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捕虜収容所
マジン二十二才 1
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鉄道開通を受けてフラムの石炭採掘量は大きく増えていた。
ローゼンヘン工業は、フラムの鉱山の実力からすると殆ど無制限に石炭を欲していたし、鉄道の開通によって輸送経費がこれまでに比べて桁違いに安くなっていた。
ダブつくだの枯れただのという相場のうねりも、電話で打ち合わせができるようになると大きく減ったし、以前なら暴落というような流れでもローゼンヘン工業の鉄道がついでに引き取ってくれる様になったことで、鉱石や石炭が極端に値崩れすることはなくなった。
鉄道工事に際しての土地の買収に関する協定の一部として、いくらかの工作機械と貨物車が鉱山組合に提供されたことも、景気にまつわる雰囲気を良くしていた。
公平な隣人、を標榜する鉱山組合に多少の実力的な余裕ができたことで、親切な隣人に格上げされたことが、鉱山主たちの話し合いを多少円滑にし始めていた。
無力な議長は信用には足るが信頼に足らず話合いの取っ掛かりも準備できない、ということだろう。ロンパル理事は無能な人物ではなかったが、賢明聡明なだけでは最後は力仕事でしかない山仕事の全てを支えることは出来ない。元老という立場であっても無限の力を地域に注ぐことはこれまではできなかった。
ローゼンヘン工業の提供する機械の力は無限の力とは程遠いものだったが、山棲みの者共を満足はさせずとも納得させるだけの働きと先行きを示した。結局ヒトは未来を希求できるだけでその日その場を凌ぐ術を見いだせる。無限の力はなくとも希望の光があるだけで人は迷いを減らせた。
ローゼンヘン工業は石炭が鉄道で確保できるようになったことで、ザブバル川の海への打通を次の事業の目標に据えた。元老院でシャッツドゥン砂漠のデカート州行政司法権領有要求とあわせて、ザブバル川のケイチ・アッシュ間での流れの付け替え運河化についての事業化を宣言することにした。
シャッツドゥン砂漠、フロミラー塩湖或いは鏡野塩原の行政司法権を含む領有要求はデカート州元老院ではあっさりと承認が降り、共和国大議会での動議を立ち上げ領有要求の議事を求めることになった。
元老の多くも隣接州のあてつけのような無責任には苛立ちを感じていたが、利益関係のない中で動議を求める元老もいなかったことでこれまで特段の動きもなかった。
だが州として利益を感じる者が元老の中にいるとあれば話は大きく変わる。
新しく元老の末席を埋めた若者がデカート州の発展拡張を求めて先輩たる同僚元老に協力を求めれば、快く応えて見せることも元老たる者の努めであった。
無論元老とあって人間であれば万能万全というわけではないが、国の礎として云うべきことやるべきことを探すことは、元老の責務である。
ケイチ・アッシュ間の運河化については、但し建設に関わる用地の買収についてデカート州元老院はこれを妨げない、というのが精一杯のところで、困難事業につき先行き検討が不可能という元老院では事実上の討議停止が結論となった。要するにデカート州としては、予算を出すことができるほどに計画を信用できない、ローゼンヘン工業の実力を測りきれない、ということだ。
過去におけるミズレー卿の運河建設事業の失敗に、多くの元老がそれぞれの家々で巨額の投資をしていた事実を思い起こした結果であろう。
しかし一方で運河建設について元老院として意義を挟みもしない、という程度には運河建設について多くの元老たちもデカートを代表する形で興味を示していた。
実のところを言えば、元老院に期待するところはそれで十分でもあった。
マジンとすれば単に自分の好きなようにオゥロゥを河口まで導ければいいだけだったし、船舶運航を事業化する意図はあっても運河そのものを事業化する意図はなかった。
いずれにせよ一回自分で泥海まで下ってみる必要を感じていた。
ローゼンヘン工業として今年新たに三千五百人ばかりの人員を各現場に配属してみたところで、マジンはブラフゲイルを使ってロタ渓谷を見に行って、そのまま河口まで下ってしまう計画を立てていた。
そこにリザが待ったをかけた。
「旅行にいく前にやってほしいことがあるの」
「十日か半月かのことだが、待てないのか」
「待てない」
リザがいつものように説明もなく断定的に言った。
「説明を」
マジンがいつもの様に短く説明を求めた。
「次の連絡便で兵站本部回覧室から人が来る。予定。で相手をしてあげてほしい」
「次の連絡便っていつさ」
「無事なら明後日くらい」
急な話を平然と口にするリザにマジンを眉をひそめる。
「回覧室ってのは何だ」
「部外秘文書を預かって関係者に連絡を取る部署。兵站本部だけじゃなくて軍令本部にも憲兵本部にも大本営ならどこでもあるけど、そういうとこ」
リザの説明ではなにをしに来るのか、マジンには全く想像もつかない。
「なんの用だって」
「大本営に電話を敷けないかってことみたい。あなたじゃなくてもいいけど値段の見積りがほしいから約束できる責任者に会いたいみたい」
「敷けるけど、今の状態ではウチで直接管理はできないよ」
「自信がないってことかしら」
挑発するような顔でリザが尋ねた。
「単に人手がたりないっていうのと、いちゃもんを付けられるだろうって言っているんだ」
「自信がないの」
挑発を繰り返すリザにマジンは肩をすくめる。
「やってもいいけど管理者には回線以外から内情がダダ漏れになる可能性は常に否定出来ないし、それでとやかく云われても責任の取りようがない。ボクはほら軍からは別の商売も請け負っているから嫌がる人達もいるはずだ」
「電話から秘密が漏れるって言っているのかしら」
「電話はそんな風に漏れることはない。ただ、電話口で油断をして喋って言っていれば、辺りに目を向ける余裕はなくなる。電話工事をするときには立入禁止だろうと立ち入りせざるを得ない。工事期間が長ければ工事を名目に部屋に入り込む輩も増えるだろう。仕組みそのものは完全完璧でも新しい物にたかる悪党は常に間に入り込もうと努力をする」
「あと、電話を敷くとしてなにを準備する必要があるかって」
鼻を鳴らしてリザは話を切り替えた。
「お前、電話の論文読まなかったっけ」
「読んだし報告につけて送ったわよ。だから確認と現物の見学に来るんでしょ。軍都じゃ電話なんか貨物車のオマケくらいしかないんだから。自動接続交換器とかってものに興味があるらしいわ」
リザは少し意味のある説明を加えた。
「ん。ああ。それはなかなか目が高い。新型になったから色々良くなったよ。同時交換の速度も消費電力も圧倒的に早く少なくなった。機械自体も小さくなったしね」
「私には説明要らないわよ」
興味なさげにリザは手を振る。
「で、どういうことが知りたいんだ。安定した電源になる発電機があればいいってことがわかればいいのか」
「私に聞かないでよ。でも電灯と電話とライノタイプくらいは使えると事務仕事は捗るわよね」
困った顔でリザは改めた。
「まぁたしかに」
電灯に使われる電気の機械動力への利用はさけられないことだった。
既にデカートでは理屈も曖昧なままに発電機を電動機として使う実用には至っていて、大小の事故を起こしがちなままに電灯線と発電機を繋ぎ動力利用しているものたちがいる。死傷者や火事も起きているが、新しい技術が一躍探求されるされるときには事件を防ぐことは難しい。
電灯線が電灯以外に使えるということは、ちょっとした面倒もあった。
電灯線の商業化にともなって当然に予想されていたことでもあったが、既に先行する形で普及を始めていた発電機と電池に対して電灯電力を接続して電動機としたり充電をしたりという行為はかなり公然とおこなわれていた。このことはしばしば問題にもなり、溶断回路を迂回する形で利用された電気が地域の停電や感電事故或いは電気火災を引き起こしていたことも、対策として積算電力計と遮断機の普及を後押しすることになった。
交流発電機や電動機についてはマジンは直接解説をした覚えはなかったが、電話の論文の背景や実験と推論から何がおこなわれているかを突き止めた工房が電池とは違う振り子のような電気のあり方について突き止め、学志館に古くからあって顧みられることのなかった論文資料などから電磁石や職人手製の電気回路を介した整流装置を作るということが既におこなわれていた。もちろん誰もが自力でたどり着いたわけではないが、それほど広く散らばっているわけではないデカートの工房では誰かが思いついたことの模倣を始めることは珍しくもないし、互いに隠せるほどにデカートの天蓋の内側の職人町は広くない。それにこういう漏れ聞く話のタネを余録に求めて幾つもの工房が徒弟をローゼンヘン工業に送り込んでもいた。
現実問題として電力の普及というものはデカート市にとっては既に望まれたものになり始めていた。電灯向け電力契約の他に使った電力に応じた動力向け電力契約と積算電力計と月次の精算体制が結ばれる契機になった。
既に電灯の威力を羨んでいた工房や商会では電気と電話はほとんど必需品として経費に組み込むようになったし、発電機を自前で揃えるよりは遥かに簡便にローゼンヘン工業電灯部電話部はデカート市内に電灯と電話を提供していた。
同時に誤解やデマを含む電気の便利と危険は僅かな間に周知が始まっていたと云える。
事の始まりは五百基ほど組み上げたライノタイプだった。
もちろんライノタイプは危険とは縁遠い、機構上完成された機械だった。
社員が五千人を超えたローゼンヘン工業では、辞令や連絡などで数百という単位で同じ文面を用意する必要が増えていた。広報や広告といった用途で千枚に迫るような印刷物を刷るときに線形写植印刷機ライノタイプは便利な機械だった。基本的にはマジンが学志館での論文印刷に使った機械を整理したものといえる。
ライノタイプはタイプライターと写植機を組み合わせた写植鋳造印刷機で紙面幅に応じた写植を組み立て鋳造し、それを使って印刷をする機械である。タイプライタの気軽さで活版印刷をおこなうための機械と云えた。
鋳造した写植活版は鋳溶かしてしまうこともできるが、保存して後日利用することもできる。ハンダを鋳造材料に使っているので、謄写版の蝋紙に比べればいくらか多い印刷にも耐えられる。更に印刷部分に特化した機構を並べることで謄写印刷や簡易な木版よりは多いある程度まとまった量の製本にも耐えられた。
鋳造装置と印刷装置がそれぞれ組み込まれているので小さいというわけではないし、活字も所詮ハンダなので千万と刷るうちに痛みも目立ち始めるが、専門の職工を必要としない活字印刷機というものは事務方にとってひとつの理想の機械だった。
反面、電磁的電気的な動力や熱源を必要としたライノタイプはタイプライターに比べると少々仕掛けとしては扱いが面倒だったし、かなり整理されたとはいえ電灯十個分くらいの電気を使う機械だった。電気をローゼンヘン工業に頼ることに不安を感じるものがいないわけではない。そしてそう感じることは、世界の野蛮に独り立ち向かう態度として正しい。
新しいものを良いものと看做すのは慎重さに欠けた軽率軽薄な態度でもある。
だが、実務の上であまりに膨大な事務作業の中には繰り返される書式が多く、手書きやタイプライタではなく、まとめて書式を準備しておいて日付と署名だけおこないたい書面書式が多かった。
印刷工房のような特殊な建物以外でも電灯線を動力としてライノタイプで安く文書を印刷する事ができるようになり、代筆屋の大手や瓦版売り等の数を頼みにした印刷関係の商売では電気が必要になり、学会誌などの印刷の度に様々に苦労していた学志館の事務方が、自前でいっちょ印刷をとライノタイプを導入したりと、意外な形で電力の普及は進んでいた。
もちろん職業の壁が技術的に崩れたことで様々な社会的な衝撃も走っている。
州の司法行政は予算の執行から慎重だったが、軍連絡室が導入したライノタイプの整った文面を無形の圧力と感じ始めていた。
電話局も発電所も基本的には鉄道工事の付随的な機能という触れ込みで市民と同じ価格で提供されていたから、はっきり言えば怪しい働きをする者もいた伝令よりはよほど安心できたはずだが、人を介することの細やかさを解さない騒がしい機械として電話機はデカート市州当局からは等閑に付されていた。
無論、市民との窓口になる部署の多くは市民からの要望として電話の開設を求められていたが、部内への根回し稟議を経ないままに登場した電灯や電話について、デカート各級当局は困惑のままに無視をしていた。ロウソクやランタンの油代或いはそれを管理する人頭や政庁内でも不定期にしばしば起きている度重なる火災を鑑みれば、電灯導入は必然と言えたが様々な理由で導入は妨げられていた。
数千の伝令を公務に使っていたデカート州市司法行政にとって、その人々の職務や存在意義を怪しくする電話網というシロモノに大きな抵抗があったのは事実だが、抵抗感を煽動していたのは予算を決定する元老議員でもあった。
雰囲気だけから言えば、州政庁公官庁よりも大本営のほうが電話の普及は早いかもしれないとマジンは内心考えてもいたが、力あるものの立場としては司法行政が聾唖も同然であることは都合が良いことが多く、電話開設の準備があることを示した上では後は当局各級の責任に任せることにしていた。元老の多くも似たことを考えていた者たちも多いはずである。
もちろん、現場の事務方として市井に生活のある政庁の公務員たちが世間から切り離された唖盲聾のような扱いにいらだちを感じていないわけではない。わかりやすく経費管理を任される立場の者達は既に自宅で利用が始まっている電灯電話の経費について計上と研究を初めていたし、利便について訴えてもいた。幾人かはゲリエ卿やその執事に直接談判することまでしていた。非公式な行為が直接何かにつながることはもちろん稀であるが、政庁で公務につく幾らかの人々は当然に新しい動きを求めてもいた。
実態、大本営兵站本部では、ギゼンヌでの兵站運用の実績として戦訓として、電話機について興味を深めていた。
四種任務配置でいい加減な勤務態度ながら月に何度かデカートの連絡室に出勤しているマリールが本部経由の連絡をクロツヘルム中佐に提出していた。
この時ばかりはアシュレイ中尉は歴戦の略綬に恥じぬ態度で軍礼に則って本部からの報告をクロツヘルム中佐に伝えた。
男性魔導師でもしばしば疾病戦傷などで起こる、魔導の傾向が変わったりこれまで扱えた術式が使えなくなったり或いは制御ができなくなったりということが女性魔導師は妊娠出産でも起こり得て、逓信院経由の魔導連絡は重要な意味合いを持っている。
もちろん出産後の回復期と授乳期という四種任務配置は期間中だったが、魔導師としてのマリールアシュレイ中尉の健在を大本営が確認した、ということでもある。
その魔導による連絡は兵站本部長と軍令本部長そして参謀本部長の署名が入った調査協力の命令書だった。憲兵本部と軍政本部が計画素案準備に直接関わることは稀だったから、事実上、大本営の最重要計画のひとつがデカートの連絡室に発令されたということである。
もちろんいくつもそう云う重要な計画があるうちのひとつであることは事実であるが、戦場と大本営を知るリザにとっては或いは有能な連絡参謀であるマリールはこの連絡がどういう意味を持っているか明瞭に予測ができる通達だった。
だがマジンにはどうも事の重要性が理解できていないらしいことにリザは苛ついた。
デカートの市井で起きている様々な厄介事の原因を追及されるような形で面倒が増え、しかし一方でデカート政庁の理解と協力が今ひとつである中でマジンは面倒臭げにリザに尋ねた。
「それで君じゃダメなのかい」
忙しく予定が動き回る中で、近々の未定の予定を押し付けられる面倒を隠さずにマジンは改めて尋ねた。
「あたしじゃ電話の設備のことなんか、何一つわかんないわよ」
「なにを説明すればいいか、わかってるのか」
「直接はわかってない。ただ、ストレイク大佐が電話設備の大本営への導入計画を見積もれる資料がほしいとは言ってきた。大本営からギゼンヌまでの電話連絡線がほしいって」
色々間をすっ飛ばした要求にマジンは思わず天を仰ぐ。
「ボクもそんなものがあればいいとは思うよ」
「それはそうよね。だからそう云う線で説明してあげればいいと思う」
「あのな――」
口を開き文句を言いかけたマジンの口をリザは掌で押しとどめる。
「待って。お金がかかる手間がかかる話を今アタシが聞いても無駄。そういうのは大本営からくる、マルコニー中佐殿にしてあげてちょうだい」
「今のところ、絵に描いた餅も同然だぞ。何のために鉄道を敷いていると思っている」
マジンの嘆くような言葉にこればかりは意を得たようにリザが力強く頷いた。
「その絵を欲しがっている人たちが大本営には多いの。描いてあげて頂戴」
ローゼンヘン工業は、フラムの鉱山の実力からすると殆ど無制限に石炭を欲していたし、鉄道の開通によって輸送経費がこれまでに比べて桁違いに安くなっていた。
ダブつくだの枯れただのという相場のうねりも、電話で打ち合わせができるようになると大きく減ったし、以前なら暴落というような流れでもローゼンヘン工業の鉄道がついでに引き取ってくれる様になったことで、鉱石や石炭が極端に値崩れすることはなくなった。
鉄道工事に際しての土地の買収に関する協定の一部として、いくらかの工作機械と貨物車が鉱山組合に提供されたことも、景気にまつわる雰囲気を良くしていた。
公平な隣人、を標榜する鉱山組合に多少の実力的な余裕ができたことで、親切な隣人に格上げされたことが、鉱山主たちの話し合いを多少円滑にし始めていた。
無力な議長は信用には足るが信頼に足らず話合いの取っ掛かりも準備できない、ということだろう。ロンパル理事は無能な人物ではなかったが、賢明聡明なだけでは最後は力仕事でしかない山仕事の全てを支えることは出来ない。元老という立場であっても無限の力を地域に注ぐことはこれまではできなかった。
ローゼンヘン工業の提供する機械の力は無限の力とは程遠いものだったが、山棲みの者共を満足はさせずとも納得させるだけの働きと先行きを示した。結局ヒトは未来を希求できるだけでその日その場を凌ぐ術を見いだせる。無限の力はなくとも希望の光があるだけで人は迷いを減らせた。
ローゼンヘン工業は石炭が鉄道で確保できるようになったことで、ザブバル川の海への打通を次の事業の目標に据えた。元老院でシャッツドゥン砂漠のデカート州行政司法権領有要求とあわせて、ザブバル川のケイチ・アッシュ間での流れの付け替え運河化についての事業化を宣言することにした。
シャッツドゥン砂漠、フロミラー塩湖或いは鏡野塩原の行政司法権を含む領有要求はデカート州元老院ではあっさりと承認が降り、共和国大議会での動議を立ち上げ領有要求の議事を求めることになった。
元老の多くも隣接州のあてつけのような無責任には苛立ちを感じていたが、利益関係のない中で動議を求める元老もいなかったことでこれまで特段の動きもなかった。
だが州として利益を感じる者が元老の中にいるとあれば話は大きく変わる。
新しく元老の末席を埋めた若者がデカート州の発展拡張を求めて先輩たる同僚元老に協力を求めれば、快く応えて見せることも元老たる者の努めであった。
無論元老とあって人間であれば万能万全というわけではないが、国の礎として云うべきことやるべきことを探すことは、元老の責務である。
ケイチ・アッシュ間の運河化については、但し建設に関わる用地の買収についてデカート州元老院はこれを妨げない、というのが精一杯のところで、困難事業につき先行き検討が不可能という元老院では事実上の討議停止が結論となった。要するにデカート州としては、予算を出すことができるほどに計画を信用できない、ローゼンヘン工業の実力を測りきれない、ということだ。
過去におけるミズレー卿の運河建設事業の失敗に、多くの元老がそれぞれの家々で巨額の投資をしていた事実を思い起こした結果であろう。
しかし一方で運河建設について元老院として意義を挟みもしない、という程度には運河建設について多くの元老たちもデカートを代表する形で興味を示していた。
実のところを言えば、元老院に期待するところはそれで十分でもあった。
マジンとすれば単に自分の好きなようにオゥロゥを河口まで導ければいいだけだったし、船舶運航を事業化する意図はあっても運河そのものを事業化する意図はなかった。
いずれにせよ一回自分で泥海まで下ってみる必要を感じていた。
ローゼンヘン工業として今年新たに三千五百人ばかりの人員を各現場に配属してみたところで、マジンはブラフゲイルを使ってロタ渓谷を見に行って、そのまま河口まで下ってしまう計画を立てていた。
そこにリザが待ったをかけた。
「旅行にいく前にやってほしいことがあるの」
「十日か半月かのことだが、待てないのか」
「待てない」
リザがいつものように説明もなく断定的に言った。
「説明を」
マジンがいつもの様に短く説明を求めた。
「次の連絡便で兵站本部回覧室から人が来る。予定。で相手をしてあげてほしい」
「次の連絡便っていつさ」
「無事なら明後日くらい」
急な話を平然と口にするリザにマジンを眉をひそめる。
「回覧室ってのは何だ」
「部外秘文書を預かって関係者に連絡を取る部署。兵站本部だけじゃなくて軍令本部にも憲兵本部にも大本営ならどこでもあるけど、そういうとこ」
リザの説明ではなにをしに来るのか、マジンには全く想像もつかない。
「なんの用だって」
「大本営に電話を敷けないかってことみたい。あなたじゃなくてもいいけど値段の見積りがほしいから約束できる責任者に会いたいみたい」
「敷けるけど、今の状態ではウチで直接管理はできないよ」
「自信がないってことかしら」
挑発するような顔でリザが尋ねた。
「単に人手がたりないっていうのと、いちゃもんを付けられるだろうって言っているんだ」
「自信がないの」
挑発を繰り返すリザにマジンは肩をすくめる。
「やってもいいけど管理者には回線以外から内情がダダ漏れになる可能性は常に否定出来ないし、それでとやかく云われても責任の取りようがない。ボクはほら軍からは別の商売も請け負っているから嫌がる人達もいるはずだ」
「電話から秘密が漏れるって言っているのかしら」
「電話はそんな風に漏れることはない。ただ、電話口で油断をして喋って言っていれば、辺りに目を向ける余裕はなくなる。電話工事をするときには立入禁止だろうと立ち入りせざるを得ない。工事期間が長ければ工事を名目に部屋に入り込む輩も増えるだろう。仕組みそのものは完全完璧でも新しい物にたかる悪党は常に間に入り込もうと努力をする」
「あと、電話を敷くとしてなにを準備する必要があるかって」
鼻を鳴らしてリザは話を切り替えた。
「お前、電話の論文読まなかったっけ」
「読んだし報告につけて送ったわよ。だから確認と現物の見学に来るんでしょ。軍都じゃ電話なんか貨物車のオマケくらいしかないんだから。自動接続交換器とかってものに興味があるらしいわ」
リザは少し意味のある説明を加えた。
「ん。ああ。それはなかなか目が高い。新型になったから色々良くなったよ。同時交換の速度も消費電力も圧倒的に早く少なくなった。機械自体も小さくなったしね」
「私には説明要らないわよ」
興味なさげにリザは手を振る。
「で、どういうことが知りたいんだ。安定した電源になる発電機があればいいってことがわかればいいのか」
「私に聞かないでよ。でも電灯と電話とライノタイプくらいは使えると事務仕事は捗るわよね」
困った顔でリザは改めた。
「まぁたしかに」
電灯に使われる電気の機械動力への利用はさけられないことだった。
既にデカートでは理屈も曖昧なままに発電機を電動機として使う実用には至っていて、大小の事故を起こしがちなままに電灯線と発電機を繋ぎ動力利用しているものたちがいる。死傷者や火事も起きているが、新しい技術が一躍探求されるされるときには事件を防ぐことは難しい。
電灯線が電灯以外に使えるということは、ちょっとした面倒もあった。
電灯線の商業化にともなって当然に予想されていたことでもあったが、既に先行する形で普及を始めていた発電機と電池に対して電灯電力を接続して電動機としたり充電をしたりという行為はかなり公然とおこなわれていた。このことはしばしば問題にもなり、溶断回路を迂回する形で利用された電気が地域の停電や感電事故或いは電気火災を引き起こしていたことも、対策として積算電力計と遮断機の普及を後押しすることになった。
交流発電機や電動機についてはマジンは直接解説をした覚えはなかったが、電話の論文の背景や実験と推論から何がおこなわれているかを突き止めた工房が電池とは違う振り子のような電気のあり方について突き止め、学志館に古くからあって顧みられることのなかった論文資料などから電磁石や職人手製の電気回路を介した整流装置を作るということが既におこなわれていた。もちろん誰もが自力でたどり着いたわけではないが、それほど広く散らばっているわけではないデカートの工房では誰かが思いついたことの模倣を始めることは珍しくもないし、互いに隠せるほどにデカートの天蓋の内側の職人町は広くない。それにこういう漏れ聞く話のタネを余録に求めて幾つもの工房が徒弟をローゼンヘン工業に送り込んでもいた。
現実問題として電力の普及というものはデカート市にとっては既に望まれたものになり始めていた。電灯向け電力契約の他に使った電力に応じた動力向け電力契約と積算電力計と月次の精算体制が結ばれる契機になった。
既に電灯の威力を羨んでいた工房や商会では電気と電話はほとんど必需品として経費に組み込むようになったし、発電機を自前で揃えるよりは遥かに簡便にローゼンヘン工業電灯部電話部はデカート市内に電灯と電話を提供していた。
同時に誤解やデマを含む電気の便利と危険は僅かな間に周知が始まっていたと云える。
事の始まりは五百基ほど組み上げたライノタイプだった。
もちろんライノタイプは危険とは縁遠い、機構上完成された機械だった。
社員が五千人を超えたローゼンヘン工業では、辞令や連絡などで数百という単位で同じ文面を用意する必要が増えていた。広報や広告といった用途で千枚に迫るような印刷物を刷るときに線形写植印刷機ライノタイプは便利な機械だった。基本的にはマジンが学志館での論文印刷に使った機械を整理したものといえる。
ライノタイプはタイプライターと写植機を組み合わせた写植鋳造印刷機で紙面幅に応じた写植を組み立て鋳造し、それを使って印刷をする機械である。タイプライタの気軽さで活版印刷をおこなうための機械と云えた。
鋳造した写植活版は鋳溶かしてしまうこともできるが、保存して後日利用することもできる。ハンダを鋳造材料に使っているので、謄写版の蝋紙に比べればいくらか多い印刷にも耐えられる。更に印刷部分に特化した機構を並べることで謄写印刷や簡易な木版よりは多いある程度まとまった量の製本にも耐えられた。
鋳造装置と印刷装置がそれぞれ組み込まれているので小さいというわけではないし、活字も所詮ハンダなので千万と刷るうちに痛みも目立ち始めるが、専門の職工を必要としない活字印刷機というものは事務方にとってひとつの理想の機械だった。
反面、電磁的電気的な動力や熱源を必要としたライノタイプはタイプライターに比べると少々仕掛けとしては扱いが面倒だったし、かなり整理されたとはいえ電灯十個分くらいの電気を使う機械だった。電気をローゼンヘン工業に頼ることに不安を感じるものがいないわけではない。そしてそう感じることは、世界の野蛮に独り立ち向かう態度として正しい。
新しいものを良いものと看做すのは慎重さに欠けた軽率軽薄な態度でもある。
だが、実務の上であまりに膨大な事務作業の中には繰り返される書式が多く、手書きやタイプライタではなく、まとめて書式を準備しておいて日付と署名だけおこないたい書面書式が多かった。
印刷工房のような特殊な建物以外でも電灯線を動力としてライノタイプで安く文書を印刷する事ができるようになり、代筆屋の大手や瓦版売り等の数を頼みにした印刷関係の商売では電気が必要になり、学会誌などの印刷の度に様々に苦労していた学志館の事務方が、自前でいっちょ印刷をとライノタイプを導入したりと、意外な形で電力の普及は進んでいた。
もちろん職業の壁が技術的に崩れたことで様々な社会的な衝撃も走っている。
州の司法行政は予算の執行から慎重だったが、軍連絡室が導入したライノタイプの整った文面を無形の圧力と感じ始めていた。
電話局も発電所も基本的には鉄道工事の付随的な機能という触れ込みで市民と同じ価格で提供されていたから、はっきり言えば怪しい働きをする者もいた伝令よりはよほど安心できたはずだが、人を介することの細やかさを解さない騒がしい機械として電話機はデカート市州当局からは等閑に付されていた。
無論、市民との窓口になる部署の多くは市民からの要望として電話の開設を求められていたが、部内への根回し稟議を経ないままに登場した電灯や電話について、デカート各級当局は困惑のままに無視をしていた。ロウソクやランタンの油代或いはそれを管理する人頭や政庁内でも不定期にしばしば起きている度重なる火災を鑑みれば、電灯導入は必然と言えたが様々な理由で導入は妨げられていた。
数千の伝令を公務に使っていたデカート州市司法行政にとって、その人々の職務や存在意義を怪しくする電話網というシロモノに大きな抵抗があったのは事実だが、抵抗感を煽動していたのは予算を決定する元老議員でもあった。
雰囲気だけから言えば、州政庁公官庁よりも大本営のほうが電話の普及は早いかもしれないとマジンは内心考えてもいたが、力あるものの立場としては司法行政が聾唖も同然であることは都合が良いことが多く、電話開設の準備があることを示した上では後は当局各級の責任に任せることにしていた。元老の多くも似たことを考えていた者たちも多いはずである。
もちろん、現場の事務方として市井に生活のある政庁の公務員たちが世間から切り離された唖盲聾のような扱いにいらだちを感じていないわけではない。わかりやすく経費管理を任される立場の者達は既に自宅で利用が始まっている電灯電話の経費について計上と研究を初めていたし、利便について訴えてもいた。幾人かはゲリエ卿やその執事に直接談判することまでしていた。非公式な行為が直接何かにつながることはもちろん稀であるが、政庁で公務につく幾らかの人々は当然に新しい動きを求めてもいた。
実態、大本営兵站本部では、ギゼンヌでの兵站運用の実績として戦訓として、電話機について興味を深めていた。
四種任務配置でいい加減な勤務態度ながら月に何度かデカートの連絡室に出勤しているマリールが本部経由の連絡をクロツヘルム中佐に提出していた。
この時ばかりはアシュレイ中尉は歴戦の略綬に恥じぬ態度で軍礼に則って本部からの報告をクロツヘルム中佐に伝えた。
男性魔導師でもしばしば疾病戦傷などで起こる、魔導の傾向が変わったりこれまで扱えた術式が使えなくなったり或いは制御ができなくなったりということが女性魔導師は妊娠出産でも起こり得て、逓信院経由の魔導連絡は重要な意味合いを持っている。
もちろん出産後の回復期と授乳期という四種任務配置は期間中だったが、魔導師としてのマリールアシュレイ中尉の健在を大本営が確認した、ということでもある。
その魔導による連絡は兵站本部長と軍令本部長そして参謀本部長の署名が入った調査協力の命令書だった。憲兵本部と軍政本部が計画素案準備に直接関わることは稀だったから、事実上、大本営の最重要計画のひとつがデカートの連絡室に発令されたということである。
もちろんいくつもそう云う重要な計画があるうちのひとつであることは事実であるが、戦場と大本営を知るリザにとっては或いは有能な連絡参謀であるマリールはこの連絡がどういう意味を持っているか明瞭に予測ができる通達だった。
だがマジンにはどうも事の重要性が理解できていないらしいことにリザは苛ついた。
デカートの市井で起きている様々な厄介事の原因を追及されるような形で面倒が増え、しかし一方でデカート政庁の理解と協力が今ひとつである中でマジンは面倒臭げにリザに尋ねた。
「それで君じゃダメなのかい」
忙しく予定が動き回る中で、近々の未定の予定を押し付けられる面倒を隠さずにマジンは改めて尋ねた。
「あたしじゃ電話の設備のことなんか、何一つわかんないわよ」
「なにを説明すればいいか、わかってるのか」
「直接はわかってない。ただ、ストレイク大佐が電話設備の大本営への導入計画を見積もれる資料がほしいとは言ってきた。大本営からギゼンヌまでの電話連絡線がほしいって」
色々間をすっ飛ばした要求にマジンは思わず天を仰ぐ。
「ボクもそんなものがあればいいとは思うよ」
「それはそうよね。だからそう云う線で説明してあげればいいと思う」
「あのな――」
口を開き文句を言いかけたマジンの口をリザは掌で押しとどめる。
「待って。お金がかかる手間がかかる話を今アタシが聞いても無駄。そういうのは大本営からくる、マルコニー中佐殿にしてあげてちょうだい」
「今のところ、絵に描いた餅も同然だぞ。何のために鉄道を敷いていると思っている」
マジンの嘆くような言葉にこればかりは意を得たようにリザが力強く頷いた。
「その絵を欲しがっている人たちが大本営には多いの。描いてあげて頂戴」
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