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87 出発の日
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俺とロイクの決闘後しばらくの間、ヒライム王国は大混乱に陥った。
ロイクの退位が突然告げられたと同時に、戴冠式を省略してのクリストフの即位に、国は不安と混乱に包まれたのだ。
だけど前王妃となったオリヴィアが国民に対し「ロイクは精神的な病魔に侵され、正常な統治が行なえる状態ではなくなった。力が衰えたとはいえ聖女である自分がこれから全力を以て回復に努めるので、どうか静かに見守っていて欲しい」と声明を発表したことから、騒ぎは次第に落ち着いていった。
はじめこそ「王位簒奪では」という声もあったらしいけど、城の主塔から度々聞こえてくるロイクの狂ったような叫び声を臣下が耳にするにつれ、「ロイク前国王は本当に気が触れてしまったのだ」と納得されるようになっていった。
突然王位を継ぐことになってしまったクリストフや、俺以外に対しては比較的まともだった旦那を奪われてしまったオリヴィアに対し謝罪すると、二人はきょとんとして「何言ってるの?」と返す。
「二人とも、大好きだよ……!」
旅装の俺が二人まとめて抱き寄せると、優しい抱擁が返ってきた。
家族もアルバンとセルジュも失った俺にとって、オリヴィアとクリストフは、今や俺の大切な家族になっていたんだ。だからちゃんと帰ってくる。俺は二人に約束した。
「沢山羽根を伸ばしてきてね、ビイ」
「うん。クリストフ、あんまり無理すんなよ」
「ファビアン、こっちは心配しないでいいからね」
「うん。ありがとうオリヴィア」
ちなみにクロイスは、家族であり仲間であり恋人という俺の大切を全部詰め込んだ存在だ。言葉には言い表せないくらい大事で好きで仕方ない。
だからクロイスに抱かれる度に伝えているのに、クロイスはまだ信じ切れていないようだった。
クロイス曰く、長年俺に片思いをしてきたのに恋心に気付いてもらえなかったから、「たまに今は夢を見ているんじゃないかって思うんだ」とのことらしい。
まあ確かに、まさか恋愛的な意味で好かれてるとは思ってもみなかった。俺はそういうところは相当鈍いのは、アルバンの時で証明済みだからな。
どう言ったら安心してもらえるのかを考えた結果、「オリヴィアに『神の審判』を掛けてもらうか」と聞いたら、慌てて止められた。
そんな試すようなことをしなくても信じてる、疑った訳じゃないんだって懸命に訴えられて、キュンとして俺から飛びかかって美味しくいただかれてやったのは昨夜の話だ。
まだ言葉が足りないかと思い、ヤッてる最中にクロイスに好きだ愛してるって言いまくったら、途中からぼろぼろ泣きながら俺を抱いていた。あー可愛い。
可愛すぎたせいで物理的に食べたくなって、身体中を舐めまくってやった。そうしたらいつの間にかひっくり返されていて、今日の俺も全身鬱血痕だらけになっている。
とてもじゃないが人前に晒せないと文句を言ったら、「オレ以外の誰にも見せたくないからね」と真顔で言われて確信犯だったことを知った。
本当可愛いよな、俺の年下の恋人。精神年齢は多分同じくらいだけど。
家族との抱擁が終わると、いよいよ旅の始まりだ。
「二人が戻ってくる頃には、同性婚の法律を制定しておくから楽しみにしててよ」
と、これはクリストフ。
「情けないのが可愛いと思って、細かいところまで目を配らなかったのが敗因だったわ。ファビアンたちが戻ってくるまでに、できるだけ調教を済ませておくから心配しないで」
と、これはオリヴィア。調教ってなんだろうと思ったけど、聞かないでおいた。世の中、知らなくてもいいことは山のようにある。
「じゃあ行ってくるな!」
「いってきます」
俺とクロイスがオリヴィアとクリストフ国王夫妻に手を振ると、皆は笑顔で手を振りながら俺たちを送り出してくれた。
思い出が詰まった屋敷を空けるのは少し寂しかったけど、俺の心の中にはアルバンとセルジュがいる。二人も旅に連れて行くつもりだから嫉妬するなよとクロイスに伝えたら、「二人を愛したビイごと好きだから大丈夫」と答えてくれた。俺は本当に愛されてるなあ。
「じゃあ行こうか、ビイ」
クロイスが俺に手を差し出す。俺はクロイスの手を握り締めると、「へへっ」と笑いかけた。
ロイクの退位が突然告げられたと同時に、戴冠式を省略してのクリストフの即位に、国は不安と混乱に包まれたのだ。
だけど前王妃となったオリヴィアが国民に対し「ロイクは精神的な病魔に侵され、正常な統治が行なえる状態ではなくなった。力が衰えたとはいえ聖女である自分がこれから全力を以て回復に努めるので、どうか静かに見守っていて欲しい」と声明を発表したことから、騒ぎは次第に落ち着いていった。
はじめこそ「王位簒奪では」という声もあったらしいけど、城の主塔から度々聞こえてくるロイクの狂ったような叫び声を臣下が耳にするにつれ、「ロイク前国王は本当に気が触れてしまったのだ」と納得されるようになっていった。
突然王位を継ぐことになってしまったクリストフや、俺以外に対しては比較的まともだった旦那を奪われてしまったオリヴィアに対し謝罪すると、二人はきょとんとして「何言ってるの?」と返す。
「二人とも、大好きだよ……!」
旅装の俺が二人まとめて抱き寄せると、優しい抱擁が返ってきた。
家族もアルバンとセルジュも失った俺にとって、オリヴィアとクリストフは、今や俺の大切な家族になっていたんだ。だからちゃんと帰ってくる。俺は二人に約束した。
「沢山羽根を伸ばしてきてね、ビイ」
「うん。クリストフ、あんまり無理すんなよ」
「ファビアン、こっちは心配しないでいいからね」
「うん。ありがとうオリヴィア」
ちなみにクロイスは、家族であり仲間であり恋人という俺の大切を全部詰め込んだ存在だ。言葉には言い表せないくらい大事で好きで仕方ない。
だからクロイスに抱かれる度に伝えているのに、クロイスはまだ信じ切れていないようだった。
クロイス曰く、長年俺に片思いをしてきたのに恋心に気付いてもらえなかったから、「たまに今は夢を見ているんじゃないかって思うんだ」とのことらしい。
まあ確かに、まさか恋愛的な意味で好かれてるとは思ってもみなかった。俺はそういうところは相当鈍いのは、アルバンの時で証明済みだからな。
どう言ったら安心してもらえるのかを考えた結果、「オリヴィアに『神の審判』を掛けてもらうか」と聞いたら、慌てて止められた。
そんな試すようなことをしなくても信じてる、疑った訳じゃないんだって懸命に訴えられて、キュンとして俺から飛びかかって美味しくいただかれてやったのは昨夜の話だ。
まだ言葉が足りないかと思い、ヤッてる最中にクロイスに好きだ愛してるって言いまくったら、途中からぼろぼろ泣きながら俺を抱いていた。あー可愛い。
可愛すぎたせいで物理的に食べたくなって、身体中を舐めまくってやった。そうしたらいつの間にかひっくり返されていて、今日の俺も全身鬱血痕だらけになっている。
とてもじゃないが人前に晒せないと文句を言ったら、「オレ以外の誰にも見せたくないからね」と真顔で言われて確信犯だったことを知った。
本当可愛いよな、俺の年下の恋人。精神年齢は多分同じくらいだけど。
家族との抱擁が終わると、いよいよ旅の始まりだ。
「二人が戻ってくる頃には、同性婚の法律を制定しておくから楽しみにしててよ」
と、これはクリストフ。
「情けないのが可愛いと思って、細かいところまで目を配らなかったのが敗因だったわ。ファビアンたちが戻ってくるまでに、できるだけ調教を済ませておくから心配しないで」
と、これはオリヴィア。調教ってなんだろうと思ったけど、聞かないでおいた。世の中、知らなくてもいいことは山のようにある。
「じゃあ行ってくるな!」
「いってきます」
俺とクロイスがオリヴィアとクリストフ国王夫妻に手を振ると、皆は笑顔で手を振りながら俺たちを送り出してくれた。
思い出が詰まった屋敷を空けるのは少し寂しかったけど、俺の心の中にはアルバンとセルジュがいる。二人も旅に連れて行くつもりだから嫉妬するなよとクロイスに伝えたら、「二人を愛したビイごと好きだから大丈夫」と答えてくれた。俺は本当に愛されてるなあ。
「じゃあ行こうか、ビイ」
クロイスが俺に手を差し出す。俺はクロイスの手を握り締めると、「へへっ」と笑いかけた。
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