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12 別れの決意
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四英傑、いや今や三英傑となってしまった俺たちの凱旋先は、今回の厄災討伐で勇者ロイクを輩出したヒライム王国だ。
ロイクはヒライム王国へ戻れば王太子となり、いずれは国王となる。するとオリヴィアは未来の王妃様ってことだ。
早く地位を盤石なものにしたいのだろうロイクとオリヴィアは、すぐに出発することを提案してきた。
確かにこのまま暗黒竜がいなくなった城にダラダラいても仕方ない。俺は素直に提案に従った。
「魔物がいないなら、早く戻れるだろう」
「行きは魔物だらけだったものね」
微笑み合う二人の後ろに続いて、城門を潜り城の外に出る。俺たちが行きにここを潜った時は、クロードがいた。四人で拳を合わせて厄災討伐後の夢を語ったのは、そんな前の話じゃないのに。
立ち止まり、城を振り向く。クロードの痕跡をギリギリまで探したけど、結局少量の血痕以外は何も見つけることができなかった。服の切れ端も、髪の毛一本すらない。
いつかまた会えるから。必ず会いに行くから待っていてと、クロードは俺に言った。
死んじゃったのに、どうやって会いに来るんだよ。会いに来るなら、今すぐ帰ってきてよ。それで一緒に城を出て、二人で俺の実家に墓を建てに行こうよ。
伝えたい相手は、もうこの世にいない。
「う……っ」
一度は止まった涙が、再び溢れてきた。そんな俺を見て、オリヴィアが眉を下げる。
「……ファビアン、元気を出して」
「そうだよファビアン。クロードはファビアンに生きて欲しくて犠牲になったんだ。クロードの願いを叶える為に、苦しくても笑顔で前を向いていこう」
「……」
涙目でロイクを見ると、ロイクは仲間といる時の勇者の顔になっていた。ロイクが今どんな心境なのか、聞いてみたくなる。ろくなもんじゃない気がしたけど。
「……さ、クロードにお別れを言いましょう」
オリヴィアに言われて、俺は小さく頷いた後、心の中でクロードに尋ねた。
――ねえクロード。会いに行くってもしかして、身体はなくなっても、魂は一緒にいてくれるって意味だったのかな。だったら、今も俺らと一緒にいるの?
当然、返事はない。
――早くいつもみたいに「別に」って言ってよ。
そう思ったら、胸が苦しくなった。
オリヴィアにそっと背中を支えられながら、城を後にする。嗚咽が止まらなくなって、前が見えない。
「よしよし……。ファビアンはクロードに沢山可愛がられていたものね。今はたっぷり泣いていいわ。目が腫れたら、私が治してあげるから」
オリヴィアは優しい。俺は嗚咽を繰り返しながら、コクコクと頷いた。
何も知らない優しいオリヴィアを、ロイクを盗られたからって嫌いになんてなれない。ロイクとの関係にいずれは終わりが来ることは、分かっていたことだ。
だから仕方ないんだ。頭では理解している。その内俺の心も頭の理解に追いついてくることを、ただ待つしかないんだ。
だけど、とふと立ち止まった。
「……ファビアン?」
ロイクが悲しそうな笑顔で俺に問いかける。でも俺は、その表情の意味をこれ以上考える気にはならなかった。
俺を見て股間をおっ勃ててやがった癖に、俺を突き飛ばした。俺に縋りついて慰めてって言ってた口で、俺を拒絶したロイク。悪いとは思ってるんだ、ごめんねって顔か? ふざけんな、俺のケツ穴の純潔を返しやがれ。
心の中で毒づいても、ロイクには聞こえない。
第一、恋人同士となったロイクとオリヴィアと一緒に、ロイクに抱かれた思い出が残る道を戻るのか?
考えたくもない。悪趣味にもほどがある。ぐし、と涙を拳で拭くと、俺は二人に向かって言った。
「……俺はこのままヌデンニックに残るよ」
「え? 何を言っているのファビアン!」
オリヴィアが驚愕の声を上げた。
ロイクはヒライム王国へ戻れば王太子となり、いずれは国王となる。するとオリヴィアは未来の王妃様ってことだ。
早く地位を盤石なものにしたいのだろうロイクとオリヴィアは、すぐに出発することを提案してきた。
確かにこのまま暗黒竜がいなくなった城にダラダラいても仕方ない。俺は素直に提案に従った。
「魔物がいないなら、早く戻れるだろう」
「行きは魔物だらけだったものね」
微笑み合う二人の後ろに続いて、城門を潜り城の外に出る。俺たちが行きにここを潜った時は、クロードがいた。四人で拳を合わせて厄災討伐後の夢を語ったのは、そんな前の話じゃないのに。
立ち止まり、城を振り向く。クロードの痕跡をギリギリまで探したけど、結局少量の血痕以外は何も見つけることができなかった。服の切れ端も、髪の毛一本すらない。
いつかまた会えるから。必ず会いに行くから待っていてと、クロードは俺に言った。
死んじゃったのに、どうやって会いに来るんだよ。会いに来るなら、今すぐ帰ってきてよ。それで一緒に城を出て、二人で俺の実家に墓を建てに行こうよ。
伝えたい相手は、もうこの世にいない。
「う……っ」
一度は止まった涙が、再び溢れてきた。そんな俺を見て、オリヴィアが眉を下げる。
「……ファビアン、元気を出して」
「そうだよファビアン。クロードはファビアンに生きて欲しくて犠牲になったんだ。クロードの願いを叶える為に、苦しくても笑顔で前を向いていこう」
「……」
涙目でロイクを見ると、ロイクは仲間といる時の勇者の顔になっていた。ロイクが今どんな心境なのか、聞いてみたくなる。ろくなもんじゃない気がしたけど。
「……さ、クロードにお別れを言いましょう」
オリヴィアに言われて、俺は小さく頷いた後、心の中でクロードに尋ねた。
――ねえクロード。会いに行くってもしかして、身体はなくなっても、魂は一緒にいてくれるって意味だったのかな。だったら、今も俺らと一緒にいるの?
当然、返事はない。
――早くいつもみたいに「別に」って言ってよ。
そう思ったら、胸が苦しくなった。
オリヴィアにそっと背中を支えられながら、城を後にする。嗚咽が止まらなくなって、前が見えない。
「よしよし……。ファビアンはクロードに沢山可愛がられていたものね。今はたっぷり泣いていいわ。目が腫れたら、私が治してあげるから」
オリヴィアは優しい。俺は嗚咽を繰り返しながら、コクコクと頷いた。
何も知らない優しいオリヴィアを、ロイクを盗られたからって嫌いになんてなれない。ロイクとの関係にいずれは終わりが来ることは、分かっていたことだ。
だから仕方ないんだ。頭では理解している。その内俺の心も頭の理解に追いついてくることを、ただ待つしかないんだ。
だけど、とふと立ち止まった。
「……ファビアン?」
ロイクが悲しそうな笑顔で俺に問いかける。でも俺は、その表情の意味をこれ以上考える気にはならなかった。
俺を見て股間をおっ勃ててやがった癖に、俺を突き飛ばした。俺に縋りついて慰めてって言ってた口で、俺を拒絶したロイク。悪いとは思ってるんだ、ごめんねって顔か? ふざけんな、俺のケツ穴の純潔を返しやがれ。
心の中で毒づいても、ロイクには聞こえない。
第一、恋人同士となったロイクとオリヴィアと一緒に、ロイクに抱かれた思い出が残る道を戻るのか?
考えたくもない。悪趣味にもほどがある。ぐし、と涙を拳で拭くと、俺は二人に向かって言った。
「……俺はこのままヌデンニックに残るよ」
「え? 何を言っているのファビアン!」
オリヴィアが驚愕の声を上げた。
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