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土曜日~磔刑~
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寒いというか冷たい感じがして目が覚めた。
「あ、起きた」
遠藤の声がする方に目を向けると、佐々木が純一の胸と肩に手をついて右腕に体を絡めるようにして鎖骨の窪みに舌を這わせているのが目に入った。股間に吸い込まれるような刺激が走る。遠藤が純一の勃起した性器を口であやしているのが佐々木が姿勢を変えた向こうに見えた。純一が目覚めたことと、それに勢いを得た遠藤の口腔性交が、純一の勃起を完全なものに近づけていく。純一の腰がつい震えた。口蓋垂が亀頭に触れた感触がして、さらに咽頭をくぐらすために遠藤が姿勢と舌で陰茎を調節して飲み込んでゆく。
「すっげぇ」
食道に亀頭の先端が引っかかったのが分かり、遠藤が舌と首の筋肉だけで締め上げ刺激を与えていることに純一は感動した。
遠藤は純一の勃起の形を確かめるようにゆっくり二三度くりかえすと、呼吸とリズムを合わせるようにして素早い一往復をしてみせた。
漏れたような衝撃に純一は呻く。あっさり持っていかれるのは防げたらしい。
「凄い。コレやったら、たいてい一発撃沈なのに」
目眩がしたのか、屹立した陽根に頬ずりして突っ伏して遠藤が言った。
「寝起きだからじゃない。でもおっきいね」
「喉にバッチリ引っかかった。食道セックスは初めて、いつもはのどチンコまでだから。食道バージンでいっちゃった。でも、お腹にちゃんと収まるか少し心配」
興味津々で純一の胸の上から見ていた佐々木に遠藤が感触を報告する。自分の口であやした硬さを確かめると、ゆっくりと身を起こして純一にまたがった。
「二人を起こしちゃうよ」
「誰を?」
言いながら寝間着のままの遠藤が屹立した陽根に腰を下ろす。寝間着に隠れて見えないが、口の中の硬さとは全く違う、生殖専用の器官は最初から最後まで純一の性器を受け入れてゆく。行き止まりの感触があり、しかし遠藤の体重が次第にかかっていく。
「コレはっくるッさける」
一気に膣の蠕動が始まった。全体に絞り上げるように痙攣が始まりやがて緩む。
純一は女が自分の内臓に任せて勃起を撫で上げているのを困惑したまま受けれいていた。視線を感じた。
「まだ出さないの?」
滝川が右腕の中で言った。
「私たちに遠慮してくれているのね。でもいいの」
川上が耳元にささやいた。休憩して呼吸が落ち着いたのか、遠藤の腰が円を書き始めた。体には大きすぎる印象の乳房が揺れる。とくと足元まで伸びるだろう髪が木立の葉のように揺れる。
「これってレイプじゃないか」
勃起させてバッチリつながったままする会話じゃない、とは思いながら純一は疑問を口にした。
「日本だと女が男を襲っても、強姦罪にはならないらしいよ」
佐々木が少し悲しそうに言った。
「あの場でやったことは迷惑だったか?」
「ううん。私たち全員本当に感謝している。――アレはごっこ遊びじゃなくて本当にレイプだったの。私は私たちは全員本当の意味での初対面の男たちに、恐怖と暴力で押さえ付けられて強姦されたの」
腹の上で遠藤が苦しそうに踊っている。明らかに性的に気持ちよいはずだが、なにか変な意図が絡んでいるようで、昨日までならアッサリくる筈の射精感が臨界にならない。これがEDってヤツかも。遠藤の股間から滴る愛液は適度な滑りと柔らかさを持っていて、膣壁は純一の陰茎を抜き差しの度に綺麗に収めている。ほんの数分前までは深さが不足していたが、まるで掘削されたように奥行きが増して先端部を吸い付くような感触で迎える。遠藤の性器は実にいい。けど、萎えこそしないものの射精には至らない。
滝川と川上も耳や首に口付けし舌を這わせる。佐々木もしゃべることしゃべったら黙って胸やら口やらに舌や唇を這わせつつ、アチコチをくすぐる。
純一はだんだん腹がたってきた。
「おい」
純一は乱暴に腰を突き上げていった。不意打ちのような一撃は純一の竿全体をしならせ痛みを走らせたが、元々自分の動きで高まっていた遠藤はイッた。
「おい、ケイコ」
腰を揺さぶって突き刺さったままの女の内臓を起こす。
「オマエ、セックス好きか」
「……うん」
遠藤は少し考えて、躊躇った後に頷いた。
「俺とのセックスは気持ちいいか」
「気持ちい、い。硬いし、なんかイイトコ当たってる」
遠藤は純一がナニをいっているのかよく分からないようだが、うなづいた。
「俺はそうでもない」
遠藤は情けない泣きそうな顔になった。
「不意打ちだったからガッツり立ったけど、全然訳が分からないままレイプされて、お陰で色々考えているせいで、オマエがこんなにうまくなかったら、間違いなく萎えてる」
遠藤の腰は完全に停って内臓だけが呼吸に合わせて純一の勃起を揉みしだいている。
「一番分からないのはオマエが俺を好きなのか、好きになる気があるのか、ということだ」
「助けれくれたからスキ」
純一の体に群がってた女たちの動きも停っていた。
「俺はオマエの顔も、細くて小さい感じなのにでっかい胸も、そのいつから伸ばしているか分からないような長い髪も、なんだか思いつきで突然仕掛けるイタズラも、気に入っている。現場を助けたなりゆきもあるし、強姦なんていうワケの分からないバカの仕業でしかも面白半分なんて質の悪い事件だってのも気に入らなくて力になりたいとも思っている。だから、可能な限り大事にはしてやりたい。守るために心を配ることを愛だって定義するなら愛しているっていってもいい。でも、好きっていうのとは違う」
「……でも」
「助けてもらって好きだからセックスって言うなら、水本先生とセックスしてこい。あの先生はお前らを犯したクソ野郎どもから大きな車が買えるくらいの金を一人一台づつ十人全員からムシるつもりだ。おまえらの誰かがあの連中を引っ掛けた美人局なら俺じゃなくて先生のところにいくんだな」
アチコチを噛まれたり引っかかれたりしたが、無視する。
「オマエが俺のことを感謝している。だから感謝に応えるために愛したいと思っているのは本当だろうが、でも、愛しているわけでも好きなわけでもないだろ」
「……好きだもん。キッカケは最悪だったけど好きだもん。クルクル回ってバレエみたいで強くてカッコよかったもん。助けてくれて嬉しかったの。だから好きになって欲しかったの。これまで付き合った男の人、みんな私のセックス喜んでくれたし、アイツらだってめちゃくちゃ喜んでたの。ほんの十五分で五人も……」
遠藤がポロポロ泣き出し、内臓がでたらめに動き出した。
「……ひょっとして私が二股かけてるとか思ってるの?そんな人いない、イナイの!犯されたことが知られて、叩かれて別れたの!ホントにイナイの」
純一が腕に力を入れると両脇の二人が身を起こして純一の腕を開放した。その腕で遠藤を招き、抱き寄せる。
「――俺のコト好きか」
「……たぶん。でもよくわかんない」
「俺のチンコは気持ちいいか」
「……気持ちイイ。硬いし、なんかイイトコに当たってるし、……さっきのキスも美味しかった」
「生でつながってるな。ピル飲んでるのか」
「ううん?この間の事件のあと生理確認しないとならないから、飲んでない」
「生理は順調?」
「ううん。ダメ。よくあることだって」
「妊娠してたらどうする」
「産んじゃうよ。モチロン」
「認知しないかもしれないぞ」
「娘だったら知らんぷりして親子丼プレゼントする」
「さすがにロリータはアレだな」
「大丈夫だよ。私、十四の時からだいたいこんな感じだったから」
モソモソと遠藤が腰を動かし始める。
「早熟だなぁ」
「フェラチオデビューは小三だったし」
「はやっ」
「お陰で中高は女子高でした」
「すると、初めては先生相手か」
「アタリ。なんで分かったの」
「いや、タダのデタラメ」
「ところでなんだか、妊娠とか親子丼とか純一さんの興味あるキーワードなの?」
「なんで?」
「ドカンて中で開いて、擦れてるから」
「そうか?」
「モーいい。好きかどうか疑われても良いや、プレゼントに娘をあげることに決めた。で、親子丼する。生まれた娘に言うんだ。お父さんにお母さんの好きって言葉を信用してもらうためにオマエをセクシーセックスに改造したんだ。愛のために戦えって」
「おいっ」
文字通りのツッコミを純一は腰でくれる。
「問題はそこじゃないだろ」
「くっ」
「オマエが、俺を、愛する、好きになる、努力を、する気が、あるのか、どうかが、俺は、知りたいん、だよ」
遠藤の爪先が跳ね上がるほどの衝撃を加えながら、純一は今までと自分の中にある手応えというかグルグル渦巻くナニカの質が変わっていることを感じていた。衝撃に耐えられなくなって胸にすがりついたようになった遠藤を、腰を止めて見下ろす。
「……しま……に……ります」
「もっと大きな声で」
純一の胸に張り付いたままの遠藤の尻をたたく。
「愛します。好きになります」
「もっと大きな声で」
ちょっと手応えが悪かったのでワンピースをめくって太ももをむき出しにした。内臓が細かく震えた。
「あいします!すきになります!」
「ナニを」
叩く手をもう少し奥に進めた。手首だけで叩くことになって少し指先が痛かったが、無視した。内臓が震えるのが楽しかった。
「純一さんを愛します!畑中純一さんをスキになります!」
「俺のことを嫌いになるかもしれないぞ」
ガコンと不意打ちのように腰を跳ねる。下腹を濡らす粘液の量が増えた。
「大丈夫。嫌われても大丈夫。純一さんを愛して好きになるから。……お願い、キスして……」
苦痛をこらえるように答えると、顎をそらして遠藤は目をつぶる。純一は首を起こすが、やや小さな遠藤との唇の距離を縮めるために、ムリな姿勢に肩と腹筋で上半身を起こし、対面座位に移行して口付ける。
純一は口付けした途端にザッと何かが動いたのを感じギョッとしたが、上半身を起こしてからひっきりなしに吸い上げ動いていた遠藤の内臓の蠕動がより強く痙攣して、射精を我慢する気も必要もないなので、そのまま流した。
口の中で遠藤は呻き続け、純一はそれを吸い上げた。よくも我ながらこれだけ我慢していたのか、と思うほどの長い射精の間、純一は遠藤の口を塞いでいた。遠藤はほんの僅かな時間に失神と覚醒を繰り返し、舌の動きと眼球がそういった知識のない純一にも分かるほどだったが、お互いの交接器官は全てを出し、全てを受けるために完璧な連携を果たし、やがてその自律的な衝撃から二人を解放した。
「妊娠しても知らないぞ」
「大丈夫。愛の結晶だから。そう言って育てるから」
「親子丼は勘弁してくれ」
「絶対アナタのコト惚れさせるために、お父さんがどれだけ素敵でカッコいいか言いながら育てるから、ベタベタのファザコンでラブラブな子供にする。女の子だったらパパのお嫁さんになるんだって誓わせて、そのまま大きくする」
その言葉だけで全部出したはずの純一の勃起は遠藤の体の中で力を増す。
そんな純一の体の未練を喜ぶように遠藤は身を離した。明かりを落とした部屋の中の小さな電子機器の灯りにも濡れ光っていることの分かる純一の勃起を、遠藤は喉まで飲み込み、舌先で零れた二人の雫を甘露であるかのように舐めとった。そして自分のワンピースの裾でぬぐい、一同を見渡した。
「もう良いの」
いつの間にかジャージの下を脱いだ川上が確認した。
遠藤が頷くと、川上は遠藤と入れ替わりに純一の前に正座をして、「お願いします」と一礼した。
川上は改めて立ち上がり、先にパンツを脱ぐと純一の手に載せた。かなり重たく湿気っている。丸めて渡された手の中で生ぬるいおしぼりのような湿り気と匂いに純一は戸惑う。川上は純一を無視してジャージの上とティーシャツを脱いで、ソチラは後ろに捨てた。
「もうそんな感じ。どうしたい?」
川上は軽く一歩進むと、純一の胡座を軽くまたいで腰を突き出し、自分の下着に視線をやってから、純一に尋ねた。光る陰毛が妙に美味しそうに純一には思えた。
「とりあえず、腰を下ろせ」
「うん」
川上は言われた通り、ゆっくり腰を下ろしてゆく。勃起に触れると軽く腰を引いたが、純一の腕が腰にあたって後ろにさがれない。
「入っちゃうよ」
「イヤか」
「ううん。全然。むしろウレシイ」
「妊娠しちゃうよ?」
「むしろウレシイ」
「認知しないよ」
「大丈夫。今年出れば単位足りているから、卒業して実家で育てる。――」
純一はナニカ少し悲しくなった。
「――顔を見に来て良いなら、頑張ってこっちで育てる」
「子供なんかいらねーっていうかも知れないよ」
「一緒にいてくれるなら、避妊手術してもいいよ」
「……インプラントくらいにしような」
「明後日、かかってる産婦人科の先生に日程訊いてくるね」
「そこまでしないでいいや。ところで生理は?」
「事件のせいで、ボロボロ来てて、しょうがないからしばらくピル飲んで止めてる。だからジュンジュンがもうイヤだ飽きたっていうまで中出してても大丈夫」
「じゃぁ、妊娠は気にしないでいいか」
「今日はそうだけど、子どもが嫌ならインプラント、ホントに訊いてくるよ」
「イヤ、ほら、勢いで子供作ったら子供のほうがかわいそうじゃん。落ち着くまで待ってから考えよう」
そこまで聞くと川上は腰を割り微調整しながら腰を下ろす。濡れた陰毛でくすぐられた純一の勃起が痙攣するので、うまく膣口を捉えきれない。
「いいのか――」
「大丈夫。もう前戯はいらない。なんか話してたら勝手に濡れてきた。すこしいったみたい――」
純一の問いズレた答を返しながら、ちょっと勃起を指先で修正して亀頭を捉えると、少し硬い感じの膣壁に馴染ませるように、ゆっくり腰をおろした。
「――ほらね。なんだっけ」
「――そんな風に決めて、お家の人とか大丈夫なのかって。……大丈夫か、なんか辛そうだけど」
「きっと驚くけど、大丈夫。事件のあとふたりで飛んできてくれて、ジュンジュンが助けてくれた話したら、中学の時の純一さんのこと両親とも覚えてた。だから子供貰ってきたから育てるって言ったら、多分おどろくけど、育てるのは納得して協力してくれる」
川上は腰をくねらせ、重心を変えて筋肉を調整する。しばらくすると膣壁の緊張が解けて馴染んできた。
「あのサルのよりもだいぶ大きい、から、ちょっとまってね。人間とやるのは初めてで、……二度目だから、イマイチよく分かんないの」
「それって……」
川上が薄く微笑んでみせる。
「大丈夫。私、スポーツ少女だったから、処女膜はもう破れるほどなかったの。両親の話なら、中学のとき、私たち会ってるんだよ。実は」
「ゴメン、覚えがない」
純一がつい困った顔をすると、川上は笑った。
「そうだと思った。でも仕方ないよ、一回だけだもん」
「どこで?」
純一は思い出す努力をしながらキーワードを求める。
「中学三年の県の練習記録会で県立体育館のプールサイド。男子二百メートル自由形の後、県記録出したとき」
中学生日本記録に〇.〇八秒遅れでの中学生県記録。ゴールデンウィーク中の素敵な出来事。埋めておいた記憶。もう平気かと思ったら、意外と染みることに純一は気がついた。川上がブルッと腰を震わせた。
「次が女子の自由形だったからプールに入って学校の仲間を探してて、プールサイド戻ってくるアナタの足を踏んじゃったの」
どうだったか、言われてみればそんなコトがあったかも知れないが、プールサイドでウロウロしている人にぶつかるのはよくある事で、よほど不機嫌なことでもなければ純一は笑って流すはずなので印象にない。
「がっちり踏んじゃってオロオロしてた私に、美人と話す機会ができるのは良くあるけど、美人に顔を覚えて貰う機会は少ないからいいさって、踏んだ足の感触とこんな顔を覚えておくとオリンピックの時に、あー足の人だって、言えるから覚えといて。とか、県中学記録保持者を踏んだから県記録が近くなっているよ、って言ってたら学校の仲間が来て別れたんだけど」
「あーそんなコトあったかも、そういえば人の記録とか気にしたことなかったから知らないんだけど、それが原因で調子落としてなかったら良かった。手遅れだけど」
「自己新で県記録出したの。オリンピックのジュニアコースの選抜まで入ったけど、選考で落ちちゃった」
「知らなかった。女子の記録まで見るほど真面目じゃなかったし、ゴメン」
「高校で競泳やってなかったんだから、しょうがないよ。秋大会にも出てなかったから、なんかあったんだろうなと思ってた」
「あー、ゴメン。ソレはナンカ今話すと萎える」
「ん、ゴメンね」
そう言って、ようやく身体がなじんだらしい川上は腰を上下に動かし始める。
「いや、話をしよう、別にいいんだろ。時間は気にしないで」
「みんな一晩に何回もできると思ってないから、焦らないで大丈夫」
「まだちゃんと硬いから、ソレは大丈夫だけどね」
「よかった。……でね、顔と名前は覚えてたの」
「あ、そうか」
「私も高校でいまいち記録が伸びなくてインターハイは出たけどオリンピック選考外れて、大学では競泳は辞めることにしたの。で、どうしようか、と思っていたら、ジュンジュンがサークルに入るところを見かけて、あー似てる人が入ったから、って入ってみたら本人で運命かもって、ちょっと少女漫画ハイったこともあるけど、ジュンジュン本人はこっちを忘れているみたいだったし、一年の時は先輩とくっついてたからなんか微妙に声かけにくくて、二年三年でだんだん出て来なくなったから、まぁしょうがないか、と思ってたの。私も恋愛とか距離感分かんないからはじめにくいし。負け組かなぁって……。
そしたら喫茶店のサーバーにジュンジュン入ることになったから、ヤッパリ運命かもって、そしたらあの事件があって、あーもう殺してと思ってたら、ジュンジュンが助けてくれて。
で、みんなと話すと、あの人欲しいって事にヤッパリなったの。助けてくれたとき、カッコよかったし。機会はみんなで作ると一回でいいから簡単だって、バラバラだとジュンジュンも時間合わせ大変だし、今になって彼女いない人は興味がないか手間を惜しんでる人だから、メンドくさがらせると逃げちゃうって」
「でも、いきなりセックスってのはどうさ」
「けっこう私にはイキナリでもない。色々シミュレーションはしてた、けど間が悪くってひとりだと上手くいかなかった。……江田くんとか邪魔だったし」
「誰だっけ?ソレ」
「……あの時間に突然いなくなったダメ男。ホント不愉快」
なんだか川上の腰の動きが激しくなってきた。
「うん。でね、サルに噛まれたせいで生理がぐちゃぐちゃになって調整のためにピル飲んで、って状態をチャンスかもって思うことにした。これまでなんだかセックスしたことなかったけど、今のうちに試しておいて、っていうか悪い癖がないうちにジュンジュンに鍛えてもらったらジュンジュン好みになるかなって。私スポーツはすぐソコソコになる質だから、セックスもすぐ筋肉の使い方覚えるかなって。なんかまだストレッチ足りないみたいで、オマンコ硬いかもだけど、身体は柔らかいから色々できると思うの」
勃起を杭としてブリッジ姿勢で足先を指先であわせてみせた。筋肉がざわざわと動いて痙攣する。
川上が姿勢を戻したとき、彼女の腹の中の作りは変わっていて、純一の肉棒に絡むように動いていた。
「だけど、みんなでジュンジュンと付き合おうかって事になって、知らないところで比べられるのは嫌だし、他の人のを見て勉強したかったから、最初はみんなでって言ったの。あと、ヤッパリひとりだと怖いから。ジュンジュンがっていうか、おチンチンがね」
「それでヤッパリ怖くて引っ込んだのか」
「あれは……ちょっと疲れてもうヤだなって少し思って、本当にヤなのか自分に確認が必要だった。最初のケーちゃんのキスを三人で見てた時から辛かったし、オナニーして誘ってるのも辛かった。でも協定は維持しておかないと負けそうだったし、ジュンジュンが逃げたら追えなくなっちゃうし、捕まえる係が欲しかったし」
「なんだ。オマエもムリヤリか」
「ヤだった?」
すこし心配そうに川上が言った。
「俺のこと好きか?」
「ずっと好きだった。初恋って言えるかどうか分からないけど、恋だって気がついた最初の人。もちろん好きだし、きっとこれからも好き。愛してる」
「じゃぁいいや。ヒカリ、動いていいか?我慢できなくなってきた」
純一はそう言って一息に腰を川上を押し倒して抱えたまま膝立ちになる。川上は手足を純一に絡めたまま肩と首で身体を支える。
アクロバティックな姿勢変更だったが川上の筋力がそれを可能にして、川上の身体の柔らかさが純一の動きを助けた。
姿勢を変える度に川上の胎腔は形を変え、純一はその感触の変化に酔い楽しんだ。
そのうち川上がひとりで絶頂をさまよい、えづき出したので、交接を解こうと身体を離したスキに、朦朧としたままの川上が自分で足をさしかえ、もう半周して一回転してみせた。捻られるような衝撃とその開放感から純一はかなり激しく射精していた。川上は半身になって更に深く繋がる形を探し、絡めた足の力任せに純一を自分の胎に引き込んだ。二人の接合部はまるでコーヒーメーカーの沸騰音のようなものをしばらく立てていた。
射精が止んでしばらくしてから、川上は身を離し、純一のまだ固く蠢いている勃起を口にする。だが、遠藤ほど深く銜え込めない。もう良いと純一が言うと、純一の股ぐらに顔を突っ込み陰嚢から陰茎までの二人の飛沫を舐めとりはじめた。そしてティーシャツで拭うとそれを被り、純一の脇にあったパンツを履いた。
「三番、滝川紫。畑中純一さん愛してます。好きでした。好きです。交際してください。っていうかセックスしませんか。あれ違う――」
右手を上げた格好で滝川が言った。セックスを誘っているようなわりには、まだ余韻で硬さを保っている陰茎に視線を流しては外す。
膝をつき正座をして滝川が続ける。どうやら、言いたいこと言うべきことはまとめて言ってしまおう、という作戦らしい。
「――ええと、みんなで付き合おうって言ったのは私じゃないけど、けっこう良いなって思いました。
事件のせいで怖かったのもあるし、純一さんがカッコよかったのもあるけど、他の警察とかの男の人も怖かったから、早いうちに誰かと付き合わないと一生ダメな気がしました。いつ子どもが欲しいとかそういうことは考えてなかったけど、結婚することができないでおばあさんになる理由が男の人が怖いからって言うのはちょっと悔しいと思っています。
経験の上書き、っていう考え方をミキちゃんから聞いてイケるかも知れないと思ったので、今回の純一くんをレイプする計画を言ってみたのは私です。ゴメンナサイ。いっぺんにヤる形にできなかったのは男の人が一本しかないからと、アンマリ想像力がなくてみんなでってのが思いつかなかったからです。
レイプするのにひとりじゃムリだからミンナでってのもあったけど、みんなお互いのことが心配で自分だけ良ければ良いやっていう雰囲気でもなかったので、ミキちゃんとケイコちゃんも手伝ってくれたって思ってます。ありがとう。
ヒカリちゃんはレイプされた私たちが助けてくれた純一くんをレイプするなんて恩知らずだ、って怒ってたけど注射とか興奮剤とかそんな言葉が出てきたので、常識的な範囲で収まるように計画を修正してくれました。初恋の人にヒドイことしてゴメンナサイ。
私が純一くんを良いなって思ったのは、困ったことがある人の脇を通りがかったときに、どうしたの、って自然に聞いてくれるところです。純一くんは暇だから、っていうかも知れないけど、自分でどうしたらいいのか良く分かんない時に、口にするだけでできちゃうコトもあるんだけど、キッカケがないと口にもできないので大事ないいことだと思います。私は図書分類学の講義レポートで助けてもらいました。あと純一くんの一年の時の講義ノートは未だに流通しているみたいです。私も去年利用しました。
畑中純一という人の事はあまり多く知らないけれど、知っているところはだいたい好きで、ずーっと長いことこうだと良いなぁと想像していました、ヒカリちゃんほどじゃないけど。でも、良く分かんないことがあっても好きになる自信があるし、好きにして欲しいと思います。好きになるので好きでいさせてください。
説明もなく強引な方法での交際のアプローチはお詫びのしようもありません。
それでも良かったら治療とお試しサービスのつもりで私とセックスしてみてください」
そう言うと滝川は額を擦り付け頭を下げた。純一はスッカリだらしなくなった股間と相談してみた。
ぺろん、と陰茎は力を失っている。純一は膝立ちになった。
「子供は何人欲しいんだ?」
「え?」
あげた顔の真正面に濡れてふやけた純一の一物がぶら下がるのを、滝川はちょっとたじろいで無視した。
「コンドームの買い置きはないぞ。避妊はしないし認知もしない」
「次の生理まであと四日くらいだから、大丈夫」
「付き合うことになったら、どうする」
「私、生理は安定しているから計算しやすいよ。事件があっても三十三日周期でした。危険日近かったのに妊娠しないですんだのは、とっても幸運だった。危ない日にやりたくなって子供が嫌なら、コンドーさん私がつけたげる。
子供は欲しいだけ産んであげるけど、みんながいるから、一人であんまりたくさん産むのは他のみんなに悪いかも。
親子丼はどうしてもって言ったら考えるけど、子供次第かな。でも、あんまり小さなうちからってのは不自然っていうか、世間一般を理解できる選択能力がないところで強要するのはイヤ」
「いや、親子丼はいらないから」
「……ホントぉ?」
すこし余裕が出てきたのか滝川は純一の陰茎をつついて揺らし始めた。
「卒業後はどうする」
「まだ一年あるし、通勤圏の外資系にいちおう決まったけど、今のご時世だしねぇ、分かんないけど。ふられなければ一緒にラブラブしてたい。この辺だとめっちゃマンション安いから通勤圏の職場だとみんなで買ったら広いのがローンでもあっという間に買えるよ」
滝川は純一の陰茎を弄りたおし、たまに舌先で舐め始めた。
「引越しの話はどうなってる?」
「だぁーっ、もう意地悪だなぁ!」
滝川はバッと手早くパジャマとパンツを脱ぎ捨て、レイプしてやる、と言って純一の陰茎にむしゃぶりついた。
「さ、肉バイブがオッキした。入れて」
四つん這いになってお尻を振ってみせる滝川。純一が動かないと分かるとにじり下がりながら高さを調整して自分で勃起を迎え入れた。
「本当に大きい、っていうか大きさより動いてないのにお腹の中で音がするみたい。まだ余ってるし。……で、なんで動いてくれないの」
「レイプしてる相手にそんなコト聞くのか?」
「もう、ヤダ。ゴメンナサイ。悪かったです。許してください。好きです。愛しています。もっとスキになります。レイプなんて、もうしません。ずっとアナタの恋人でいさせてください」
そう訴えながら滝川は尻を純一に打ち付ける。
「なん、か、もう、ちょっと、なの、に、いけ、な、い」
純一は滝川にのしかかり、肩を床に押しつぶす。
「レイプのとき、こんなことされなかったか?」
「さ、……された。されました」
「いけたか?」
「痛くて怖くて……」
そこまで返事した滝川の唇を純一は吸い上げる。
大きなゆっくりなストロークで出し入れしている間に滝川の身体がすこしづつ暖まってきた。そのまま腰を突き上げるように乱暴に何発か突き上げる。軽く何度かいったのを確認して体重を掛けて勃起を押し込む。身体が緩んだせいか、完全に収まった。ジリジリ回転しながら反応の良いところを探ると、滝川の性感は完全に掌握された。
「どうだ、気持ちいいか」
何度か繰り返しながら、滝川の悦ぶ動きをしてやると、膣の動きが変わった。絞る吸うというバラバラではなく純一の勃起の動きに合わせた形の動きを各部でそれぞれにおこないはじめた。
「好きです。アナタ。一緒にいさせて」
朦朧とした言葉とともに、滝川の胎腔がこれまでにない緊張と弛緩をはじめ純一は射精した。
すると滝川の口から、まるで遠吠えのような今際の声が漏れ脱力した。人形のような滝川の身体を抱えたまま、純一は仰向けに腰を下ろす。
収まりの良い大きさの滝川の乳房を手の中で転がす。
「さて、最後はミキか」
「もう三人目なのに頑張ってくれている旦那様にお礼も言わないで寝ちゃうのは関心しないけど、まだ彼女の順番」
佐々木が茶化すように言った。
勃起の先端部のある辺りの下腹を指先で叩くと、滝川は目を覚ました。
「ゴメンナサイ。アナタ」
そう言って口付けをして身体を離し、純一の股間の体液の混合物を舐めとり残りを自分のパンツで軽くぬぐい、そのまま身につけ寝間着をはおった。もう一度軽くキスをして、滝川はすこし距離をとった。
「佐々木さん。ちょっと聞きたいことがあります」
「なんでしょうか、純一さま」
さすがにちょっと気になってきたことを最後に控えていた佐々木に訊いてみることにする。佐々木は寝間着を脱いで正座をして純一の正面に控えた。
「キミが、みんなに今回のルールを設定したのかな」
「ルールと言いますと」
佐々木の反応は芝居がかっている。純一は眉をひそめた。
「俺が出したあと舐めて服でぬぐってそのままパンツを履くのと、他の女の子がセックスをしている間に目をそらさない、の二つだ」
「もう一つ、全員の行為が終わるまでヨダレはぬぐわないというのもありますが、まぁそうです。私が設定指導いたしました」
「なんで?」
「自分の取り分を明確にするため、妊娠しても構わないという意志を示すため、もうひとつは、より悦んでいただく技術を学ぶためと嫉妬が無意味であるということを自ら思い出すためです」
「ヨダレは」
「私たちが、牝犬にも劣る浅ましい行為をあるじに働いているということをお互いに示すためです」
「本当は?」
「ほかにも色々思いつくところはありましたが、その三つは私たちがアナタを主人として受け入れ、私たち同士で争わないようにする誓のようなものです」
「そんなもん、誰に教わったんだ」
「前の主人です」
「結婚してたのか」
「遺伝上の父兼祖父にあたります。夏の終わりに亡くなりましたが」
――目眩がする。
つまり――
「先程から何度か出ていた親子丼の実例です。サラブレッドのような機能を求めてのインブリードではないので、私自身に特殊な才能はありませんが、二つだけ特徴があります。祖母の影響か、地毛の色が黒くありません。瞳の色が黄色です。大学で面倒だと嫌なので色を入れていますが。今度改めてお見せします」
「そのことは三人は知っているのか」
「前の主人の話はしていません。外で話すような話ではないので」
「まぁそうだろうさ」
「畑中純一さま、どうか、佐々木未来を拾ってくださいませ」
そう言って改めて頭を下げた佐々木に一瞬深刻になってしまったが、純一は基本的なところに返る。
「で、エサはなに食べるんだ」
軽い話題転換のつもりで純一はできるだけ無邪気に訊いてみる。
「犬猫が口にできるものなら、あらかた何でも。もちろんヒトと同じモノでも大丈夫です。あるじから下されるモノなら、なんでも好物です」
頭を戻した佐々木は笑いもしないで答えた。
「とりあえず俺と同じモノを食わせておけばいいんだな。トイレ寝床風呂なんかは躾がされているんだよね」
どこまで本気なのか、佐々木の反応はさっぱりわからないことに、純一は愕然とする。が怯まず、もう一度軽く訊いてみる。
「基本的には問題ありません。時間と場所を決めての命令も承ります」
「戸外とか二日に一度とかもあるのか」
どこから冗談なのか分からないので、すこし絞って訊いてみる。
「四日間、排尿を禁じられたこともございます。雪が降ると、庭の薔薇に追い肥をしてこいと庭の薔薇の花壇に穴を掘って排便する習慣を命じられました。高校で一度問題になりそうになりました」
なんだか冗談ではない。遊びではないらしいことに、ようやく純一は気がついた。よくもそんな酷い生活を成長期にしていて、こうも育つものだと生命の不思議について考えてしまう。
「ひどい扱いを受けていたようだけれど、戸籍はどうなっているんだ?」
「養子縁組で佐々木になっています。日本の制度上は問題ありません。経済的には慎ましやかに暮らせば働かなくても、というくらいの遺産はあります。前の主人は隠退して長く倒れて六年、死んでそろそろ半年になりますから、世間的にはそれほどの騒ぎではないですし」
「六年?」
「お陰で全寮制の女子高に進学できました。いうほど悪い生活ではなかったようにも思えます」
薄く笑いが乗った言葉にどういう意味があるのか純一には分からない。
「卒業後はどうする」
「純一さまがあるじとなって下されば、その仰るように。それ以前に不要につき暇払いとおっしゃられれば、それも同様に」
なんだか良く分からないが――
「自分で自分の世話ができるなら、あるじなんていらないんじゃないか」
「それは個々によって違いますが、メガネのようなもの、と理解していただければ幸いかと。眼が悪いままなくても歩いている人はいますが、ある時必要を思い出すと必然的に求めるものですから」
この数日しか見知らない佐々木の印象は聡明でイタズラ好きで能動的で、奴隷という言葉の一般的な印象とは全くそぐわない。だが彼女の口上を真に受けると、奴隷というべきかペットというべきか、少なくともその有り様を受け入れているようにみえる。
「最初から、というか、もう全員受け入れるつもりでいるから、オマエがどんなモノであっても今は気にしないことにする。すぐになにか生活に変化があるというわけでもなさそうだしね。でも、訊いておかないといけないことがあるのを思い出した」
「なんなりと」
「オマエがあの馬鹿な男どもをあの場に導いたのか」
「いいえ」
「あの事件が計画されていたことを知っていたか」
「いいえ」
仮に被害を装ってということなら、最初からシフトに入ればいいだけだし、そうでないなら被害にあってはいないだろう。純一にもそう思えた。疑われたことにあまりなにかを感じていないようで素直に佐々木は応える。
「アイツらはどうだった?」
「五本試しましたが、あんなモノかと。ほとんど自分たちの暴力に酔っていましたから、サルというよりはニワトリみたいなものかと。さすがにあれでは不愉快です。ほかの娘には更に堪えられない体験と相手だったと思い、深く心より同情しています。水本先生と赤木先生には警察とともに十分な追求をお願いして、刑事民事の両面で完膚なきまでに徹底した制裁を貸していただきたいと思います」
どういう育ち方をしたかは正直想像もつかないが、しかし彼女が事件の実行者を正しく加害者と認識しているように純一には感じられる。
「俺はどうだ」
「十分に聡明で、十分に力に優れ、他人を慮る余裕に満ちています。
合理的な苛烈さを持ち、十分に傲慢ですが、増長というほど過剰でなく、社会規範を重視し、行き当たったときに省みる理性をお持ちです。
狡猾さには欠けますが、誠意ある力ある者には狡知を振るう機会は少なく、むしろ当然と考えます。
経済的には不明ですが、この規模の部屋をこの位置に仕送りで借りたということは少なくとも貧困ではなく、生活感の緩やかさ穏やかからは健全な生活環境で育ち、自律的な意志で生活を管理する能力が評価できます。
単純に金銭的な話題であれば、私の資産を流用していただければすむことなので、単に生活の維持費というニュアンスであれば問題にならないと思います。
性的な魅力については、既にいま示していただいているとおり、で、三回の大胆な体位とかなりの射精とを繰り返したにも拘わらず、四人目の準備にお付き合い下さっているところから問題ありません。単純に若さという要素を引いても、素敵な色形張りを持った外性器と高い持続力とダイナミックな動きにも苦痛を見せていない内性器の組み合わせは、スバラシイと思います。どういった姿勢でかは分かりませんがユニットバスのかなり高い位置に精液の残滓を発見したので、射精するだけで相当な刺激を女に与えると思います。 趣味的な性向については今のところ分かりませんが、学究的な興味好奇心には満ちているので、それなりの合理性を示してそれなりの成果を示すことができれば、納得いただけるという理解をしております。
どれも私には好ましく、全てを高い線で揃えてお持ちの方は求めて逢えるものでなく、まさに運命と感じております。お気に召していただけるなら、卒業までの恋愛などという一時預かりでなく、一生を差し上げたく思います。――」
純一には過分に感じられる褒め言葉をもらって、やや扱いに戸惑っていると、佐々木は微笑んで言葉を続けた。
「――私のスペックについては時期に合わせて追って説明をするか、純一さまご自身で評価いただいた方が良いと思いますので、今はひとつだけ」
そう言って耳から大粒の真珠のピアスを外し、自分の乳首に通してみせた。乳首が並んだような光景というべきか、大きな真珠だと思うべきか純一には分からない、想像していない光景だった。
「彼らがこのことに気がつかなかったのは、私にとって幸いでした。彼らが誤った知識と判断で勘違いをして、稚拙で未熟な技巧で私を苦しめるコトを目的としたでしょうから。彼らに感謝すべき筋合いは一毫もありませんが、素晴らしい友人たちと深く知り合う機会や、純一さまという素敵な男性の助勢を得られ、今こうして腹蔵なく自らをさらけ出す機会を得た、自らの幸運と天の差配とともに、それを許して下さる純一さまの御心に感謝いたしております」
そう言って、長い口上の後で佐々木は額を寝床に押し付けるように頭を下げ、そのままの姿勢で頭二つ分ほどあとづさる。
言ったまま、佐々木は黙る。
「そんな話を聞いて、俺はどうすればいいんだ」
「どのようにも。私はいつでも股を濡らしてお待ちしております。不要と賜れば、そのように致します。その間、三人の娘たちは自分からのアプローチを待ってくれると思います。純一さまが別の他の誰かを選択するなら、ソレもよろしいことです。純一さまが時間が欲しいとお思いなら、帰れと仰れば、四人とも引揚げます。お呼びがあるまでコチラには参りません」
濡れたシーツとマットに声をくぐもらせて佐々木は答えた。
純一には悪意も感じられず、興味も湧いた。安心というのとは違うが、恋とか愛とかそういうモノとは違うレベルの男性の本能的な感覚が目の前にいる佐々木をカワイイと思わせた。所有というコレクションに近い物的な満足感よりは、庭先でダンボールに入って啼いていた子猫を拾うような感覚、というのも純一の父性を刺激した。
そういえば、純一の実家はペットの犬や猫を幾匹か飼っていたが、金を出してあるいはどこかから貰ってというのは一匹もいなくて、気がついたら居着いたり、庭先に捨てられていたり、というモノばかりだった。街中ではないので大きくない家と小さくない庭先に、パラパラとテリトリーを作っている犬猫はほとんど放し飼いで、家の中も仏間を除いて出入り自由だったが、畳に爪を立てたり食卓の上に乗ると折檻されていて――などと思い出した。
「おいで、ミキ。お前、カワイイや」
純一は自分の口から思いのほか優しげな声が出たので驚いた。
「ありがとうございます」
純一に顔だけ上げて言った佐々木の顔は汗やヨダレとは違うだろうものに濡れていた。
這ったまま、純一の胡座に膝先をつけるような形で正座する佐々木は涙と鼻水に濡れていた。近くでよく見ると化粧の汚れはないようだった。
「スッピンか。良いね」
「食事の時は、口紅は注していましたが、基本的にはUVファウンデーションくらいです。純一さまはあまり騒がしいのは好まれないと思いましたので」
「自分で拭うのはナシでも、俺が拭うのは良いんだな」
「はい」と、佐々木が頷くのを見て純一は剥がされたままのパジャマを後ろ手に探り、下半分だったが、探すのも面倒くさいので、そのまま佐々木の鼻をかんで、ベシャベシャの顔を拭ってやる。
純一には加減が良く分からなかったが、佐々木は文句言わずなすがままだった。やはり気になってパジャマをみるが、色がついた様子もない。
「ホントにスッピンなんだな」
疑ったわけでもないが、ちょっと驚いて純一は繰り返した。
「はい」
少し恥ずかしそうに佐々木は答えた。
ついウッカリ、純一は抱きしめてしまった。あまりの勢いに佐々木は驚いた顔でよろけて、純一の胸に倒れこむ。
「どうせ、いつかすることになるし、セックスでもするか」
別に性衝動と関わりなかったが、恥ずかしかったので、なんだかヤケクソのように純一は言う。佐々木は嬉しそうに、はい、と言った。
佐々木の身体は格別だった。まるで力を持っていない純一の陰茎を胎腔にそのまま吸い込み、包み扱き上げ、勃起させた。
純一の意図的な動きも衝動的な動きもそのまま受けとめ次を導き続けた。
彼女自身なんども達し、意識を失くし、動きが停っても、内臓器官は正確に純一の状態を把握し応え、佐々木の意識とは別の何かが肉体を操作し続けているようだった。
ソレはかなり貪欲で、二人が運動に疲れ果てて張り付いていても呼吸や鼓動と同じく休むことなく働き続け、しかし純一の絶頂を極めることは赦さず、純一に射精とは別の酩酊を与えた。
「ソロソロ、出したい」
「生理について、妊娠の可能性について確認しないでよろしいのですか」
純一が幾つかの峰を超えたことを感じながら求めると、佐々木が確認した。
「どうせ避妊しているんだろ」
「いいえ」
さっと怯んだ勃起を、しかし佐々木の胎内は赦さなかった。純一は呻いてしまう。
「ですが、妊娠した方がいいか、しない方がいいかの希望は受けられます。――」
――信じられない。
「――そういう風に躾られました。実績もあります。男女の産み分けは主に男性の作業のようですので、ソチラはムリですが」
まるで料理の献立はなにがいいかと問う様に、なんでも良いと純一が応えたかのように、佐々木は困った顔で微笑んだ。
「そんな魔法のような」
「私にはフツウのことなのですが、人が信じられないようなコトを魔法と言うならそうかも知れません。亡くなった前の主人の家には幾つかその証拠が記念にとってありました。どうなったか知りませんが。――」
まぁそんなコトも世の中にはある、というような他人事の風情で佐々木は言った。
「――妊娠して、産まないという選択もあります。女の体型が変わるのを楽しむというのも良いモノらしいでしゅ――う」
「そんなコトを言う口はコレか」
純一はさすがに聞くに耐えなくなって、佐々木の唇を指でつまみ引っ張る。
「他に三人も嫁さんを突然抱えることになった俺をあんまりイジるな。彼女なんて久しくいなかったのに、イキナリ上級者の選択を突きつけるな。避妊妊娠の制御技術もなんか身体に悪そうだから、あんまり使うな。日を改めて聞いてやるから説明してからやってくれ」
唇をつままれながらも佐々木は律儀に、ハイ、ハイと笑顔で返事をした。
「今日は妊娠はしないでくれるとウレシイが、妊娠したら産んでくれ。認知もしてやる。けど、収入がないし、就職もしてないから、今はちょっと……できれば、まだ避けたい。いや、欲しくて欲しくてしょうがないって言うなら話は別だが」
ありがとうございます。佐々木はそう答えたように思う。
いや、そう答えたはずで、純一にもそう記憶はあるのだが、そこから僅かな時間で一気に佐々木の動きが変わり、つられて純一も動き、二人で気絶したのをなんとなく覚えている。
ベッタリと腹のあたりに冷たい精液と愛液の感触があって、陰茎が萎えた感触があるので、そうだったんだろうと思う。
二人の有様に驚いたのか、三人がのぞき込んでいる顔に微笑み返すと安心した表情が返ってきた。
さすがに眠くなってひとかたまりになって眠った。
ビルの間から日が昇っての遅めの朝食は沼地のようになった寝床で車座になって取られた。
純一が目覚めたとき股間は拭われて佐々木は離れていた。
炊飯器からご飯の炊ける匂いがして、卵か何かを焼いている匂いと味噌汁と、だと思う。
固まって寝るときに、寝顔を独り占めと言っていた遠藤が頻りに細かなキスをしていた。
川上と滝川は純一の身体のアチコチをそれぞれ勝手に指先でまさぐって、なにかを観察していた。遠藤のディープキスに純一の股間がわかりやすく反応したことに二人は感心するのに、純一はちょっと困った。
下着の上から純一のエプロンをつけた佐々木が運んだ献立は、ご飯と納豆、玉子焼きと里芋と豚肉が山のように入った味噌汁だった。
自分だけが素っ裸の状態で目の前に食事が配膳され、ままよと、イタダキマスを宣言したものの、恥ずかしくなってしまい、純一はテレビのスイッチを入れる。
午前のニュースがすぐに始まり、近所で起きた暴力団の抗争事件と、交通事故を報じていた。暴力団の抗争は実にサラリと流されたが、交通事故の方は信号停車中のバスに車がツッコミ当たり方が悪く、川に転落する内容だったらしく、少し不謹慎な盛り上がりを感じた。
食事を終えて片付けに向かう佐々木の後ろ姿は、パンツが腰のあたりまで濡れているのが陽の光に分かり、純一が一気に勃起するのを女たちは囃した。
それが引き金になってもう一巡、陽の光の中でセックスをした。
午後もいい加減すぎた遅目の昼食を寝床で片付けて順番にシャワーを浴び、解散となった。使った毛布は雑巾のようになってしまったので、佐々木がシーツとまとめて大型コインランドリーで洗うことになった。また明日来るという。
フワフワにかさばるパーティードレスとゴミ袋に詰めた毛布とシーツを持って女たちは佐々木の車で帰っていった。
純一はマットレスの中身のスポンジにシャワーを掛けてベランダで干す間に、女たちの下着と寝間着を洗濯する。
日は出ていたが、冬の風は冷たく乾いていた。
川上の作ったニンニクと里芋がジャガイモの代わりに入った、辛くて美味いカレーを晩ご飯に食べて純一は眠った。
「あ、起きた」
遠藤の声がする方に目を向けると、佐々木が純一の胸と肩に手をついて右腕に体を絡めるようにして鎖骨の窪みに舌を這わせているのが目に入った。股間に吸い込まれるような刺激が走る。遠藤が純一の勃起した性器を口であやしているのが佐々木が姿勢を変えた向こうに見えた。純一が目覚めたことと、それに勢いを得た遠藤の口腔性交が、純一の勃起を完全なものに近づけていく。純一の腰がつい震えた。口蓋垂が亀頭に触れた感触がして、さらに咽頭をくぐらすために遠藤が姿勢と舌で陰茎を調節して飲み込んでゆく。
「すっげぇ」
食道に亀頭の先端が引っかかったのが分かり、遠藤が舌と首の筋肉だけで締め上げ刺激を与えていることに純一は感動した。
遠藤は純一の勃起の形を確かめるようにゆっくり二三度くりかえすと、呼吸とリズムを合わせるようにして素早い一往復をしてみせた。
漏れたような衝撃に純一は呻く。あっさり持っていかれるのは防げたらしい。
「凄い。コレやったら、たいてい一発撃沈なのに」
目眩がしたのか、屹立した陽根に頬ずりして突っ伏して遠藤が言った。
「寝起きだからじゃない。でもおっきいね」
「喉にバッチリ引っかかった。食道セックスは初めて、いつもはのどチンコまでだから。食道バージンでいっちゃった。でも、お腹にちゃんと収まるか少し心配」
興味津々で純一の胸の上から見ていた佐々木に遠藤が感触を報告する。自分の口であやした硬さを確かめると、ゆっくりと身を起こして純一にまたがった。
「二人を起こしちゃうよ」
「誰を?」
言いながら寝間着のままの遠藤が屹立した陽根に腰を下ろす。寝間着に隠れて見えないが、口の中の硬さとは全く違う、生殖専用の器官は最初から最後まで純一の性器を受け入れてゆく。行き止まりの感触があり、しかし遠藤の体重が次第にかかっていく。
「コレはっくるッさける」
一気に膣の蠕動が始まった。全体に絞り上げるように痙攣が始まりやがて緩む。
純一は女が自分の内臓に任せて勃起を撫で上げているのを困惑したまま受けれいていた。視線を感じた。
「まだ出さないの?」
滝川が右腕の中で言った。
「私たちに遠慮してくれているのね。でもいいの」
川上が耳元にささやいた。休憩して呼吸が落ち着いたのか、遠藤の腰が円を書き始めた。体には大きすぎる印象の乳房が揺れる。とくと足元まで伸びるだろう髪が木立の葉のように揺れる。
「これってレイプじゃないか」
勃起させてバッチリつながったままする会話じゃない、とは思いながら純一は疑問を口にした。
「日本だと女が男を襲っても、強姦罪にはならないらしいよ」
佐々木が少し悲しそうに言った。
「あの場でやったことは迷惑だったか?」
「ううん。私たち全員本当に感謝している。――アレはごっこ遊びじゃなくて本当にレイプだったの。私は私たちは全員本当の意味での初対面の男たちに、恐怖と暴力で押さえ付けられて強姦されたの」
腹の上で遠藤が苦しそうに踊っている。明らかに性的に気持ちよいはずだが、なにか変な意図が絡んでいるようで、昨日までならアッサリくる筈の射精感が臨界にならない。これがEDってヤツかも。遠藤の股間から滴る愛液は適度な滑りと柔らかさを持っていて、膣壁は純一の陰茎を抜き差しの度に綺麗に収めている。ほんの数分前までは深さが不足していたが、まるで掘削されたように奥行きが増して先端部を吸い付くような感触で迎える。遠藤の性器は実にいい。けど、萎えこそしないものの射精には至らない。
滝川と川上も耳や首に口付けし舌を這わせる。佐々木もしゃべることしゃべったら黙って胸やら口やらに舌や唇を這わせつつ、アチコチをくすぐる。
純一はだんだん腹がたってきた。
「おい」
純一は乱暴に腰を突き上げていった。不意打ちのような一撃は純一の竿全体をしならせ痛みを走らせたが、元々自分の動きで高まっていた遠藤はイッた。
「おい、ケイコ」
腰を揺さぶって突き刺さったままの女の内臓を起こす。
「オマエ、セックス好きか」
「……うん」
遠藤は少し考えて、躊躇った後に頷いた。
「俺とのセックスは気持ちいいか」
「気持ちい、い。硬いし、なんかイイトコ当たってる」
遠藤は純一がナニをいっているのかよく分からないようだが、うなづいた。
「俺はそうでもない」
遠藤は情けない泣きそうな顔になった。
「不意打ちだったからガッツり立ったけど、全然訳が分からないままレイプされて、お陰で色々考えているせいで、オマエがこんなにうまくなかったら、間違いなく萎えてる」
遠藤の腰は完全に停って内臓だけが呼吸に合わせて純一の勃起を揉みしだいている。
「一番分からないのはオマエが俺を好きなのか、好きになる気があるのか、ということだ」
「助けれくれたからスキ」
純一の体に群がってた女たちの動きも停っていた。
「俺はオマエの顔も、細くて小さい感じなのにでっかい胸も、そのいつから伸ばしているか分からないような長い髪も、なんだか思いつきで突然仕掛けるイタズラも、気に入っている。現場を助けたなりゆきもあるし、強姦なんていうワケの分からないバカの仕業でしかも面白半分なんて質の悪い事件だってのも気に入らなくて力になりたいとも思っている。だから、可能な限り大事にはしてやりたい。守るために心を配ることを愛だって定義するなら愛しているっていってもいい。でも、好きっていうのとは違う」
「……でも」
「助けてもらって好きだからセックスって言うなら、水本先生とセックスしてこい。あの先生はお前らを犯したクソ野郎どもから大きな車が買えるくらいの金を一人一台づつ十人全員からムシるつもりだ。おまえらの誰かがあの連中を引っ掛けた美人局なら俺じゃなくて先生のところにいくんだな」
アチコチを噛まれたり引っかかれたりしたが、無視する。
「オマエが俺のことを感謝している。だから感謝に応えるために愛したいと思っているのは本当だろうが、でも、愛しているわけでも好きなわけでもないだろ」
「……好きだもん。キッカケは最悪だったけど好きだもん。クルクル回ってバレエみたいで強くてカッコよかったもん。助けてくれて嬉しかったの。だから好きになって欲しかったの。これまで付き合った男の人、みんな私のセックス喜んでくれたし、アイツらだってめちゃくちゃ喜んでたの。ほんの十五分で五人も……」
遠藤がポロポロ泣き出し、内臓がでたらめに動き出した。
「……ひょっとして私が二股かけてるとか思ってるの?そんな人いない、イナイの!犯されたことが知られて、叩かれて別れたの!ホントにイナイの」
純一が腕に力を入れると両脇の二人が身を起こして純一の腕を開放した。その腕で遠藤を招き、抱き寄せる。
「――俺のコト好きか」
「……たぶん。でもよくわかんない」
「俺のチンコは気持ちいいか」
「……気持ちイイ。硬いし、なんかイイトコに当たってるし、……さっきのキスも美味しかった」
「生でつながってるな。ピル飲んでるのか」
「ううん?この間の事件のあと生理確認しないとならないから、飲んでない」
「生理は順調?」
「ううん。ダメ。よくあることだって」
「妊娠してたらどうする」
「産んじゃうよ。モチロン」
「認知しないかもしれないぞ」
「娘だったら知らんぷりして親子丼プレゼントする」
「さすがにロリータはアレだな」
「大丈夫だよ。私、十四の時からだいたいこんな感じだったから」
モソモソと遠藤が腰を動かし始める。
「早熟だなぁ」
「フェラチオデビューは小三だったし」
「はやっ」
「お陰で中高は女子高でした」
「すると、初めては先生相手か」
「アタリ。なんで分かったの」
「いや、タダのデタラメ」
「ところでなんだか、妊娠とか親子丼とか純一さんの興味あるキーワードなの?」
「なんで?」
「ドカンて中で開いて、擦れてるから」
「そうか?」
「モーいい。好きかどうか疑われても良いや、プレゼントに娘をあげることに決めた。で、親子丼する。生まれた娘に言うんだ。お父さんにお母さんの好きって言葉を信用してもらうためにオマエをセクシーセックスに改造したんだ。愛のために戦えって」
「おいっ」
文字通りのツッコミを純一は腰でくれる。
「問題はそこじゃないだろ」
「くっ」
「オマエが、俺を、愛する、好きになる、努力を、する気が、あるのか、どうかが、俺は、知りたいん、だよ」
遠藤の爪先が跳ね上がるほどの衝撃を加えながら、純一は今までと自分の中にある手応えというかグルグル渦巻くナニカの質が変わっていることを感じていた。衝撃に耐えられなくなって胸にすがりついたようになった遠藤を、腰を止めて見下ろす。
「……しま……に……ります」
「もっと大きな声で」
純一の胸に張り付いたままの遠藤の尻をたたく。
「愛します。好きになります」
「もっと大きな声で」
ちょっと手応えが悪かったのでワンピースをめくって太ももをむき出しにした。内臓が細かく震えた。
「あいします!すきになります!」
「ナニを」
叩く手をもう少し奥に進めた。手首だけで叩くことになって少し指先が痛かったが、無視した。内臓が震えるのが楽しかった。
「純一さんを愛します!畑中純一さんをスキになります!」
「俺のことを嫌いになるかもしれないぞ」
ガコンと不意打ちのように腰を跳ねる。下腹を濡らす粘液の量が増えた。
「大丈夫。嫌われても大丈夫。純一さんを愛して好きになるから。……お願い、キスして……」
苦痛をこらえるように答えると、顎をそらして遠藤は目をつぶる。純一は首を起こすが、やや小さな遠藤との唇の距離を縮めるために、ムリな姿勢に肩と腹筋で上半身を起こし、対面座位に移行して口付ける。
純一は口付けした途端にザッと何かが動いたのを感じギョッとしたが、上半身を起こしてからひっきりなしに吸い上げ動いていた遠藤の内臓の蠕動がより強く痙攣して、射精を我慢する気も必要もないなので、そのまま流した。
口の中で遠藤は呻き続け、純一はそれを吸い上げた。よくも我ながらこれだけ我慢していたのか、と思うほどの長い射精の間、純一は遠藤の口を塞いでいた。遠藤はほんの僅かな時間に失神と覚醒を繰り返し、舌の動きと眼球がそういった知識のない純一にも分かるほどだったが、お互いの交接器官は全てを出し、全てを受けるために完璧な連携を果たし、やがてその自律的な衝撃から二人を解放した。
「妊娠しても知らないぞ」
「大丈夫。愛の結晶だから。そう言って育てるから」
「親子丼は勘弁してくれ」
「絶対アナタのコト惚れさせるために、お父さんがどれだけ素敵でカッコいいか言いながら育てるから、ベタベタのファザコンでラブラブな子供にする。女の子だったらパパのお嫁さんになるんだって誓わせて、そのまま大きくする」
その言葉だけで全部出したはずの純一の勃起は遠藤の体の中で力を増す。
そんな純一の体の未練を喜ぶように遠藤は身を離した。明かりを落とした部屋の中の小さな電子機器の灯りにも濡れ光っていることの分かる純一の勃起を、遠藤は喉まで飲み込み、舌先で零れた二人の雫を甘露であるかのように舐めとった。そして自分のワンピースの裾でぬぐい、一同を見渡した。
「もう良いの」
いつの間にかジャージの下を脱いだ川上が確認した。
遠藤が頷くと、川上は遠藤と入れ替わりに純一の前に正座をして、「お願いします」と一礼した。
川上は改めて立ち上がり、先にパンツを脱ぐと純一の手に載せた。かなり重たく湿気っている。丸めて渡された手の中で生ぬるいおしぼりのような湿り気と匂いに純一は戸惑う。川上は純一を無視してジャージの上とティーシャツを脱いで、ソチラは後ろに捨てた。
「もうそんな感じ。どうしたい?」
川上は軽く一歩進むと、純一の胡座を軽くまたいで腰を突き出し、自分の下着に視線をやってから、純一に尋ねた。光る陰毛が妙に美味しそうに純一には思えた。
「とりあえず、腰を下ろせ」
「うん」
川上は言われた通り、ゆっくり腰を下ろしてゆく。勃起に触れると軽く腰を引いたが、純一の腕が腰にあたって後ろにさがれない。
「入っちゃうよ」
「イヤか」
「ううん。全然。むしろウレシイ」
「妊娠しちゃうよ?」
「むしろウレシイ」
「認知しないよ」
「大丈夫。今年出れば単位足りているから、卒業して実家で育てる。――」
純一はナニカ少し悲しくなった。
「――顔を見に来て良いなら、頑張ってこっちで育てる」
「子供なんかいらねーっていうかも知れないよ」
「一緒にいてくれるなら、避妊手術してもいいよ」
「……インプラントくらいにしような」
「明後日、かかってる産婦人科の先生に日程訊いてくるね」
「そこまでしないでいいや。ところで生理は?」
「事件のせいで、ボロボロ来てて、しょうがないからしばらくピル飲んで止めてる。だからジュンジュンがもうイヤだ飽きたっていうまで中出してても大丈夫」
「じゃぁ、妊娠は気にしないでいいか」
「今日はそうだけど、子どもが嫌ならインプラント、ホントに訊いてくるよ」
「イヤ、ほら、勢いで子供作ったら子供のほうがかわいそうじゃん。落ち着くまで待ってから考えよう」
そこまで聞くと川上は腰を割り微調整しながら腰を下ろす。濡れた陰毛でくすぐられた純一の勃起が痙攣するので、うまく膣口を捉えきれない。
「いいのか――」
「大丈夫。もう前戯はいらない。なんか話してたら勝手に濡れてきた。すこしいったみたい――」
純一の問いズレた答を返しながら、ちょっと勃起を指先で修正して亀頭を捉えると、少し硬い感じの膣壁に馴染ませるように、ゆっくり腰をおろした。
「――ほらね。なんだっけ」
「――そんな風に決めて、お家の人とか大丈夫なのかって。……大丈夫か、なんか辛そうだけど」
「きっと驚くけど、大丈夫。事件のあとふたりで飛んできてくれて、ジュンジュンが助けてくれた話したら、中学の時の純一さんのこと両親とも覚えてた。だから子供貰ってきたから育てるって言ったら、多分おどろくけど、育てるのは納得して協力してくれる」
川上は腰をくねらせ、重心を変えて筋肉を調整する。しばらくすると膣壁の緊張が解けて馴染んできた。
「あのサルのよりもだいぶ大きい、から、ちょっとまってね。人間とやるのは初めてで、……二度目だから、イマイチよく分かんないの」
「それって……」
川上が薄く微笑んでみせる。
「大丈夫。私、スポーツ少女だったから、処女膜はもう破れるほどなかったの。両親の話なら、中学のとき、私たち会ってるんだよ。実は」
「ゴメン、覚えがない」
純一がつい困った顔をすると、川上は笑った。
「そうだと思った。でも仕方ないよ、一回だけだもん」
「どこで?」
純一は思い出す努力をしながらキーワードを求める。
「中学三年の県の練習記録会で県立体育館のプールサイド。男子二百メートル自由形の後、県記録出したとき」
中学生日本記録に〇.〇八秒遅れでの中学生県記録。ゴールデンウィーク中の素敵な出来事。埋めておいた記憶。もう平気かと思ったら、意外と染みることに純一は気がついた。川上がブルッと腰を震わせた。
「次が女子の自由形だったからプールに入って学校の仲間を探してて、プールサイド戻ってくるアナタの足を踏んじゃったの」
どうだったか、言われてみればそんなコトがあったかも知れないが、プールサイドでウロウロしている人にぶつかるのはよくある事で、よほど不機嫌なことでもなければ純一は笑って流すはずなので印象にない。
「がっちり踏んじゃってオロオロしてた私に、美人と話す機会ができるのは良くあるけど、美人に顔を覚えて貰う機会は少ないからいいさって、踏んだ足の感触とこんな顔を覚えておくとオリンピックの時に、あー足の人だって、言えるから覚えといて。とか、県中学記録保持者を踏んだから県記録が近くなっているよ、って言ってたら学校の仲間が来て別れたんだけど」
「あーそんなコトあったかも、そういえば人の記録とか気にしたことなかったから知らないんだけど、それが原因で調子落としてなかったら良かった。手遅れだけど」
「自己新で県記録出したの。オリンピックのジュニアコースの選抜まで入ったけど、選考で落ちちゃった」
「知らなかった。女子の記録まで見るほど真面目じゃなかったし、ゴメン」
「高校で競泳やってなかったんだから、しょうがないよ。秋大会にも出てなかったから、なんかあったんだろうなと思ってた」
「あー、ゴメン。ソレはナンカ今話すと萎える」
「ん、ゴメンね」
そう言って、ようやく身体がなじんだらしい川上は腰を上下に動かし始める。
「いや、話をしよう、別にいいんだろ。時間は気にしないで」
「みんな一晩に何回もできると思ってないから、焦らないで大丈夫」
「まだちゃんと硬いから、ソレは大丈夫だけどね」
「よかった。……でね、顔と名前は覚えてたの」
「あ、そうか」
「私も高校でいまいち記録が伸びなくてインターハイは出たけどオリンピック選考外れて、大学では競泳は辞めることにしたの。で、どうしようか、と思っていたら、ジュンジュンがサークルに入るところを見かけて、あー似てる人が入ったから、って入ってみたら本人で運命かもって、ちょっと少女漫画ハイったこともあるけど、ジュンジュン本人はこっちを忘れているみたいだったし、一年の時は先輩とくっついてたからなんか微妙に声かけにくくて、二年三年でだんだん出て来なくなったから、まぁしょうがないか、と思ってたの。私も恋愛とか距離感分かんないからはじめにくいし。負け組かなぁって……。
そしたら喫茶店のサーバーにジュンジュン入ることになったから、ヤッパリ運命かもって、そしたらあの事件があって、あーもう殺してと思ってたら、ジュンジュンが助けてくれて。
で、みんなと話すと、あの人欲しいって事にヤッパリなったの。助けてくれたとき、カッコよかったし。機会はみんなで作ると一回でいいから簡単だって、バラバラだとジュンジュンも時間合わせ大変だし、今になって彼女いない人は興味がないか手間を惜しんでる人だから、メンドくさがらせると逃げちゃうって」
「でも、いきなりセックスってのはどうさ」
「けっこう私にはイキナリでもない。色々シミュレーションはしてた、けど間が悪くってひとりだと上手くいかなかった。……江田くんとか邪魔だったし」
「誰だっけ?ソレ」
「……あの時間に突然いなくなったダメ男。ホント不愉快」
なんだか川上の腰の動きが激しくなってきた。
「うん。でね、サルに噛まれたせいで生理がぐちゃぐちゃになって調整のためにピル飲んで、って状態をチャンスかもって思うことにした。これまでなんだかセックスしたことなかったけど、今のうちに試しておいて、っていうか悪い癖がないうちにジュンジュンに鍛えてもらったらジュンジュン好みになるかなって。私スポーツはすぐソコソコになる質だから、セックスもすぐ筋肉の使い方覚えるかなって。なんかまだストレッチ足りないみたいで、オマンコ硬いかもだけど、身体は柔らかいから色々できると思うの」
勃起を杭としてブリッジ姿勢で足先を指先であわせてみせた。筋肉がざわざわと動いて痙攣する。
川上が姿勢を戻したとき、彼女の腹の中の作りは変わっていて、純一の肉棒に絡むように動いていた。
「だけど、みんなでジュンジュンと付き合おうかって事になって、知らないところで比べられるのは嫌だし、他の人のを見て勉強したかったから、最初はみんなでって言ったの。あと、ヤッパリひとりだと怖いから。ジュンジュンがっていうか、おチンチンがね」
「それでヤッパリ怖くて引っ込んだのか」
「あれは……ちょっと疲れてもうヤだなって少し思って、本当にヤなのか自分に確認が必要だった。最初のケーちゃんのキスを三人で見てた時から辛かったし、オナニーして誘ってるのも辛かった。でも協定は維持しておかないと負けそうだったし、ジュンジュンが逃げたら追えなくなっちゃうし、捕まえる係が欲しかったし」
「なんだ。オマエもムリヤリか」
「ヤだった?」
すこし心配そうに川上が言った。
「俺のこと好きか?」
「ずっと好きだった。初恋って言えるかどうか分からないけど、恋だって気がついた最初の人。もちろん好きだし、きっとこれからも好き。愛してる」
「じゃぁいいや。ヒカリ、動いていいか?我慢できなくなってきた」
純一はそう言って一息に腰を川上を押し倒して抱えたまま膝立ちになる。川上は手足を純一に絡めたまま肩と首で身体を支える。
アクロバティックな姿勢変更だったが川上の筋力がそれを可能にして、川上の身体の柔らかさが純一の動きを助けた。
姿勢を変える度に川上の胎腔は形を変え、純一はその感触の変化に酔い楽しんだ。
そのうち川上がひとりで絶頂をさまよい、えづき出したので、交接を解こうと身体を離したスキに、朦朧としたままの川上が自分で足をさしかえ、もう半周して一回転してみせた。捻られるような衝撃とその開放感から純一はかなり激しく射精していた。川上は半身になって更に深く繋がる形を探し、絡めた足の力任せに純一を自分の胎に引き込んだ。二人の接合部はまるでコーヒーメーカーの沸騰音のようなものをしばらく立てていた。
射精が止んでしばらくしてから、川上は身を離し、純一のまだ固く蠢いている勃起を口にする。だが、遠藤ほど深く銜え込めない。もう良いと純一が言うと、純一の股ぐらに顔を突っ込み陰嚢から陰茎までの二人の飛沫を舐めとりはじめた。そしてティーシャツで拭うとそれを被り、純一の脇にあったパンツを履いた。
「三番、滝川紫。畑中純一さん愛してます。好きでした。好きです。交際してください。っていうかセックスしませんか。あれ違う――」
右手を上げた格好で滝川が言った。セックスを誘っているようなわりには、まだ余韻で硬さを保っている陰茎に視線を流しては外す。
膝をつき正座をして滝川が続ける。どうやら、言いたいこと言うべきことはまとめて言ってしまおう、という作戦らしい。
「――ええと、みんなで付き合おうって言ったのは私じゃないけど、けっこう良いなって思いました。
事件のせいで怖かったのもあるし、純一さんがカッコよかったのもあるけど、他の警察とかの男の人も怖かったから、早いうちに誰かと付き合わないと一生ダメな気がしました。いつ子どもが欲しいとかそういうことは考えてなかったけど、結婚することができないでおばあさんになる理由が男の人が怖いからって言うのはちょっと悔しいと思っています。
経験の上書き、っていう考え方をミキちゃんから聞いてイケるかも知れないと思ったので、今回の純一くんをレイプする計画を言ってみたのは私です。ゴメンナサイ。いっぺんにヤる形にできなかったのは男の人が一本しかないからと、アンマリ想像力がなくてみんなでってのが思いつかなかったからです。
レイプするのにひとりじゃムリだからミンナでってのもあったけど、みんなお互いのことが心配で自分だけ良ければ良いやっていう雰囲気でもなかったので、ミキちゃんとケイコちゃんも手伝ってくれたって思ってます。ありがとう。
ヒカリちゃんはレイプされた私たちが助けてくれた純一くんをレイプするなんて恩知らずだ、って怒ってたけど注射とか興奮剤とかそんな言葉が出てきたので、常識的な範囲で収まるように計画を修正してくれました。初恋の人にヒドイことしてゴメンナサイ。
私が純一くんを良いなって思ったのは、困ったことがある人の脇を通りがかったときに、どうしたの、って自然に聞いてくれるところです。純一くんは暇だから、っていうかも知れないけど、自分でどうしたらいいのか良く分かんない時に、口にするだけでできちゃうコトもあるんだけど、キッカケがないと口にもできないので大事ないいことだと思います。私は図書分類学の講義レポートで助けてもらいました。あと純一くんの一年の時の講義ノートは未だに流通しているみたいです。私も去年利用しました。
畑中純一という人の事はあまり多く知らないけれど、知っているところはだいたい好きで、ずーっと長いことこうだと良いなぁと想像していました、ヒカリちゃんほどじゃないけど。でも、良く分かんないことがあっても好きになる自信があるし、好きにして欲しいと思います。好きになるので好きでいさせてください。
説明もなく強引な方法での交際のアプローチはお詫びのしようもありません。
それでも良かったら治療とお試しサービスのつもりで私とセックスしてみてください」
そう言うと滝川は額を擦り付け頭を下げた。純一はスッカリだらしなくなった股間と相談してみた。
ぺろん、と陰茎は力を失っている。純一は膝立ちになった。
「子供は何人欲しいんだ?」
「え?」
あげた顔の真正面に濡れてふやけた純一の一物がぶら下がるのを、滝川はちょっとたじろいで無視した。
「コンドームの買い置きはないぞ。避妊はしないし認知もしない」
「次の生理まであと四日くらいだから、大丈夫」
「付き合うことになったら、どうする」
「私、生理は安定しているから計算しやすいよ。事件があっても三十三日周期でした。危険日近かったのに妊娠しないですんだのは、とっても幸運だった。危ない日にやりたくなって子供が嫌なら、コンドーさん私がつけたげる。
子供は欲しいだけ産んであげるけど、みんながいるから、一人であんまりたくさん産むのは他のみんなに悪いかも。
親子丼はどうしてもって言ったら考えるけど、子供次第かな。でも、あんまり小さなうちからってのは不自然っていうか、世間一般を理解できる選択能力がないところで強要するのはイヤ」
「いや、親子丼はいらないから」
「……ホントぉ?」
すこし余裕が出てきたのか滝川は純一の陰茎をつついて揺らし始めた。
「卒業後はどうする」
「まだ一年あるし、通勤圏の外資系にいちおう決まったけど、今のご時世だしねぇ、分かんないけど。ふられなければ一緒にラブラブしてたい。この辺だとめっちゃマンション安いから通勤圏の職場だとみんなで買ったら広いのがローンでもあっという間に買えるよ」
滝川は純一の陰茎を弄りたおし、たまに舌先で舐め始めた。
「引越しの話はどうなってる?」
「だぁーっ、もう意地悪だなぁ!」
滝川はバッと手早くパジャマとパンツを脱ぎ捨て、レイプしてやる、と言って純一の陰茎にむしゃぶりついた。
「さ、肉バイブがオッキした。入れて」
四つん這いになってお尻を振ってみせる滝川。純一が動かないと分かるとにじり下がりながら高さを調整して自分で勃起を迎え入れた。
「本当に大きい、っていうか大きさより動いてないのにお腹の中で音がするみたい。まだ余ってるし。……で、なんで動いてくれないの」
「レイプしてる相手にそんなコト聞くのか?」
「もう、ヤダ。ゴメンナサイ。悪かったです。許してください。好きです。愛しています。もっとスキになります。レイプなんて、もうしません。ずっとアナタの恋人でいさせてください」
そう訴えながら滝川は尻を純一に打ち付ける。
「なん、か、もう、ちょっと、なの、に、いけ、な、い」
純一は滝川にのしかかり、肩を床に押しつぶす。
「レイプのとき、こんなことされなかったか?」
「さ、……された。されました」
「いけたか?」
「痛くて怖くて……」
そこまで返事した滝川の唇を純一は吸い上げる。
大きなゆっくりなストロークで出し入れしている間に滝川の身体がすこしづつ暖まってきた。そのまま腰を突き上げるように乱暴に何発か突き上げる。軽く何度かいったのを確認して体重を掛けて勃起を押し込む。身体が緩んだせいか、完全に収まった。ジリジリ回転しながら反応の良いところを探ると、滝川の性感は完全に掌握された。
「どうだ、気持ちいいか」
何度か繰り返しながら、滝川の悦ぶ動きをしてやると、膣の動きが変わった。絞る吸うというバラバラではなく純一の勃起の動きに合わせた形の動きを各部でそれぞれにおこないはじめた。
「好きです。アナタ。一緒にいさせて」
朦朧とした言葉とともに、滝川の胎腔がこれまでにない緊張と弛緩をはじめ純一は射精した。
すると滝川の口から、まるで遠吠えのような今際の声が漏れ脱力した。人形のような滝川の身体を抱えたまま、純一は仰向けに腰を下ろす。
収まりの良い大きさの滝川の乳房を手の中で転がす。
「さて、最後はミキか」
「もう三人目なのに頑張ってくれている旦那様にお礼も言わないで寝ちゃうのは関心しないけど、まだ彼女の順番」
佐々木が茶化すように言った。
勃起の先端部のある辺りの下腹を指先で叩くと、滝川は目を覚ました。
「ゴメンナサイ。アナタ」
そう言って口付けをして身体を離し、純一の股間の体液の混合物を舐めとり残りを自分のパンツで軽くぬぐい、そのまま身につけ寝間着をはおった。もう一度軽くキスをして、滝川はすこし距離をとった。
「佐々木さん。ちょっと聞きたいことがあります」
「なんでしょうか、純一さま」
さすがにちょっと気になってきたことを最後に控えていた佐々木に訊いてみることにする。佐々木は寝間着を脱いで正座をして純一の正面に控えた。
「キミが、みんなに今回のルールを設定したのかな」
「ルールと言いますと」
佐々木の反応は芝居がかっている。純一は眉をひそめた。
「俺が出したあと舐めて服でぬぐってそのままパンツを履くのと、他の女の子がセックスをしている間に目をそらさない、の二つだ」
「もう一つ、全員の行為が終わるまでヨダレはぬぐわないというのもありますが、まぁそうです。私が設定指導いたしました」
「なんで?」
「自分の取り分を明確にするため、妊娠しても構わないという意志を示すため、もうひとつは、より悦んでいただく技術を学ぶためと嫉妬が無意味であるということを自ら思い出すためです」
「ヨダレは」
「私たちが、牝犬にも劣る浅ましい行為をあるじに働いているということをお互いに示すためです」
「本当は?」
「ほかにも色々思いつくところはありましたが、その三つは私たちがアナタを主人として受け入れ、私たち同士で争わないようにする誓のようなものです」
「そんなもん、誰に教わったんだ」
「前の主人です」
「結婚してたのか」
「遺伝上の父兼祖父にあたります。夏の終わりに亡くなりましたが」
――目眩がする。
つまり――
「先程から何度か出ていた親子丼の実例です。サラブレッドのような機能を求めてのインブリードではないので、私自身に特殊な才能はありませんが、二つだけ特徴があります。祖母の影響か、地毛の色が黒くありません。瞳の色が黄色です。大学で面倒だと嫌なので色を入れていますが。今度改めてお見せします」
「そのことは三人は知っているのか」
「前の主人の話はしていません。外で話すような話ではないので」
「まぁそうだろうさ」
「畑中純一さま、どうか、佐々木未来を拾ってくださいませ」
そう言って改めて頭を下げた佐々木に一瞬深刻になってしまったが、純一は基本的なところに返る。
「で、エサはなに食べるんだ」
軽い話題転換のつもりで純一はできるだけ無邪気に訊いてみる。
「犬猫が口にできるものなら、あらかた何でも。もちろんヒトと同じモノでも大丈夫です。あるじから下されるモノなら、なんでも好物です」
頭を戻した佐々木は笑いもしないで答えた。
「とりあえず俺と同じモノを食わせておけばいいんだな。トイレ寝床風呂なんかは躾がされているんだよね」
どこまで本気なのか、佐々木の反応はさっぱりわからないことに、純一は愕然とする。が怯まず、もう一度軽く訊いてみる。
「基本的には問題ありません。時間と場所を決めての命令も承ります」
「戸外とか二日に一度とかもあるのか」
どこから冗談なのか分からないので、すこし絞って訊いてみる。
「四日間、排尿を禁じられたこともございます。雪が降ると、庭の薔薇に追い肥をしてこいと庭の薔薇の花壇に穴を掘って排便する習慣を命じられました。高校で一度問題になりそうになりました」
なんだか冗談ではない。遊びではないらしいことに、ようやく純一は気がついた。よくもそんな酷い生活を成長期にしていて、こうも育つものだと生命の不思議について考えてしまう。
「ひどい扱いを受けていたようだけれど、戸籍はどうなっているんだ?」
「養子縁組で佐々木になっています。日本の制度上は問題ありません。経済的には慎ましやかに暮らせば働かなくても、というくらいの遺産はあります。前の主人は隠退して長く倒れて六年、死んでそろそろ半年になりますから、世間的にはそれほどの騒ぎではないですし」
「六年?」
「お陰で全寮制の女子高に進学できました。いうほど悪い生活ではなかったようにも思えます」
薄く笑いが乗った言葉にどういう意味があるのか純一には分からない。
「卒業後はどうする」
「純一さまがあるじとなって下されば、その仰るように。それ以前に不要につき暇払いとおっしゃられれば、それも同様に」
なんだか良く分からないが――
「自分で自分の世話ができるなら、あるじなんていらないんじゃないか」
「それは個々によって違いますが、メガネのようなもの、と理解していただければ幸いかと。眼が悪いままなくても歩いている人はいますが、ある時必要を思い出すと必然的に求めるものですから」
この数日しか見知らない佐々木の印象は聡明でイタズラ好きで能動的で、奴隷という言葉の一般的な印象とは全くそぐわない。だが彼女の口上を真に受けると、奴隷というべきかペットというべきか、少なくともその有り様を受け入れているようにみえる。
「最初から、というか、もう全員受け入れるつもりでいるから、オマエがどんなモノであっても今は気にしないことにする。すぐになにか生活に変化があるというわけでもなさそうだしね。でも、訊いておかないといけないことがあるのを思い出した」
「なんなりと」
「オマエがあの馬鹿な男どもをあの場に導いたのか」
「いいえ」
「あの事件が計画されていたことを知っていたか」
「いいえ」
仮に被害を装ってということなら、最初からシフトに入ればいいだけだし、そうでないなら被害にあってはいないだろう。純一にもそう思えた。疑われたことにあまりなにかを感じていないようで素直に佐々木は応える。
「アイツらはどうだった?」
「五本試しましたが、あんなモノかと。ほとんど自分たちの暴力に酔っていましたから、サルというよりはニワトリみたいなものかと。さすがにあれでは不愉快です。ほかの娘には更に堪えられない体験と相手だったと思い、深く心より同情しています。水本先生と赤木先生には警察とともに十分な追求をお願いして、刑事民事の両面で完膚なきまでに徹底した制裁を貸していただきたいと思います」
どういう育ち方をしたかは正直想像もつかないが、しかし彼女が事件の実行者を正しく加害者と認識しているように純一には感じられる。
「俺はどうだ」
「十分に聡明で、十分に力に優れ、他人を慮る余裕に満ちています。
合理的な苛烈さを持ち、十分に傲慢ですが、増長というほど過剰でなく、社会規範を重視し、行き当たったときに省みる理性をお持ちです。
狡猾さには欠けますが、誠意ある力ある者には狡知を振るう機会は少なく、むしろ当然と考えます。
経済的には不明ですが、この規模の部屋をこの位置に仕送りで借りたということは少なくとも貧困ではなく、生活感の緩やかさ穏やかからは健全な生活環境で育ち、自律的な意志で生活を管理する能力が評価できます。
単純に金銭的な話題であれば、私の資産を流用していただければすむことなので、単に生活の維持費というニュアンスであれば問題にならないと思います。
性的な魅力については、既にいま示していただいているとおり、で、三回の大胆な体位とかなりの射精とを繰り返したにも拘わらず、四人目の準備にお付き合い下さっているところから問題ありません。単純に若さという要素を引いても、素敵な色形張りを持った外性器と高い持続力とダイナミックな動きにも苦痛を見せていない内性器の組み合わせは、スバラシイと思います。どういった姿勢でかは分かりませんがユニットバスのかなり高い位置に精液の残滓を発見したので、射精するだけで相当な刺激を女に与えると思います。 趣味的な性向については今のところ分かりませんが、学究的な興味好奇心には満ちているので、それなりの合理性を示してそれなりの成果を示すことができれば、納得いただけるという理解をしております。
どれも私には好ましく、全てを高い線で揃えてお持ちの方は求めて逢えるものでなく、まさに運命と感じております。お気に召していただけるなら、卒業までの恋愛などという一時預かりでなく、一生を差し上げたく思います。――」
純一には過分に感じられる褒め言葉をもらって、やや扱いに戸惑っていると、佐々木は微笑んで言葉を続けた。
「――私のスペックについては時期に合わせて追って説明をするか、純一さまご自身で評価いただいた方が良いと思いますので、今はひとつだけ」
そう言って耳から大粒の真珠のピアスを外し、自分の乳首に通してみせた。乳首が並んだような光景というべきか、大きな真珠だと思うべきか純一には分からない、想像していない光景だった。
「彼らがこのことに気がつかなかったのは、私にとって幸いでした。彼らが誤った知識と判断で勘違いをして、稚拙で未熟な技巧で私を苦しめるコトを目的としたでしょうから。彼らに感謝すべき筋合いは一毫もありませんが、素晴らしい友人たちと深く知り合う機会や、純一さまという素敵な男性の助勢を得られ、今こうして腹蔵なく自らをさらけ出す機会を得た、自らの幸運と天の差配とともに、それを許して下さる純一さまの御心に感謝いたしております」
そう言って、長い口上の後で佐々木は額を寝床に押し付けるように頭を下げ、そのままの姿勢で頭二つ分ほどあとづさる。
言ったまま、佐々木は黙る。
「そんな話を聞いて、俺はどうすればいいんだ」
「どのようにも。私はいつでも股を濡らしてお待ちしております。不要と賜れば、そのように致します。その間、三人の娘たちは自分からのアプローチを待ってくれると思います。純一さまが別の他の誰かを選択するなら、ソレもよろしいことです。純一さまが時間が欲しいとお思いなら、帰れと仰れば、四人とも引揚げます。お呼びがあるまでコチラには参りません」
濡れたシーツとマットに声をくぐもらせて佐々木は答えた。
純一には悪意も感じられず、興味も湧いた。安心というのとは違うが、恋とか愛とかそういうモノとは違うレベルの男性の本能的な感覚が目の前にいる佐々木をカワイイと思わせた。所有というコレクションに近い物的な満足感よりは、庭先でダンボールに入って啼いていた子猫を拾うような感覚、というのも純一の父性を刺激した。
そういえば、純一の実家はペットの犬や猫を幾匹か飼っていたが、金を出してあるいはどこかから貰ってというのは一匹もいなくて、気がついたら居着いたり、庭先に捨てられていたり、というモノばかりだった。街中ではないので大きくない家と小さくない庭先に、パラパラとテリトリーを作っている犬猫はほとんど放し飼いで、家の中も仏間を除いて出入り自由だったが、畳に爪を立てたり食卓の上に乗ると折檻されていて――などと思い出した。
「おいで、ミキ。お前、カワイイや」
純一は自分の口から思いのほか優しげな声が出たので驚いた。
「ありがとうございます」
純一に顔だけ上げて言った佐々木の顔は汗やヨダレとは違うだろうものに濡れていた。
這ったまま、純一の胡座に膝先をつけるような形で正座する佐々木は涙と鼻水に濡れていた。近くでよく見ると化粧の汚れはないようだった。
「スッピンか。良いね」
「食事の時は、口紅は注していましたが、基本的にはUVファウンデーションくらいです。純一さまはあまり騒がしいのは好まれないと思いましたので」
「自分で拭うのはナシでも、俺が拭うのは良いんだな」
「はい」と、佐々木が頷くのを見て純一は剥がされたままのパジャマを後ろ手に探り、下半分だったが、探すのも面倒くさいので、そのまま佐々木の鼻をかんで、ベシャベシャの顔を拭ってやる。
純一には加減が良く分からなかったが、佐々木は文句言わずなすがままだった。やはり気になってパジャマをみるが、色がついた様子もない。
「ホントにスッピンなんだな」
疑ったわけでもないが、ちょっと驚いて純一は繰り返した。
「はい」
少し恥ずかしそうに佐々木は答えた。
ついウッカリ、純一は抱きしめてしまった。あまりの勢いに佐々木は驚いた顔でよろけて、純一の胸に倒れこむ。
「どうせ、いつかすることになるし、セックスでもするか」
別に性衝動と関わりなかったが、恥ずかしかったので、なんだかヤケクソのように純一は言う。佐々木は嬉しそうに、はい、と言った。
佐々木の身体は格別だった。まるで力を持っていない純一の陰茎を胎腔にそのまま吸い込み、包み扱き上げ、勃起させた。
純一の意図的な動きも衝動的な動きもそのまま受けとめ次を導き続けた。
彼女自身なんども達し、意識を失くし、動きが停っても、内臓器官は正確に純一の状態を把握し応え、佐々木の意識とは別の何かが肉体を操作し続けているようだった。
ソレはかなり貪欲で、二人が運動に疲れ果てて張り付いていても呼吸や鼓動と同じく休むことなく働き続け、しかし純一の絶頂を極めることは赦さず、純一に射精とは別の酩酊を与えた。
「ソロソロ、出したい」
「生理について、妊娠の可能性について確認しないでよろしいのですか」
純一が幾つかの峰を超えたことを感じながら求めると、佐々木が確認した。
「どうせ避妊しているんだろ」
「いいえ」
さっと怯んだ勃起を、しかし佐々木の胎内は赦さなかった。純一は呻いてしまう。
「ですが、妊娠した方がいいか、しない方がいいかの希望は受けられます。――」
――信じられない。
「――そういう風に躾られました。実績もあります。男女の産み分けは主に男性の作業のようですので、ソチラはムリですが」
まるで料理の献立はなにがいいかと問う様に、なんでも良いと純一が応えたかのように、佐々木は困った顔で微笑んだ。
「そんな魔法のような」
「私にはフツウのことなのですが、人が信じられないようなコトを魔法と言うならそうかも知れません。亡くなった前の主人の家には幾つかその証拠が記念にとってありました。どうなったか知りませんが。――」
まぁそんなコトも世の中にはある、というような他人事の風情で佐々木は言った。
「――妊娠して、産まないという選択もあります。女の体型が変わるのを楽しむというのも良いモノらしいでしゅ――う」
「そんなコトを言う口はコレか」
純一はさすがに聞くに耐えなくなって、佐々木の唇を指でつまみ引っ張る。
「他に三人も嫁さんを突然抱えることになった俺をあんまりイジるな。彼女なんて久しくいなかったのに、イキナリ上級者の選択を突きつけるな。避妊妊娠の制御技術もなんか身体に悪そうだから、あんまり使うな。日を改めて聞いてやるから説明してからやってくれ」
唇をつままれながらも佐々木は律儀に、ハイ、ハイと笑顔で返事をした。
「今日は妊娠はしないでくれるとウレシイが、妊娠したら産んでくれ。認知もしてやる。けど、収入がないし、就職もしてないから、今はちょっと……できれば、まだ避けたい。いや、欲しくて欲しくてしょうがないって言うなら話は別だが」
ありがとうございます。佐々木はそう答えたように思う。
いや、そう答えたはずで、純一にもそう記憶はあるのだが、そこから僅かな時間で一気に佐々木の動きが変わり、つられて純一も動き、二人で気絶したのをなんとなく覚えている。
ベッタリと腹のあたりに冷たい精液と愛液の感触があって、陰茎が萎えた感触があるので、そうだったんだろうと思う。
二人の有様に驚いたのか、三人がのぞき込んでいる顔に微笑み返すと安心した表情が返ってきた。
さすがに眠くなってひとかたまりになって眠った。
ビルの間から日が昇っての遅めの朝食は沼地のようになった寝床で車座になって取られた。
純一が目覚めたとき股間は拭われて佐々木は離れていた。
炊飯器からご飯の炊ける匂いがして、卵か何かを焼いている匂いと味噌汁と、だと思う。
固まって寝るときに、寝顔を独り占めと言っていた遠藤が頻りに細かなキスをしていた。
川上と滝川は純一の身体のアチコチをそれぞれ勝手に指先でまさぐって、なにかを観察していた。遠藤のディープキスに純一の股間がわかりやすく反応したことに二人は感心するのに、純一はちょっと困った。
下着の上から純一のエプロンをつけた佐々木が運んだ献立は、ご飯と納豆、玉子焼きと里芋と豚肉が山のように入った味噌汁だった。
自分だけが素っ裸の状態で目の前に食事が配膳され、ままよと、イタダキマスを宣言したものの、恥ずかしくなってしまい、純一はテレビのスイッチを入れる。
午前のニュースがすぐに始まり、近所で起きた暴力団の抗争事件と、交通事故を報じていた。暴力団の抗争は実にサラリと流されたが、交通事故の方は信号停車中のバスに車がツッコミ当たり方が悪く、川に転落する内容だったらしく、少し不謹慎な盛り上がりを感じた。
食事を終えて片付けに向かう佐々木の後ろ姿は、パンツが腰のあたりまで濡れているのが陽の光に分かり、純一が一気に勃起するのを女たちは囃した。
それが引き金になってもう一巡、陽の光の中でセックスをした。
午後もいい加減すぎた遅目の昼食を寝床で片付けて順番にシャワーを浴び、解散となった。使った毛布は雑巾のようになってしまったので、佐々木がシーツとまとめて大型コインランドリーで洗うことになった。また明日来るという。
フワフワにかさばるパーティードレスとゴミ袋に詰めた毛布とシーツを持って女たちは佐々木の車で帰っていった。
純一はマットレスの中身のスポンジにシャワーを掛けてベランダで干す間に、女たちの下着と寝間着を洗濯する。
日は出ていたが、冬の風は冷たく乾いていた。
川上の作ったニンニクと里芋がジャガイモの代わりに入った、辛くて美味いカレーを晩ご飯に食べて純一は眠った。
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