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4.『愛されたがりと愛したがり』
⑦
しおりを挟む緩い快感続いてふわふわ心地良くなってきた頃に、やっと中にとぷりと吐き出される。
オレはその間に二回くらいイッていて、股間はとろとろに濡れていた。いっぱいになっていた中からずるりと性器が引き抜かれ、こぷっと白濁が少し零れた。
「ねー、黒崎さん。オレ思ったんだけどね」
「うん?」
また濡れたタオルでオレの身体を拭き始めた黒崎さんに、甘えたように話しかける。
腰が痛くて今日は起きるのも無理そうだったから、もう全部黒崎さんにやってもらおうと思ってた。
頼って甘えるほど喜んでくれる恋人って、なにそれ凄い、としか言いようがない。
「オレ、ずっと愛されたがりだったんだよね」
ぴくりと一瞬止まった黒崎さんの手が、ゆっくりまた動き出してオレの太腿に散った精液を拭いとる。
「愛されたいくせに、愛するのは凄く疎かにしてた。求めて求めて愛してくれないって嘆いて、でもオレだって相手に愛してるって態度で示したかなと思ったら全然覚えが無かったんだ」
ころん、と黒崎さんの方に寝返りを打って手首を差し出す。
手錠のついた腕を持ち上げて、拘束されてて離れない手首をそのままに、両腕の隙間に黒崎さんの頭をすぽっと通した。
そのまま、抱き締めてちゅっと鼻先にキスをおとす。
「やっと納得した。そりゃ捨てられるわ。愛してくれない相手に、愛を注ぎ続けるのは誰でもしんどいもんな」
「……リリはそのままでいいと思う」
「へ?」
黒崎さんは首の後ろに手を回して、オレの手首の手錠をカチリと外してしまった。
それがシーツに落ちるのと同時に、唇が重なる。
ちゅ、ちゅ、と軽く触れ合わせるだけのキスが何度もくり返されてくすぐったくなった。腰を支える大きな手にぐっと力が籠もって、黒崎さんはオレの目を覗き込んできた。
「そのままでいいよ。俺がその分を補充するから。リリはただ、俺に愛されて」
その瞳に映るのは、どろりとした濃い執着だった。でもオレにはそれがとてつもなく大きな愛に見える。
欲しかったのはこれだったんだって、黒崎さんが気付かせてくれた。だからオレはもう、絶対にこの番を離さない。
「黒崎さん、今週末オレの実家来られる?」
「ご挨拶に行こう。本当はリリを部屋から出したくないけど、俺が車を出すから」
「あっ、あと実家から見合い相手に断わり入れて貰わないと」
「それは俺がしっかり話をつけておくよ。安心して?」
にこ、と穏やかな笑みを浮かべた黒崎さんに、俺は沈黙した。
その顔をする時の黒崎さんは猫を被ってる。
なんかオレに隠したい事実があるんだろうな、知り合いだって言ってたからそういう事かな。
喧嘩とかしないよね、アルファ同士って仲悪いとか聞くけど。あまり大ごとにならないといいな。
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