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二十二話 母親との再会
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トカゲと蝙蝠の混血のような翼竜に跨り、バーナビーは空を飛んでいた。
数日前までは大海原への船旅を怖がっていたバーナビーだったが、今となっては可愛いものだった。
(まさか空を飛ぶとは思わなかったな……)
バーナビーの前にはアドリアナがいて、その前でカルロスが翼竜を操縦している。
尻の下には翼竜の鱗があるが、足はブラブラしていて、どうにも落ち着かない。
ついアドリアナの腰に回した腕に、ぎゅっと強く力が入ってしまう。
それを不安からくるものだと察したアドリアナが、バーナビーの手に己の手を重ねる。
「大丈夫だ、バーニー。この子は大人しい。決して私たちを、振り落としたりはしないだろう」
「そう言いますが、巨人が襲ってきたらどうするのです?」
なんとこの密林には巨人族が住んでいて、古の皇国と敵対関係にあるという。
人族の四倍もある巨大な体躯に対抗するため、古の皇国では翼竜を飼い慣らしていて、あたかも軍馬のように乗りこなして戦うのだとか。
今ではそう滅多に衝突することもないが、と前置きをしてカルロスが話した巨人族のことが、バーナビーは気がかりだった。
「ぜひとも見てみたいな、巨人とやらを。オーガの倍はあるそうだ」
「アナはそう言うだろうと思いましたよ」
だから心配していたのだ。
きっと巨人に襲われたら、アドリアナは嬉々として戦うだろう。
バーナビーにはそれを止めることが出来ない。
「アナ、決して危険なことはしないでください。あなたを心配する私の胸が張り裂けます」
「分かっている。無用な戦いはしない」
アドリアナは後ろを振り返り、バーナビーに向かって微笑んで見せた。
あまりにも神々しい笑みだったので、バーナビーはこらえきれずアドリアナの唇にキスをした。
「もうすぐ降り立つ」
カルロスが指さす先には、尖塔の前に並ぶ出迎えのお歴々と、賓客を一目見ようと集まった国民たちがいた。
馬車でやってくると思っているから、一同は密林に続く街道を見ている。
そこへ、上空からカルロスが翼竜を旋回して降下させた。
場が大騒ぎになるのは当然だった。
翼竜はアドリアナやバーナビーが下りやすいように、ぺったりと腹を地面につけてくれた。
カルロスは早々に鞍から飛び降りたので、翼竜に乗り慣れていないふたりのための仕種だろう。
それを見てアドリアナが相好を崩す。
「賢いな。お前は密林でしか暮らせないのか?」
翼竜の頭をよしよしと撫でて、熱心にスカウトし始めるアドリアナだったが、バーナビーによってその体を翼竜から抱き下ろされた。
「駄目ですよ、アナ。この子にはこの子の生活があるのですから」
まともなことを言っているようだが、正確にはアドリアナに頭を撫でてもらっている翼竜への嫉妬心からの行動だ。
抱き合っていちゃいちゃしているバーナビーとアドリアナの後ろでは、歓待の用意をしていた文官たちに「これはどういうことですか?」と問い詰められているカルロスがいた。
しかし口数の少ないカルロスからはうまく状況がつかめないらしく、そのうちバーナビーとアドリアナに視線が向けられた。
ここは外交のプロであるバーナビーの出番だろう。
アルカイックスマイルを浮かべ、その場にいるあらかたの人心をつかんだ後、口上を述べる。
「このたびは、私たちの訪問を歓迎していただき、感謝しています。エイヴリング王国の第二王子バーナビー・エイヴリングと、妻のアドリアナ・エイヴリングです」
アドリアナが紹介に合わせて礼をする。
集まっていた爬虫類獣人たちが、吸い寄せられるようにアドリアナの黒髪を見る。
そしてうっとりとした声で囁き始めた。
「なんて美しい黒髪だろう」
「カルロスさまと同じだ」
「それもあんなに豊かで艶やかだ」
「ダイナソーの血が濃いのは間違いない」
多くが心酔の言葉だった。
アドリアナが行方不明だったカルロスの娘であることは、どうやら周知されているらしい。
「すでに嫁いでしまわれたとは残念だ」
「ぜひとも皇国の次期女帝になって欲しかった」
一部では、すでに他国に嫁いだ身であることを惜しむ言葉が聞かれた。
しばらくすると爬虫類獣人たちの人の輪が、ざざざと引き潮のように引いていき、バーナビーとアドリアナの前に華やかな装いのふたりの美女が現れる。
どちらも頬や腕にうっすらと翠色の鱗がある。
緑色の豊かな髪を巻き、その上に王冠を載せているのは女帝ブランカだろう。
金色の瞳がアドリアナとそっくりだった。
ブランカの後ろに控えめに立っているのは、おそらく皇女チャロだ。
緑色の髪は結わずに下ろし、薄茶色の瞳は伸ばした前髪の奥で伏せられていた。
「何か手違いがあったのでしょう。馬車でお見えになるとばかり思っていたものですから、失礼をいたしました。我が国へようこそ」
女帝ブランカが、バーナビーに挨拶のための手を差し出す。
バーナビーはその手を取り、触れないようにハンドキスをする。
その隣にいた皇女チャロは、名乗って会釈だけをしてきた。
バーナビーの顔に見とれないだけ、チャロは獣人国の王妹レオノールよりも王族然としている。
「とても良い経験をさせていただきました。翼竜に乗る機会など、そうはありませんから。アドリアナもすっかり、翼竜が好きになってしまったようです」
バーナビーがアドリアナの腰に手を回し、側に引き寄せる。
バーナビーの隣に堂々と立つアドリアナの姿に、母親であるはずのブランカがわずかに怯む。
その瞬間をバーナビーは見逃さなかった。
(デリオから何か聞き及んでいるのか、どうやら女帝はアドリアナにおびえているようだ。――それにしても、力こそ正義という割には、どうもこのふたりは貧弱だな)
ブランカもチャロも、たおやかな容姿をしている。
爬虫類獣人は派生が多種に渡るが、どうやらふたりとも線の細い種族らしい。
見た目からはダイナソーの血の影響は皆無だった。
バーナビーがサッと辺りを見渡すが、デリオの姿は伺えない。
アドリアナに言い負かされて逃げ帰った手前、おいそれと顔を出せないのかもしれない。
「さあ、どうぞ塔の中へ。まずはゆっくりと寛いでください。夜には歓待の宴を催します。楽しんでいただけるとよいのですが」
とても親子の顔合わせとは思えないブランカのそっけない対応に、周囲にいた爬虫類獣人たちがざわつく。
ブランカは何事もなかったかのようにアドリアナを視界から外し、バーナビーを尖塔へ招き入れる。
バーナビーとアドリアナは案内をしてくれる文官たちについていき、細い回廊を延々と歩いて客間へと導かれたのだった。
「おそらく、お荷物の到着には今しばらくかかると思います。何か入用なものがありましたら、遠慮なくお申し付けください」
何度も頭を下げる文官たちに、バーナビーは礼儀正しく感謝の意を告げる。
なにしろ、迎えに来てくれていた古の皇国側の使者たちを、軒並み悩殺してしまったのはバーナビーだ。
今頃、何があったかと港に向かった者が、倒れたり鼻血を出したりしている使者たちを見つけているかもしれない。
大人げなく全力を出してしまったことを、バーナビーは恥ずかしく思った。
「バーニー、いい景色だ。遠くまで海が見える」
ベランダに出たアドリアナが、バーナビーに声をかける。
たなびくレースのカーテンを避けて、バーナビーもアドリアナのいるベランダに出た。
バーナビーと式を挙げてからは、ずっと王子妃としてドレスをまとっていたアドリアナ。
だが旅の間は騎士隊長だった頃のように、軽装でズボンを履いていた。
だからこそ、翼竜にも跨ることが出来たのだが。
(なんて麗しく、眩しいんだ――)
青い海と青い空を背景にして、黒髪を風に遊ばせたアドリアナが立っている。
足のラインが光に透けて露わになり、尻尾が楽し気にゆらゆらしているのを見て、バーナビーはどくりと下半身に血が集まるのを感じた。
ベッドの寝心地を確かめよう、とかなんとか理由をつけて、寝室にアドリアナを連れ込めないかと考え始めたバーナビーに、この部屋付きの従者が声をかける。
「恐れ入ります。チャロ皇女がお会いしたいと、こちらにいらっしゃっていますが……」
バーナビーは泣く泣く、ベッドの寝心地を確かめるのを諦めた。
数日前までは大海原への船旅を怖がっていたバーナビーだったが、今となっては可愛いものだった。
(まさか空を飛ぶとは思わなかったな……)
バーナビーの前にはアドリアナがいて、その前でカルロスが翼竜を操縦している。
尻の下には翼竜の鱗があるが、足はブラブラしていて、どうにも落ち着かない。
ついアドリアナの腰に回した腕に、ぎゅっと強く力が入ってしまう。
それを不安からくるものだと察したアドリアナが、バーナビーの手に己の手を重ねる。
「大丈夫だ、バーニー。この子は大人しい。決して私たちを、振り落としたりはしないだろう」
「そう言いますが、巨人が襲ってきたらどうするのです?」
なんとこの密林には巨人族が住んでいて、古の皇国と敵対関係にあるという。
人族の四倍もある巨大な体躯に対抗するため、古の皇国では翼竜を飼い慣らしていて、あたかも軍馬のように乗りこなして戦うのだとか。
今ではそう滅多に衝突することもないが、と前置きをしてカルロスが話した巨人族のことが、バーナビーは気がかりだった。
「ぜひとも見てみたいな、巨人とやらを。オーガの倍はあるそうだ」
「アナはそう言うだろうと思いましたよ」
だから心配していたのだ。
きっと巨人に襲われたら、アドリアナは嬉々として戦うだろう。
バーナビーにはそれを止めることが出来ない。
「アナ、決して危険なことはしないでください。あなたを心配する私の胸が張り裂けます」
「分かっている。無用な戦いはしない」
アドリアナは後ろを振り返り、バーナビーに向かって微笑んで見せた。
あまりにも神々しい笑みだったので、バーナビーはこらえきれずアドリアナの唇にキスをした。
「もうすぐ降り立つ」
カルロスが指さす先には、尖塔の前に並ぶ出迎えのお歴々と、賓客を一目見ようと集まった国民たちがいた。
馬車でやってくると思っているから、一同は密林に続く街道を見ている。
そこへ、上空からカルロスが翼竜を旋回して降下させた。
場が大騒ぎになるのは当然だった。
翼竜はアドリアナやバーナビーが下りやすいように、ぺったりと腹を地面につけてくれた。
カルロスは早々に鞍から飛び降りたので、翼竜に乗り慣れていないふたりのための仕種だろう。
それを見てアドリアナが相好を崩す。
「賢いな。お前は密林でしか暮らせないのか?」
翼竜の頭をよしよしと撫でて、熱心にスカウトし始めるアドリアナだったが、バーナビーによってその体を翼竜から抱き下ろされた。
「駄目ですよ、アナ。この子にはこの子の生活があるのですから」
まともなことを言っているようだが、正確にはアドリアナに頭を撫でてもらっている翼竜への嫉妬心からの行動だ。
抱き合っていちゃいちゃしているバーナビーとアドリアナの後ろでは、歓待の用意をしていた文官たちに「これはどういうことですか?」と問い詰められているカルロスがいた。
しかし口数の少ないカルロスからはうまく状況がつかめないらしく、そのうちバーナビーとアドリアナに視線が向けられた。
ここは外交のプロであるバーナビーの出番だろう。
アルカイックスマイルを浮かべ、その場にいるあらかたの人心をつかんだ後、口上を述べる。
「このたびは、私たちの訪問を歓迎していただき、感謝しています。エイヴリング王国の第二王子バーナビー・エイヴリングと、妻のアドリアナ・エイヴリングです」
アドリアナが紹介に合わせて礼をする。
集まっていた爬虫類獣人たちが、吸い寄せられるようにアドリアナの黒髪を見る。
そしてうっとりとした声で囁き始めた。
「なんて美しい黒髪だろう」
「カルロスさまと同じだ」
「それもあんなに豊かで艶やかだ」
「ダイナソーの血が濃いのは間違いない」
多くが心酔の言葉だった。
アドリアナが行方不明だったカルロスの娘であることは、どうやら周知されているらしい。
「すでに嫁いでしまわれたとは残念だ」
「ぜひとも皇国の次期女帝になって欲しかった」
一部では、すでに他国に嫁いだ身であることを惜しむ言葉が聞かれた。
しばらくすると爬虫類獣人たちの人の輪が、ざざざと引き潮のように引いていき、バーナビーとアドリアナの前に華やかな装いのふたりの美女が現れる。
どちらも頬や腕にうっすらと翠色の鱗がある。
緑色の豊かな髪を巻き、その上に王冠を載せているのは女帝ブランカだろう。
金色の瞳がアドリアナとそっくりだった。
ブランカの後ろに控えめに立っているのは、おそらく皇女チャロだ。
緑色の髪は結わずに下ろし、薄茶色の瞳は伸ばした前髪の奥で伏せられていた。
「何か手違いがあったのでしょう。馬車でお見えになるとばかり思っていたものですから、失礼をいたしました。我が国へようこそ」
女帝ブランカが、バーナビーに挨拶のための手を差し出す。
バーナビーはその手を取り、触れないようにハンドキスをする。
その隣にいた皇女チャロは、名乗って会釈だけをしてきた。
バーナビーの顔に見とれないだけ、チャロは獣人国の王妹レオノールよりも王族然としている。
「とても良い経験をさせていただきました。翼竜に乗る機会など、そうはありませんから。アドリアナもすっかり、翼竜が好きになってしまったようです」
バーナビーがアドリアナの腰に手を回し、側に引き寄せる。
バーナビーの隣に堂々と立つアドリアナの姿に、母親であるはずのブランカがわずかに怯む。
その瞬間をバーナビーは見逃さなかった。
(デリオから何か聞き及んでいるのか、どうやら女帝はアドリアナにおびえているようだ。――それにしても、力こそ正義という割には、どうもこのふたりは貧弱だな)
ブランカもチャロも、たおやかな容姿をしている。
爬虫類獣人は派生が多種に渡るが、どうやらふたりとも線の細い種族らしい。
見た目からはダイナソーの血の影響は皆無だった。
バーナビーがサッと辺りを見渡すが、デリオの姿は伺えない。
アドリアナに言い負かされて逃げ帰った手前、おいそれと顔を出せないのかもしれない。
「さあ、どうぞ塔の中へ。まずはゆっくりと寛いでください。夜には歓待の宴を催します。楽しんでいただけるとよいのですが」
とても親子の顔合わせとは思えないブランカのそっけない対応に、周囲にいた爬虫類獣人たちがざわつく。
ブランカは何事もなかったかのようにアドリアナを視界から外し、バーナビーを尖塔へ招き入れる。
バーナビーとアドリアナは案内をしてくれる文官たちについていき、細い回廊を延々と歩いて客間へと導かれたのだった。
「おそらく、お荷物の到着には今しばらくかかると思います。何か入用なものがありましたら、遠慮なくお申し付けください」
何度も頭を下げる文官たちに、バーナビーは礼儀正しく感謝の意を告げる。
なにしろ、迎えに来てくれていた古の皇国側の使者たちを、軒並み悩殺してしまったのはバーナビーだ。
今頃、何があったかと港に向かった者が、倒れたり鼻血を出したりしている使者たちを見つけているかもしれない。
大人げなく全力を出してしまったことを、バーナビーは恥ずかしく思った。
「バーニー、いい景色だ。遠くまで海が見える」
ベランダに出たアドリアナが、バーナビーに声をかける。
たなびくレースのカーテンを避けて、バーナビーもアドリアナのいるベランダに出た。
バーナビーと式を挙げてからは、ずっと王子妃としてドレスをまとっていたアドリアナ。
だが旅の間は騎士隊長だった頃のように、軽装でズボンを履いていた。
だからこそ、翼竜にも跨ることが出来たのだが。
(なんて麗しく、眩しいんだ――)
青い海と青い空を背景にして、黒髪を風に遊ばせたアドリアナが立っている。
足のラインが光に透けて露わになり、尻尾が楽し気にゆらゆらしているのを見て、バーナビーはどくりと下半身に血が集まるのを感じた。
ベッドの寝心地を確かめよう、とかなんとか理由をつけて、寝室にアドリアナを連れ込めないかと考え始めたバーナビーに、この部屋付きの従者が声をかける。
「恐れ入ります。チャロ皇女がお会いしたいと、こちらにいらっしゃっていますが……」
バーナビーは泣く泣く、ベッドの寝心地を確かめるのを諦めた。
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