6 / 76
5話 迫られた気配
しおりを挟む
考え事の多かった晩餐が終わると、アダンがファビオラにこっそりと話しかけてきた。
「お姉さま、もしかしたらあの男の子を、見つけたかもしれません」
ファビオラには、この続きが分かっている。
すでに予知夢で見ていたからだ。
だが不自然にならないよう、黙ってアダンの言葉を待つ。
「学校でお見かけしたレオナルド殿下の髪が、赤かったんです。年齢もお姉さまの1歳年上で、条件にぴったりだと思いませんか?」
あの男の子を発見したと思って興奮しているアダンだが、実は襲撃を受けた日の記憶が曖昧なのだ。
よほどショックを受けたのか、鮮明に覚えているのは、ファビオラの血の色ばかりだと言う。
一緒に遊んだ男の子が殿下と呼ばれていて、オーズと同じ朱金色の髪色をしていたというのは、後でファビオラが教えた知識だ。
だがそれを頼りに、アダンなりに男の子を捜してくれたのだろう。
その気持ちが、ファビオラは嬉しかった。
(でも、その情報が仇になるのよ。私は王太子殿下に興味を抱いてしまい、例のお茶会へ喜んで参加してしまった。……ここはアダンに、王太子殿下はあの男の子ではないと、しっかり訂正しておかないと)
ファビオラはアダンへ向き直り、誤解を解く。
「王太子殿下の髪色は、朱金というよりも、ストロベリーブロンドだと聞いたわ。ちょっと系統が違う赤だと思うの」
「でも髪色は成長するにつけ、若干変わるそうですよ。一度、レオナルド殿下にお会いしてみてはどうでしょう?」
確かに、年齢が上がるにつれ、薄まったり濃くなったりすることがある。
とくに先祖に強い色の髪の人がいると、変わりやすいと聞いた。
だがファビオラは予知夢の中でレオナルド本人と会い、あの男の子ではないと確信している。
どうやってそれを伝えようか悩んでいたら、続くアダンの言葉にファビオラは驚かされた。
「とても親しみやすい方でしたよ。すごく丁寧に声をかけてくれて――」
「ちょっと待って……アダンは王太子殿下を、校内で見かけただけじゃないの?」
「クラスメイトと一緒に廊下を歩いていたら、光栄にも呼び止められたのです」
嬉しそうにしているアダンの前で、ファビオラの動きが止まる。
(どういうこと? 状況が違うわ……)
アダンが教えてくれるのは、たまたま見かけたレオナルドの髪色が、赤かったという情報のみだった。
口をきいたなんて、予知夢では無かった。
(でも、王太子殿下と対面したのは、アダンだけ……)
ファビオラにはまだ、飛び火していない。
逃げ切れる、と思ったが――。
「レオナルド殿下は、お姉さまのことをご存知でしたよ。淑女科から商科へ移った令嬢は珍しく、興味深いと仰っていました」
今度こそ、ファビオラの血の気が引いた。
良かれと思って行動したのが、かえってレオナルドの気を引いてしまったらしい。
「それで、お姉さまさえ良ければ、会って話をしたいと――」
「アダン、それは無理です、とお断りしてちょうだい!」
「え、でも……」
「王太子殿下とお知り合いになれる、貴重な機会だというのは理解しているわ。でも私は、安易な気持ちで学んでいるわけではないの。商科の課題はどこよりも難しいわ。寝る間を惜しんで猛勉強をしていると伝えれば、もう誘ってはこないでしょう」
残念そうな顔をしているアダンには申し訳ないが、こればかりは引き受けられない。
ファビオラはレオナルドに、会ってはならないのだ。
(あの執着が始まってしまえば、私はどこへも逃げられなくなる。お茶会の招待状が届けられるのは、私が16歳のとき――なんとか15歳までには商会を立ち上げて、いつでも出国できるようにしておこう)
じわり、と迫られた気配を感じ、ファビオラは鳥肌の立つ腕をさすった。
◇◆◇◆
「国王陛下、私の政策案についてですが、取り下げようと思います」
「トマスよ、今は二人きりだ。昔のように名前で呼んでくれ」
事実、国王ダビドが執務を行う部屋には、珍しく財務大臣のトマス以外は誰もいなかった。
トマスによく似た銀髪を長く伸ばし、威厳のある口ひげと顎ひげを蓄えたダビドは、いたずらっぽく目尻の皺を深くする。
「宰相は外交の打ち合わせがあって、しばらくは戻らぬから大丈夫だ」
「では……ダビド。ヘルグレーン帝国と接する国境の防衛強化を、臣下として提案するのを止める。いつまでも宰相閣下と意見を戦わせていても、仕方がないからな。それよりも、娘のファビオラが一策を講じているから、私はそちらへ賭けることにするよ」
「おやおや、トマスから娘の話が出るとは。根っからの仕事人間が、ついに家族愛に目覚めたか?」
ふふっと笑うダビドに、トマスは鋭い視線を投げる。
「私がそうならざるを得なかったのは、どこかの誰かが、財務大臣なんて忙しい役を押しつけたせいだろう?」
「汚職に縁のないトマスには、適役だったじゃないか」
「時期が悪かった。おかげでファビオラには、寂しい思いをさせてしまった。一人でエルゲラ辺境伯領へ行かせるなど、後継者のアダンを優先した結果だとしても、責められて然るべきだ」
「ああ、それは確かに。……お互い、当時はいろいろあったな」
複雑に絡み合った大人の事情のせいで、ファビオラのような子どもにまで余波が及んだ。
ダビドが思考の海へ沈みそうになったので、トマスは慌てて話を元に戻した。
「それでファビオラいわく、ヘルグレーン帝国が攻め込んでくる年も場所も、『知っている』のだそうだ」
「知っているとは、どういうことだ?」
「私にも分からんが、どうも話を無視できない。教えていないはずの情報を明示してくるのと、妙にファビオラの態度が落ち着いているのが気になる。本当に未来を『知っている』と言わんばかりで――」
これ以上のことが説明できず、トマスは頭を振った。
「とにかくファビオラは、該当する年までに軍資金を貯めて、該当する場所の防衛を強化するそうだ。私もそれに加担する」
「ふんわりした話だな。それを信じるのか?」
「賭けると言っただろう? いざとなれば、グラナド侯爵領を切り売りしてでも金は作るし、ファビオラが護りたいという国境を私も護るさ」
「もう覚悟を決めているんだな」
「だからそうなったときは、ダビドが領地を高く買い取ってくれよ」
トマスが笑顔で持ち掛けると、ダビドも肩を揺らして了承した。
「もちろんだ。親友の領地だ、管理だって私に任せろ。……そもそもトマスの政策を通してやれず、すまなかった」
「それは国王としては、言ってはならない台詞だ」
「だから個人として謝るよ。どうしても宰相には、頭が上がらぬのだ」
その理由を知っているトマスは、いいよと手を振る。
「宰相閣下は最近、民の人気者だ。下手に逆らわないほうが賢明だろう」
トマスが提案した政策に反対する宰相オラシオは、すぐに世論を味方につけた。
民へ向けて、トマスの軍拡の要求を国が飲めば、これから重税が課せられる可能性があると警告したのだ。
隣国のヘルグレーン帝国を、友好国だと信じて疑わない王都の民は、それを聞いて憤慨した。
さらには、国境を護る辺境伯がトマスの義弟だから、金が流れるよう便宜を図っているに違いない等という、根も葉もない噂まで広がった。
しかしダビドは、それが大きな間違いだと知っている。
「ファビオラ嬢の胸の傷は星型、その独特な矢じりを使うのはヘルグレーン帝国のみ。トマスとエルゲラ辺境伯がそろって、ヘルグレーン帝国の内政がきな臭い、と報告に来たあの日を思い出す」
「わざわざカーサス王国へ越境してまで諍いを起こすなど、相当焦っている証拠だ。おそらくファビオラやアダンと遊んでいたという男の子は、政治に影響を及ぼすほどの、かなり高い身分だったに違いない」
トマスもダビドも証拠がないため明確に口には出さないが、今やヘルグレーン帝国内で、激しい皇位継承争いが勃発しているのを知っている。
間違いなくファビオラは、それに巻き込まれたのだ。
今後も同じような事件が起きるかもしれない、と警鐘を鳴らしたトマスだったが、宰相のオラシオは外交も担当しているため、ヘルグレーン帝国をいたずらに刺激するなと主張する。
「何を躍起になっているのだろうなあ。宰相はあの政策に関してだけ、トマスを異様に敵対視している」
「優秀な宰相閣下に目くじらを立てられるほど、私は愚鈍ではないつもりだがな」
「うむ……宰相は少年時代に神童と呼ばれ、学生時代にはすでに宰相補佐を務めていた男だ。我らには与り知らぬ深遠な考えがあるのだろうが、いつまでたっても腹の底が読めぬ」
ダビドが腕組みをして、椅子の背もたれに寄り掛かる。
国王として、うまく臣下を動かさなくてはならないが、オラシオの思惑ひとつ満足に推量できないでいるのが、不甲斐ないのだろう。
トマスはそんなダビドを慮る。
「ダビドよ、宰相閣下はもっと単純な男かもしれんぞ。民を謀り、政権を意のままに操るより、もっと直情的な欲望を隠している気がする」
「ますます分からぬな。正直、妹のブロッサが何を好き好んで宰相に嫁いだのか、まったく理解できぬのだ」
「そりゃ……顔だろう?」
オラシオは流麗な美青年として、若い頃に名をはせていた。
トマスやダビドと同じく、すでに40代のはずだが、いまだその容貌は衰え知らずだ。
素朴な顔つきの王妃ペネロペを、心から愛しているダビドは首をかしげる。
「顔ねえ……あんなに探れぬ男の側にいるのは、居心地の悪さしかないがなあ」
「お姉さま、もしかしたらあの男の子を、見つけたかもしれません」
ファビオラには、この続きが分かっている。
すでに予知夢で見ていたからだ。
だが不自然にならないよう、黙ってアダンの言葉を待つ。
「学校でお見かけしたレオナルド殿下の髪が、赤かったんです。年齢もお姉さまの1歳年上で、条件にぴったりだと思いませんか?」
あの男の子を発見したと思って興奮しているアダンだが、実は襲撃を受けた日の記憶が曖昧なのだ。
よほどショックを受けたのか、鮮明に覚えているのは、ファビオラの血の色ばかりだと言う。
一緒に遊んだ男の子が殿下と呼ばれていて、オーズと同じ朱金色の髪色をしていたというのは、後でファビオラが教えた知識だ。
だがそれを頼りに、アダンなりに男の子を捜してくれたのだろう。
その気持ちが、ファビオラは嬉しかった。
(でも、その情報が仇になるのよ。私は王太子殿下に興味を抱いてしまい、例のお茶会へ喜んで参加してしまった。……ここはアダンに、王太子殿下はあの男の子ではないと、しっかり訂正しておかないと)
ファビオラはアダンへ向き直り、誤解を解く。
「王太子殿下の髪色は、朱金というよりも、ストロベリーブロンドだと聞いたわ。ちょっと系統が違う赤だと思うの」
「でも髪色は成長するにつけ、若干変わるそうですよ。一度、レオナルド殿下にお会いしてみてはどうでしょう?」
確かに、年齢が上がるにつれ、薄まったり濃くなったりすることがある。
とくに先祖に強い色の髪の人がいると、変わりやすいと聞いた。
だがファビオラは予知夢の中でレオナルド本人と会い、あの男の子ではないと確信している。
どうやってそれを伝えようか悩んでいたら、続くアダンの言葉にファビオラは驚かされた。
「とても親しみやすい方でしたよ。すごく丁寧に声をかけてくれて――」
「ちょっと待って……アダンは王太子殿下を、校内で見かけただけじゃないの?」
「クラスメイトと一緒に廊下を歩いていたら、光栄にも呼び止められたのです」
嬉しそうにしているアダンの前で、ファビオラの動きが止まる。
(どういうこと? 状況が違うわ……)
アダンが教えてくれるのは、たまたま見かけたレオナルドの髪色が、赤かったという情報のみだった。
口をきいたなんて、予知夢では無かった。
(でも、王太子殿下と対面したのは、アダンだけ……)
ファビオラにはまだ、飛び火していない。
逃げ切れる、と思ったが――。
「レオナルド殿下は、お姉さまのことをご存知でしたよ。淑女科から商科へ移った令嬢は珍しく、興味深いと仰っていました」
今度こそ、ファビオラの血の気が引いた。
良かれと思って行動したのが、かえってレオナルドの気を引いてしまったらしい。
「それで、お姉さまさえ良ければ、会って話をしたいと――」
「アダン、それは無理です、とお断りしてちょうだい!」
「え、でも……」
「王太子殿下とお知り合いになれる、貴重な機会だというのは理解しているわ。でも私は、安易な気持ちで学んでいるわけではないの。商科の課題はどこよりも難しいわ。寝る間を惜しんで猛勉強をしていると伝えれば、もう誘ってはこないでしょう」
残念そうな顔をしているアダンには申し訳ないが、こればかりは引き受けられない。
ファビオラはレオナルドに、会ってはならないのだ。
(あの執着が始まってしまえば、私はどこへも逃げられなくなる。お茶会の招待状が届けられるのは、私が16歳のとき――なんとか15歳までには商会を立ち上げて、いつでも出国できるようにしておこう)
じわり、と迫られた気配を感じ、ファビオラは鳥肌の立つ腕をさすった。
◇◆◇◆
「国王陛下、私の政策案についてですが、取り下げようと思います」
「トマスよ、今は二人きりだ。昔のように名前で呼んでくれ」
事実、国王ダビドが執務を行う部屋には、珍しく財務大臣のトマス以外は誰もいなかった。
トマスによく似た銀髪を長く伸ばし、威厳のある口ひげと顎ひげを蓄えたダビドは、いたずらっぽく目尻の皺を深くする。
「宰相は外交の打ち合わせがあって、しばらくは戻らぬから大丈夫だ」
「では……ダビド。ヘルグレーン帝国と接する国境の防衛強化を、臣下として提案するのを止める。いつまでも宰相閣下と意見を戦わせていても、仕方がないからな。それよりも、娘のファビオラが一策を講じているから、私はそちらへ賭けることにするよ」
「おやおや、トマスから娘の話が出るとは。根っからの仕事人間が、ついに家族愛に目覚めたか?」
ふふっと笑うダビドに、トマスは鋭い視線を投げる。
「私がそうならざるを得なかったのは、どこかの誰かが、財務大臣なんて忙しい役を押しつけたせいだろう?」
「汚職に縁のないトマスには、適役だったじゃないか」
「時期が悪かった。おかげでファビオラには、寂しい思いをさせてしまった。一人でエルゲラ辺境伯領へ行かせるなど、後継者のアダンを優先した結果だとしても、責められて然るべきだ」
「ああ、それは確かに。……お互い、当時はいろいろあったな」
複雑に絡み合った大人の事情のせいで、ファビオラのような子どもにまで余波が及んだ。
ダビドが思考の海へ沈みそうになったので、トマスは慌てて話を元に戻した。
「それでファビオラいわく、ヘルグレーン帝国が攻め込んでくる年も場所も、『知っている』のだそうだ」
「知っているとは、どういうことだ?」
「私にも分からんが、どうも話を無視できない。教えていないはずの情報を明示してくるのと、妙にファビオラの態度が落ち着いているのが気になる。本当に未来を『知っている』と言わんばかりで――」
これ以上のことが説明できず、トマスは頭を振った。
「とにかくファビオラは、該当する年までに軍資金を貯めて、該当する場所の防衛を強化するそうだ。私もそれに加担する」
「ふんわりした話だな。それを信じるのか?」
「賭けると言っただろう? いざとなれば、グラナド侯爵領を切り売りしてでも金は作るし、ファビオラが護りたいという国境を私も護るさ」
「もう覚悟を決めているんだな」
「だからそうなったときは、ダビドが領地を高く買い取ってくれよ」
トマスが笑顔で持ち掛けると、ダビドも肩を揺らして了承した。
「もちろんだ。親友の領地だ、管理だって私に任せろ。……そもそもトマスの政策を通してやれず、すまなかった」
「それは国王としては、言ってはならない台詞だ」
「だから個人として謝るよ。どうしても宰相には、頭が上がらぬのだ」
その理由を知っているトマスは、いいよと手を振る。
「宰相閣下は最近、民の人気者だ。下手に逆らわないほうが賢明だろう」
トマスが提案した政策に反対する宰相オラシオは、すぐに世論を味方につけた。
民へ向けて、トマスの軍拡の要求を国が飲めば、これから重税が課せられる可能性があると警告したのだ。
隣国のヘルグレーン帝国を、友好国だと信じて疑わない王都の民は、それを聞いて憤慨した。
さらには、国境を護る辺境伯がトマスの義弟だから、金が流れるよう便宜を図っているに違いない等という、根も葉もない噂まで広がった。
しかしダビドは、それが大きな間違いだと知っている。
「ファビオラ嬢の胸の傷は星型、その独特な矢じりを使うのはヘルグレーン帝国のみ。トマスとエルゲラ辺境伯がそろって、ヘルグレーン帝国の内政がきな臭い、と報告に来たあの日を思い出す」
「わざわざカーサス王国へ越境してまで諍いを起こすなど、相当焦っている証拠だ。おそらくファビオラやアダンと遊んでいたという男の子は、政治に影響を及ぼすほどの、かなり高い身分だったに違いない」
トマスもダビドも証拠がないため明確に口には出さないが、今やヘルグレーン帝国内で、激しい皇位継承争いが勃発しているのを知っている。
間違いなくファビオラは、それに巻き込まれたのだ。
今後も同じような事件が起きるかもしれない、と警鐘を鳴らしたトマスだったが、宰相のオラシオは外交も担当しているため、ヘルグレーン帝国をいたずらに刺激するなと主張する。
「何を躍起になっているのだろうなあ。宰相はあの政策に関してだけ、トマスを異様に敵対視している」
「優秀な宰相閣下に目くじらを立てられるほど、私は愚鈍ではないつもりだがな」
「うむ……宰相は少年時代に神童と呼ばれ、学生時代にはすでに宰相補佐を務めていた男だ。我らには与り知らぬ深遠な考えがあるのだろうが、いつまでたっても腹の底が読めぬ」
ダビドが腕組みをして、椅子の背もたれに寄り掛かる。
国王として、うまく臣下を動かさなくてはならないが、オラシオの思惑ひとつ満足に推量できないでいるのが、不甲斐ないのだろう。
トマスはそんなダビドを慮る。
「ダビドよ、宰相閣下はもっと単純な男かもしれんぞ。民を謀り、政権を意のままに操るより、もっと直情的な欲望を隠している気がする」
「ますます分からぬな。正直、妹のブロッサが何を好き好んで宰相に嫁いだのか、まったく理解できぬのだ」
「そりゃ……顔だろう?」
オラシオは流麗な美青年として、若い頃に名をはせていた。
トマスやダビドと同じく、すでに40代のはずだが、いまだその容貌は衰え知らずだ。
素朴な顔つきの王妃ペネロペを、心から愛しているダビドは首をかしげる。
「顔ねえ……あんなに探れぬ男の側にいるのは、居心地の悪さしかないがなあ」
38
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる