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六話 心と体が結ばれる二人

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 どゅるんと肉棒を引き抜いた。
 先っぽからポタタッと白濁した精液が足元に落ちる。
 「はあ……はあ……」
 脳の中で火花が閃き真っ白に燃えた。
 それほどの快感だった。
 コンラートは下衣を整え、尻肉の間を手巾で丁寧に拭う。
 するりと尻を撫でて、そこにちゅっと口づけすると、踵を返して走り出した。
 この壁の向こうにいる妃に会うために。
 裏側に行くには、一度この客室を出て、背中合わせに配置されている客室に行く必要がある。
 ライプニッツ王国の王宮は広い。
 しかしここで生まれ育ったコンラートにとっては、どこもかしこも抜け道だらけだ。
 使用人たちがくつろぐ中庭を通り、シーツが波のように干してある渡り廊下を抜け、ものの数分で裏側の客室前の廊下に辿り着く。
 北側に三つならんだ部屋のうち、妃がいるのはこの部屋だろう。
 コンラートはノックもせずに、鍵のかかっていない扉を開ける。
 手前の応接間のソファに、なぜかケップラ侯爵家のアデーレが両手を祈るように組んで座っていた。
 横目で彼女が驚いて立ち上がるのを捕えたが、コンラートの妃はこのさらに奥の部屋にいる。
 息は上がっているが駆ける。
 早く、一刻も早く。
 飛び込んだ部屋には想像した通り、ぐったりとした妃が壁にへばりついていた。
 顔を青い布に覆われ、両腕はだらりと下がったままだ。
 駆け寄って頭から布を剥がすと、むわりと籠っていた汗と熱が放たれる。
 愛しい妃の匂いに欲情しそうになるのをグッと堪えて、濡れそぼった猿ぐつわも外してやる。
 かなりしっかり咥えていたのだろう猿ぐつわは、噛み千切られかけてボロボロだった。
 そうされてようやく気がついたのか、妃はゆっくりと顔をあげて、美しい橙瞳をコンラートに向けた。
 汗と涎でてらてら光る顔は、応接間にいたアデーレによく似ている。
 呆けた表情でまだ状況を理解していなさそうな妃の体を壁の穴から出す。
(まだ儀式の終了を誰にも伝えていないので、あの部屋には誰も踏み入らないとは思うが、妃の下半身は私以外が見ていいものではない)
 腰に手繰り寄せられていたスカートを下ろして下半身を隠し、しっかりと両腕を巻きつけて妃の体を抱き込んだら、コンラートは妃が何も言えないくらい疲れているのをいいことに念願の唇に吸いついた。
 己の舌を絡めて妃の舌をしゃぶり、ぽってりした上唇も下唇もちゅうちゅう吸って、お互いの唾液を混ぜあった。
 無体なことをしながらも、コンラートは背後にアデーレがやってきて、潰れた毛虫を見るような目で自分を見ているのを感じた。
 と言うことは、妃はアデーレにとって大切な人なのだろう。
 失くしたはずのコンラートの神童スキルが察する。
 名残惜し気に唇を離すと、妃の橙瞳とコンラートの青瞳をしっかりと目合わせた。
 妃との深い口づけでまたしても下衣の中がガチガチになってしまったが、それを後回しにしてでも先に伝えなくてはいけないことがある。
 「愛しい妃よ、どうか私の子を産んでくれ」
 そうしてそっと妃の腹に手をやる。
 あれだけ出したのだ。
 もしかしたらもう、ここに居るのかもしれない。
 愛しい妃と愛しい我が子。
 コンラートはお花畑な頭の中で、すでに家族の団らんを味わっていた。
 
 ◇◆◇

 約束したので見に行くのを我慢しているが、お姉さまのうめき声らしきものが隣室から聞こえる。
 今、お姉さまの身に何があっているのだろう。
 苦しんでいるのではないか?
 私へ助けを求めているのではないか?
 もしお姉さまがこの儀式でひどい仕打ちを受けたのなら、国王陛下だろうと王太子殿下だろうと、決して許さないんだから。
 けっこう長い時間を耐えて待って、ようやくお姉さまの声が止んだ。
 もう見に行ってもいいかしら?
 儀式は終わったのかしら?
 そわそわ落ち着かない気持ちでそれでも待っていると、いきなり廊下側の扉がダーンッと開いた。
(え?王宮の扉ってこんな音で開いたかしら?)
 振り返るとコンラート殿下がズカズカ入ってくるではないか。
 なんてこと!
 きっと入れ替わりがバレたんだわ!
 急いで立ち上がり、お姉さまを守ろうと隣室へ向かう。
 が、コンラート殿下は私に見向きもせずに、先にお姉さまの方へ行ってしまった。
 足の長さの違いもあって、私も必死に駆けたけど出遅れてしまう。
 やっと辿り着いた隣室では、コンラート殿下がお姉さまの唇をべろべろ舐めていたわ。
(どういうこと?こいつは私の大切なお姉さまに何をしているの?)
 後ろからジリジリ近づき、さあ頭を叩いてやろうと思ったら――。
 コンラート殿下がお姉さまに求婚したわ!
 えええええ!
 お姉さま、もしかして!
 この儀式でコンラート殿下の妃に選ばれたの!?
 さすが!
 さすがだわ、お姉さま!
 そうよ、お姉さまはいつも私を淑女だと褒めてくれるけど、本当の淑女はお姉さまのような人のことを言うのよ!
 お姉さまは淑女中の淑女!
 お姉さまのよさが分かるなんて、コンラート殿下もいいところあるじゃない!
 さっきまで頭を叩こうとしていた手をサッと下ろし、アデーレは心の中で狂喜乱舞するのだった。

 ◇◆◇

 クリスタは、息も絶え絶えの中、コンラート殿下の言葉を聞いた。
(今?なんて?)
 愛しい妃って呼ばれた気がするわ。
 あと、子を産んでくれって……。
 クリスタの橙瞳からボロリと涙が落ちる。
 子って、赤ちゃん?
 そうだ、先ほど儀式の中で、コンラート殿下は私の中に精を注いだ。
 もしかしたらもう、私のお腹の中に居るのかもしれない。
 嬉しくて嬉しくて。
 ボロボロと涙が止まらない。
 コンラート殿下が私のお腹を撫でてくれる。
 きっとコンラート殿下も、ここに命が宿ったかもしれないと思っているのだろう。
 望まれて子を宿すことのなんと幸せなことか。
「産みます。私、赤ちゃんを産みたいです」
「ありがとう、愛しい妃。では私に、貴い名前を教えてくれるかな?」
「アデーレの姉のクリスタと申します。……今回の儀式で入れ替わった責任は、すべて私にあります。どうか妹には寛容な対応をお願いしたく」
「ああ、待って。そんなことはどうでもいいんだ。大事の前の小事だ。私の愛する妃が見つかったのだから、お咎めなんて誰も受けないよ」
 コンラート殿下は汗でしっとりした私の髪を耳にかけ、露わになった耳たぶにチュッと口づけを落とすと、そのままそこで囁く。
「儀式が終了したことを父上に報告をしないといけないのだけど、その前に私と一緒にお風呂に入らない?」
 振り上げた手をコンラート殿下の頭に落とそうとしているアデーレを慌てて止めたのは言うまでもない。
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