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第1章
学校が始まる
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4月になり、基礎学校が始まる。
アルクはスフィアとトライアと一緒に、村の会館内の一階にある教室へ向かう。
教室には既にレイナとテナが来ていて、皆は互いに挨拶を交わした。
レイナは席から立ち上がるとトライアに近づき、声を掛ける。
「えへへっ 今日からよろしくね」
「こちらこそ。よろしくね、レイナ」
その様子を見守る三人。神妙な顔つきで、テナがアルクに言う。
「お互い、ちょっと意識しすぎだとは思わない?」
「もしかして、いつもあんな感じ?」
「そうよ。レイナなんて、トライを見つけたらあたしを放り出して駆けて行くから」
「あ、それは良くないよ。やっぱり適度に慎みを持ってもらわないと」
「でしょ?」
「まあいいじゃない、そういうの」
スフィアが割り込んできて、話を適当に流す。
「それよりテナはどうしたの?これからは自由に羽ばたくって言ってた気がするんだけど」
「お父さんが、あれやれこれやれってうるさくて」
「そう、羽ばたけなかったのね…」
スフィアの言い方に、少しムッとしながらテナは反論する。
「そ、そうじゃないから! これはもっと高く飛ぶための、じゅ、準備だから!」
アルクはエーカーと話した時の事を思い出す。
「テナには、とにかく頭を使うことに慣れて欲しいんだ。普段からちゃんと考える癖が付けば、きっと広い視点で世界を見れるようになるからな」
物を覚える事だけが学ぶことではないんだと、アルクは視野が広がる思いだった。
アルクは暖かい眼差しでテナを見つめながら言葉を掛ける。
「そうだねテナ。高く羽ばたくための準備だね」
「えっ?」
「一緒にがんばろうね」
「…?」
急にアルクに肯定されて、困惑するテナ。
(エーカーさんから、何か聞いてたのかしら)
スフィアはアルクの様子を訝しんだが、特に追及はしなかった。
「さて、最初が肝心よ」
皆を集めて、スフィアが告げる。
「わたしたちは学ぶ意思がある。それを先生にちゃんと伝えるの」
「勉強がんばりますって言うの?」
テナが平然とした様子でスフィアに訊く。
「いいえ、大事なのは空気よ」
「空気?」
「きちんと授業を受けるという雰囲気よ。言葉ではなく態度で示すの」
「…それで伝わるの?」
スフィアはふうっとため息をつき、話を続ける。
「…去年はそこからしてダメだったわ。先生が教室に来てもお喋りが止まらない…それでは授業だって真剣に出来るはずないわ」
「予科教室ってそんな状態だったの?」
ちょっと呆れた様子でトライアが言う。
「残念ながらね。楽しく学べるのも悪い事じゃないけど、意志をもって真剣に学ぶのとは違うわ」
「あたしは楽しい方がいいけど」
「先生からしっかり教わるには、こちらからも学ぶ姿勢を示すことが大事なのよ」
テナ以外の皆が頷く。
「よし、それじゃあ先生が来る前に態勢を整えるわよ。まずは表情から」
「そこからっ?」
やがて教室にルセフがやって来る。
「──!」
教室に踏み込んだ瞬間、ルセフは即座に雰囲気を読み取った。
教室は静まり返り、皆キリっと引き締まった表情で、真っ直ぐに前を見ている。
(ほう、去年とは違う…という事ですか)
心の中でニヤリとしつつも、ルセフは澄ました顔で、いつものように教壇に立つ。
「みなさん、おはようございます」
「「おはようございます」」
「最初はまず、今年の授業で学ぶことの説明から入るのですが…」
ルセフは皆をゆっくりと見渡す。
「今年はその必要はなさそうですね。…まあ皆さんには既に紙で配布してありますし」
ルセフは満足そうに微笑むと、早速本題を切り出した。
「では、歴史の授業を始めましょうか」
アルクはスフィアとトライアと一緒に、村の会館内の一階にある教室へ向かう。
教室には既にレイナとテナが来ていて、皆は互いに挨拶を交わした。
レイナは席から立ち上がるとトライアに近づき、声を掛ける。
「えへへっ 今日からよろしくね」
「こちらこそ。よろしくね、レイナ」
その様子を見守る三人。神妙な顔つきで、テナがアルクに言う。
「お互い、ちょっと意識しすぎだとは思わない?」
「もしかして、いつもあんな感じ?」
「そうよ。レイナなんて、トライを見つけたらあたしを放り出して駆けて行くから」
「あ、それは良くないよ。やっぱり適度に慎みを持ってもらわないと」
「でしょ?」
「まあいいじゃない、そういうの」
スフィアが割り込んできて、話を適当に流す。
「それよりテナはどうしたの?これからは自由に羽ばたくって言ってた気がするんだけど」
「お父さんが、あれやれこれやれってうるさくて」
「そう、羽ばたけなかったのね…」
スフィアの言い方に、少しムッとしながらテナは反論する。
「そ、そうじゃないから! これはもっと高く飛ぶための、じゅ、準備だから!」
アルクはエーカーと話した時の事を思い出す。
「テナには、とにかく頭を使うことに慣れて欲しいんだ。普段からちゃんと考える癖が付けば、きっと広い視点で世界を見れるようになるからな」
物を覚える事だけが学ぶことではないんだと、アルクは視野が広がる思いだった。
アルクは暖かい眼差しでテナを見つめながら言葉を掛ける。
「そうだねテナ。高く羽ばたくための準備だね」
「えっ?」
「一緒にがんばろうね」
「…?」
急にアルクに肯定されて、困惑するテナ。
(エーカーさんから、何か聞いてたのかしら)
スフィアはアルクの様子を訝しんだが、特に追及はしなかった。
「さて、最初が肝心よ」
皆を集めて、スフィアが告げる。
「わたしたちは学ぶ意思がある。それを先生にちゃんと伝えるの」
「勉強がんばりますって言うの?」
テナが平然とした様子でスフィアに訊く。
「いいえ、大事なのは空気よ」
「空気?」
「きちんと授業を受けるという雰囲気よ。言葉ではなく態度で示すの」
「…それで伝わるの?」
スフィアはふうっとため息をつき、話を続ける。
「…去年はそこからしてダメだったわ。先生が教室に来てもお喋りが止まらない…それでは授業だって真剣に出来るはずないわ」
「予科教室ってそんな状態だったの?」
ちょっと呆れた様子でトライアが言う。
「残念ながらね。楽しく学べるのも悪い事じゃないけど、意志をもって真剣に学ぶのとは違うわ」
「あたしは楽しい方がいいけど」
「先生からしっかり教わるには、こちらからも学ぶ姿勢を示すことが大事なのよ」
テナ以外の皆が頷く。
「よし、それじゃあ先生が来る前に態勢を整えるわよ。まずは表情から」
「そこからっ?」
やがて教室にルセフがやって来る。
「──!」
教室に踏み込んだ瞬間、ルセフは即座に雰囲気を読み取った。
教室は静まり返り、皆キリっと引き締まった表情で、真っ直ぐに前を見ている。
(ほう、去年とは違う…という事ですか)
心の中でニヤリとしつつも、ルセフは澄ました顔で、いつものように教壇に立つ。
「みなさん、おはようございます」
「「おはようございます」」
「最初はまず、今年の授業で学ぶことの説明から入るのですが…」
ルセフは皆をゆっくりと見渡す。
「今年はその必要はなさそうですね。…まあ皆さんには既に紙で配布してありますし」
ルセフは満足そうに微笑むと、早速本題を切り出した。
「では、歴史の授業を始めましょうか」
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