石炭と水晶

小稲荷一照

文字の大きさ
上 下
75 / 248
開戦

セントーラ二十五才

しおりを挟む
 子供たちを軍学校に預けて二日ほどセントーラは細かく外出と連絡を繰り返していた。
 正直なところマジンは奇妙な倦怠を感じていた。
 病気とかそういうものではない。
 あれ程に館を離れることを嫌がっていたセントーラが奇妙に生き生きと物事を進めているのに比して、なんというべきか人界でこれほどに自分が疎外されているような、奇妙な鬱屈をマジンは感じていた。
 館にいれば当然に作業場があるし、どこにいても相応に何かしらの作業があったが、子供たちを送り出してからは奇妙に手持ち無沙汰を意識することが増えていた。
 こういう時間にリザでもいればそれこそつながったまま生活をしていたかもしれないが、リザはリザで忙しいようで音信不通だった。
 ダラダラと魔法の星を眺めていると鐘がなった。玄関に出向くとユースフが封筒をもって来ていた。礼を言って銀貨を渡すと渡された封筒を改める。
 獣と竜だかなんだかが楯を支えているのは共和国軍の紋章だった。他に色々紋章があるのだが、その識別はまだできない。
 中身を見ると面会の申し出だった。明日迎えに来るということだった。
 昼食をぼんやりと一人で食べていると、セントーラが帰ってきた。
「忙しそうだな。今なにをやっているんだ」
「各地自治体の出張所に書類の提出を。ご主人様はお暇そうですね。そろそろ一回状況をご説明いただけますか」
 そう言いながらセントーラは膝が当たるような位置に椅子を寄せ、マジンの手元のパン皿からパンを取り上げた。膨らんだ書類かばんを足元に置くのを目で追ったマジンにセントーラが笑いかけた。
「こんな手紙が来た」
「共和国軍兵站本部ですか。星付きのところを見ると諮問委員会みたいですね。……しかし具体的な内容がありませんね」
「一体何をするところだ」
「基本的には共和国軍の消耗品備品の類を一手に管理する官僚機構で軍予算の六割位を直接扱う部門ですね。馬匹や食料燃料・軍属の給料とかも扱っているんで、なにやっているって言うとわかりませんが、帳場を扱っているところです。なんの用かまでは流石に心当たりがありません。ですが、商談のつもりでいたほうがよろしいかとは存じます」
 マジンの問いかけにセントーラは大雑把な説明をしてみせた。
「ま、心当たりが多すぎるってやつか。共和国軍も上から下まで混乱しているということなんだろうな。……で、お前のほうの首尾はどうさね」
 マジンは投げやりに諦めるようにセントーラに尋ねた。
「その前に、まずはご主人様。今回の件。というか、通しでなにをやられるおつもりなのか、月末軍都にいる間にどこまでなにを進めたいかを改めたいのですが、よろしいですか」
 セントーラはマジンのゴブレットをとって口を湿して言った。
「ん。中期的なところまで言えば、とりあえず二つだ。一つは小銃百万丁と小銃弾二億発の共和国軍納入。もう一つはヴィンゼから軍都まで鉄道を敷きたい。
――ただ、その手前に戦争をなんとかしないと、という問題がある。主にリザの意見なのでアレなのだが、現状共和国軍は極めて劣勢で現状四万対五万が春には六万対十万。更に夏頃には六万対十五万くらいの劣勢になるようなことを言っていた。夏に予算が成立し戦力が準備されるが、共和国の野戦戦力は足りないということらしい。というわけで、幾つかの師団の幕僚からは銃弾の生産のテコ入れをおこなって欲しいという要望があった。
――共和国軍の内情についてはボクはわからないから後で調べてまとめて補足して欲しい。が、ともかく、その梃入れ先がロータル鉄工だ。技術的にはボクの興味はないが銃弾の生産にあたっては特許と生産権の問題をなくしておきたいので、企業の株と債権を抑えて経営権を抑え銃弾の生産ラインをこっちで好きにできればそれでいいと思っている。技術的な梃入れは薬莢の深絞り機を導入させれば当面の問題は解決できるだろう。
――ほかにリザの提案として、ウチの武器をデカートの武装検事団に提供して戦争継続のテコ入れをしてくれないかと言ってきた。地元のことなので、これはこれでうまくやれればいいと思っている。まぁ、とりあえずいくらかを物納で税金代わりにおさめて元老院の席次を買うんでもいいと思っている。デカートの元老院って言ってもマイルズ保安官が座れるくらいでどのくらい権威があるのか知らんがね。
――あとは地味に重要な案件で、使える信用できる人材を確保すること。これは既に学志館の卒業生予定者のいくらかにはコナをかけて学生課に求人広告を頼んでいるが、どれくらい来るかはまだわからない。
――そう言う中短期的な課題の結節として屋敷からヴィンゼまで鉄道を年内完成予定で敷く。
――そのために夏になるまでに三百人程度欲しい。ヴィンゼまでこの冬開通の鉄道計画とそれを拡張してのデカートまでの鉄道計画を再来年春頃までに完了させたい。これは後の生産計画にも関わる。
――工房の周辺に機関車と小銃や銃弾の工場を設けるとして人員や物資の輸送線が必要でそのための鉄道が必要になる。工場の設計も土地も資材もうちのあたりならいくらでもなんとでもなるが、ヒトをむやみに抱えるのはいろいろ面倒だから少なくともヴィンゼの街のそばまで鉄道を敷きたい。駅馬車に沿った形がいいと思っている。今、とりあえずの人手がいるのはヴィンゼの町までの鉄道事業だな。
――この後の予定っていうのは、スマン。正直出たとこ勝負だ。一旦、月内に帰らないととは思っているが、場合によってはお前に残ってもらう」
 昼食の途中だったマジンは話しながら、行儀悪く皿の上のソースを土地に見立ててフォークを滑らせ線路を描く。最後にマジンはちらりとセントーラの顔を確かめたが、セントーラの表情は静かなままだった。
「例えば、ヴィンゼなりフラムなりデカートなりに工房を移転するなり出張所を設けるなりすることは出来ないのですか」
 過去に幾人かが尋ねた問いを改めてセントーラは尋ねた。
「工房を扱うだけならウェッソンが独りで仕切れると思うから、はっきり言えば今なら可能ではある。ただ鉄道を敷くのとどっちが簡単だという問いは鉄道を敷くほうがボクの面倒が少ない。千キュビット動かすならともかく数リーグ数十リーグ動かそうと思うとかさばりすぎるし、一から作ると一年じゃ利かない。鉄道が一回出来ちまえば単なる手数の問題なのは間違いないがね」
 マジンは付け合せの野菜をソースの中にわざと取り落としてみせた。
「鉄道建設の雇用条件等は基本前回までと一緒ですか」
「人足についてはそうしようと思っているが、マズいかね」
「デカートで人足を募集するとして彼らには駅馬車の三等が払えるかどうかが怪しいです。前払いで金貨や旅券を与えてもおそらく無駄になるかと。同じ理由で帰りも怪しいかと」
「つまり迎えが必要で送ってやらないと永遠にウチに居着くということかな」
「そうなるでしょう。とはいえ月雇いであればお屋敷の近辺は金の使いみちが少ないことから、カネは彼らが普段意識しないほどに貯まるので、帰りは問題がないかとも思えますが」
「迎えは舟ですることにして、送りの方は町の方にもなんとかしてもらおう。有能なら幾人かはウチで引き取ってもいい。それにロータル鉄工や軍への物納を考えれば多少の手余りは問題にならない」
「ロータル鉄工への手当は考えてらっしゃいますか」
「設備を回して使えるならウェッソンにジュールとセンセジュをつけてやろうと思っている。ペロドナー一人じゃキツいだろうがベーンツもいるし、狼虎庵にも新人を五六人雇えればいいと思って、そっちの求人募集ももう学志館でかけている。ペロドナーもベーンツも帳簿は付けられたな」
「その辺りはお嬢様のほうが詳しいと思いますが、私の知る限りは一通り」
「しまったなぁ。アイツラを学校に預ける前に相談しておけばよかったか」
「私もあらかたのお家のことは把握しておりますので」
「頼りにしている。で、ロータル鉄工の状況はどうだ」
「傘下に複数の工房を抱えている銃砲業で身を立てている武器商ですね。ただ、ここしばらくの無理な投資拡大でやはり様々に内情は混乱しているようです」
「買収は可能かな。速さが勝負だから金額は糸目をつけないでもいいんだが、買いきれるか」
「買収そのものは簡単かと。株式の時価は二億を少々出る程度ですが、債権を買い集めることになっても四億を超えることはないでしょう。銀行を揺さぶるなどして時間をかけるつもりがないのであればこれ以上安くはなりませんが、手間はかからないかと」
「法律や会計の専門家が必要だな」
「そちらは軍都であれば手配できます」
「うちに三億もあったか」
「現金は二億少々です」
「残りはどうする」
「担保で。というよりも、担保を使った物々交換でケリがつくならそちらのほうが面倒が少ないと思います。どのみち私達二人では手が足りません」
「どうやって手を付けてゆくんだ」
「債権や株式を集めてくれる代理人に任せることにするのが面倒が少ないですね。今月中に手をかけるということであれば、例の宝玉に興味がありそうな人物がいいでしょう。市価を確認に宝飾店を幾つか巡ってきたのですが、いまこの離れの荷物に転げてある宝玉も原石として数億の価値がつくだろうという話でした。実のところ街場の言葉ですのでどの程度信用したものかしないものかわかりませんが、ご主人様にとっては未精錬の端材がそれだけの価値があるということが分かれば、いまは十分でしょう」
「まぁそうだな。どれくらいかかる」
「私の知り合いに話を振ってみます。順調なら半月もあれば仕掛けができるかと」
「心あたりがあるのか」
「確認の必要はありますが」
「順調としてロータル鉄工に乗り込めるのはどのくらいだ」
「仕掛けの口が閉じるのはふたつきくらいでしょう。ただ、仕掛けがある程度かたちになったところで乗り込んでしまうことはできると思います」
「そういうことならどうするんだ」
「先にロータル鉄工の子会社を抑えて、そこにおっつけ債権を買わせる形で時間稼ぎをするのがいいかと。ミューリー火工製造が評判よからずの企業ですので、最初と最後はそこに任せるのが良いでしょう」
「なにをやっている会社だ」
「薬莢の製造と銃弾の組立ですね」
「そこがほしいんだが。そこだけ買い取ったらどうなるんだ」
「軍への納入がロータル鉄工経由なので、ミューリー火工だけでは単なる下請けで一時しのぎ以上にはならないかと。場合によっては下請契約を切られてオシマイでしょう」
「そうするとあれか。ミューリー火工をとりあえず抑えて、関連企業の債権を全部買わせてその間に人員の整理を進める。ってところで一年もたせればいいのか。ミューリー火工の債権はボクが持つということで」
「形の上ではそうですが、買収工作は一気に進めないとならないので、特に拘る必要もないと思います」
「うん。わかった」
「最終的にロータル鉄工の看板だけ手元に残して、資産や子会社は切り売るという手もあります。大きな損にはならないかと」
「どのみちそれでは首をくくるだけだろう。むこうの聞き分けがいいなら仕事を斡旋してやるくらいはしてやりたい。ボクがほしいのは看板と倉庫だ。人員は云うことを聞くというなら欲しいは欲しい。悪評は最低限でいいよ。使えるようなら鉄道事業の足がかりにしたいところだしね。カネは足りそうかな」
「担保はいくらでも準備ができるので問題ないでしょう」
「ウチも生産業だからな。時間はどれくらいかかる」
「夏が始まるまでにはご自在になされるように準備してゆきます」
「どのみちひとつきでは無理か」
「申し訳ございません」
「いや、いいんだ。やり方は任せる。完全に頼りにしている。逃げられると面倒くさいからロータル鉄工の親会社があるようならそこの株と債権も抑えておけ」
「バートン製鐵ですね。経営自体は安定しているようですので、大きくは揺さぶれませんが動議を建てられるくらいには株式も集められるでしょう。優良企業のようですし面白いと思います」
「バートン製鐵。資料は作っているか」
「ある程度は」
「ことが大きくなる可能性もある経営権の買収も視野に入れてくれ」
「この場では詳しくはなんともいえませんが、数億タレルでは利かなくなるかもしれません」
「製鐵所が抑えられるなら便利には違いない。どのみちロータル鉄工に手を伸ばせばバートン製鐵が黙っていないだろう。どういう方法かわからないがそれなりに手を打とうとするはずだ。バートン製鐵はぼくらの欲しいものではないが、ロータル鉄工をさっさと手に入れるためには釘を打っておく必要がある。違うかな」
「わかりました」
「本命はあくまでロータル鉄工とその子会社だがバートン製鐵が資金的な差出口を出せなくするくらいに手を売っておく必要はある」
「ご尤もでございます」
「問題は資金だが、足りるかな」
「バートン製鐵の本丸を逃がしても良いというなら資金的なところは問題ないかと。バートン製鐵を買い集め一気に吐いてしまえば良いだけのことなのでさほど難しくはないと思います。来季の税金が膨れ上がることだけご了承いただければそれでよろしいかと」
「別にいいさ。株式課税なんて掛け捨ての手数料みたいなものだろう」
「そちらは他所様の手を借りることで大幅に面倒が減らせますが、そうではなくて仮にロータル鉄工を抑えた場合の法人税です。瞬間的に株式の売買益が膨らみ資産額が大きくなります。一方でロータル鉄工本体の現金備蓄が極小になります。その後買収ということになれば、信用状況が最悪になるので、債権の引受先はご主人様が裏打ちする必要が出ると思います。また現地行政府の認可を受けた税理監査人の指名も必要になります」
「田舎とは違うというわけか」
「ヴィンゼですとせいぜい市場と街道商店の衛生点検と井戸管理くらいでしょう」
「駅馬車や銀行の拠点保安料が手数料の形で乗っているけど、税金って云ってもその辺までで、あとは公有地の売却と土地の登記料くらいだな」
「狼虎庵の納税額は今年九千百二十五タレルでしたか」
「まぁね」
「意外とちゃんと払っているのですね」
「無理のない範囲でな。と云いたいところだが、あそこは半分公営みたいなものだからな。あらかた内情はバレた上で駆け引きなしでやっている。尤もおかげで館の方の事業には目をつぶってもらっているという取引みたいなものだ」
「ロータル鉄工の納税額は八十九万七千六百五十五タレルです」
「堂々たる大企業じゃないか。だが、さっきの三億だか何億だかのの金融資産の割には純益は少ないということか」
「借金で回しているところが大きいということは言えそうです」
「社員はどれくらいだ」
「詳細はわかりませんでしたが、配下含め四社で千五百名ほどと聞いています」
「そんなにヒトを使ってまともに給料を払えているのか。そのせいで利益が小さいのか。というより、たったそれっぽっちで軍の使う銃やら銃弾やら作れるのか。なんかチグハグに中途半端な感じだな。どうやっているんだ」
「員数外の工員の多くは亜人奴隷だそうです」
「なんだ。帝国と一緒か」
「それでも共和国軍を丸抱えして支える工廠としては規模が小さいので、仕事が徹底できていないようですが、概ね同じかと」
「それにしても、納税額から想像できる利益が小さすぎる気はするな。よほど奴隷を使い潰しているのか」
「新型の銃弾の生産のために急激に奴隷を大量導入したのが仇になっているようです」
「ま、そういうことなら会社は潰してしまえ。工員はヴィンゼに送り込んでうちで働いてもらおう。空いたところは経営陣に掃除してもらって倉庫にしようか」
「本気ですか」
「別にどこなりと行き場があるならゆけばいいが、行き場がないから奴隷とかで軛かれているんだろう。そういうことなら、うちで働かせてもいいだろう。奴隷という連中がどれだけ使い物になるかは知らないが、鉄道敷設には人手が必要だ。使えるなら働かせるのはいいんじゃないか」
「移送の問題が大きいと思いますが」
「このあと幾度か貨車で荷物を運ぶことになるだろう。それに乗せて家族単位で動かせばいいんじゃないか。いずれにせよ、今のロータル鉄工の生産体制では企業を健全に運営することは出来ないよ」
「この手のものは時間がかかると旧所有者からのちょっかいが多くなると思います。できるだけ手早く引き上げる方法を考えられたほうがよろしいかと」
「頼もしいね。セントーラ」
「恐れいります」
「何か方法があるか」
 セントーラが頭を下げるのに頭が戻る前にマジンが尋ねる。
「奴隷商を使うのが良いかと」
「餅は餅屋か。だが扱いが悪くて殺すようだと本末転倒だぞ」
「移送の経費は結局飼い主の懐次第ですので、ご主人様が払いを渋らなければ上等の奴隷は蜜と羽布団で運ばれます」
「経験がありそうな言い草だな。だが、ボクが直に運ぶよりは面倒は少なさそうだ。問題は経費と伝手だな。見積もりは立つのか」
「確認は必要ですが、直に赴けば明日明後日にも」
「明日はコレだろ」
 そう言ってセントーラに紋章入りの封筒を指し示す。
「――だが、近場なんだね。そのなにやらは」
「うちの車ですと軍都から一日ほどかと。ジューム藩王国ルバルスです」
「よく知らないんだが、ジューム藩王国では共和国のタレル貨はつかえるのかな」
「使えますよ。ただ、もらったお釣りは共和国では殆ど使えないので、工房で鋳つぶすぐらいの積もりでいたほうがいいかもしれません」
「飴玉みたいな感じだな」
「こちらの支払いはコランダムの結晶の端材でおこないます。四半パウンもあれば十分かと」
「そんなに気前よく転がしていいのか」
「ご主人様は他にも先方が喜びそうなものはいっぱいお持ちですが、後の面倒が少なさそうなものとなると現金のほかはアレくらいかと。どの道、あんなガラス玉、取引に使える相手なんて限られてしまいます」
 ふん。とマジンは鼻息で納得を示した。
「まぁ、先のことは先のことか。明日、兵站本部のなにやらに話を聞いて、将軍様に面会してからだな。別にワージン将軍一人に限ったことではないんだが、共和国軍についてなにかわかったことがあるか」
「漠然とした質問ですね。一般状況でよろしいですか」
「ボクは共和国も帝国もよくわかっていないからな。正直なところ正真正銘の田舎者なんだ。まずはワージン将軍という人物が、例えば小銃を気に入ったとして彼の知人や縁故を頼って共和国軍の予算を動かせる可能性はあるのか、というところが重要かな」
 質問を絞り切れない様子のマジンを困った顔でセントーラは笑った。
「はっきり言えばワージン将軍は共和国に居る二十個の軍団師団、ああ、ええと十八個になったのかしら、ともかくそれらを預かる将軍の中では政治的順位は下から数えたほうが早いくらいの人です。百三十八人いる共和国の将官のうちでだいたい八十番手くらいの人物です。ただ、兵の扱いそのものは下手でなく、むしろ動きの機敏な兵隊の使いこぼしの少ない将軍ということのようです。彼の友人で政治的に最も有望な人物はロベルト・モゥザー参謀総長で軍事的には第三位政治的にも第八位の人物です。ワージン将軍本人は一般的に人物として有望ではあるけれども、国家予算にはおそらくあまり力を発揮できないでしょう。一方で軍事的には現在ほとんど唯一の期待できる戦力を前線で握っているという意味で無視できない人物です。肩入れする意味は十分にあります。ただ戦力の数的な不利は明確なので、様々な意味合いで過大な期待はできません。また、なぜ直接アタンズの救援に向かわなかったのかという作戦上の疑念も抱かれています」
「なんか回答と評価があるんだろ」
「アタンズの備蓄量の問題と遊軍としての価値、それと歩兵火力の劣勢の三つが挙げられています。現実問題としてアタンズの収容能力ではほぼ完全状態である師団の二万超の兵隊を受け入れられません。もう一つは遊軍としてアタンズ近傍に完全師団が一つあることで帝国軍はギゼンヌの力攻めを諦め攻囲に切り替えました。最後の一つは消極的要因ですが、同数規模の戦力の共和国軍では帝国軍に対して劣勢にあるという問題です。それぞれに肯定的な評価と否定的な評価がありますが、結果として現在まで補給連絡状態を維持している唯一健全な戦力で前線指揮官の裁量の範疇と云うのが今の大方のようです」
「ギゼンヌはどうなっているんだ」
「完全包囲下ではないものの一個聯隊程度の帝国軍が近傍に警戒線を設定していて輜重を通せるほどには自由でもないようです」
「つまりどういうことだ。包囲されているのか、されていないのか」
「ひどくたちの悪い野盗の群れがうろついているような状態ですね。それなりの連絡便はギゼンヌの軍勢が呼応して出し入れしている様子ですが、幾割かは奪われている様子です」
「何万だかいて数的には優勢だったはずだな」
「一万四五千は居るはずですが、半年もまともな補給がなければ、馬匹の類は衰えているでしょうし、もともと装備の上では帝国軍のほうが完全に優勢です」
「共和国軍が援軍をまわせばギゼンヌは完全に解放できるんじゃないのか」
「その辺が、共和国の怪しげなところで」
「火中の栗を拾うのは御免被るという連中が多いということか。だがそれでは共和国軍の意味もないだろう」
「詳細はわからないのですが、共和国軍と大議会が銃弾の生産についての様々な問題で政治的な綱引きを起こして予算上の混乱を起こしているのは間違いないところです」
「つまりどういうことだ」
「ロータル鉄工が銃弾製造の下請けを各地の工房に打診して断られ続けているようです。技術上の困難と設備投資上の困難もあるので一言では言い難いところですが、異例です」
「うちに挨拶してくれれば、話は早かったものを」
「どうなさいますか」
「今更べつに。というか、連中の銃弾の下請けが目的じゃないよ。うちの小銃をまとまった数納入するのが目的だ。訳知り顔で割り込まれても手間ばかりがかかる。そのための資材基地としては価値は魅力だが、それ以上の意味は無い。話の切り口としては面白いけどね。そういえばロータル鉄工は月産どれくらい銃弾は作れているんだ」
「詳細はわかりませんが、年で二百五十万とか」
「頑張っている。と云っていいんだろうね。戦争が始まったのでなければ」
 そこまで聞いて首をひねったように考えたセントーラが少し口の中で確かめた後で言葉にした。
「……話の腰を折るようで恐縮ですが、試射の席で口約束なぞされた件があれば、詳しく伺っておきたいのですが」
「新型小銃百丁銃弾二十万発を六十万タレルで軍都引き渡しをすると。あとは既存の後装小銃弾を三ヶ月で分析して生産できる体制にしてデカートで引き渡す。ってところかな。あとは鉄道事業の皮算用くらいか」
「支払いは現金ですか為替ですか」
「軍票だけど、マズいかね」
「二年の軍務債券の金利が四分五厘。戦争が始まったので秋には上がることを考えれば、マズいというか気前がよいというか。兵站本部の出納課に出向くつもりなら手数料はありませんが、どのみち手間だと思いますよ」
「税金を取られたようなものか」
「……まぁ、仕方ありません。機関車の件は出なかったのですか」
 セントーラは不思議そうな顔をしていた。
「出なかったわけではないんだが、生産体制の確認って感じだったな」
「少しばかりおかしな感じはしませんか」
「おかしいって言えばおかしいが、間にストーン商会が入っているようだったからな」
「値段は確認されましたか」
「しなかったなぁ。そういえば」
「……後に話になるようなら、確認しておいてください。銃弾の引きぬき検査の話は出ましたか」
「細かいところの話は出なかった。が、あるかね。やっぱり引きぬき検査」
「あると思いますね。今回は実績ありませんし、通例一分というところだと思います」
「二千発か。百丁ならまぁ積めるが、ぎっちりだな」
「銃弾五万発足して六十五万タレルでどうかと交渉し直すのがいいでしょうね」
「すまん。そのあと別の席で、小銃一丁五千五百タレル、銃弾十万発二万五千タレルで考えているって言ったんだった」
 セントーラは如何にもマズいものを口にしたという顔をした。
「私もその金額で損をしないのは存じておりますが、如何にも油断の多い間抜けな発言ですね。せめて銃弾は三万タレルと云っておいてください。高く云っておいて値引きをするのは商売の基本の駆け引きですよ」
「まぁみっともないが、以後は一丁六千タレル十万発三万タレルと、そう言っておくよ」
「人々は商品を買うとき、物の材料の値段ではなく、モノの満足と周りを見た時の似た製品とで考えるのです。ご主人様の作られる品々のような突飛なものの場合には物の正価はございません。そう云うときは相手が諦める値段を言ってから、改めて相手が払える値段を示すのです。下衆の手管ですが、つまらない商談を断る時の役に立ちます」
 溜息をつくようにセントーラはそう言った。
「――だいたいですね。あの持ってきた小銃一丁あれば、私だって騎兵の中隊くらい待ち伏せで一掃できますよ。六年前のあの日にあの銃が私達の手にあったらご主人様はどうなっていたか自分で考えてみたことがありますか」
「ああ、まぁね」
 機関拳銃とか機関小銃とかが普及すると当然にそれは軍隊以外も手に入れることになる。全く今更ながらの流れであるが、自分がなにに加担しているのか理解してマジンは唇を歪める。
「――とりあえず、デカートの武装検事局には売り込みをしておくことにしよう」
「む、まぁ、本筋とはちょっとちがいますけど、それもいいでしょう。必要になると思います」
「うん。まぁ、あれだな。六年前とは世界が大いに違うということだな。ボクが変えてしまった。今はヴィンゼやデカートの一部の連中しか気がついていないが、軍の一部が気が付き、そのうち共和国中が気づくことになる。そういうことだね。尤もお前たち全員が機関小銃を持っていたとしても、多少攻め口が変わるだけで、ボクは館を落とせたと思うよ。手加減が難しくなるだけさ。今なら別のかくし芸を見せてやれる」
 マジンが自信ありげにそういうのにセントーラは目を伏せてみせた。
「――しかし、流れで口にしたが、デカートの武装検事団やらその他のデカートの元老やら行政司法やらというのはどうやって渡りをつけたらいいものかね」
「素直にメラス検事長を当たられるのがよろしいでしょう。そろそろ検事長も任期が終わり司法参事になるはずですが、まぁ、人脈という意味では維持されて居るでしょうし、現場の命令系統から離れていれば、却ってお願いやご紹介という意味では融通が利く立場だと思います。ご主人様からの連絡であれば、おそらく先方もお喜びになると思います」
 セントーラの言葉にマジンは素直に驚いた。
「詳しいな。おまえ」
「きちんとお手紙には目を通されたほうがよろしいと思いますよ。通り一遍のご案内でも幾らかは大事な内容もあります」
 驚くマジンに鼻を明かしたといわんばかりにセントーラは微笑んだ。
 セントーラの前歴についてはほとんど興味が無いものの、その実務能力については不思議を感じずにはいられないわけで、全くどういう経緯で人脈を得たのか不思議なくらいであったが、ともかくセントーラはこの三年の田舎暮らしでも殆どその勘を鈍らさずにマジンを助けてくれていた。
「彼らは戦争をどう考えているだろう」
 セントーラは少し考えるような仕草をした。
「現状の共和国の制度でデカートの行政司法が利益を得ているのは間違いないところでしょう。けれど、デカートの立場からそれを口にするのは難しいというところではないかと思います。順位はしばしば変動するわけですが、安定してデカートは割当の上でかなりの資材資金を提供している一方で軍の受け入れは全くおこなっていません。住民の募兵も極端に少なくはありませんが、ここしばらくの話で言えば将軍は輩出していないと思います。また、例外的な事件はあったものの全体的には産業は順調で治安は安定しています。住民の移転も全体に少ないはずです」
 マジンは首をひねる。
「とくに損も得もしていない、軍は不要だがカネは払っている、名誉も興味がない、というように聞こえるんだが。それは利益なのか」
「面倒が少ない、というのは行政司法にとっては無駄な権力の行使が不要であるという意味で、住民間での軋轢を起こす危険が少なく、治安が安定するということでそれだけで大きな利益です。得であっても損であっても大きすぎれば、住民の間で嫉妬を惹き起し不和を招きます。単純な不正犯罪であれば単なる罰則ですみますが、不和は潜在的で長期的な問題に結びつくので解決が難しくなります」
「ひょっとしてボクの存在が面倒事に繋がると指摘したいのか」
「消極的には既にそう感じている人々もいるやもしれません」
「戦争一般についてはどう関連するんだ」
「ご主人様に何らかの手当を求めてくる可能性は高いかと」
「戦争税というやつか」
「元老院議員に指名されるかもしれません。デカートの元老院議員は席次権で獲得に三千万タレルほど。年次に百五十万タレルの納税を求められます」
「なにか良いことがあるんだっけか」
「公有地の開拓権が最大のものでしょうか。あとは強いてあげればデカート元老のお楽しみに誘われることが増えるくらいです。併せて幾つかの議題の決定権を持つことになります。鉄道の路線決定は楽になるかもしれませんし、新港の整備や事業の展開について幾らかの市の財産を使えるようになると思いますが、それだけです」
「市の財産ってのはなんだ。土地とか公務員とかってことか」
「まぁそうです。鉄道の事業化を睨めば、虚しいというほど空っぽではないと思いますが」
「確かに州内の手付かずの土地や道路を好きに使えるとなれば、悪いことばかりとはいえないが。権威を押し売りされるということに聞こえる」
 マジンはセントーラを睨みつける。
「――つまりどういうことだ。デカートは戦争協力をする気があるのかないのか、という話はどこにいった」
「おそらく、デカートの元老院は戦争の利益をどういった形であるにせよ求めると思います。けれど、それは必ずしも共和国や帝国の勝利とか敗北というわかりやすい形では求めないだろうということです。そうであるにはデカートはあまりに田舎過ぎます。共和国とその軍勢は例えば凶悪な亜人種や魔族との戦いや天災などの備えであって、そもそも外敵という概念が他の国であるという認識が薄すぎます。安定した天災の少ないデカートで共和国軍の立場が極めて薄く弱いのも同じ理由です。他の多くの自治州が戦争に積極的でないのも概ね同じ理由です。もちろんこれまで共和国軍が十分以上に上手くやっていたということでもあります。
 ただ一方でデカートにおいてはゆるやかな亜人との融和をよしとする傾向が出てきていること、苛烈な奴隷制に対する忌避感等、帝国との交われない一線もあるようです。これらは気分的なもので短期的な傾向の可能性もありますが、豊かとはいえないものの自立の気風の強いヴィンゼを思えば、おそらくは学思館もいずれ亜人の受け入れを始めることでしょう。またご主人様が寄付を積むにあたってそうするでしょう。
 総じてデカートには帝国への恭順はありません。一方で、藩屏としての共和国軍はデカート単独では維持できません。結果としてデカートは周辺州領を取りまとめ、共和国を支えることがデカートの独立を維持する安上がりな手段となります。ですが、また一方で辺境であることから利益を得ているデカートには周辺を扇動するに足る利益の根拠がありません。戦争の勝ち負けすら価値十分とはいえない上に戦争に自力で介入できるほどの実力的な根拠もありません。ですが、またしかしご主人様が例えば機関小銃を千丁或いはそれ以上の例えば機関銃であるとか機関車であるとかをデカートの武装検事局に与えたとします。警務隊に機関小銃を与えたとします。デカートを基地とする駅馬車に貨物機関車を与えたとします。或いは軍都まで鉄道を敷いたとします。どの瞬間かはわかりませんが、デカートは共和国と一体になることを望むでしょう。デカートには共和国全体との一体感こそありませんが、周辺自治体との連携や商業機会からの或いは藩屏としての共和国軍の利益は理解しています」
「つまりなんだ、どういうことだ」
「少し手を打てば、デカートの戦争資源の見積もりを求める意味から、この春のデカート州元老院議会の開催と同時にご主人様は招聘される可能性が高いだろうということです。予めメラス氏を頼られれば氏の見解も確認できるでしょうし、氏を通じて非公式な接見を求めてくる方々もいると思います。今頃お屋敷にはマイルズ保安官辺りが連絡が行っているかもしれません」
 マジンは少し空を睨むようにして目をセントーラに向けた。
「デカートが戦争をするかしないかは、ボクの胸先三寸ということか」
「そこまで単純に云うのはどうかと思いますが、大きな決心をつける材料として、ご主人様の事業計画と方針が、大きく扱われるのは間違いないと考えています」
「ボクは戦争利益を享受できるかな」
「デカートがご主人様を必要とする限り間違いなく。仮にご主人様が鉄道事業を元老院で持ち出せば、狂騒に等しい体を様することになるでしょう。多忙を理由に冷凍庫事業の拡大を保留した以上の騒ぎになることは、間違いありません」
「……あれは、だって、如何にも多すぎるだろう。百を超えるとは流石に考えてもいなかった。しかも聞いたことのない土地からも建設の話が来るなんてさ」
「鉄道を建設するまでは、人を雇うということもなかったわけで、それは仕方ないところでもありますが、今後は常時百人千人単位で人を使うことを考えれば、冷凍庫建設事業についても再開する必要があると思いますし、拡大の方向でいる必要があると思います。有耶無耶にしていますが、潜在的には千の規模に達する要望が今も届いております」
「むう。如何にも手数が足りないな」
「慌てても仕方ありませんが、ロータル鉄工の経営買収、貨物機関車や鉄道といったものが揃えば状況は変わるでしょう」
「ひょっとして、セントーラ。お前、楽しんでいるか」
「もちろん」
 マジンに改めて確認されたことでセントーラはネコのように笑った。
「鉄道事業はどうやって進めるのがいいと思う。当面、最低限ソイル・フラム・ヴァルタ辺りに接続するまではウチを基地にして資材を運んでゆくのが良いと思っているが」
 セントーラは軽く頷いた。
「それでいいと思います。強いてあげればザブバル川にも街道にも関係ない経路を使ったほうが権利の交錯が少なくて良いだろうとは思いますが、当面フラムまでつなぐことは必要だと思います。石炭やその夾雑物の精錬は間違いなく大きな利益につながります。ヴァルタまでつなぐとケイチやアッシュまで伸ばそうという話も出るでしょうし、ジョートやスカローも接続を求めるでしょう。中長期的な目標としては軍都まで伸ばし運行を安定させるという方針で良いと思います」
「なかなか果てしないな」
「まぁ最低限ペイテルやアタンズを抜けてギゼンヌまでは伸ばさないと鉄道事業は終わりにならないはずですし、南西のフォリノークやメイザン、オウラ、ピラヌィ、ヌース辺りまでは伸ばさないと共和国の動脈という意味でも格好もつかないでしょうね」
「どれだけ遠いんだ」
「それぞれだいたい千リーグくらいかと」
「ふん。遠大だ。今の勢いでは三十年でもケリはつかないよ」
「軍都まではどの程度を考えていますか」
「土地の収用と工事の機械化が順調でも五年じゃムリだろう。六年か八年か十年か。そのくらいだろうな」
「デカートまではどのくらいを」
「人と土地の差配が自由になるなら三年はかからない。機械化が順調であれば、貨物線と貨客線を分ける勢いでフラムまで伸ばしても五年というところだろう」
「意外と早いですね。まぁいろいろ問題も多そうですが」
「うちの裏とは違って距離が長いから人員の手配と手当が面倒くさい。だからロータル鉄工が余剰の人員を抱えているという話は興味がアリアリだ。千でも動かせるならデカートまでの工事は弾みがつく。長距離の旅客便はどうしても宿泊を車内でおこなわないといけないからそういう試験もできるしな」
「ご主人様もいろいろと楽しそうですね」
「まぁね。とても楽しい。あのジャジャ馬が色々と馬鹿な面倒を持ち込んだと憤ったり苛立ったりもしたが、とても楽しい。正直なところ、小銃の生産は今でも不本意なんだがね。まぁ仕方ない。アレぐらいしないと戦争に勝つどころか、もみ潰されかねない」
 セントーラは黙って頷いた。
「――ボクは帝国のことは殆ど知らないのだが、むこうの工業体制は共和国よりも進んでいるのだろうか」
「五十歩百歩というところですね。主要な町ではガスの共有配管を利用した照明とかその開閉を利用した呼び笛や明りもありますが、設備が大きく古すぎて悩みのタネにもなっていました。技術者も多くいますが苦労しているばかりであったようです」
「うちの骸炭窯みたいなのがあちこちにあるのか」
「石炭は石炭で売られていて、とくに骸炭が目につく程でもなかったので違うと思いますが、ガスの元についてはよく知らないのです。お屋敷にお世話になるまで、石炭を乾留してガスを作れるなんてことは知りませんでした」
「機械についてはどうなんだ」
 マジンの問に考えるような思い出すような沈黙があった。
「高級精巧な時計工房はありますよ。職人の幾人かが貴族で残りの殆どが奴隷だというのは知っています。ですが、お屋敷のように手放しで部品が出てくるのを集めて、組み立てさせるような工房は聞いたことがありません。おそらくは貴族の工房の幾つかは似た体制なのだと思いますが、お屋敷ほどまで徹底しているとは思いにくいところです」
 セントーラは少し考え、疑いながらも知っていることを述べた。
「職人で貴族というのはどういう人々なんだ」
「まぁだいたい言葉通りです。陶磁器であるとか銀製品であるとかガラス細工や宝石加工であるとかの高級品や、舟や馬車、織物などの実用品の生産の指導などを代々家業としているような人たちです。鉄砲や大砲も彼らが設計したものが、各地で作られているはずです」
 マジンは帝国製の武器を検分させて貰う機会を求めてみようと思った。それと同時に一つの疑問が生まれた。
「輸送はどうしているんだ。馬か馬車か」
「基本は。ただ十分に大きな拠点とその周辺は竜鷹という大きな猛禽を使ったり、竜猪という巨大な猪を使ったりしています。使えるように育てるまでに十年余りがかかるということで、どこでも誰でもというわけではありませんが、貴族やそれなりに大きな商家であれば早馬のように使うことがあります。帝都の下屋敷には竜鷹のための塔があるのが半ば常識です。そういう意味では共和国よりも数段、通信の便は良いといえます。竜猪は若いうちは回し車を牽かされてその後に荷車を牽く様になります。機械動力がなくても奴隷と竜猪で帝国の生産は共和国よりも上に立てるということなんだと思います」
「どこかで見ることはできるかな」
「どうでしょう。竜鷹は帝国軍の軍令が使っていると思いますから、いまだと多分リザール城塞とジューム藩王国あたりでは見られるかもしれません。竜猪はジューム藩王国は王都で飼っているのかもしれませんが、見世物という訳ではないのでどうでしょう。どちらも数は少なくないですが、馬の倍では利かないくらいに手間のかかる生き物なので、騎兵ほどに押し並べて使うという使い方はしないと思います」
「お前に家にもいたのか」
「竜鷹はいました。何頭か忘れましたが、雛も育てていたので少なくはないです。毎日牛や豚が何頭も彼らの餌になっていました。その余りをヒトが食べているんだと父は言っていました。彼らのための水浴びのための溜池が川の途中に作られていたのを覚えています。虫だけではなくネズミや蛇が彼らの羽の間に寝床を求め、しばしば巣を作っていましたが、そういうものを払い落とすために溜池です」
「どれくらい早いんだ。その大きな鳥は」
 懐かしむようなセントーラに乗ってマジンは尋ねてみる。
「ヒトを一人載せて一晩で三百とか五百という話も聞きますが、よくわかりません。ただ、一日で百リーグを往復できるのは間違いないようです。雲の上も飛べるようですが、色々な理由であまり高くは飛びにくく、油断をすると銃火の届くところまで降りてきてしまうので、云うほどに無敵というわけではない様子でした」
「大きすぎ重すぎて高く飛ぶのが大変とかそういう理由か」
 心当たりをマジンは軽く口にしてみた。
「天候とか気流の説明もありましたが、そういうことのようです。ですが、馬よりは数段早く道行を選ばなければ、同じ竜鷹にしか追われることもないということで、ェアリェルリトゥルは帝国の誇りとも言える騎士階級の憧れでした。空騎兵とか天騎とか訳されますが、共和国が帝国の空騎兵をそれと確実に打ちとった例は過去にふたつしかないという存在です」
 断じ誇るようにセントーラは説明した。
「使えれば便利そうだな。もし仮にリザールの城塞にそういう安全確実な伝令がいたら、第一波の未完遂を受けて増援を頼み、その到着満了の報告と経過での共和国の鈍さを報告し決戦戦力を準備するという可能性はある。とくに、ジューム藩王国あたりで軍都の物資の流通や共和国の消費動向についての情報が集められ帝国軍中枢に上がっていれば、この半年の共和国の鈍さが本物であることは伝わるだろう。帝国の備蓄や余力に相応の自信があれば、手隙を根刮ぎ載せてくる可能性はある。半年も準備期間があって、更にその半年後に来るとなると十五万どころか二十万を超えてくるかもしれないな」
「帝国軍は確かに公称百万騎を宣して憚りませんが、それだけの兵站を支えられるものでしょうか」
 疑念の残る声でセントーラが尋ねた。
「全然わからない。だが、共和国の軍勢が混乱して例えば帝国がジューム藩王国の独立を侵すような事態、つまりはジューム藩王国を共和国が抑え込めないような事態が起これば、堂々とジューム藩王国は帝国への恭順と復帰を宣言するだろうさ。元は帝国領なんだろうジューム藩王国は」
「そのとおりです。彼らが共和国にも帝国にも恭順せず独立をしているのは、まさに両天秤にかけるだけの地勢をもち、軍都がこの地に築かれてなお難攻を誇ったかつてのジューム・ドレイク王の勇戦とその後の講和の産物です」
「例えばそこが共和国の物資をかき集めている徴候があれば、十分に危なくはないか。現実に彼らがどういう意図であろうとそうせざるを得ないという実情ももちろんあるが、ボクが例えば帝国軍の将軍でそれなりに金満家であるとして、ジューム藩王国に別荘なり友人なりがいるとして空騎兵を私的に使えるなら手持ちのカネを預け、物資を大量に買い集めさせる」
 セントーラは皮肉な笑みを浮かべた。
「半年の時間差を活かして先物買いですね」
「腐らないものなら何でも買い集めておけば、戦争がどう転んでもやがて値上がりする。共和国は広いが、軍都から東はどうあっても戦争の緊張からは逃れられない」
「面白いですね。私達も乗りますか」
「ぼくらはデカート周辺でやればいいよ。ザブバル川流域やエルベ川下流域はもとより手に入る限り、石なら何でもいい。石炭やら鉄なら歓迎だが、そうでなくても構わない。鉄道をデカートまで伸ばすつもりなら、大雑把に二万五千グレノルの資材が必要になる。ウワモノがどれだけ増えるか減るかはわからんが、そこに更に様々が入用になる。一年で八千グレノルとか流石につい最近まで考えたことはなかったよプリマベラだけじゃ全然足りない」
「そこまで来ると船腹買いした方がいいでしょうね」
「ヴィンゼのそばまで鉄道を伸ばしたら少し川を掘り開いて港を作る必要があるとは思っているんだ。五百グレノル積みくらいまでは受け入れられるようにしたい」
 セントーラは少し呆れたような顔をする。
「どんな大船ですか」
「二百キュビット超えるくらいだろう二百五十を超えることはないと思うが造り次第だな。だから岸壁は三百キュビット掘り込めばいいだろうと思っている。」
「外海に出る船でもそんな大船は見たことがありませんよ」
「うちの舟は木造じゃないからな。極論、設計の手を抜かないかぎり途中で投げ出さないかぎり百万グレノル積みも建てられる」
「港の建設整備も鉄道をやりながらですか」
 楽しそうに語るマジンに困ったように付き合いながらセントーラが尋ねた。
「当然そうなる」
「忙しそうですね」
「まぁね。だが、セゼンヌはよろこぶだろう。ヴィンゼの日雇いの話は冬の間の話だけじゃなくなる。千人じゃ利かないヒトがヴィンゼに入ってくる。武器で三百、鉄道で千、港で三百、機関車で二百、二千近い労働者とその家族がヴィンゼに入ることになる。商店類を含めれば、なんやかんやで一万数千というところだろう。これだけいれば冷凍庫や電気・上下水道・電話の他にガスの家庭利用をおこなってもいい。鉄道と武器はある意味一過性だが、余裕ができればやりたいことやれることはいくらでもある。ヴィンゼの司法はマイルズ保安官一人だが、すぐに手が足りなくなるだろう」
 マジンがそこまで云ったところでセントーラは手を叩き引き戻した。
「将来の夢は分かりました。直近このあと明日からはどうなさいますか」
 できの悪い子供の絵をどう褒めたものが迷うような顔でセントーラは尋ねた。
「軍の意向を確認する。なにせ彼らが今回の件の発端であり直接的な顧客だ」
「彼らが我々の協力の一切を拒んだ場合には」
 セントーラは可能性としては否定出来ない一面を確認した。
「大きなところは流れる。だがその場合にはデカートに武装更新計画の話を持ち込む。いずれにせよ、鉄道事業はデカート周辺まではすすめる」
 断言したマジンにセントーラは頷いた。
「ロータル鉄工の件はどうしますか」
 セントーラは話をすすめるように確認した。
「買収はおこなおう。言ったとおり、鉄道事業をヴィンゼを超えて行うつもりだと相応に大規模な労働力が必要になる。どういう形でも熟練の工業労働経験者は必要だ。従順ならなおいい」
 意地悪な顔でマジンは笑った。
 セントーラは黙って頷いた。
「では、ロータル鉄工の件、手をつけます。今晩ご同行ください」
「早いな」
「様々に渡りをつける必要がありますので。このあと準備にお付き合いくださいますか」
「うん。もちろんだ。退屈をしていた」
 そう言ったマジンを連れてセントーラは先日リザに連れられてきた女性向けの服飾用品店を訪れることになった。
 セントーラの裸体はリザのそれに比べて鍛え方を強調しない、自然な締まり方を見せるものだった。見た目のメリハリという意味では両者ともに女性的であったが、セントーラの裸体を見るとリザのそれはやはり未熟な少女の香りを残すもので、子供が生まれ様々に女性の成熟を示してはいたが、それが却って彼女の肉体の若さ未熟さを強調する結果になって、女性の魅力要素を無理やり付け足し盛り上げたような不自然さがあった。
 セントーラは実にバランスよく自然に成長を遂げた身体つきで、そもそもリザがお上りさんのように店内ではしゃいでみせたのとは大違いの落ち着きを見せていた。
 セントーラはいくつかの下着を着用して見せてマジンの意見を求めたが、正直なところ十分に魅力的なセントーラの体をなにで飾ろうと好みの範疇であろうと、少しバカバカしげな拷問のような体になってきた。
 挙句にセントーラは店員になにかを注文すると二人の店員が下着の試着実演をおこなってみせ、セントーラはどちらが良いかという質問を重ねてきた。
 マジンの情欲と性欲の混乱を弄んでいるセントーラに両方を買って良いと告げると更にセントーラは上の層の服飾についても意見を求めてきた。この店の値段はすでにマジンは知っていたが、財布の中身を把握しているだろうセントーラは買えない金額のものを買うはずもなく、これも準備の一環だろうと考えを放り投げるように付き合うことにした。
 セントーラの銅色の濁りのある水晶のような金髪は室内のシャンデリアの明かりで青みがかって見えた。次第に下着の上に層が乗り、肌が見えなくなっていったが服飾で隠してくれたほうが落ち着いて体の線を想像できてそちらのほうが良かった。店の女とともに三人で並び方を入れ替えるように舞うようにして、服を捲って肌を晒すセントーラはマジンの股間の状態を意識していることを隠そうともしていなかった。
 手代の女性が伝票を持って現れると金額は服飾の数に応じて相応の値段になっていた。大金貨五枚の買い物はグレカーレ一杯に資材が積まれたくらいの値段で、それが目の前の女三人の服装といくらかの荷物に変わったことは、正直なところマジンには鉄道建設よりも想像がしにくいことだったが、それはまぁ仕方ないことだろうと諦めた。
 そのままセントーラは一旦下着を含めて仕立直しをするために店員二人に手伝わせて服を脱いだ。セントーラは全裸のまま、長椅子のマジンの隣に腰を下ろした。
 奇妙なことに二人の店員は服を着たままセントーラの爪の手入れを始めた。
「二人の服は直さないでいいのか」
 店員二人も美しい体型体格をしていたのは裸体を見て確認していたが、セントーラとは背丈や手足の長さ太さが当然に異なっていた。
「あら、あなた。この店のこの部屋に来たんじゃないの。手代が覚えていたわよ」
「まぁ、来たがね」
 そう言ってセントーラに前に来たときに手に入れた店の名刺を差し出す。
「この娘、まだいる?」
 そう言って出てきた娘は出会ったばかりのリザのような、悪く言えば幼さの残る少女という風情の娘だった。
「あらあら、かわいい。でもこういうのもいいわね。一通りいただきましょう」
 セントーラは機嫌良くそう言った。
「セントーラ。少し説明しろ」
「かしこまりました。……あなたたち、説明して差し上げなさい」
 セントーラはそう言うとマジンのズボンの腰元をくつろげ、勃起と収縮を繰り返していた陰茎を取り出した。女達の注目を股間に浴びていたが、セントーラの足の爪の手入れをしていた赤毛の女が、マジンの陰茎を咥え込むようにしてあやし始めた。
「つまり、彼女たちを一晩買い上げたってわけです。一晩試して気に入ったようなら、まとめて買って帰ってもいいですよ」
 そうセントーラが言うとマジンの股間に吸い付いていた女の舌がマジンの勃起を探るように熱心に動き始めた。
「娼婦みたいだな」
「みたいでなく、娼婦ですよ。様々な契約があるので一言ではいえませんが、彼女たちは年季明けのお屋敷での長期勤務の口を探しているようですので、ウチの屋敷ではなかなかに望ましい者達です。……引き渡しはどうなるのかしら」
「身請けいただけるのであれば、お医者様の診断を受けて、その後ということになるはずです」
 爪の手入れをしながら黒髪の女がセントーラの質問に答えた。
 ふぅん、と話に油断したマジンのツボを付いて赤毛の女がマジンの精を絞りとった。
 赤毛の女はマジンの放った精の量を舌の上で見せびらかすようにすると、黒髪の女を招いてくちづけし、更に後ろで着付けを待っている若い娘を差し招いた。
 少女はなにが起こるか察したらしく、逃げようとしたが着付けを手伝っていた女達に体を掴まれるように抑えこまれ、赤毛の女に頭を抑えこまれるようにくちづけをされた。
「ダメよ。ご主人様を味わう機会を逃しちゃ。私達にとっては死活問題なんだからね」
 赤毛の女は諭すように嬲るように言った。
 こういう如何にも初々しい反応を示す少女が付文の如き名刺を置いていったかどうかはマジンに定かではないのだが、生きるためにどこかに潜り込みそこから抜けるために誰かに助けを求めるというのは活計としてよくあることかとも思えた。
「無理矢理というのはボクの趣味じゃないよ。名刺をもらったから呼んでみたが嫌ならやめよう」
「よろしいのですか。股間の蛇はそう言っていないようですが」
「赤毛の彼女がうまかったからね。その背中に興奮しているんだ」
「お上手ですこと」
 そう言うと赤毛の女は黒髪の女と位置を入れ替わってセントーラの爪の手入れを始めた。
 黒髪の女は舌の長さを見せつけるように萎え始めた陰茎の凹凸を舌でなぞり始めた。
「リザといい、お前といい、ボクに女をあてがってどういうつもりだ」
「リザ様の思惑は存じ上げませんが、ご主人様の事業ではどうあっても人の数が必要なのは間違いありません。男だ女だというのはまぁそれとして、この店で働けるような女であれば当家で働かせるにも不都合が少ないというのは間違いないところです」
 そう言いながらセントーラはマジンの手を取り自分の濡れた股間に導いた。
 仕方なくというか、全く自然な流れで熟れた楽器の扱いのようにセントーラの反応のある辺りに指を当てるように潜りこませると、そうあるようにセントーラはうめいた。
「――そのデナという娘はどうなさいますか。仕込み不十分の半玉のようですが」
「その前に、この後の予定を聞かせろ」
「知り合いが開いている定例の夜会にご案内します。この女達は、まぁ賑やかしと虚仮威しです。この街の物見高い人々なら幾人かは見知っている馴染みもいると思いますし、店から持ち出し侍らす値段も知っているはずです」
 黒髪の女がマジンの股間のツボを探り当て、逃げるようにするのにマジンの腰を抱え込んだ。
「それでぼくらはそのお前の知り合いと話をするんだろ」
「私の知り合いも友人の多い人なので、ご友人の退屈しのぎのお相手がいないと面倒の可能性もあります」
 セントーラの言葉の意味にマジンは膣の中のツボを片手で釣り上げるようにしてセントーラの腰を支えた。苦痛に悶え長椅子に肘と腕を突っ張り逃げるセントーラを片手で釣り上げるようにしてマジンは黒髪の女の口の中に射精した。
「――場代と試験か」
 マジンは長い射精を終え、セントーラの腰を下ろし、苦痛に渇いたセントーラの身体を優しく探りほぐしてやる。
「はい」
 黒髪の女が赤毛に口移しで精を分けるのに勃起したままの陰茎にセントーラの腰を導いた。セントーラは一息ついたように溜息をつくと女達に背を向けたまま腰を蠢かせた。
「デナ。どうする。お前が嫌なら別にボクはお前はいらない」
 黒髪と赤毛のくちづけを嫌そうな顔で見ていたデナにマジンは声をかけた。
「い、い、い。いやじゃありません。一晩ご一緒させてください。いきます。いかせてください。……む、むうぅむうう」
 そう言うデナに黒髪がくちづけをして無理やり精を口の中に流し込んだ。
 セントーラはマジンの三度目の射精をあっさり導き自らも数度の絶頂に達した後で、風呂を借り、仕上がった服を身につけていった。
 赤毛のパトラクシェと黒髪のジローナは馬車の中でマジンの絶倫ぶりを褒めそやし、デナが味見をしなかったことはこの先後悔するとからかうのはマジンにとっても針の筵のように感じられた。
 そんな主の様子をセントーラは全く楽しげに眺めているのも気に入らなかったが、それを口にするのも気分ではなかった。
「で、なんてところにいくんだ。お前の知り合いってのは」
「柘榴石の会。という集まりです。会いたいのはアルダマイヤーペラゴ氏。会の主宰の一人です」
 おや、という顔をパトラクシェがした。
「知っているのか」
「幾度か、お目にかかったことがあります」
「まぁ、都合がいいというのだろうね」
 どこまで偶然なのか仕込みなのか、区別するのもバカバカしいとため息混じりにマジンは肘をつく。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

処理中です...