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桃太郎は運命と出会う

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「桃から生まれた桃太郎だと?

 お前は自分のことを何にも知らないんだな。

 

 いいか、耳をかっぽじってよく聞け。

 ここ鬼ヶ島では稀に、角を持たずに生まれてくる赤子がいる。

 そんな赤子は弱っちくて、鬼の社会では長く生きられない。



 憐れに思った親は、赤子を川に流すんだ。

 運が良ければ人間に拾ってもらえる。

 もっと運が良ければ育ててもらえる。

 そんな有りもしない可能性に賭けてまで、赤子に生きて欲しいと願うんだ。



 なあ?

 阿呆らしいだろう?

 弱者は淘汰されるべきだ。



 それなのに、そんな抜け道を作ったばかりに、こうして勘違いするやつが現れる。

 鬼にしては弱くても、人間にしては強い。

 お前のことだよ。



 ただの人間が、犬やら猿やら雉やらと、意思の疎通ができるわけないだろ。

 そこで自分のおかしさに気づけよ。

 馬鹿みたいに名乗りを上げやがって、お前と血が繋がってると思うと反吐が出るぜ。



 最後に角のない鬼が生まれたのは20年前で、それは俺の弟だった。

 母親が泣きながら、弟を入れた桃を川に流したのを、俺は見た。

 鬼の頭領だった父親は見逃したが、俺には理解できなかったね。

 弱い奴を生かしてどうするんだってな。



 おかげでこんなくだらない茶番につきあわされる羽目になった。



 分かったか?

 お前は角の無い鬼なんだよ。

 鬼の社会にお前の居場所なんかない。



 鬼退治なんてごっこ遊びは止めて、さっさと人間の村に帰るんだな」



 

「それはできません。

 貴方に会ってしまったから。



 兄上と、お呼びしてもよろしいでしょうか?



 ぜひ兄上の好みのタイプを教えてください。

 身体はガッチリしている方がいいのか、毛深い方がいいのか、日焼けしている方がいいのか。

 まずはそこからお願いします」



 

「……何を言っている?」



 

「兄上のように二本もありませんが、私にも自慢の角があります。

 鬼に金棒とはよく聞く話ですが、私の角はまさしく金棒。



 必ず、兄上のお眼鏡に適ってみせます」

 



「……だから何を言っている?」

 



「もう我慢がなりません。

 兄上に見てもらいたくて、さっきからバキバキでガチガチなんです。

 どうか私の角を、兄上のキレイな瞳に、映してください。



 それだけで、イッてしまいそうです……」

 



「馬鹿!

 何を出してる!

 仕舞え!

 それだ!

 その黒光ってるヤツだ!



 何が角だ!

 何が金棒だ!

 それ以上、そそり立たせるな!」

 



「兄上、もっと近くで見てください。

 出来れば、触ったり、舐めたりしてくれると、嬉しいんですけど。

 いえ、ゆくゆくは兄上の中に……」

 



「おい!

 犬!

 なんで俺を押さえつけるんだよ!

 主を止めろよ!

 おかしいのはあいつだろう!



 ひっ!

 雉!

 パンツ返せ!」





「ああ、兄上。

 血が繋がっているから、こんなにも惹かれるのでしょうか?

 離れ離れだった20年間の私の寂しさを、どうか慰めてください。



 ほら、切なくて、こんなに透明な涙がこぼれてしまいます」





「それは涙じゃない!

 先走りだ!



 待て!

 どこに垂らしている!



 猿!

 俺の足を拡げるな!」





「兄上は、頭上の角は立派ですが、ここは可愛らしいですね。

 皮の中に隠れんぼしてますよ。

 さあ、鬼が来たから、出てきてください」

 



「ひぅ……!

 や、止めろ!

 止めてくれっ!

 

 俺は、そういうの、したことないんだ!

 

 あっ……ああ!

 い、嫌、だぁ……っあん、あぁっ!

 離せ、離せってばぁ!

 なんか……なんか、おかしくなるぅ……っ」





「いっぱいイッて、おかしくなってください。

 身体が溶けてグズグズにならないと、私のこれは入りませんよ?



 鬼ヶ島に眠る秘宝とは、兄上のことだったんですね。

 私が手に入れたからには、もう兄上は私のものですよね?



 大切に大切に可愛がってあげますからね。

 怒ったその顔がトロトロにふやけるまで、あとどれくらいでしょうか?」





 こうして鬼ヶ島の鬼は、桃太郎に討伐されてしまった。

 桃太郎が人間の村に戻ってこなかったので、その後のことは誰も知らない。
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