勇者に執着されて絶望した双剣の剣聖は、勇者の息子の黒髪王子に拘束されて絆される

緑虫

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63 堂々めぐり※

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 ジュプジュプと、卑猥な音が部屋に響く。

 俺の目に、とんでもない光景が映し出されていた。俺の可愛いクロイスが、俺の股の間から顔を出して俺の俺をうまそうにしゃぶっているんだぞ。これがとんでもなくて何なんだ。

 嘘だろ……。気持ちよくて脱力しそうなのがこれまたヤバい。こいつ経験があるのかな。

 両手は縛られてはいるものの、動かせはする。俺は手を下ろすと、クロイスの頭を押そうとした。でも片手で掴まれてしまい、徒労に終わる。

 そうこうしている間にも、クロイスの口淫は俺を高みへと引っ張り上げていっていた。

「あ……や、やめ……っ」

 口と手で好き勝手に扱かれ、思い切った抵抗がどうしてもできない。俺の身体は、どんどん快楽を期待して喜んでしまっていた。

「こら……っ口、放せ……! あ、出……っ」

 もう駄目だ。俺の雄は脈動を始めると、よりによってクロイスの口の中に精を放つ。どくどくいう心音とは反対に、俺の身体は一気に脱力してしまった。

「ああー……もう、どうすんだよこれ……っ」

 思わず嘆くと、ぺ、と口から性液を手のひらに吐いたクロイスが、火照り気味の欲情した顔で言った。

「オレもビイに話してなかったことがある。ビイが俺に真実を話してくれたら、オレも真実をビイに話す」
「し……真実?」

 脱力してる股の間から出ているクロイスの端正な顔を見つめる。クロイスの瞳は絶望なんて知らない色に輝いていて、俺はふいっと目を逸らした。

「クロイス、まだ、多分まだギリギリ間に合うから……、だから頼む、俺を行かせてほしい」

 本当は俺だって離れたくない。でも、もうロイクに狙われ続けるのはうんざりなんだ。

 恋をしたら片っ端から踏み潰される。大切だと思えば思うほど、奪われていく。

 この前あいつは、あいつが死ぬ日に俺を抱くとほざきやがった。あいつは本当にしつこい。執着の塊みたいな野郎だから、このままだと俺は幸せなんて二度と味わえないまま、ここでロイクが死ぬその日を待ち侘びるしかなくなる。

 だけど、クロイスが俺を抱いたら、俺はきっとクロイスに絆されてしまう。絆された俺は、クロイスを突き放すことなんてできやしないだろう。

 ロイクは、俺の変化にすぐ気付く。俺が少しでも普段と違う態度を見せた瞬間、クロイスは死んでしまうんじゃないか。あいつは実の息子だろうが、俺の心を奪う奴は絶対に許さないんだから。

 俺は人を愛してしまったら、隠せない。だから俺の心に入ってこないよう、クロイスがいくら俺に甘えてきても絆されないようにクロイスも俺の心も牽制してきたのに、全部無駄になってしまう。

 ――もう失いたくないんだよ。どうして分かってくれないんだ。

 俺は縛られた両手で顔を覆うと、嗚咽を漏らした。

「俺じゃお前を守り切れないんだ……っ! 俺を好きになった奴が死ぬ苦しみなんて、もう二度と味わいたくないんだよ!」
「オレは死なないよ」
「死んじゃうんだよ! 皆そうだった!」

 俺は頭に血が上ってしまい、おっさんが何してんだと思うけど、いつしかボロ泣きしながら叫んでいた。

「やだよ! クロイスは死なせるもんか! だから俺を行かせろよ! 俺を忘れろよ!」
「オレは死なないよ」
「死ぬんだってば!」

 俺の叫びを聞いて、クロイスはむっとした表情になると唇を噛み締める。

「……堂々めぐりで話が進まないから、無理やり進める」
「は? おいクロイス……うおっ!」

 くちゅくちゅと捏ねた指先を、クロイスは俺の後孔にいきなり挿れた。いきなりすぎるぞ!

 すると、クロイスは怪訝そうな顔をする。

「柔らかいんだけど……」
「う……っ」

 ぎくりとした。しまった。旅に出る前に抜いておこうと思って、昨日は日中例の玩具を使ってひとりぬぽぬぽしていたのがバレたか。

 と思ったら。

 俺の穴にずぷりと指を沈めながら、クロイスが低い声で尋ねてきた。顔が怖い。

「……誰かに抱かれてたの?」
「はあ!?」
「最近抱かれたから柔らかいんじゃないの?」
「ち、違う! これは……!」

 俺は大慌てで床に置かれた鞄を両手で差した。

「鞄の中を見りゃわかる! あそこに入ってる玩具がなっ」

 俺は何故必死に言い訳しようとしてるんだと途中で気付いた。いや、本当なんで?

 クロイスはくちゅくちゅと指を動かし続けたまま、もう片方の手をくいっと上げる。すると、鞄が淡い光を放ち、スーッと俺たちの横まで飛んできた。何これすげえ。

「……どれ」

 ギロリと鞄を見るクロイス。美形が怒ると怖いってば。

「こ、これ……っ」

 動かしにくい手を使ってガサゴソと例の男根の玩具を取り出して見せてやると、クロイスがようやく真顔に戻った。……ほっ。

 て、なんで俺はほっとしてるんだって! 相手は元弟子! 二十歳も年下!

 クロイスの二本目の指が差し込まれる。

「最近誰にも抱かれてない?」

 疑り深いなこいつ。あ、俺のいいところに指を近付けるな!

「んんっ!」

 ビクンと反応すると、クロイスの目が細まった。

「……ここが気持ちいいの?」
「あっ、や、やめ……!」

 ゾクゾクゾクッと身震いする俺を見て、クロイスが嬉しそうに微笑む。

「で、最近は誰にも抱かれてない?」

 抱かれない為に不定期で夜中に行ってたんだけどね、とボソリと言われた。……マジですか。あれってそういう意図だったの。大好きな師匠との語らいをしたかっただけだったんじゃねえの。

「だ、抱かれてないっ! 俺を最後に抱いたのはセルジュだよ!」
「セルジュさん……じゃあ大分前だね。よかった」
「だから恋人なんて作ったら、あいつが殺すから作れなかったんだってば! もうやめよう、な!?」

 涙ながらの俺の訴えも虚しく、クロイスは三本目の指を差し込んでしまった。拙い、そろそろ本気で拙い。

「クロイス! 今なら間に合う!」
「ビイが強情だから、話を先に進めることにしたんだ」
「話って何をだよ!」

 すると、クロイスが下履きからそそり立った雄を取り出しながら、にっこりと笑う。いや、顔の割に立派なもんをお持ちで……。

「オレを助ける為にいなくならないようにするには、ビイを抱いて既成事実を作ればいいってことだもんね」
「は……?」

 クロイスがぐちょぐちょと俺の穴を掻き混ぜ続けて、やめなくちゃと思うのに身体はどんどん興奮に包まれていった。やばい、気持ちいい、挿れて欲しいって思っちまってる。

「そいつがオレを殺しにくることになれば、ビイはオレに話をせざるを得ない。そうしたらオレも秘密を話すから、ビイはオレを信じてくれる。きっと」
「ま、待て、もう一度ちゃんと話し合いを……」
「うん、話はオレを感じながらしようか」
「待――ッ」

 クロイスの指が抜かれた直後、カチカチの重量感のある熱い棒が、俺の中に沈んでいった。
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