18 / 27
3.『俺のじゃないから』
⑥
しおりを挟むそれからオレは、黒崎さんのメッセージに返事をしなくなった。
家にも行かなくなったから、カードキーは封筒に入れてポストに返しておいた。週末には見合いで実家に帰るしなと思って授業サボってほとんど外出もしてない。
たぶん見合いの後は大学休学か退学してすぐ結婚ってなるはずだ。後ろ向き思考ですっかり引きこもりになってしまった。
メンヘラの上に引きこもりなんて最悪じゃない?これちゃんと結婚できるのオレ?
「……あー」
スマホが光ったから手に取ってみると、弟からだった。
週末帰る事は言ってあったから、両親も待ってるよってコメントとそのついでに写真が送られてきた。
案の定見合いの写真で、相手は三十代の獅子獣人だという。
顔も良いし金持ちらしいけど、兎獣人のオメガっていうのに飛びついたならどういう相手なんだか。
でも見合いなら、もう子作り前提で結婚するわけじゃん。
オレはオメガだし、相手はアルファなんだからさ。こういう場合、会った初日から相性でもみてみましょうかみたいになってそのままホテルへなんてザラにあるって聞いた。
ゾワッとした気持ち悪さが背を撫でる。黒崎さんに触られるのはあんなに気持ち良いのに、他のアルファに触れられるのを想像したら吐き気がした。
だって見合いのアルファが必要としてるのはオレじゃなく、オメガの胎なんだ。
オメガの見合いってのは、未だにそういう意味合いがあるんだって。大型獣人の家柄は、あんまり血を薄めたくないみたいでベータの嫁を取らない傾向にある。
外部から入れるのはオメガのみで、わざわざ娶るということは子どもをたくさん生ませて数打てば当たるみたいにアルファを量産したいのだ。
だからイヤだったんだ。
いいとこのアルファの家に嫁に行ったら面倒くさいオメガ差別がある。
ウチはただの中流家庭だから、血筋がどうとかないし、自分で恋人作ってオレが選んだ人と結婚してやるって思ってた。
だけどオレは甘えたがりの愛されたがりで、重くて、心配性で不安定で、恋人に逃げられてばっかりだった。
どうにか自分を変えないとって思ったから我慢もしてみたけど、やっぱりダメだ。
十人目の恋人が別れるって電話してきた時に爆発してしまった。
泣いて、なじって、たくさん我慢してきたことをぶつけてまた泣いて、怒り狂った後に悲しくなって、それで返ってきた言葉が『病院で診てもらった方が良い』だった。
精神状態、ヤバくなってるよって。
オレのことメンヘラって言ってきたのは八番目の恋人で、リリは可愛いけどそのメンヘラ気質には付き合いきれないって言われて別れた。
じゃあオレはどうしたら良かったんだろう。そのまんまじゃ受け入れて貰えなくて、我慢してもやっぱり捨てられるんだったら、もうどっちだっていいんじゃん。
誰もオレのことなんて好きになってくれない。
応援ありがとうございます!
118
お気に入りに追加
119
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる