言える様になる。
受けの照れ屋と天邪鬼は急展開についていけないのが理由だったので、ゆっくり受けの心の準備が整うのを待ってくれた攻めには天邪鬼にはならない。
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