勇者に執着されて絶望した双剣の剣聖は、勇者の息子の黒髪王子に拘束されて絆される

緑虫

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7 言い訳

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 ロイクは攻撃魔法やちょっとした補助魔法は使えるけど、回復魔法は使えない。

 だからロイクが俺を抱いた後、俺は動けなかった。内臓が引き攣れていて、ケツの穴もヒリヒリして痛い。魔物と戦って怪我をしても動けるのに、勇者に抱かれたら動けなくなるのか。あまり知りたくはない新発見だった。

「初めてだったんだね。安心したよ」

 ロイクは洗浄魔法をかける際に俺の身体に触れまくり、嬉しそうに唇を重ねた。

「……うるせえ」

 脱力して動けない俺が恨みがましい目で見ると、ぎゅっと抱き締める。

「……ごめん。怒らないで。嬉しくてちょっと我を忘れたんだ」
「痛えよ」
「うん、ごめんね」

 ロイクは更に洗浄魔法で俺たちがヤッた痕跡を消した上で、俺を背負って仲間の元に戻った。

 おんぶされた俺を見て、オリヴィアが血相を変えて俺の元に駆け寄る。

「ファビアン! どうしたの!?」
「オリヴィア……」

 なんて言ったらいいのかさっぱり分からなくて俺が言葉に詰まっていると、ロイクがちょっと困ったような笑みを浮かべて俺の代わりに説明を始めた。

「女の死霊に襲われて、ファビアンの身体が痺れてしまったんだ」
「ええ!?」
「だからオリヴィア、回復してあげてくれるかな?」

 すると、オリヴィアは困った顔になる。

「あまり魔力が残ってないのよね」

 聞けば、隠れていた魔物との戦闘があったらしい。クロードが魔力切れを起こしていたので、オリヴィアの聖魔法しか倒す手段がなかったのだ。

「ならロイク、さっとかめの場所まで連れて行ってくれない? 浄化分の魔力は辛うじて残ってるから」
「ああ、分かった」

 ロイクは頷くと、怠そうに座っているクロードの横に俺をそっと下ろした。

 クロードに向かって、にっこりと笑う。

「クロード、ファビアンを頼んでもいいかい?」
「分かった。早く戻ってこいよ。何だかこいつ、辛そうだからな」

 クロードが、寝転がっている俺の銀髪を撫でた。

 俺たちを見下ろしているロイクは相変わらず勇者然とした余裕の笑みを浮かべていたけど、一瞬その目に嫉妬みたいなギラついたものが見えたのは俺の気のせいだろうか。

「……いってくるね」

 もう一度にこりと笑うと、ロイクは踵を返して霊廟の奥へオリヴィアと共に消えて行った。

 思わずホッと息を吐くと、俺の頭を撫でていたクロードの手が止まる。

「……何かあったのか?」

 クロードは意外と細かい変化によく気付くのだ。そして俺は基本思っていることが顔に出てしまう。

 俺が目線を彷徨わせると、クロードが眉間に皺を寄せた。

「……何をされた」
「い、や、その、……別に」

 クロードの口癖を使わせてもらうと、クロードの眉間の皺が更に濃くなる。

「言え。問題があったらオレが対処してやる」

 問題はある。だけどこんなこと、言える訳がないじゃないか。だから俺は嘘を吐くしかなかった。

「な、ないよ! ほら、死霊って俺の剣じゃ切れなくて、ちょっと怖かったっていうか!」
「……本当にそれだけか?」
「うん! 怖かったから、頭をもうちょっと撫でてよ!」

 正直、先程の出来事は恐怖だった。これから先はもうヤラせるつもりはないけど、俺たちの関係はどうなっちゃうんだろうって考えると、それもすごく怖かった。

 でも、クロードの手は優しいから安心する。

 クロードが、龍の痣が浮かぶ美人な顔を緩ませた。もっと沢山笑ったらいいのにな、なんて思う。

「……くく、ガキみたいだな」
「いいんだよ、ガキだもん」

 ロイクやオリヴィアに子供扱いされると腹が立つけど、何故かクロードに言われても腹が立たなかった。

「仕方ないな」
「……へへ」

 俺は目を瞑ると、クロードが撫でる手の温かみを感じることに専念する。と、不思議と不安が消えていった。

 ――ロイクだって死霊に触れたって言ってたじゃないか。だからあれは、催淫の呪いでちょっとおかしくなっちゃっただけだ。

 だからきっともう大丈夫だ。俺たちは結束の固い四英傑のままだ。

 そう、思っていたけど。

「ファビアン、こっちにきて」

 それからというもの、ロイクはきっかけを見つけては俺と二人きりになる時間を確保し、「ファビアン、私を助けて」と固い雄を俺にこすりつけては俺を抱くようになってしまった。
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