ツイノベ集

緑虫

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10 因習村で鬼に取り憑かれちゃった攻めx許容範囲広かった受け(2023.07.05)

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両親共働きで忙しいから、と夏休みの間あまり会ったことのない父方のおばあちゃんの家にお世話になりにきた受け(小学生)。

山奥のど田舎の村は都会っ子の受けにとっては知らないものだらけで、近所に子供がいないからひとりだったけど、そこそこエンジョイしていた。

そんなある日、自分と同い年くらいの格好いい男の子と出会う。

「子供がいる!」
「それ俺の台詞!」

みたいな感じですぐに仲良くなった。

男の子(攻め)も夏休みの間東京から来た子で、状況も受けと似たりよったり。

「子供いないって聞いてたから嬉しい! よかった!
「俺も俺も!」

毎日朝から日が暮れる時まで二人で遊び倒す。

ある日、攻めが言う。

「なんか明日さ、村のお祭りがあるんだって。ばあちゃんが言ってた」
「お祭り?」

自分の祖母からは聞いていなかった受けが首をかしげると、

「なんか選ばれた大人がお面を被って神様に供物をあげるとかって聞いた」
「へえー」
「でも女子供はお祭りの最中は出ちゃいけないんだって。連れて行かれるからって」
「連れていかれる……?」

ずいぶんと気味が悪いお祭りだなあと思った受けは、遊んだ後に祖母に尋ねる。

すると祖母は

「あれはお祭りなんかじゃないよ。年に一度盆の時期に現世に還ってくる鬼を鎮める為の儀式だ」

と教えてくれた。

祖母の話によると、昔この辺りに住んでいた鬼と村の人間が恋仲になった。

二人は駆け落ちしようと計画していたけど、親が人間を閉じ込めてしまう。

時間になっても来なかった人間を心配して人里に降りてきた鬼は人間たちに

「今支度をしておりますのでこちらでお待ち下さい」

と酒を飲まされ酔ってしまう。

泥酔して寝てしまった鬼を人間は串刺しにして殺してしまった。

「鬼に会わせて下さい!」

と泣き叫んでいた人間、鬼の死体の前に連れて行かれ、泣き崩れる。 

すると何を思ったか、鬼の肉を食べ始め、鬼へと変化していく人間。

「化け物だ!」

と武器を向けられ、鬼になった人間は山奥へと消えていった。

村の人間は山狩りを決行。

すると滑落したのだろう元人間の鬼の遺体を発見。墓を作って祀る。

やがてそこは鬼塚と呼ばれるようになり、彼の家は鬼を出した家として鬼塚の名前を名乗ることになった。

それからというもの、鬼塚の一族には時折角が生えた子供が生まれる様に。

「鬼塚って……攻めの名字じゃないか」
「ああ、あそこに孫が遊びに来てるって聞いたけど、その子と遊んでいたのかい」

という祖母。

祖先の鎮魂の為、鬼塚の男衆は鬼に扮して

「腹を空かして現世に戻らないように」

と鶏とか野菜を供物として鬼塚にお供えしてるんだそうだ。 

「でも角なんて非科学的な」

受けが言うと、祖母も

「そりゃあ言い伝えなんてみんなそんなもんだよねえ」

と笑った。

てことで一年目が終了。

夏休みの終わり、二人は

「また来年ここで会おうぜ!」

と約束し、それから毎年夏になると二人で過ごすようになった。

高校生になりスマホも持つようになった二人。

連絡先も交換して、日頃から連絡を取り合うように。 (攻め=東京、受け=どこかの政令指定都)

大学は同じところに行こうなんて話をしていて、俺らこんなに仲よくて彼女できないじゃんとか思っていた受けだけど、この関係が心地よくて

「ずっと攻めといたいなあ」

とほのかな恋心を抱き始める受け。

その夏、大人に数えられる様になった攻めが祭りに初参加することに。

「後でどんなだったか聞かせろよー」
「分かった、楽しみにしてて」

なんて別れた二人。

外に出ちゃいけない夜だけど、そもそも外に出ても何もないので問題ない。

受けは早々に寝ようと窓を開けて蚊帳の中で寝ていると、遠くから男たちの怒鳴り声や叫び声が聞こえる。

するとしばらくして他所の家から懐中電灯を持った男たちがやってきて、異常がないかと声をかけられた。

静かになってしまった鬼塚の方を見に行くという男たちについていくことにする受け。

攻めになにかあったんじゃないかと不安で寝るなんてできなかったのだ。

村の男たちと一緒に鬼塚に向かうと、周囲には血だまりが。

むせ返るような血の匂いの中、倒れている男たちの中に攻めを発見する。

「攻め!」

駆け寄って抱き起こすと、攻めは傷だらけにはなっていたけど生きていてうめき声をあげた。

残りの男衆は全滅で、鋭いなにかで喉を掻っ切られて絶命。

とにかく攻めを連れて帰った。

翌朝起きた攻め、事情を聞かれたけど祭りが始まって早々に気を失って何も見てなかったことが判明。

武器もなにも見つからず、刃物ではないとの医師の判断もあり、事件は迷宮入りになった。

親戚が亡くなってしまって凹む攻め。

「来年からは祭りもなくなるみたいなんだ」

だからもうこの村に来ることはない、と悲しそうに言う攻め。

「一緒の大学に行くんだろ! 一緒に住もうぜ!」

と言った後、不自然すぎる!? しまった、と思う受けだったけど、攻めが泣きながら

「受けといたい」

と言ってくれたので大学受験も頑張って、無事にふたりとも合格。

明るかった攻めは少し陰気になっちゃったけど、心の傷を自分が癒やしたいなんて健気に思う受け。

親も説得して

「攻めくんを元気づけてね」

と言ってもらい、いざ新居へ。

ふたりとも両親共働きでひとりっこだから家事もなんとなくは出来て、分担して共同生活を楽しむ。

だけどある日、攻めの部屋からこの世のものとは思えない悪霊の唸り声みたいなのが聞こえてくる。

なんだろうって見に行っても、攻めの部屋には鍵がかけられていて入れない。

心配した受けは翌朝になり攻めの顔色を窺う。

攻めは目の下にくまが出来て、ろくに寝られていないことが分かった。

遠慮しながらも聞いてみると、

「あの時の夢を見るんだ」

と泣く攻め。

受けは可哀想やらきゅんとしちゃうやらで、

「今夜から一緒に寝る?」

と自分から持ちかけておいて、いや男同士で一緒に寝るとか! 自分は攻めが好きだけどきっと攻めは弱ってるから受けといるだけだしー! と内心大慌てになる。

と、攻めは受けに抱きついて

「一緒に寝る」

と答える。心臓ばっくばくの受け、

「俺がお前を抱き締めて寝てやるからな!」

と言ったけど、

「受けの方がちっちゃいから俺が抱き締めるよ」

と返されてしまう。

そんなこんなでその日から毎晩攻めの布団に潜っては抱きまくらになる日々。

ドキドキしながらくっついてると幸せで、時折攻めがうなされて獣の唸り声みたいに唸っている場面にも遭遇した。

泣きながら呻く攻めをヨシヨシしてあげるとその内収まり、受けは自分が攻めの役に立っていると思えて嬉しかった。

そして迎えた夏休み。

受けは攻めを元気にしてあげようと、二人で一緒にバイトして、いろんなことをする。

なんだけど、祭りのあったお盆の夜だけは攻めが家から出たくないと言うので、受けがずっと隣にいてゲームをしたりして過ごす。

「受け、俺の為にごめんね」
「何言ってんだよ。俺は攻めが大好きだからやってんの」

あ、大好きって言っちゃった、でもまあ伝わらないか、なんて思いながら就寝。

その夜、攻めがまた唸りだす。

いつもと同じくヨシヨシをすると、いつもと違って攻めはもっと苦しみだす。

これはおかしいと攻めを起こそうとすると、攻めが

「ガアアアッ!」

と叫び、頭頂から角が突き出してきた。

驚く受けに滅茶苦茶に掴みかかる攻め。

攻めとしての意識がないのか、受けの服はビリビリにされ、全身舐められて噛まれてヘロヘロになったところで鬼の攻めに抱かれまくる。

「攻め、どうしたんだよ!」

て叫んでも無駄で、朝日が差し込むまでエンドレスでヤられてしまった。

気絶していた受け、攻めの呼ぶ声で目を覚ます。

攻めの頭から角はなくなっていた。

記憶が微かにあった攻め。

心が鬼に乗っ取られて「食いたい」って意識しかなかったと話す。

そして同時に、昨年親戚を殺したのは鬼塚から出てきた鬼で、その中で一番若かった攻めが「活きが良さそうだ」と取り憑かれたことを思い出した。

「お、俺は大丈夫だから。それこそ攻めの方は大丈夫なのかよ?」

と尋ねると、攻めは

「鬼は取り憑いた攻めに同化して暴れようと思ったけど、攻めの好きな相手を食べたら満足して眠りについた」

と話す。

「好きな相手?」
「うん」
「食べた?」
「……うん」

ここでようやく受けの中で、攻めの好きな人=受け、食べた=いただかれた、てことが繋がる。

これからも暴れさせない為には定期的に受けを食べないといけなくて、

「ご、ごめん……いやだよね」

としょんぼりする攻め。

すると受けは

「俺が残念だったのは、初めてがお前じゃなくて鬼だったってことだよ」

と顔を赤らめながら言う。

「えっ?」
「えっじゃねえよ!鈍感!」

てことで、両思いになる二人。

それからは「鬼が出てこないようにしないと」ってしょっちゅういただかれる受け。

二人ともラブラブなので翌年の夏は鬼は現れなかったけど、受けが男女問わず話しかけられたり親しげに肩を組まれたりすると、角が出て荒ぶれちゃう。

そんな時は鎮める為に翌日立ち上がれないほどに抱かれる受け。

鬼になる時の攻めは正直怖いけど、それでも好きだと求められているのが分かるので、受けは

「一生俺を食えよ」

と言い、攻めは

「お前以外は食べる気にならないよ」

と幸せなキスをするのであった。


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