10人目の恋人にフラレたメンヘラΩの俺

2.『イケメン黒崎さんはグルーミングも上手い』

⑤

「ふ、……ん、ぅ、……んっんっ」

　中に入ってきた手は、撫でるみたいに優しく触れてくる。大きな手がオレの胸を揉み上げて、乳輪は指先で摘まむように刺激された。

　黒崎さんはオレの首元に顔を埋めて、ぺろ、ぺろ、と喉仏のあたりを舐めていた。肉食系の獣人の前で首を晒すのは本能的な恐怖がある。
　無意識にブルブルと震えてしまうけど、そんな恐怖さえ快感に置き換わった。

　シャツを首までたくし上げられる。逞しい腕にぐっと背を支えられて仰け反り、突き出すみたいになった胸に黒崎さんが顔を近付けた。

「ふぁっ……ンッ、ぅ、……んんっ」

　ぺろ、といきなり乳首を舐められて身体が大きく震えた。
　ぴちゃ、ぴちゃ、と何度も唾液を塗されて舐められる。ちゅうっと強く吸われて解放された後、逆側に移動してまたそこを舐られた。

　乳首の先端を潰すようにされたり、乳輪ごと大きな口で食まれたりして刺激される。つうっと唾液が繋がり黒崎さんが顔を起こした。

　オレの日焼けしない肌にぽつんと見える真っ赤な乳首が酷く卑猥で、目のやり場に困る。オレの胸なのに、なんか違うモノのように感じられた。

　黒崎さんの舌は分厚くて、口も大きいからがぶってやられたらオレの小さい胸なんか囓り取られちゃいそうだった。
　赤い舌がチラチラとオレの肌の上を這っていくのが見えて、ぼうっとそれを目で追う。
　あの舌で、口の中をなめ回されて奥の奥まで犯されるみたいなキスをしたら、どれだけ気持ち良いだろう。

　そんな事を考えてしまってハッとする。これは練習だって言ってたじゃないか。

　相手はアルファの大型獣人だし初対面だし、恋人もいるみたいなんだから期待するなって。
　落胆してつらいのはオレなんだからね。




「ッ……ぁ、ふ、……」
「もう怖くない？　可愛い声が聞こえないのも悲しいから、これは取ろうか」

　快感でとろっとろにされてしまって、ぼうっとしていたオレの口から、ハンカチが引きずり出される。

　唾液が染みてたそれを放って、黒崎さんはオレの口に舌を這わせはじめた。
　もしかしてキス、してくれる？　と思ったら身体がズクンと甘く痺れた。薄く口を開いて、舐めてくる舌にちょっとだけこちらからも舌を触れさせる。

　あからさま過ぎた誘いかなと思ったけど、止まらなかった。

　くちゅ、と濡れた舌の粘膜が僅かに擦れる。
　それだけで、カアァッと身体が熱くなって腰砕けになってしまった。もうソファから立ち上がれないくらいにはなってたけど、それ以上だ。

　下半身が熱くて熱くて、堪らない。

「キスは、平気？」
「へ、へーき」
「……下も弄って欲しい？」

　赤面しながら、コクン、と頷くと黒崎さんはすうっと一瞬目を細める。

　ゾクゾクするような獣の目を一瞬覗かせながらも、彼は笑顔で『じゃあグルーミング続行で』と言った。このまま食べられちゃいそうで絶対、危ないのに。

　本能的な恐怖でガクガク震えるほどなのに、どうしてか黒崎さんから目が離せない。

「おねがい、します」

　みっともなく掠れて涙声になった。それは胸の内側をガリガリと削るような、この熱情のせいなのかもしれない。