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18話 ※そして未来へ【完】

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 十分に解れたのを確かめると、アマンドはゆっくりと自身を埋めていった。

 同時にひきつれる痛みがノエミを襲う。

 だが、それに合わせてせり上がってきた声を、ノエミは飲み込んだ。

 額に汗を浮かべたアマンドのほうが、よほどつらそうな表情をしていたからだ。



「アマンド、つらいの? どうしたら、よくなるの?」

「ごめん、一度、抜いてもいい? いや、そっちの抜くじゃなくて、別の意味の……ああ、結局は、抜くんだけど」



 珍しくアマンドが挙動不審だった。

 

「アマンドのしたいようにして? それは私にも手伝えること?」

「うう、ノエミ……できるなら、中で爆ぜたい」



 その意味は分からなかったが、ノエミはこくりと頷いた。

 許されたアマンドは、ふにゃりと笑う。

 その無防備な微笑みが、どれだけノエミを魅了するのか、アマンドは知らないだろう。



「じゃあ、お邪魔します」



 アマンドに丁寧な挨拶をされたと思うと、ズンとノエミの下腹に衝撃が走った。

 そしてすぐに、ノエミの中に、温かいものがじわりと広がる感覚がする。

 あまりに一瞬のことで、ノエミには事態が飲み込めなかった。



「ああ、我慢できなかった……なんて僕は不甲斐ないんだ」



 俯いたアマンドは泣きそうな顔をしている。

 さっきまでは嬉しそうに微笑んでいたのに、どうしたというのか。

 ノエミは下腹の違和感よりも、アマンドの心配をする。



「どうしたの? なにが駄目だったの?」

「モタナカッタ……」



 片言のアマンドが不憫で、ノエミはよしよしと頭を撫でた。

 しょんぼり項垂れるアマンドは、まるで塩をかけられた青菜だ。



「……ごめんね、カッコ悪いよね」

「そんなことないわ」

「でも、一往復も出来なかった……」

「何度もすればいいじゃない?」

「何度も?」



 きょとんとしたアマンドに、ノエミがしごく真っ当なことを言った。



「一度で諦めるなんて、アマンドらしくないわ。出来るようになるまで挑戦するのが、私の知っているアマンドだもの」



 ノエミは一年目の試験勉強を思い出していた。

 アマンドはフォルミーカ語を覚えるために、書いたり読んだりを繰り返したはずだ。

 

「積み重ねは力になると、私たちは知っているでしょ」



 打ちひしがれていたアマンドの顔に、輝きが戻る。

 

「再挑戦、してもいい?」

「いいわよ。ところで一体、何が駄目だったのか私にも――」



 教えてくれる? と続くはずだったノエミの言葉は、元気になったアマンドの陽根によって出番を失った。



「え? アマンド? 中で何かが膨らんでるわよ?」

「ノエミが優しいから、僕、すっかり回復したよ。一度出したから、次は長持ちすると思う」



 疑問符を飛ばすノエミに、いい笑顔を見せるアマンド。



「中の滑りが良くなって、ちょうどいいね。今度はもっと、ゆっくり動くから」



 そう言って、唇を重ねてきたアマンドは、ねろりと舌を絡めて、ノエミをまた別世界へとつれていく。

 トントンと優しく突かれている内に、ノエミもそのリズムに慣れてきた。

 かりかりと、ノエミの胸のてっぺんを、アマンドが爪で引っ掻く。

 どうしてそれだけのことで、こんなに気持ちがいいのか、ノエミにはまるで分からない。

 チリチリとした痛みが消えてゆき、むず痒いもどかしさが込み上げる頃には、ノエミの頭の中はすっかり塗り替えられていた。



「ふ……ぅ、ん、は……あぁ、っあ! あまんど、気持ち……いいよぉ」



 とろとろにふやけたノエミの舌っ足らずな声に、アマンドの背筋が震える。



「ノエミ、少し早く動くよ。今度こそ、一緒にいきたい」

「ん? 私、いつでも……アマンドと、一緒よ」



 ふにゃりと笑うノエミ。

 その愛らしく無垢な表情に、アマンドの理性がブチ切れた。



「ごめん、少しじゃないかも」

 

 ぎゅうとノエミを抱き締めると、ガツガツと腰を打ちつける。

 

「あ、あ、あ……っ!」



 まだ中だけでは達せられないだろうと、アマンドはノエミの花芽にも指を這わす。

 赤く充血したそこを、親指の腹でぷりぷりと弾いてやると、ノエミの声がさらに増した。



「あ、あまんど、私……」

「いつでもイッていいよ。僕もすぐに後を追うから」

「きて、一緒に……っ!」



 ノエミに求められて、アマンドは武者震いする。



「ノエミ、いくよ!」



 最奥を目指したアマンドの猛攻に、ノエミの意識が天を目指して昇る。



(ああ、もう駄目、気が遠く――)



 細い嬌声を最後に、ノエミは極めると同じくして失神した。

 ぐったりしたノエミの体を抱き締め、アマンドは最後まで迸りを中へ注ぎきる。

 そして愛しいノエミの体中に口づけ、吸い跡を残していった。

 色白なノエミの肌に、小さな赤い花が咲き誇ると、ようやく満足してアマンドは繋がりを解く。

 アマンドの白濁にノエミの鮮血が合わさったものが、どろりと股座に溢れた。

 

「ノエミは僕のものだ。誰にも渡さない」



 アマンドはもうすぐ20歳になる。

 生まれてからこれまで、太陽みたいなレグロの隣で、ずっと月に例えられてきた。

 

「僕はいつか国王になるけれど、きっと国よりもノエミを優先してしまう、碌でもない国王になりそうなんだ。だからノエミ、そんな僕を、ずっと見張っていて」



 ノエミが聞いていないのをいいことに、とんでもないお願いをするアマンド。

 乾いたシーツでノエミの体を包むと、宝物のように胸に抱き寄せる。

 

「ノエミ、ありがとう。僕を好きになってくれて」



 朧ろだった月は、猛々しい戦女神を手に入れた。

 それを奪われないためならば、どれだけでも燦爛と光り輝くことだろう。



 ◇◆◇◆



 ノエミとアマンドは、王太子就任の披露目パーティからしばらくして、結婚式を挙げた。

 ふたりの仲睦まじさは、すでに王城中の知るところであり、次代の誕生もすぐだろうと噂されている。

 マリーン公爵は虎視眈々と、ノエミとアマンドの頓挫を狙っていたが、待てど暮らせど、ふたりにはそんな気配がない。

 仕方なく、先にマリーン公爵家の跡継ぎを授かろうと、レグロとオリビアの挙式の日程を決めた。



「これでマリーン公爵家は安泰だろう。なにしろ生まれるのは、直系の王家の血が流れる跡継ぎだ」



 しかし、そう上手く事は運ばない。

 マリーン公爵の意図しないところで、微妙にレグロたちの関係性はズレていた。

 

 贅をこらした挙式が無事に終わり、レグロとオリビアは夜を待って寝台へと入る。

 初夜だからと、バラの花びらが撒かれたシーツの上で、新郎新婦は睦み合う。

 そこまではおかしな風景ではなかったのだが、そこへ部外者の姿が加わった。



「おい、ホセ、準備は終わったか?」

「終わりましたが……本当に良いのですか?」



 当初は一年間の契約だったが、男娼のホセは、レグロの命令で永年雇用の身となった。

 そして相変わらず、レグロの性行為のスパイスとして、都合よく扱われている。

 

「お前が夢中になるのも、よく分かる。締まりで言えば、断然に尻穴だ」



 レグロはオリビアの熟れた後孔に、太い肉棒を挿入させていた。

 オリビアの女性器には、もうどれだけ入れてないだろう。

 

「よし、いいぞ。始めろ!」



 四つ這いにさせたオリビアの菊門へ、すでにレグロの猛った男茎が侵入している。

 そしてそんなレグロの尻の間に、ホセの長い肉竿が潜りこもうとしていた。

 

「せっかく僕にも穴があるのだから、使ってみないとな。どれほどの快感を得られるのか、愉しみだ」



 レグロは未知の経験に、顔を輝かせている。

 丁寧な指戯によって解され、ぬめりを与えられたレグロの尻穴に、狙いを定めたホセが身を埋める。



「これは……けっこう息が詰まるな」

「レグロさま、体の力を抜くといいですよ」



 先輩であるオリビアが、コツを伝授する。

 言われた通りに、なるべく全身を弛緩させると、いくぶんか楽になった。

 

「なるほど、こうか。しかし、腹がいっぱいな感覚が不快だ。ここから、どう気持ちよくなるのだ?」

「ホセが動けば分かりますわ。絶妙な角度で、いいところを擦ってくれますから」

「ホセ、動け! 僕のいいところを擦るんだ!」



 レグロは偽りなく、サンターナ王国の王子だ。

 その貴き肛門を犯す高揚感と、恐れ多い気持ちがない交ぜになって、先ほどからホセの精神は、混迷を極めていた。

 だが、レグロの命令は絶対で、逆らうのは許されない。

 それが分かっているから、ホセは動いた。

 レグロの性感帯を探し、一刻も早くそこを突き上げるために。



「お゛、お゛ぅ……これ、は……っ」

「レグロさま、とても気持ちがいいでしょう?」



 マリーン公爵が待ち望んでいる後継者が、尻穴を埋めるのに夢中なふたりから、産まれるはずがなかった。

 愛娘のオリビアも、王家の血筋を持つレグロも、すっかりホセの技巧に骨抜きになってしまっている。

 

 やがてこれらの実態が明らかになったとき、家名存続の危機に瀕したマリーン公爵と、ホセを招き入れた元凶であるパメラの間で、離婚騒動へと繋がる大乱闘が起きる。

 しかしそれは、ノエミとアマンドの間に二人目となる赤子が生まれ、国民が祝福に沸く数年後の話だ。
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みんなの感想(1件)

たぬこ
2023.10.10 たぬこ

ほんわかな2人と、あらぬ方向へ突き進んだ2人(3人?)が絶妙なバランスで面白かったです!

鬼ヶ咲あちたん
2023.10.13 鬼ヶ咲あちたん

ありがとうございます!
感想をいただけて嬉しいです(⁠人⁠*⁠´⁠∀⁠`⁠)⁠。⁠*゚⁠+

解除
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