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5話 マンドラゴラの口

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 キイイィエエエエエエエェ!!!



「うわ! なんだ、こいつ!」



 勇者はマンドラゴラの口らしき部分を、慌てて手で塞いだ。

 だが指の間からも叫び声は漏れ、いつまでも耳の奥に鋭い痛みが続く。

 元いた穴へ埋め戻そうとしたが、マンドラゴラは手足のような根をじたばたと動かし反抗した。



「せっかく見逃してやろうと思ったのに、生意気だな。俺は今、機嫌があまりよくないんだぞ」



 それがピンク色のスライムとの喧嘩別れに起因していると、勇者だって理解している。

 イライラをいつまでも引きずっている、自分の器が小さいことも。

 だが、何がスライムの機嫌をそんなに損ねたのか、いまだに勇者には分からない。

 ずっと懐は、うすら寒いままだ。



「口がデカいのなら、ちょうどいい。次なるオナホになり得るか、試してやる」



 ずりっとスウェットを下げた勇者は、ぐったりしたままの陰茎を何度かしごくと、マンドラゴラが開けている口へそれを突っ込んだ。



「ぅぐう!?」

「しっかり喉奥まで咥えてくれよ」



 マンドラゴラの気道を肉の楔で埋めたことで、耳障りだった高音が鳴り止む。

 ぐいぐいと腰を押しこむ勇者は、マンドラゴラの口腔に湿り気があって、具合よくぬめることに満足した。

 

「お前には、たぐいまれなフェラの素質があるようだ」

「っふ、ん、う……ぐ」

「俺をイかせられたら、旅のお供はお前に決めよう」

 

 涙目のマンドラゴラは、必死に頭を振って嫌々をするのだが、かえってそれが勇者に快感を与える。

 ぶるりと身を震わせ、勇者は舌なめずりをした。



「いいぞ、もっと頑張れ」

「ん~、ん~!」



 苦し気なマンドラゴラが、ぺしぺしと勇者の手を叩く。

 そんな抵抗を物ともせず、ずっぽずっぽと思うさま口淫を続けていた勇者だったが――。



「おぅえええええええっ!!!」



 たまらずに、マンドラゴラが嘔吐した。

 金色のゲロをだばだばと零すのを見て、勇者は根性が足りないと説教を始める。

 

「出すのはお前じゃなくて、俺なんだよ。分かるか?」

「くぎいいぃ! ひぎいいぃ!」

「スライムやウサギと違って、お前はしゃべれないのか。それじゃ――」



 寂しい一人旅の、話し相手にはなれない。

 力が抜けた勇者の手から、マンドラゴラが滑り落ちる。

 己の吐しゃ物の上に華麗に着地を決めたマンドラゴラは、短い脚をちょこまかと動かし、一目散に勇者から逃げていった。

 

「どいつもこいつも、そんなに俺が嫌かよ」



 魔物なのだから、聖力を持つ勇者を怖れて当然だ。

 だが最初に、勇者を怖れなかったピンク色のスライムと出会ったせいで、すっかりそれが頭から抜け落ちている。

 はあ、と溜め息をついて勇者は天を仰ぎ見た。

 

「エロいことして、ちょっと他愛のないおしゃべりを楽しみたいだけじゃないか。……同じぼっちでも、呼んだら来てくれるデリヘル嬢がいるだけ、元の世界のが居心地がよかったな」



 大樹の隙間から覗く空が青い。

 いつのまにか夜が明けて、朝になっていたようだ。

 よっこらしょ、と勇者は地面に直接腰を下ろす。



「頑強な体のはずだが、なんだか疲れちまった。せめて夢くらいは、いいのを見せてくれよ」



 ふわあと欠伸して横になると、勇者はしばしの眠りについたのだった。



 ◇◆◇◆



 ――ぴちゃぴちゃぴちゃ。



 股間のむず痒さに、勇者は寝返りを打つ。

 下手くそな愛撫をされているようで、鬱陶しかった。

 だが、一度や二度の寝返りくらいでは、その感触はどこぞへ行ってはくれない。

 執拗に追いかけてくるのが悩ましく、いよいよ不快になった勇者は目を覚ました。



「ん~、誰だ? 俺の眠りを妨げる奴は……」



 そして上半身を起こした勇者は、スウェットの中で苦しそうに半立ちしている勇者の剣を、懸命に舐めている犬と目が合ったのだった。

 美味しそうに焼けた食パン色の毛、上目遣いの黒目がちな瞳、ずんぐりむっくりとした短足体型は、どこかで見た覚えがある。



「この犬の名前は、コーギー……で当ってるか?」

 

 残念な勇者は知らなかったが、それは犬型の魔物でコボルトと言う。

 完全に起きてしまった勇者に、コボルトは体を強ばらせたが、舌だけはなおも忙しなく、ぺろぺろと動き続けている。

 そのせいで、勇者のスウェットは涎まみれになっていた。



「どういう状況だ、これ? コーギーが俺のチンコを、うまそうに舐めてる?」
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