勇者に執着されて絶望した双剣の剣聖は、勇者の息子の黒髪王子に拘束されて絆される

緑虫

文字の大きさ
上 下
37 / 89

37 最後の戦いへ※

しおりを挟む
 明日はいよいよ最後の決戦だ。

 万全の体勢で挑みたい気持ちはあったけど、どうしても不安が拭えない。寝返りを繰り返していると、セルジュが起き上がり俺の額に優しい口づけを落とした。

「寝られませんか?」
「ん……」

 セルジュは俺の副官扱いだから、俺の警護も兼ねてずっと俺の天幕で寝泊まりさせている。セルジュが常に俺の隣にいてくれたから、俺は今日まで壊れずに生きてこれたんだろうと思った。

 手を伸ばし、セルジュの無精髭を撫でる。愛おしさで胸が苦しくなった。

「……ごめん、セルジュ。疲れてるだろ?」
「いえ。私も変に目が冴えてしまっていて」
「そっか……」

 多分、明日は大勢の人が死ぬ。その中に自分がいないとどうして言えるだろう。俺はセルジュを全力で守る気でいたけど、セルジュはセルジュで俺を守ろうとするから困ったものだった。

「……する?」
「いいのですか? お体に響きませんか?」

 セルジュもしたかったみたいだ。俺は小さく笑うと、「ゆっくりシようよ」とセルジュの雄に手を伸ばした。セルジュが気持ちよさそうな吐息を漏らす。

「ファビアン様、愛してます」
「俺もセルジュを愛してるよ」

 穏やかな口づけを交わしながら互いの服を脱がせ合い、もう何度重ねたか分からない身体を重ねていった。

 セルジュの雄が完全に勃ち上がると、セルジュは俺の後孔を濡らす為に布団の中に潜っていく。ぐちょぐちょと指と舌で解されて、セルジュ専用の穴となったそこは物欲しげにクパクパと息をし始めた。

「セルジュ、挿れてよ」
「はい。――いきますよ」
「うん。……ぅんんっ」

 ズブズブと俺の中に沈んでいくセルジュの雄は今日も熱くて、途端に俺の全身に痺れにも似た快感が走る。

「セルジュ、ん、あ」
「ファビアン様、可愛いです……っ」
「いつまで経っても可愛いかよ……っ! あんっ」

 ぎりぎりまで出ては入っていく長い抽送を繰り返されている内に、俺の雄は勝手にとろとろと白濁した液体を垂らしていった。

 これが最後にならないように、明日は頑張らなくちゃ。

「ぎゅっとして、セルジュ」
「ファビアン様、ファビアン様……っ」

 俺たちはぎゅうう、と抱き締め合うと、やがて俺が蕩け尽くされてセルジュがようやく俺の中に熱を吐き出すまで、離れることはなかったのだった。



 翌日、最後の戦いが始まった。

 ラザノが引き連れてきた暗部の選りすぐりは選りすぐられただけあって、非常に優秀だった。

 これまで俺たちが突破できなかった神殿の高い壁をスルスルと登っていくと、しばらくして中から門が開けられる。

 門の外で待ち構えていた俺たちは神殿の中になだれ込むと、切りかかってくる神兵たちと応戦を始めた。

 さすがは神殿なだけあって、これまでは殆どなかった魔法攻撃が時折飛んでくる。

 だけど、四英傑のひとりで厄災を倒すまでの間に魔法攻撃に慣れていた俺は、魔法攻撃を繰り出す神兵をさっさと倒していった。

「ファビアン様! おひとりで突っ込まないで下さい!」

 俺を追って、乱戦となっている神殿の通路をセルジュが駆けてくる。

「ファビアン様のお側は絶対に離れませんので!」
「俺の背中は頼んだぞ!」
「はい!」

 俺は双剣の英傑で、セルジュは騎士団長だ。二人合わせれば、とんでもなく強い。

 俺たちが剣を振るう度に俺たちの周りから敵兵が消え、気がつけば神殿の最奥に続くと思われる通路に出ていた。

 通路を走り抜け、最奥にある豪奢な扉の前に到着する。

 内側から鍵が掛けられていたので、力任せに扉を切りまくった。

「ひ、ひいいいっ!」

 扉を蹴飛ばし中に踏み入ると、そこにいたのは高そうな神官服を身に纏ったブヨブヨの中年男性。

「お前が教皇か?」
「ひいっ! お、お、お許しを……! 聖女様、お助け下さいませ!」
「オリヴィアを閉じ込めて苦しめてた奴が何言ってんだよ」

 思わず吐き捨てると、教皇らしき男が目を見開いて俺を見つめた。

「聖女様のお名前を呼べるとは……! その銀髪、その腕の痣! まさか剣聖様ですか!」
「そうだよ、文句あるか」
「剣聖様! どうぞ命ばかりはお助けを!」

 教皇は涙と鼻水を撒き散らしながら、俺の足元に平伏す。うわ、こりゃひでえ。

「……いかが致しますか?」

 びいびい泣いている教皇に一瞬で戦意喪失してしまった俺に、同じく呆れ顔のセルジュが尋ねてきた。俺は頭をガリガリ掻きながら、答える。

「うーん。とりあえず聞くこともあるだろうし、拘束しようか」

 セルジュがこくりと頷いた。

「畏まりまし――……ゴフッ」

 明らかにおかしな空気音がして、俺はセルジュを見つめる。

「セルジュ?」
「ファ、ビア……」

 目を見開いたセルジュが、次の瞬間カハッと口から血を吐いた。いつも熱が籠もった茶色い瞳には、困惑が浮かんでいる。は、は、と苦しそうに息をするセルジュ。

「――セルジュ!」
「う、うわああっ!」

 教皇が四つん這いで逃げていくのを尻目に、俺はセルジュの元に駆け寄る。カラン、とセルジュの右手から剣が床に落ちていった。

「セルジュ! どうしたんだよ!」

 ふらついているセルジュを抱きとめると、セルジュの頬に触れる。昨日口づけたばかりのセルジュの口から、またゴフッと赤い血が飛び出してきた。何だよこれ、何だよこれ!

 セルジュの背中に触れると、ぬめりを感じる。……え。

 と、俺の背後でヒイヒイ言っていた教皇が突然「ぎゃんっ」と声を上げた。一瞬振り返ると、教皇の身体が床に倒れて……首が転がっていっている。え、え。

「ファ、ビアン、様……」
「セルジュ! セルジュ!」

 俺は混乱してしまい、涙が勝手に溢れ出してきた。訳が分からない。何が起きたっていうんだよ!

 すると、扉の向こうから聞き覚えのある声が響いてくる。

「――おや、大変申し訳ない。教皇を狙ったつもりが、暗くて間違えて騎士団長様を狙ってしまいましたか」
「は……?」

 セルジュの肩越しに見えたのは、ラザノのニヤニヤした笑顔だった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

処理中です...