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緑虫

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7 ワンコ系腹黒後輩 x ほんわか流され受け/社会人BL(2023.06.27)

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社会人歴3年目の受け。

元々大人しい性格で人と話すのも苦手だったけど、営業部に配属されて受けなりに頑張っていた。

同期のAはイケメンで明るくて、受けが同性好きなのをある時言い当てる。

「俺のこと、よく見てるよな」

バレた! と焦る受け。

受けはAの見た目が好みで、目の保養で眺めていた。

見た目は悪くないけどいまいち垢抜けない受けは、部署内での評判もいまいち。

自分に自信がなくて、これまで告白もできなかったしカミングアウトもしたことがない。当然恋人がいたこともないし、全部未経験。

受けは「皆には黙ってて!」と同期に頼んだ。

それからというもの、Aがやたらと絡んでくるようになる。

飲み会ではやたらとAに飲まされ、フラフラになったところでお持ち帰りされてしまった。

「ど、どうして……」

と痛みに泣く受けに、

「何おまえ初めてだったの?」

と笑うA。

Aはどっちもいける人で、

「これからよろしくな」

とキスされ、

「えっ? どういうこと? ま、まさか恋人?」

て混乱しながらも、誘われるがままに会っては身体を重ねるようになる。

好きとは言われないけど、自分も言ってないしこれは恋人ってことだよね? と浮かれる受け。

見た目と身体から始まった関係だったけど、受けは段々とAに夢中になり、幸せだった。

そんな受けを見て、隣の席の後輩くんが

「先輩、最近明るいですね。なんかいいことあったんですか?」

とわんこ系の可愛い笑顔で聞く。

「あ、う、うん、まあね」
「……まさか恋人できたとか?」
「あっ。うーん、ど、どうなんだろ……? あはは」

って感じで誤魔化してみたけど、顔に出てるのか、とにやける受け。

そんなある日。

月末で大忙しで、後輩くんと受けが残業をして会社を出ると、Aが別部署の女性とホテルに入るところを目撃してしまう。

後輩くんは

「先輩、飲みに行きましょうよ!」

と笑顔。でも受けはショックすぎて、

「ご、ごめん。今日は疲れたから……」

とフラフラと帰宅。

Aに連絡をしようと思ってはやめ、結局朝まで寝られずに寝不足で出社した。

目の下にくまを作った受けを見て、

「どうしたんですか!」

と心配する後輩くん。

恋愛初心者の受け、

「相談乗りますよ」

と言ってくれた後輩くんの言葉につい

「恋人だと思ってた人が別の人とホテルに……」

て言ってしまう。

話を聞いて怒った後輩くん。

「それはちゃんと確認して、浮気だったらスパッとこっちからフッちゃうんですよ!」
「確認、しないと駄目?」
「当たり前です!」

ということで、その日の夜にAを呼び出す受け。

「どうしたの、そっちからなんて珍しいじゃん」

と腰を抱くAに、受けは頑張って昨日見たことを伝える。Aが「ごめん、出来心だった」とか言えば、許せると思った。だけどAが言ったのは、衝撃的な言葉だった。

「あーあれ? 見てたんだ」
「は?」
「あの子さ、副社長の娘なんだよ。俺のことが好きなんだって」
「は? え?」

相手だけでなく副社長にも結婚を匂わされているそうだ。

「俺も玉の輿は乗りたいしさ」

とあっけらかんと笑うA。

唖然としている受けを抱き寄せると、

「でも受けとの関係は続けていーよ。これからもセフレでいような」

とキスされそうになり、頭が真っ白になる受け。

「……セフレ?」
「え? 俺たちの関係ってそうだろ? まさか受け、俺のこと好きなの? うけるんだけど」

と言われた受けは、お金を置いて、

「帰る。もう二度と僕に関わらないでくれ」

と席を立つ。

「えっ! おい、受け! 待てよ!」

向こうからぐいぐい来ておいて、まんまと好きになってしまった自分が馬鹿みたいで泣けてきた受け。

夜の町を泣きながら歩いていると、会社にPCを忘れていたことを思い出す。

涙を拭いて人がまばらの会社に戻ると、席にいたのは後輩くん。

「こんな時間まで残業してたのか?」
「あ、今日はちょっと資格の勉強で……って、先輩!?どうしたんですかその顔!」
「あ」

泣いていたのがばれてしまい、後輩くんに会議室に引っ張られていく受け。

「先輩、話しちゃって下さい。スッキリしますよ」

という後輩くんの言葉が染みて、ぼたぼた泣きながら今日あったことを話す。

「ひどい奴ですねえ。俺だったら先輩にそんなこと絶対にしないのに」

と背中をトントンしてくれる後輩くん。

後輩くんは受けの相手が女だと思ってる筈なので「ん?」と一瞬思ったけど、混乱してたのでスルー。

泣き止んだ受けに後輩くんが、

「じゃあ美味しいもの食べに行きましょ!」

と食事に連れてってくれて、酔った受けをきちんと家まで送り届けて帰った。

そんな優しい後輩くんに、「情けないところ見せちゃったなあ。明日からはしっかりしよう」と元気が出てきた受けだった。

ところが。

次の日から、会社のメールにAから連絡がくるようになる。しかもその内容は反省しているようなものじゃなくて、「次いつ会える?」とか「こっち見て」とかいう自分勝手なものばかり。

昨日まではあんなに好きだったのに、後輩くんに話してすっきりして冷静に見たら、Aがいかに勝手だったかが分かった。

「業務外の連絡は控えて下さい」と返信すると、今度はスマホに連絡がくるように。

振動しまくるスマホを引き出しの中に溜息をつきながら放り込むと、受けの様子がおかしいことに気付いた後輩くんがこそっと聞いてくる。

「先輩? どうしたんですか? 朝はすごくスッキリした顔をしてたのに」
「それが」

もうここまでプライベートがバレてるんだったら、相手がAで男だとさえバレなければいいか、と小声でさっきからメールとメッセージがしつこいことを伝える受け。

「は? そいつ頭おかしいんですか?」
「僕もそう思う」

大きな溜息を吐くと、後輩くんが、

「つきまとわれたりしたら面倒そうですね」

と言う。確かに、と思う受け。

「うん……」

Aは高身長だけど、受けは平均身長で割りと痩せ型。夜道で絡まれたら、間違いなく負ける自信しかない。

「もう一度話をした方がいいのかな?」

と言う受けに、後輩くんは、

「もう無視です! ていうか、先輩が心配です!」

とちょっと怒り気味。

「ていうか、相手は社内の人だったんですね。……誰です?」

と急に低い声を出す後輩くんにちょっと闇を感じる受け。

「あ、いや、それは秘密で」
「なんで。俺と先輩の仲じゃないですか」
「いやそうだけど、これはちょっと言えないっていうか」
「教えてくださいよ! 減るもんじゃないし!」

と小声で顔を寄せ合って押し問答をしていると、遠くの席に座るAがものっすごい形相でこっちを睨んでいる。

それに気付いた受けは、

「ちょ、ちょっと、とりあえず離れろよ! 仕事!」
「後でまた聞きますよ」
「聞くなって」

となんとかその場を収める。

仕事中飲み物を買いにふらりと立つ受け。

すると後ろからいつの間にか近付いていたAに引っ張られ、人気のない方へと連れていかれる。

「ちょ、ちょっと!」

慌てる受けに、めっちゃ怒ってる顔のAが、

「お前さっきのはどういうつもりだよ」

と責め始める。

「さっきの?」
「すっとぼけるんじゃねえよ。俺への当てつけか?」

何のことだろうと首を傾げる受けに、Aが、

「分かったぞ!お前あいつとそういう関係になったから俺を切ろうとしたんだな!」

といい始める。

「は?」と頭の中が? だらけになる受け。

「いや、浮気……というか結婚するんだろ? 俺はもう関わるなって昨日……」

どう考えてもAの主張はおかしい。正論を述べた受けに対し、Aは強引にキスをしようとしてくる。

「ちょっと! やめろよ!」
「受け! 嘘だって言えよ!」

と争う二人。

「俺が結婚なんて言ったから、それで意地悪してるんだろ!? そうだろ!?」

と話を聞こうとしないAに滅茶苦茶抵抗する受け。ずるずるとあんまり人がこない方へ連れて行かれる。

こんな奴のどこが好きだったんだろう、と自分の人の見る目のなさを反省する受け。

恋愛経験が皆無すぎて求められているのを愛されていると勘違いしたと気付く。

とうとう強引にキスされる受け。

ガブリと唇を噛んだら、今度は突き飛ばされてしまう。

「お前、俺に逆らうのか……!」

と馬乗りしてくるAに「殴られる!」と固まる受け。

「……なにやってんだよ!」

バタバタという足音が近付いてきたと思った瞬間、受けの上からAが消えた。

全然戻ってこない受けを探しにきた後輩くんがAの襟首を掴んで壁に押している。

「Aさん、やっぱりあんただったのか!」

怒る後輩くん。

「や、やっぱり?」

問い返す受け。

「こいつ常習犯です!」

受けは情報通じゃないので知らなかったけど、Aは社内であちこちに手を出してはポイッと捨てていたらしい。

しかも全部セフレだけど付き合ってる雰囲気を出していた。

「俺の先輩をよくも傷つけたな!」
「わ、悪かった! 顔は殴るな! 顔は……!」

と半泣きのA。

するとちょっと落ち着いた後輩くんがAの耳元でぼそぼそと何か低い声で呟いている。

何を話してるんだろうなーと思いながら受けが見ていると、後輩くんがにっこりして振り返った。

Aは呆然としている。

「じゃあ先輩、戻りましょうか!」
「え ?え?」

Aを放っておいて大丈夫なのかな? と思いながら、後輩くんに肩を抱かれて戻る受け。

不思議そうな受けを見て、後輩くんが、

「Aの素行調査が入ってるんですよ。同期にAに食われたやつが何人もいて、そいつらから聞きました」
「素行調査……」
「副社長の雇った人じゃないですかねえ?」

後輩くんのネットワークに驚く受け。

「だから暫くは大人しいと思いますけど、危険だから僕が送り迎えしますね!」
「え?」

ということで、何故かその夜に一緒に後輩くんの家に寄って荷物をまとめてから受けの家に行き、合鍵も渡してと言われてなし崩しに渡して一緒に住み始める二人。

布団がひと組しかないので一緒に寝るし、なんなら「隙間が寒い」と後ろから抱き締められる毎日に脳みそがバグる受け。

そんなことされていたら当然意識しちゃうんだけど、いや、後輩くんはそういうつもりじゃないんだ! と今度は流されないぞと決意する。

なんだけど胃袋は掴まれるし趣味の映画鑑賞の好みが似てたりとか、掃除が得意な受けを滅茶苦茶褒める後輩くんに絆されていく受け。

しばらくしてAが地方支社に異動。

副社長の娘との結婚はなくなったらしい。

未練がましく受けに何度か復縁を迫ろうとしていたけど、後輩くんが全部ガードしていた。(受けは知らない)

実質左遷になったAがいなくなったことで、後輩くんももう受けを守らなくてよくなる。

寂しいなと思った受けは、いつの間にか後輩くんを好きになっていたことをようやく自覚する。

後輩くんが、

「そろそろ自分の家をなんとかしなくちゃ……」

と出ていく感じのことを言い始めたので、受けは勇気を振り絞って

「こ、後輩くんが好きなんだ! これからも一緒に住みたい!」

と伝える。

後輩くんは、

「言えましたね、偉いですね」

と受けを褒める。

「自分の家、契約解除してこっちに完全に引っ越そうかと言いかけてました」

と笑う後輩くん。言わされた、と唖然とする受け。

後輩くんはずっと受けのことが好きで、でも同性が好きか分からなくて少しずつ距離を詰めていたところAに奪われてしまい、ずっとやきもきしていた。

Aのことで傷ついていた受けにすぐに告白しても受けは断るだろうと考えた後輩くんは、守る名目で囲い込み作戦を決行。

後輩くんのことを好きだと自覚してもらえるまでずっと待っていた。

「好きです、先輩」
「僕も」
「やっぱり少し広い家に引っ越しません?」
「シアタールームほしい!」
「僕はお揃いの指輪ほしいです」

なんて感じで、元は大人しくて全然主張できなかった受けは後輩くんの前ではやりたいこと、好きなことを言えるようになった。

後輩くんは優しい受けが案外もてることを知って片っ端から潰していっていることは黙ったまま、幸せに暮らしましたとさ。

補足

後輩くんは受けが誰かと付き合い始めた段階で相手をAと断定、Aの噂を掻き集めてAが最低野郎だと知った。

Aの素行調査をした方がいいとチクったのも後輩くんで、でも受けを傷つけない為にはどうしたら……と悩んでいたところ、Aがやらかしてチャンス到来した。
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