平凡モブの僕だけが、ヤンキー君の初恋を知っている。

天城

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13話 教室②

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 ふと目を覚ましたら夜の8時を過ぎていた。
 教卓の上にある時計を見てびっくりして、浅川の肩を揺らす。

「んー?」
「浅川、もう8時だけどどうする? 電車乗って帰る?」
「ん、まって。運行状況見てみる」

 スマホを手に取った浅川は親指でタップして検索をし始めた。
 ぼんやり明るい画面の光が浅川の綺麗な顔をくっきりと浮かび上がらせて、何だかずっと見ていたい気分になった。
 いっそ、このまま朝まで一緒でもいいかなって。

「……朝、タクシーで帰るんでもよくね?」

 考えが読まれたのかと思って一瞬身体がビクッてしてしまった。
 浅川が眠そうに寄りかかってくる。腕の中に包まれてるとあたたかくてつい、また眠たくなってきた。

 ピリリリ、ピリリリ、と急に着信音が鳴った。
 僕が設定している一番初期の着信メロディーだ。慌ててスマホを掴むと、父の声が聞こえてきた。

『何処にいるんだ! 雨の中でかけたのか!?』
「え、っと……学校で、警報で出られなくなって……」
『どうして連絡を入れない! こんな時間まで!』
「……えっと」

 中学時代は、ドコに行くにも父には連絡を入れていた。
 田舎にいた時はお祖母ちゃんに全部行くとこ話して出かけていたから。でも、父は忙しくてそれに返事をしてくれない。
 一方通行で僕だけ話し続けるのは、つらくて、いつからか止めてしまった。
 でも父はそれで何も言わなかった。

「すみません、石田くんのお父さんですか」
『誰だアンタ! うちの子と一緒にいるのか!?』
「石田くんのクラスメイトの浅川って言います、それでここで怒鳴っていても仕方ないので……」

 浅川の冷静な声に父も落ち着いてきたのか、状況の説明をしてくれた。
 大雨で近くが何棟も床上浸水するような事態になって、父はようやく僕が部屋にいないことに気がついた。
 それで僕に電話したけれど、繋がらなかったんだとか。大雨で電波塔がやられて通信障害が出て、この周辺、僕のキャリアだけ電波が悪くなってたらしい。
 あちらこちら電話して、それでも見つからなくて電波の回復を待って何度か電話してたんだとか。

 すぐにレスキューを呼ぶから、と言われて浅川と顔を見合わせる。
 教室の電気を付けて外を見たら、一段低くなってる校庭の向こう側はちゃぷちゃぷと水の流れる川になっていた。

『それと、綾子が今回のことでお前を任せていられないと』
「えっ?」

 綾子っていうのは、母のことだ。
 僕がいないから母のところにいるのかもと、向こうに電話したらしい。

『お前を引き取ると言ってる。かなり遠くなるから学校は転校になるだろう』
「……転校?」
『それで綾子が言うには……』


父の声はもうよく聞こえなかった。
なんで、僕が転校? この学校を出たら、もう浅川とは会えなくなるのに?

何も言えず動けなくなった僕の肩を、浅川が大きな手でソッと撫でてくれた。












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感想 1

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みんなの感想(1件)

遠間千早
2024.10.31 遠間千早

いそいそと、来てしまいました。
天城さんの新境地ですね!現代もの!そして学生ラブ!意外な題材で新鮮でした。
爽やかで甘酸っぱそうな予感がします…💓
これからどうなるのかとっても楽しみです。

2024.10.31 天城

ありがとうございます!!!😭😭こんな僻地までいらっしゃいませ村長!🎉
初めての試みで心臓バクバクなんですが、最後まで頑張ります!
コメントありがとうございました!

解除

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