7 / 89
7 言い訳
しおりを挟む
ロイクは攻撃魔法やちょっとした補助魔法は使えるけど、回復魔法は使えない。
だからロイクが俺を抱いた後、俺は動けなかった。内臓が引き攣れていて、ケツの穴もヒリヒリして痛い。魔物と戦って怪我をしても動けるのに、勇者に抱かれたら動けなくなるのか。あまり知りたくはない新発見だった。
「初めてだったんだね。安心したよ」
ロイクは洗浄魔法をかける際に俺の身体に触れまくり、嬉しそうに唇を重ねた。
「……うるせえ」
脱力して動けない俺が恨みがましい目で見ると、ぎゅっと抱き締める。
「……ごめん。怒らないで。嬉しくてちょっと我を忘れたんだ」
「痛えよ」
「うん、ごめんね」
ロイクは更に洗浄魔法で俺たちがヤッた痕跡を消した上で、俺を背負って仲間の元に戻った。
おんぶされた俺を見て、オリヴィアが血相を変えて俺の元に駆け寄る。
「ファビアン! どうしたの!?」
「オリヴィア……」
なんて言ったらいいのかさっぱり分からなくて俺が言葉に詰まっていると、ロイクがちょっと困ったような笑みを浮かべて俺の代わりに説明を始めた。
「女の死霊に襲われて、ファビアンの身体が痺れてしまったんだ」
「ええ!?」
「だからオリヴィア、回復してあげてくれるかな?」
すると、オリヴィアは困った顔になる。
「あまり魔力が残ってないのよね」
聞けば、隠れていた魔物との戦闘があったらしい。クロードが魔力切れを起こしていたので、オリヴィアの聖魔法しか倒す手段がなかったのだ。
「ならロイク、さっと甕の場所まで連れて行ってくれない? 浄化分の魔力は辛うじて残ってるから」
「ああ、分かった」
ロイクは頷くと、怠そうに座っているクロードの横に俺をそっと下ろした。
クロードに向かって、にっこりと笑う。
「クロード、ファビアンを頼んでもいいかい?」
「分かった。早く戻ってこいよ。何だかこいつ、辛そうだからな」
クロードが、寝転がっている俺の銀髪を撫でた。
俺たちを見下ろしているロイクは相変わらず勇者然とした余裕の笑みを浮かべていたけど、一瞬その目に嫉妬みたいなギラついたものが見えたのは俺の気のせいだろうか。
「……いってくるね」
もう一度にこりと笑うと、ロイクは踵を返して霊廟の奥へオリヴィアと共に消えて行った。
思わずホッと息を吐くと、俺の頭を撫でていたクロードの手が止まる。
「……何かあったのか?」
クロードは意外と細かい変化によく気付くのだ。そして俺は基本思っていることが顔に出てしまう。
俺が目線を彷徨わせると、クロードが眉間に皺を寄せた。
「……何をされた」
「い、や、その、……別に」
クロードの口癖を使わせてもらうと、クロードの眉間の皺が更に濃くなる。
「言え。問題があったらオレが対処してやる」
問題はある。だけどこんなこと、言える訳がないじゃないか。だから俺は嘘を吐くしかなかった。
「な、ないよ! ほら、死霊って俺の剣じゃ切れなくて、ちょっと怖かったっていうか!」
「……本当にそれだけか?」
「うん! 怖かったから、頭をもうちょっと撫でてよ!」
正直、先程の出来事は恐怖だった。これから先はもうヤラせるつもりはないけど、俺たちの関係はどうなっちゃうんだろうって考えると、それもすごく怖かった。
でも、クロードの手は優しいから安心する。
クロードが、龍の痣が浮かぶ美人な顔を緩ませた。もっと沢山笑ったらいいのにな、なんて思う。
「……くく、ガキみたいだな」
「いいんだよ、ガキだもん」
ロイクやオリヴィアに子供扱いされると腹が立つけど、何故かクロードに言われても腹が立たなかった。
「仕方ないな」
「……へへ」
俺は目を瞑ると、クロードが撫でる手の温かみを感じることに専念する。と、不思議と不安が消えていった。
――ロイクだって死霊に触れたって言ってたじゃないか。だからあれは、催淫の呪いでちょっとおかしくなっちゃっただけだ。
だからきっともう大丈夫だ。俺たちは結束の固い四英傑のままだ。
そう、思っていたけど。
「ファビアン、こっちにきて」
それからというもの、ロイクはきっかけを見つけては俺と二人きりになる時間を確保し、「ファビアン、私を助けて」と固い雄を俺にこすりつけては俺を抱くようになってしまった。
だからロイクが俺を抱いた後、俺は動けなかった。内臓が引き攣れていて、ケツの穴もヒリヒリして痛い。魔物と戦って怪我をしても動けるのに、勇者に抱かれたら動けなくなるのか。あまり知りたくはない新発見だった。
「初めてだったんだね。安心したよ」
ロイクは洗浄魔法をかける際に俺の身体に触れまくり、嬉しそうに唇を重ねた。
「……うるせえ」
脱力して動けない俺が恨みがましい目で見ると、ぎゅっと抱き締める。
「……ごめん。怒らないで。嬉しくてちょっと我を忘れたんだ」
「痛えよ」
「うん、ごめんね」
ロイクは更に洗浄魔法で俺たちがヤッた痕跡を消した上で、俺を背負って仲間の元に戻った。
おんぶされた俺を見て、オリヴィアが血相を変えて俺の元に駆け寄る。
「ファビアン! どうしたの!?」
「オリヴィア……」
なんて言ったらいいのかさっぱり分からなくて俺が言葉に詰まっていると、ロイクがちょっと困ったような笑みを浮かべて俺の代わりに説明を始めた。
「女の死霊に襲われて、ファビアンの身体が痺れてしまったんだ」
「ええ!?」
「だからオリヴィア、回復してあげてくれるかな?」
すると、オリヴィアは困った顔になる。
「あまり魔力が残ってないのよね」
聞けば、隠れていた魔物との戦闘があったらしい。クロードが魔力切れを起こしていたので、オリヴィアの聖魔法しか倒す手段がなかったのだ。
「ならロイク、さっと甕の場所まで連れて行ってくれない? 浄化分の魔力は辛うじて残ってるから」
「ああ、分かった」
ロイクは頷くと、怠そうに座っているクロードの横に俺をそっと下ろした。
クロードに向かって、にっこりと笑う。
「クロード、ファビアンを頼んでもいいかい?」
「分かった。早く戻ってこいよ。何だかこいつ、辛そうだからな」
クロードが、寝転がっている俺の銀髪を撫でた。
俺たちを見下ろしているロイクは相変わらず勇者然とした余裕の笑みを浮かべていたけど、一瞬その目に嫉妬みたいなギラついたものが見えたのは俺の気のせいだろうか。
「……いってくるね」
もう一度にこりと笑うと、ロイクは踵を返して霊廟の奥へオリヴィアと共に消えて行った。
思わずホッと息を吐くと、俺の頭を撫でていたクロードの手が止まる。
「……何かあったのか?」
クロードは意外と細かい変化によく気付くのだ。そして俺は基本思っていることが顔に出てしまう。
俺が目線を彷徨わせると、クロードが眉間に皺を寄せた。
「……何をされた」
「い、や、その、……別に」
クロードの口癖を使わせてもらうと、クロードの眉間の皺が更に濃くなる。
「言え。問題があったらオレが対処してやる」
問題はある。だけどこんなこと、言える訳がないじゃないか。だから俺は嘘を吐くしかなかった。
「な、ないよ! ほら、死霊って俺の剣じゃ切れなくて、ちょっと怖かったっていうか!」
「……本当にそれだけか?」
「うん! 怖かったから、頭をもうちょっと撫でてよ!」
正直、先程の出来事は恐怖だった。これから先はもうヤラせるつもりはないけど、俺たちの関係はどうなっちゃうんだろうって考えると、それもすごく怖かった。
でも、クロードの手は優しいから安心する。
クロードが、龍の痣が浮かぶ美人な顔を緩ませた。もっと沢山笑ったらいいのにな、なんて思う。
「……くく、ガキみたいだな」
「いいんだよ、ガキだもん」
ロイクやオリヴィアに子供扱いされると腹が立つけど、何故かクロードに言われても腹が立たなかった。
「仕方ないな」
「……へへ」
俺は目を瞑ると、クロードが撫でる手の温かみを感じることに専念する。と、不思議と不安が消えていった。
――ロイクだって死霊に触れたって言ってたじゃないか。だからあれは、催淫の呪いでちょっとおかしくなっちゃっただけだ。
だからきっともう大丈夫だ。俺たちは結束の固い四英傑のままだ。
そう、思っていたけど。
「ファビアン、こっちにきて」
それからというもの、ロイクはきっかけを見つけては俺と二人きりになる時間を確保し、「ファビアン、私を助けて」と固い雄を俺にこすりつけては俺を抱くようになってしまった。
15
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?


【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる